チケットプリンター

チケットプリンターとは

チケットプリンターとは、チケットを印刷するためのプリンターです。チケット以外にラベル、レシートなどを印刷することができる製品もあります。

印刷物が小さいことから、多くのチケットプリンターは卓上にも置けるくらいの小さいサイズです。印刷方法には、熱転写方式やサーマルドット方式など、サーマル方式が採用されています。ロール紙などを用いて印刷する機種が多いですが、ラベル紙やPETカードに対応している製品もあり、各種ラベルや定期券などのカードなど、多様な用途での印刷に用いられている装置です。

チケットプリンターの使用用途

チケットプリンターは、各種受付や小売店舗のレシートやクーポン券などの印刷に用いられるプリンターです。また、ラベル紙に対応している製品では、各種ラベルの印刷に用いられます。具体的な用途の例は下記の通りです。

  • 催し物における各種チケットの発券 (コンサート、展示会、カンファレンス)
  • 旅行業界やレジャー業界などにおけるチケットの発券
  • 鉄道における定期券や各種乗車券などの発行
  • 空港における搭乗券や手荷物タグの発行
  • 小売業におけるPOSレシート、領収書、保証書、商品券などの発行
  • 運送・倉庫などにおける、出荷ラベル、配送伝票などの発行
  • 官公庁における訪問者ラベルの発行
  • 地図やWeb画面の印刷、ホテル明細書などの発行

チケットプリンターの原理

チケットプリンターの多くはサーマルプリンターであり、熱転写方式や感熱方式 (ダイレクトサーマル方式など) によって印刷が行われています。熱転写方式はインクリボンを使用する印刷方法であり、感熱方式は感熱紙を利用する印刷方法です。

1. 熱転写方式

熱転写プリンターは、熱転写インクリボンを使用し、サーマルプリントヘッドの熱でインクリボンのインクを紙に転写する印刷方式です。ラベルの基材によっては、熱、薬品などに強いものを作ることができ、耐環境性に優れています。一方、感熱方式に比べてプリンターの大きさは比較的大きいくなる傾向にあります。

2. 感熱方式 (ダイレクトサーマル方式)

ダイレクトサーマルプリンターは、熱によって化学反応で発色する感熱紙を使用して、サーマルプリントヘッドの熱によって直接印字する方式です。ランニングコストが安く、プリンターを小型にしやすい特徴があります。一方、感熱紙は、熱や薬品により変色しやすく、長期保存にはあまり向きません。基本的には単色での印刷となります。

チケットプリンターの選び方

チケットプリンターは、様々なメーカーから多様な種類の製品が販売されています。下記の点を踏まえ、用途に合わせて適切なものを選択することが必要です。

1. 用紙

チケットプリンターは、通常ロール紙に印刷を行いますが、中にはPETカードへの印刷に対応し、乗車券や定期券などを発行できる機種もあります。印刷幅は、単一幅に対応している製品のほか、25mm前後から115㎜前後まで幅広く対応している製品もあります。特に、幅の広い110mm前後の用紙では領収書、配送伝票、保証書などに適しています。

また、紙厚65μm~150μmまで広く対応している機種もあり、厚紙対応の機種では高級感のあるしっかりとしたチケットを印刷したり厚紙ラベルを印刷したりすることが可能です。

2. 印刷解像度・文字種・印刷速度

チケットプリンターの解像度は200〜300dpiであることが多いです。解像度が高いほど、印刷の速度は遅くなります。用途と予算に合わせて適切なものを選ぶ必要があります。また、また、印刷したい内容に対して文字種類が十分に用意されていることが必要です。英数字、国際文字、半角漢字、JIS第一/第二水準漢字、JIS C 6226-1983、などの他、機種によっては中国語、ギリシャ語、ポーランド語、ロシア語、スカンジナビア語、トルコ語などが標準搭載されている場合もあります。

また、A4サイズの印刷データを112mm用紙幅に縮小して印刷することが可能な高解像度機種では、Web画面、ホテル明細書などを鮮明に印刷することが可能です。

3. カッター

チケットプリンターの多くはオートカッターが搭載されていますが、中にはそうでないものもあるため注意が必要です。また、カッターの種類を一体型と分離型から選択することが可能になっている機種もあります。

4. ソフトウェアと外部接続

チケットプリンターは、パソコンへの接続が想定されている製品の他に、プリンタ内部のプログラムにより、バーコードリーダーなどの周辺機器と接続するのみで印字可能なものがあります。

いずれにせよ利用に際して何かしらの機器やネットワークに接続することが前提であるため、通常LAN、USB、WLANなどのポートが備えられています。また、一部の製品では無線LANやBluetooth接続に対応しています。

参考文献
https://star-m.jp/products/s_print/tsp800ii/index.html
https://satoasiapacific.com/ja/product/%e3%83%81%e3%82%b1%e3%83%83%e3%83%88/

