硝酸態窒素除去装置とは
硝酸態窒素除去装置とは、飲用水や各種用水中に含有される硝酸態窒素を除去するための装置です。
硝酸態窒素とは、硝酸イオンや硝酸塩などのように酸化窒素の形で存在する窒素の総称です。硝酸態窒素は生活排水や化学肥料、家畜の糞尿、農薬などを原因として、土壌中や水中で生成します。硝酸態窒素を多量に含んだ飲料水を体内摂取すると、血液中でヘモグロビンと結合して酸欠状態、疲労、頭痛、めまいが引き起こされます。
硝酸態窒素は水中では硝酸イオンとして存在しますが、一般的な硝酸態窒素除去装置はイオン交換樹脂 (アニオン樹脂) を用いて硝酸イオンを吸着し、塩化物イオンとのイオン交換反応によって除去する仕組みです。尚、イオン交換反応によってイオン交換樹脂に交換能力がなくなると、食塩水などで再生が行われます。その他、業務用の大掛かりな装置では、電気透析法や生物処理法など別の仕組みが用いられる場合もあります。
硝酸態窒素除去装置の使用用途
1. 井戸水・地下水
一般的な水道水は水質基準により、硝酸態窒素の上限量が定められています。一方、井戸水や地下水には高濃度の硝酸態窒素が含まれていることがあり、飲用水や業務用水等として利用するために硝酸態窒素除去装置が利用されます。
主な用途事例は、住宅用 (戸建・集合住宅) 、ホテル、商業施設、病院、福祉施設、各種製造業 (電子機器、化学、機械、医薬品など) です。また、水道水供給のための上水道施設でも利用されています。
2. 工場排水
工場排水に含まれる硝酸態窒素は環境汚染や水生生物への影響が懸念されるため、排出基準が設定されています。硝酸態窒素除去装置は、工場排水の窒素化合物を除去する目的で利用されています。
特に、金属化成加工で排出される洗浄廃水は、硝酸態窒素が多く含まれる産業排水です。具体的な導入事例には、リン酸亜鉛皮膜処理品や、亜鉛めっき、製鋼施設などがあります。その他、電気器具製造業、水産食料品製造業、畜産食料品製造業などでも利用されています。
3. 農業排水・畜産排水
家畜の排泄物には窒素化合物が多く含まれており、養豚・酪農をはじめとする畜産業においては排水中の硝酸態窒素を基準値以下まで下げてから放出する必要があります。農業においても、窒素肥料により排水中の硝酸態窒素の濃度が高くなる場合があり、ハウス栽培 (いちごなど) の排水処理や、暗渠、農業集落排水などで特に対策が必要です。
これらの農業・畜産排水では、イオン交換式の硝酸態窒素除去装置のほか、生物処理法など複数の方法を組み合わせた硝酸態窒素除去が行われています。