生物脱臭装置

監修:ミライエ株式会社

生物脱臭装置とは

生物脱臭装置とは、微生物の代謝を利用して臭気を分解・除去する装置です。

アンモニアや硫化水素などをはじめとする、動植物由来の悪臭ガスに有効です。微生物が付着した充填材、微生物の乾燥を防止する散水装置などから構成されます。一般に薬剤等を使用せず、電気代と散水用の水を循環するための費用のみで稼働できることからランニングコストが低いです。また、耐久性、耐食牲に優れているため長期間に渡って使用することができます。

生物脱臭装置の使用用途

生物脱臭装置は、主に動植物などの有機物由来の悪臭ガスの分解脱臭処理のために使用されます。アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチル等の各種臭気に対応しており、主には下記のような用途があります。

  • 養豚場、鶏舎などの畜産施設
  • 下水処理場、し尿処理場、汚泥処理施設
  • 堆肥化施設・食品リサイクル施設
  • 食品加工工場
  • 農業集落排水処理場、家畜糞尿処理、水産加工排水処理
  • 縦型コンポストで発生する高温・高濃度アンモニアの処理
  • 製紙工場で発生する悪臭ガスの処理
  • バイオガス発電で発生する悪臭ガスの処理

生物脱臭装置の原理

1. 動作機構

生物脱臭装置は、主に微生物を定着させる充填材と、微生物の活動活性化と乾燥防止のための散水装置から構成されています。分解脱臭の過程で生じる酸を処理するため、中和設備が併用される場合もあります。

脱臭の仕組みは下記の通りです。

  1. 下部の吸気口から悪臭ガスが吸気される
  2. 吸気されたガスがガス拡散部を経由して上部の脱臭槽へ拡散される
  3. 悪臭成分は、散水された水に溶解してから、あるいは気相中からそのまま、脱臭槽・脱臭塔の充填材に生息する微生物表面に吸着される
  4. 吸着された悪臭成分は、微生物のエネルギー源として増殖に利用される
  5. 硫黄化合物とアンモニアは酸化されて硫酸や硝酸が生成し、浄化されたガスは上部から放出される

微生物を吸着させる充填材には、多孔質ガラス材や、ガラス発泡材、木質系炭素材、ポリプロピレン・ビニロンなどの繊維状担体が使用されることが多いです。充填材は、充填物の表面積が大きく、気液接触効率に優れている担体が使用され、その中に微生物を高密度で生息させる仕組みです。繊維状担体ではループ状にするなどの工夫により、比表面積が大きくなっています。

散水装置で使用される水は、通常、循環水方式が取られており、循環水槽とポンプが併設されます。タイマーによって処理水が間欠的に散水され、環境に配慮されています。

2. 特性

生物脱臭装置の主な特性は下記の通りです。

  • 圧力損失が低い (悪臭ガスは担体に沿って鉛直方向に通過するため)
  • 優れた処理効果 (担体密度が常に均一に保持でき、ガスが偏流しないので処理効果が優れる)
  • メンテナンスフリー (消耗品や薬品がなく、担体は耐食性・耐久性に優れているため交換が不要)
  • 経済性に優れている (動力はブロワとポンプによる電気のみであり薬品コストがなくランニングコストが低い)
  • 土壌脱臭法などと比べて設置面積が小さい

生物脱臭装置の種類

生物脱臭装置には、上記で紹介した固相型の他にも、曝気式やスクラバー式などの液相型があります。装置によっては低エネルギー化に力を入れており、散水に循環水方式、送風に低圧ブロワを使用することで、CO2排出量や電気使用量が大幅に削減されます。規模には様々なサイズが有り、目的用途に合わせて選定することが重要です。

また、製品によっては、断熱材入りの二重壁構造が採用されています。二重壁は外気温の変化による装置内の温度変化を抑制し、寒冷地での温度低下や高温時における槽内の温度上昇を防止することが可能です。温度変化に敏感な微生物の活性が損なわれないようにすることができます。また、天井が低い現場に対応する横型タイプの活性炭脱臭を使った製品では、脱臭カートリッジを側面から装填することが可能です。設置場所や、用途などに合わせて適切なものを選択することが必要です。

本記事は生物脱臭装置を製造・販売するミライエ株式会社様に監修を頂きました。

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