需要予測ツール

監修:ニュートラル株式会社

需要予測ツールとは

需要予測ツールとは、既存のデータを元にサービスや商品の需要を予測することができるツールです。

需要予測ツールで検討される既存データには、過去の販売実績はもちろん、天候・季節、景気、競合他社の動向や、その他のトレンドなど、様々なものがあります。需要予測ツールを適切に活用することで、生産計画や販売戦略を合理的に決定することが可能です。需要予測ツールは、現在のビジネスの効率化・最適化だけではなく、新規参入する市場の見極め、人材獲得や設備投資の計画、設備投資、資金調達などの業務改善にも役立てられています。

需要予測ツールの使用用途

需要予測ツールは、多種多様な業種で利用されています。具体的な業種の例は下記の通りです。

  • 小売り・サービス業
  • 飲食
  • 不動産
  • 物流
  • 製造業 (工業・食品、その他製造一般)
  • 農業生産
  • レジャー
  • タクシー業界
  • コールセンター

例えば、小売店では売上見込を予測することで仕入れや人員配置の最適化を行うことができ、飲食業界では、時間帯ごとにメニューの販売数量を予測することで食品ロスの減少と適正な人員配置を行うことが可能です。

タクシー業界では、需要予測により需要の多い場所・売上・乗車ニーズを割り出すことで効率の良い配車を行うことに活用されています。コールセンターでは、入電予測を行うことで最適化された人員配置に役立てられています。製造業では、過剰生産による過剰在庫や需要過多による在庫切れなどを防ぐことが可能です。

需要予測ツールの原理

1. 概要

需要予測システムは、大量に蓄積された既存データから、統計学の技術を活用したアルゴリズムを用いて未来の需要を計算・予測します。最近では、特に機械学習すなわちAIにデータを学習させて予測モデルを構築するものが主流です。

2. AI・機械学習

機械学習とは「データから機械すなわちコンピューターが自動で学習を行い、データの背景にあるルールやパターンを発見する」という技術です。AIを用いた需要予測システムは、大量のデータを高速処理できることから、複雑なパターンや傾向も扱うことができ、他のツールに比べてより正確な予測が可能であるとされます。

ただし、これは「過去に起こったパターンや傾向は、未来にも継続する可能性が高い」という仮定に基づいている技術です。そのため、災害などの予測困難な一回限りの突発的な事象による影響は予測しにくいというデメリットもあります。

2. 具体的な統計学的手法

需要予測ツールで用いられている主な統計学的手法の例は下記の通りです。

  • 算術平均法:
    過去の実績データを直接的に平均化した値を用いて需要予測を行う方法。
  • 移動平均法:
    前年同時期の実績データなどと直近のデータを平均し、需要予測を行う方法。
  • 加重移動平均法:
    移動平均法において、特定のデータに重みをつけて平均を取る方法。
  • 指数平滑法:
    過去の予測値と実際のデータをもとに、新しい予測値を計算する方法。特に短期の予測に最適。
  • 回帰分析法:
    因果関係を持つ複数の変数をもとに、未来の需要を予測する方法。要素が複雑な需要予測に適切。

需要予測ツールの種類

需要予測ツールは、上記の通り、様々な業種・目的で利用されている製品です。そのため、小売店の売上予測、在庫の適正管理などの特定の目的に特化した製品や、ある程度広い範囲の分野にオールラウンダーに対応している製品など、様々なものがあります。また、需要予測と連動した自動発注アプリケーションなども販売されています。

購入形態は、月額もしくは年額課金方式など、サブスクリプション式の製品が多いです。無料試用期間を設けている製品もあります。利用する際は、用途や状況に合わせて適切なものを選択することが必要です。

参考文献
https://it-trend.jp/demand_forecast_system/article/152-611
https://it-trend.jp/demand_forecast_system/article/important_things
https://www.fujitsu.com/jp/group/fjm/business/mikata/column/fjj-kotake3/

本記事は需要予測ツールを製造・販売するニュートラル株式会社様に監修を頂きました。

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AI予測ツール

監修:ニュートラル株式会社

AI予測ツールとは

AI予測ツールとは、AIすなわち人工知能を用いて近い将来や未来に起こる事象を予測するツールです。

AIは、機械学習によって大量に蓄積された既存データからデータ同士の関係性を見出して分析することに優れています。この仕組みを未来予測に応用したものがAI予測です。大量のデータを高速処理できることから、複雑なパターンや傾向も扱うことができ、他のツールに比べてより正確な予測が可能であるとされます。

AI予測ツールの使用用途

1. ビジネス

AI予測ツールは、ビジネスでは、仮説に基づいてデータ傾向の把握を行い、新しいデータに適用することによって、未来の予測を行うことに用いられます。商業ビジネスでは、過去の販売実績や気象状況などのデータを元に、商品需要の変動を予測するシステムなどがあります。商品需要以外にも、商談成立確率、売上予測などにも用いられるシステムです。

金融では、過去のデータの傾向を元に、株価や景気などの動向を予測することが可能です。不動産業界では、将来の不動産資産価値を予測することに用いることができます。それ以外では、特に医療・気象などで活用しやすいツールです。

2. 医療

医療関係では、過去の統計からインフルエンザなどの感染症の感染傾向を予測することにAI予測を用いることができます。感染者数や症状の内容や重篤度などのデータに基づき、流行しそうな地域や感染者数の推移を予測することが可能です。

また、患者個人単位では、例えば不整脈の検出に基づいた重篤疾患の発症予測などの用途例があります。日常生活での数分の検査で心房細動などの不整脈を検出して重篤な心疾患や脳梗塞などの脳疾患の発症リスクを予測します。

AI予測によって早期診断による適切な治療を実現することでADL (日常生活動作) の低下を防ぎ、患者の予後を改善することが可能となります。

3. 気象関係

気象関係におけるAI予測の主な用途は、天候の変化の予測です。統計的気象データを学習し、各地の気温や風向きなどの情報に基づいて天気予報を行うことが可能です。

また、雪が多く降る地方では、 新幹線車両の着雪量予測などに用いられます。雪国を走る新幹線は、走行中に車両の下部に雪が付着しますが、固まりになった雪が線路に落下すると線路の砂利が飛び散るなどして危険です。雪を取り除くための人員確保や、作業の要否の判断を行うため、AIによる着雪量予測が活用されています。

4. その他

上記以外では、防犯対策や水道管の劣化予測などにもAI予測が活用されています。防犯では、監視カメラの情報や過去の統計から犯罪発生の可能性が高い地域や時間帯をAI予測によって割り出し、早めに対策ができます。

 水道管路の劣化予測では、使用年数だけでなく周囲の環境要因も影響するため、複雑な予測が必要となります。AIを用いることで過去の統計データから劣化状況を予測し、高精度な破損確率の推定を行うことができます。配管交換における優先順位を決定することに役立ち、更新計画を最適化することが可能です。

AI予測ツールの原理

AI予測は、機械学習を利用して行われます。機械学習とは「データから機械すなわちコンピューターが自動で学習を行い、データの背景にあるルールやパターンを発見する」という技術です。AI予測ツールでは、大量のデータをAIに学習させることで、未来に起こる事象を高精度で予測します。

ただし、これは「過去に起こったパターンや傾向は、未来にも継続する可能性が高い」という仮定に基づいている技術です。そのため、予測困難な一回限りの突発的な事象による影響は予測しにくいというデメリットもあります。

入力されたデータから予測を行う具体的な仕組みには多様なものがありますが、主な仕組みとしては、「ニューラルネットワーク」や「線形回帰」「決定木」などが挙げられます。用いられている仕組みは、それぞれのシステムによって異なっています。

  • ニューラルネットワーク:
    神経回路を模した複数の層 (「入力層」「中間層 (隠れ層) 」「出力層」) を持つシステムに大量のデータを入力し、判断を出力する方法。
  • 線形回帰:
    2つ以上の要素の関係性を数式で表現できるものと仮定し、「ある要素の値が変動すると、別の要素も連動して変動する」という形で予測を行う方法
  • 決定木:
    YESまたはNOで答えられる説明変数の値をもとにデータを振り分け、事象が今後起こる確率を数値化する方法

AI予測ツールの種類

AI予測ツールは、前述の通り、様々な業種・目的で利用されています。そのため、特定の目的に特化した製品や、ある程度広い範囲の分野にオールラウンダーに対応している製品など、様々なものがあります。特定の分野に特化している製品では、来店予測、予測型経営DXシステム、需要予測など、商業・ビジネス向けの製品が多いです。

また、購入形態には買い切りのほか、サブスクリプションに対応している製品もあります。ITの背景知識が無くても容易に理解できるよう、インターフェースが視覚的に工夫されている製品もあります。使用する際は、用途や状況に合わせて適切なものを選択することが必要です。

参考文献
https://ledge.ai/articles/ai-forecast
https://jpn.nec.com/solution/dotdata/tips/ai-predictions/index.html
https://www.itreview.jp/categories/predictive-analytics?sort=review_num_desc

本記事はAI予測ツールを製造・販売するニュートラル株式会社様に監修を頂きました。

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フルーツ皮むき機

フルーツ皮むき機とは

フルーツ皮剥き機 (フルーツピーラー) とは、果物の皮を効率よく取り除くために設計された器具です。

業務用およびプロ用ともに様々な製品が販売されています。果実の皮の厚さや硬さは様々なので、処理する果実に合わせて機械を選んだり、設定を調整する必要があります。

フルーツ皮むき機の使用用途

ピーラーは、家庭用や小規模な専門環境そして業務用などで多様な目的に使用されています。

小規模な専門環境では、オレンジやグレープフルーツなどの厚皮の果物を処理し、皮を簡単に剥くことができます。キウイやトマトなどの柔らかい果皮の果物も内部を傷つけずに効率的に処理することが可能です。

フルーツ皮むき機の原理

刃の形がピーラー状になっているタイプの機械では、フルーツを回転軸 (回転爪) に固定して回転させ、刃を皮に当てることで皮を剥きます。

回転の動力は、家庭用では手回し式のものもありますが、業務用など大量の皮むきを想定したものでは電動が採用されています。製品にもよりますが、皮を剥く厚みは調整が可能であり、むき上がり表面がなめらかです。

また、従来法の円筒形などのユニットで削り取るものに比べて、剥きすぎる部分が少ないため、廃棄率を抑えることができます。

フルーツ皮むき機の特徴

フルーツピーラーは、業務用では飲食店や工場などの施設で重要な役割を果たしています。手作業の皮むきに比べて30%以上効率を向上させ、切り分けた果物やケーキ、フルーツサンドイッチなどの生産に関わる場合は大いに役立ちます。

電動ピーラーはオレンジ、グレープフルーツ、リンゴ、キウイなどさまざまな果物に対応し、柔らかい果物 (柿や洋梨など) や玉ねぎ、じゃがいも、カブ、トマトなどの野菜にも対応します。また、パイナップル、メロン、マンゴーなどの大きな果物や、特定の果物に合わせたモデルもあり、処理効率を向上させます。

市場には、特定の機能を持つさまざまなサイズのピーラーも存在します。例えば、コンパクトなテーブルトップタイプから、大規模な工場向けに設計されカスタマイズされた大型モデルまであります。一部モデルには、皮剥き機能だけでなく、リンゴや洋梨、パイナップルなどの果物をスライスや芯抜きする機能も備えています。機械の特長と特性を理解することが、ニーズに最適なオプションを選択する最も重要な要素です。

参考文献
https://e-astra.co.jp/appeal/
https://e-astra.co.jp/products/fap-1001/
https://vislider.com/kawamuki/

ホイロ

ホイロとは

ホイロとは、製パンにおいて用いる発酵庫・発酵器です。

漢字では「焙炉」と表記し、元々は食材などを緩やかに熱して、加工するための木箱のようなものを指す言葉でした (煎茶の製造など) 。製パンにおいても、古くは棚を備え付けた木製を作り、その中を蒸気などで温めて、パン生地を入れて発酵させていた歴史があります。

今日でも、製パン工程における最終発酵工程のことを「ホイロをとる」もしくは単純に「ホイロ」と呼ぶ場合もあります。装置としてのホイロは、パン生地を収納する棚を備え、温度と湿度が管理できるようになっている機器です。季節・室内環境に関わらず適切な発酵環境を保つことができます。なお、類似した業務用の装置には、ドゥコンディショナーがあります。

ホイロの使用用途

ホイロは、業務用の製パンにおける発酵工程において適切な発酵環境を維持するために用いられます。製パンにおいて一次発酵をフロアタイムと呼び、二次発酵をホイロと呼ぶことから、一次発酵は室温で行われることが主流でした。

ただし、現在の業務用製パンでは、ホイロやドゥコンディショナーなどの温度管理装置を用いて行われることもあります。また、ホイロと呼ばれることは少ないながら家庭における製パンでも、発酵器が用いられることがあります。

ホイロの原理

ホイロは電力でヒーターを作動させ、庫内を設定温度・設定湿度に保つ電気機器です。基本的に冷却機能がないため、管理できる温度帯は常温以上です。最高温度は45℃から50℃程度が多いですが、中には最高温度90℃の機種もあります。

湿度については、加湿用貯水タンクや加湿用ヒーターが備え付けられており、加湿することができます。通常、環境湿度から99%までのことが多く、環境湿度より低くする機能はついていません。庫内は、パン生地を収納しやすいように棚式やキャビネット式が主流です。製品によってはガラス扉を採用したり庫内灯を備えたりして、庫内が見やすいように工夫されています。

電源は、交流電源単相100V消費電力750W程度のものが多いですが、大型の製品では三相200V電源を必要とする機器もあります。

ホイロの種類

ホイロは大きく、業務用と家庭用に分けることができます。家庭用のものはホイロと呼ばれるのはやや少なく、「家庭用発酵器」として販売されている場合が多いです。家庭用の製品は業務用のものに比べて小型で棚数が少ないものの、折り畳める構造だと収納の邪魔になりません。

業務用のホイロは、今日では後述するドゥコンディショナーで代用されるようになった部分もありますが、細かな部分では下記のような種類があります。

1. リターダーホイロ

冷凍パン生地を解凍して、冷蔵保存し、さらに昇温して最終発酵まで行うことのできる機械です。

2. 台下タイプ

麺台 (作業台) の下がホイロになっている形状です。麺台で生地を分割してすぐに番重ごと下のホイロに入れて、ベンチタイムや最終発酵を取ることが可能です。

3. 乾ホイロ

加湿をしないタイプのホイロです。比較的低温低湿度で発酵させる、フランスパンなどのハード系のパンに用いられます。

ホイロのその他情報

ホイロとドゥコンディショナーと違い

ドゥコンディショナーとは、冷凍から発酵 (ホイロ) まで、庫内の温度・湿度を自動制御することができる機械です。ホイロが保温・加湿機能のみであることと異なり、ドゥコンディショナーには保冷やタイマーなどの機能があることが大きな違いです。「ドゥ」とは、英語でパン生地を表す「dough」に由来しています。

ドゥコンディショナーを用いることにより、パン生地の保冷や解凍、最終発酵までパン生地を良好な状態に保ちながら、設定した時間に合わせて一連の工程を自動で行うことが可能です。作業の省力・効率化につながるため、今日ではホイロの上位互換として業務用にドゥコンディショナーが採用されることも多くなっています。

参考文献
https://www.bgst.jp/doukon-hoiro/
https://www.remacom.com/shopdetail/000000000944/

ダイヤル温度計

ダイヤル温度計とは

ダイヤル温度計とは、円形の温度表示部と棒状の感温部から構成されている温度計です。

感温部にはバイメタルやブルド管などが用いられ、機械的に指針を動作させる方式で動作します。ガラス温度計水銀温度計やアルコール温度計などの温度計に比べて頑丈であり、保守も容易であることから、工業用に広く用いられています。現在は温度の指針、最大指針、警報指針の3針式の製品が多いです。 

ダイヤル温度計の使用用途

ダイヤル温度計の主な用途は、変圧器の温度の測定です。変圧器内部の中でも特にコイル付近の油温度、回転機の軸受温度の計測に用いられます。

受変電設備等に組み込まれる変圧器 (トランス) は、稼働状況により機器温度が上昇します。過負荷がかかった場合、定格温度以上になる可能性があり故障の原因になりかねないため、温度を確認することが必要です。

ダイヤル温度計自身には警報器の機能はありませんが、多くの製品で任意温度にセットできる警報接点を持っており、ランプやブザーなどを外部接続することで警報装置としての役割をもたせることができます。また、ダイヤル温度計は、変圧器以外にも、温度管理が必要な産業・工業で広く汎用されており、具体的な例として下記の温度管理が挙げられます。

  • 冷凍産業
  • 食品産業
  • バイオテクノロジーや医薬品産業
  • 機械製造、組立
  • 加熱装置
  • 冷却、空調機器
  • 換気装置
  • 太陽熱集熱器
  • 温水タンク
  • 熱伝達ステーション

ダイヤル温度計の原理

ダイヤル温度計は、温度を表示する盤面と棒状などの感温部が導管で接続されている構造です。感温部は、バイメタル、ガス又は液体膨張の原理などで動作しています。

1. バイメタル式温度計

バイメタルは、熱膨張率が異なる2種類の金属板を溶接や接着によって貼り合わせたものです。温度変化により湾曲する特性を利用して、表示板の目盛りを指す針を動かす仕組みとなっています。

2. ガス・液体膨張式温度計 (圧力式温度計)

圧力式温度計は、温度によるガスや液体の体積の変化を利用したものです。感温筒、導管、ブルドン管から構成されます。感温筒、導管、ブルドン管は、圧力下で液体やガスで満たされた密閉空間となっています。

温度変化により感温筒内の液体やガスが膨張・収縮し、導管を通してブルドン管内部の圧力が変化し、この圧力の変化を温度として指示する原理です。

ダイヤル温度計の種類

ダイヤル温度計は、前述したようにバイメタル式温度計やガス・液体膨張式などの仕組みの種類があります。変圧器の温度管理や様々な工業・産業における温度管理に汎用されていることから、用途に合わせて細かな点で様々な種類があります。

1. 機能による分類

ダイヤル温度計の製品の中には、最高温度の指針が備えられているものもあります。このような製品では、一時的な最高温度を観測することが可能です。

また、標準指示温度計に温度センサを組み込んだハイブリット型温度計もあり、現場計測での直読の他に遠隔計測や自動制御を行うアナログ出力を行うことができます。耐震型の製品では、グリセリンをケース内に封入することにより、外部からの振動やポンプの脈動などによる指針や計器内部構造の激しい振れを吸収する仕様となっています。 

2. 外装による分類

衛生的な環境を必要とする食品工場や製薬・化学工場などを想定した種類の製品では、電解研磨仕上げのケース外装の製品や、サニタリー用ステンレススチール製製品などがあります。形状は壁掛型の他、ビス止めで測定対象装置前面パネルへの埋め込みを想定したものなどがあります。

温度指示部と感温部は導管で接続されているため、例えばキュービクルに変圧器を収納した場合、温度指示部のみを盤前面に取り付けることが可能です。また、メッキ工場・化学薬品工場などの過酷な条件での使用を想定した製品では、耐薬品性に優れているものもあります。

参考文献
https://connect.nissha.com/filmdevice/filmdevice_column/capacitive_touch_panel
https://www.ebara-keiki.co.jp/publics/index/107/

 

静電容量タッチセンサ

静電容量タッチセンサとは

静電容量タッチセンサとは、電界において静電容量の変化を利用して検出するタッチセンサです。

静電容量とは、導電体 (コンデンサなど) において、蓄えられている電荷の量を表す物理量です。人体は導体 (電流を流すことができる) であるため、手などの人体の一部分がタッチパネルなどの表面に近づくと、指先などの接触部分とセンサーに用いられている電極の間に静電容量が生じます。静電容量方式のセンサーでは複数の指を用いるマルチタッチジェスチャーが可能であり、スマートフォンを始めとする様々な製品に使用されています。

また、素材の柔軟性から湾曲状でもタッチが可能であることや耐水性に優れることなども長所の1つです。

静電容量タッチセンサの用途

静電容量タッチセンサは、スマートフォンやタブレット、ゲーム機、ATMや券売機などのタッチパネル、ウェアラブル機器に広く使用されています。ワイヤレスイヤホンを耳につけているかどうかを判定するための用途や、高精度のものではアルコールディスペンサーの残量検知を目的とした用途もあります。

キットなどとして一般に販売されているものは、主にスイッチモジュールやフィルムセンサーなどとして用いられる場合が多いです。

静電容量タッチセンサの原理

静電容量タッチセンサは電極を用い、導体である人がタッチした際に生じる静電容量の変化を利用する仕組みです。静電容量タッチセンサでは、主にITO電極が用いられます。

ITO (Indium-Tin Oxide) 電極とは、ガラス基板上にITOを蒸着した電極で、電気化学測定などに汎用される電極です。自己容量方式と相互容量方式の2種類の仕組みに分類されます。

1. 自己容量方式

自己容量方式のセンサは、センサ電極を1種類だけ用います。ITO電極間には電界が形成されており、この電界に導体である人体が指などで触れることで、電界と手の間に擬似的にコンデンサが生じます。このとき起こる静電容量の増加を検知し、センサーとして機能する仕組みです。

高感度で、分厚いカバーをかけた上からでも読み取りができるというメリットがあります。ただし、後述する投影型の場合はXY電極の行や列でタッチ位置を判断するため、マルチタッチ時には触れていない箇所を誤ってタッチ箇所として認識してしまう場合がある点が短所です。

2. 相互容量方式

相互容量方式のセンサでは、電極は送信用と受信用の2種類に分かれています。1つは電界を発生させる電極であり、他方は電気力線を吸収する電極で、この2者はコンデンサー様の関係です。

センサーに手を近づけると、2つの電極の間にある電界の一部が指先に遮られます。電界と手がコンデンサの関係になった結果、電極間の静電容量は減少します。相互容量方式は、このようにして2つの電極間に生じる電界の変化を検出する仕組みです。

静電容量タッチセンサの種類

静電容量タッチセンサの種類には、表面型と投影型の2種類の構造があります。

1. 表面型

表面型では、ガラス基板の4つの角に電極が配置されています。基板の表面には電界が生じており (自己容量方式) 、タッチすることにより静電容量の変化が起こります。静電容量の変化を4つの電極で検知し、タッチした位置を検出する仕組みです。

長所としては、耐久性が高く、水や油など表面の異物の影響を受けにくいことが挙げられます。また、構造がシンプルであるため低コストであり、大画面などに適していることも長所です。短所としては、マルチタッチができないことが挙げられます。

2. 投影型

投影型センサのパネルは、2つのITO電極が直交する2方向の電極層として配置されます (X軸方向とY軸方向) 。相互容量方式では、送信用と受信用の電極がX軸電極とY軸電極のように直交する格子状に配置され、静電容量が減少した座標をタッチされた位置として判定しています。

多点検出が可能なため、マルチタッチに対応可能です。また、それぞれの座標位置において個々に静電容量の変化を検知できることから、拡大や縮小などの直感的な操作も可能です。また、耐久性が高く、透過率が高いという長所もあります。

表面型よりも複雑な信号処理が行われるためノイズの影響を受けて誤作動しやすいことが短所ですが、このような誤作動はコントローラーICによって解消することができます。

参考文献
https://connect.nissha.com/filmdevice/filmdevice_column/capacitive_touch_panel
https://www.dush.co.jp/method-type/capacitive-touchscreen/

 

ルアーロックシリンジ

ルアーロックシリンジとは

ルアーロックシリンジとは、シリンジのうちシリンジ先端部にロック機能が付いているものです。

通常のルアーチップ式のシリンジと異なり、針の脱落を防ぐことができるため、特にしっかりと注射針を接続したい場合に適したシリンジと言えます。通常のシリンジと同様に、医療用や実験用などの分類があり、様々な場面で汎用されます。

ルアーロックシリンジの使用用途

ルアーロックシリンジの用途は、通常のシリンジと同様に医療用と実験用の2種類に大別されます。

1. 医療用シリンジ

医療用では、通常の注射薬の他、口腔内洗浄、造影剤などに用いられています。特に、シリンジポンプを用いて注射薬を持続注入するような場合や、抗がん剤などを取り扱う際などでの利用が多いです。抗がん剤などは刺激の強い薬液であり、取り扱いの際に針やカテーテルが脱落すると危険です。

また、シリンジポンプは内圧が上昇しやすいため、一般的な注入よりも針が脱落しやすいと考えられます。ルアーロックシリンジは、このような場合で危険回避のために用いられます。

医療用では、滅菌して個別包装されたディスポーザブル (使い捨て) 式 の製品が主流です。一方、プラスチック製のシリンジでは薬物吸着や樹脂添加剤の流出等の懸念がある場合には、ガラス製のシリンジが用いられます。医療用のガラス製シリンジは、使用するたびに滅菌して再利用されます。

2. 実験用シリンジ

医療現場以外にも、物理・化学・生命科学分野における実験器具として用いられます。主な用途は、液体や気体の注入、体積の測定、加圧・減圧、滴下、分注などです。

ルアーロックシリンジの原理

最も一般的な形状であるルアーチップ式のシリンジでは、針取り付け部分のテーパーを利用し、針を押し込んで固定します。針の着脱が容易である一方、針が脱落しやすいことが欠点です。

一方、ルアーロックシリンジは、針が抜け落ちないようシリンジの先端がネジ状になっています。そのため、針が抜け落ちないようにロック機構で固定することが可能です。ロック機構はプラスチックシリンジではプラスチックとなっており、ガラスシリンジではガラスの他、樹脂と金属を組み合わせた構造をしているものもあります。

ルアーロックシリンジの種類

1. 用途・材質による分類

ルアーロックシリンジには、用途に合わせて医療用や実験用などがあります。また、ガラスシリンジのうち、特にガスの取り扱いも可能となっている気密性を有したシリンジは、ガスタイトシリンジと呼ばれる製品です。

ルアーロック式のシリンジにも、他のシリンジと同様にディスポーザブルのプラスチック製 (ポリプロピレン) のものや、ガラス製 (ホウケイ酸ガラス) など、材質にはいくつかの種類があります。使用する薬剤等に合わせて選択することが必要です。

2. 容量による分類

ルアーロックシリンジは、様々な種類の容量のものが販売されています。医療用では、1mL、2mL、3mL、5mLなどの小容量から、10mL、20mL、30mL、50mL、100mLなどの中〜大容量まで幅広い製品展開です。

研究開発用では、50μL、100μL、250μL、500μLなど、更に小容量のガラスシリンジ製品などもあります。最大容量が異なると、目盛りや最小容量も異なるため、適したものを選択することが必要です。

3. その他

ルアーロックシリンジの中には、洗浄して繰り返し使用するものと、最初から使い捨てが想定されているディスポーザブル式のものなどがあります。医療用では滅菌して個別包装されたディスポーザブル式が主流です。ディスポーザブル式は、医療現場における感染予防、および、化学実験等におけるコンタミ防止で使用されます。

通常のシリンジの他、プランジャーが吸入全量を強制排出するゼロデッドボリューム型などもあります。注射薬を予め充填して製剤として販売する、プレフィルドシリンジにもルアーロック機構が使用されています。

参考文献
https://www.monotaro.com/note/productinfo/syringe/

フルシトシン

フルシトシンとは

フルシトシンとは、抗真菌薬の1種として知られている有機化合物です。

化学式 C4H4FN3Oで表される組成をしており、別名では5-フルオロシトシン (5-FC) と呼ばれている通り、ピリミジン塩基であるシトシンの5位がフルオロ化された構造をしています。その他の別名には、4-アミノ-5-フルオロ-2(1H)-ピリミジノン、 フルシトシンなどがあります。CAS登録番号は、2022-85-7です。

フルシトシンの用途

フルシトシンは、主にカンジダ感染症やクリプトコッカス症の治療に用いられる抗真菌薬です。分類では、フッ素化ピリミジンアナログに属します。適応は、真菌血症、真菌性髄膜炎、真菌性呼吸器感染症、黒色真菌症、尿路真菌症、消化管真菌症などであり、有効な菌種はクリプトコックス、カンジダ、アスペルギルス、ヒアロホーラ、ホンセカエアです。

真菌細胞内でシトシンデアミナーゼによる脱アミノ化を経て5-フルオロウラシルとなり、RNAのミスコードを引き起こしてDNAやRNAの合成を阻害する作用を及ぼします。その結果、リボソームタンパク質の合成が阻害され、抗真菌効果が得られます。フルシトシンは、研究用途でヌクレオシド誘導体の1種としてTMP生合成研究に使用される物質です。

フルシトシンの性質

フルシトシンは、分子量129.09、融点298-300 ℃ (分解) であり、常温での外観は白色粉末です。密度は1.40g/mLであり、水やエタノールに溶けにくい性質を示します。

フルシトシンの種類

フルシトシンは、主に研究開発用試薬製品や医薬品として販売されています。

1. 研究開発用試薬製品

研究開発用試薬製品としては、1gや5gなどの容量の種類があります。実験室で取り扱いやすい容量での提供ですが、その中でも小容量が中心であり比較的高価な試薬製品ということができます。通常、冷蔵 (2-8℃)で保管される物質です。

2. 医薬品

フルシトシンは抗真菌薬として販売されています。医師の処方の元で服用される薬剤であり、購入に当たっては処方箋が必要です。フルシトシンの名称は一般名であり、製品名には「アンチコル」などの名称があります。

剤形は、経口投与 (錠剤: アンチコル錠500mg) や静脈点滴が一般的です。

フルシトシンのその他情報

1. フルシトシンの取扱い上の注意

フルシトシンはGHS分類にて、生殖毒性: 区分2に指定されている物質です。具体的には生殖能又は胎児への悪影響を及ぼす恐れがあります。保護衣、保護手袋、保護メガネなどの適切な個人用保護具を用いることが必要です。

2. フルシトシンの反応性

通常の保管・取り扱い環境では、安定と考えられている物質です。強酸化剤は混触危険物質に指定されています。火災などの場合における危険有害な分解生成物として、炭素酸化物、窒素酸化物 (NOx) 、フッ化水素が挙げられます。

3. フルシトシンの副作用

フルシトシンを医薬品として投与する場合の主な副作用は、食欲不振、嘔気、白血球減少、発疹、胃部不快感、下痢、血清カリウム低下、AST、ALTの上昇などです。特に重篤な副作用には、汎血球減少、無顆粒球症、腎不全 (頻度不明) があります。異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うことが必要です。

4. フルシトシンと他の薬剤との相互作用

薬剤の中にはフルシトシンと相互作用する物があるため、注意が必要です。例えば、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤は、フルシトシンとの併用により早期に重篤な血液障害や下痢、口内炎等の消化管障害等が発現するおそれがあり、併用禁忌とされています (これらの薬剤の投与中止後少なくとも7日以内はフルシトシンを投与しない) 。

また、抗悪性腫瘍剤等や放射線照射、アムホテリシンBやトリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合剤は、骨髄抑制作用を増強するおそれがあるため、併用注意に指定されています。

参考文献
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907004854896151

トレオニン

トレオニンとは

トレオニン (英: Threonine) とは、アミノ酸の1種で化学式C4H9NO3で表される物質です。

側鎖にヒドロキシエチル基を持つ構造を有します。略号はThrまたはTであり、CAS登録番号は80-68-2 (L体は72-19-5) です。光学活性中心を2つ持つため4つの異性体が存在し、それぞれL-トレオニン(2S,3R) 、D-トレオニン(2R,3S)、L-アロトレオニン(2S,3S) 、D-アロトレオニン(2R,3R) と呼ばれます。

トレオニンの使用用途

トレオニンの主な用途は、医薬品原料 (輸液等) 、培地、食品添加物などです。トレオニンは、生体内ではL体のみが存在し、L-トレオニンはヒトや動物の体内で合成ができない必須アミノ酸の1つです。

成長や新陳代謝を促進する効果や、肝臓の機能を高める効果、胃炎改善作用、筋緊張昂進の抑制作用などがあると言われています。肝臓に脂肪が蓄積するのを防ぎ、脂肪肝を予防する効果もあります。動物性タンパク質に多く含まれ、卵、スキムミルク、ゼラチンなどに特に多く含まれる物質です。

トレオニンの性質

トレオニンは、分子量119.12、融点244℃であり、常温での外観は白色粉末です。水にやや溶けやすく、エタノール及びジエチルエーテルにほとんど溶けません。

無臭の物質であり、密度は1.07g/mL、酸解離定数pKaは2.63 (カルボキシル基) 、10.43 (アミノ基) です。

トレオニンの種類

トレオニンは、主に研究開発用試薬製品や、飼料用アミノ酸、食品添加物などとして販売されています。飼料用アミノ酸や食品添加物としては、L体のみが利用されますが、試薬製品としてはDL混合体、D体、L体の製品がそれぞれ存在します。

1. 研究開発用試薬製品

研究開発用試薬製品としては、DL混合体、D体、L体などの種類があり、容量の種類も0.5g、1g、5g、25g、100g、500gなど、実験室で取り扱いやすい容量を中心に様々なものがあります。通常、室温で保管可能な試薬製品として扱われる物質です。

2. 飼料用アミノ酸

飼料用アミノ酸としてはL-トレオニンのみが用いられており、肥育豚やブロイラーなどの肥育期の飼料に利用される物質です。25kg (袋包装) など、比較的大容量で提供されることが一般的です。

3. 食品添加物

トレオニンは、食品添加物としては、食品や飲料に用いられる物質です。調味料や栄養強化剤などの用途が一般的です。業務用では25kgや50kgなど、産業用に使用しやすい大容量で提供されています。

トレオニンのその他情報

1. トレオニンの反応性

トレオニンは、通常の保管条件では安定と考えられている物質ですが、光により 変質するおそれがあります。高温と直射日光を避けて保管することが必要です。強酸化剤は混触危険物質に指定されており、危険有害な分解生成物として、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物が指摘されています。

2. トレオニンの生合成

トレオニンは、植物や微生物の体内において、次のような各反応を経て生合成されています。

  1. 酵素アスパルトキナーゼがアスパラギン酸のβ-カルボキシル基をリン酸化する
  2. β-アスパルテートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼによって前段階の中間体生成物が還元され、β-アスパルテートセミアルデヒドが生成する
  3. ホモセリンデヒドロゲナーゼによる還元反応によりアルデヒド基がヒドロキシ基となる
  4. ホモセリンキナーゼによるリン酸化を受ける
  5. トレオニンシンターゼにより脱リン酸化とヒドロキシ化反応が進行し、トレオニンが生成する

3. トレオニンの取扱い上の注意

トレオニンの取り扱いの際は、局所排気装置を設置し、保護衣、保護メガネなどの適切な個人用保護具を使用することが必要です。また、保管の際は容器を遮光し、換気のよいなるべく涼しい場所に密閉して保管することとされています。