歯科用3Dプリンター

歯科用3Dプリンターとは

歯科用3Dプリンターとは、歯列模型や矯正歯科、インプラント治療に利用する3次元造形物を製作する3Dプリンターです。

歯科治療においては、歯列模型やマウスピースをはじめとして、多くの3次元造形物が使用されます。3Dプリンターは積層造形であることから、造形用の金型を必要とせずにオーダーメイドで製作することが可能です。製作日数も従来法より短く治療期間を短縮することができます。また、歯科医院で内製化することも可能です。

歯科用3Dプリンターの使用用途

歯科用3Dプリンターは、歯列模型をはじめとするモデルの制作や、治療用のマウスピース、手術用のガイドなどを製作することに使用されます。具体的な製作物の例は下記の通りです。切削加工よりも自由な造形が可能であるという特徴があります。

  • 治療前もしくは治療後の口腔内の状態を患者と共有して確認し、矯正などを行う際の見本とする歯列模型
  • 補綴物 (歯の治療後のかぶせ物) を製作する際に必要な模型
  • 歯ぎしり防止用マウスピース
  • インプラントなど歯の手術を行う際の手術用ガイド (サージカルガイド)
  • ラミネートベニア
  • 歯形を取るためのトレイ

歯科用3Dプリンターを使用することで上記のような3次元造形物を製作することが容易となるため、コストや製作日数の削減を図ることができます。また、3Dプリンターで可能な作業を代替することで、歯科技工士がより高度な作業に注力することが可能です。保存データから必要に応じて再度同じものを製作できるため、歯列模型の本体を保管する必要がなくなり、省スペース化にも貢献します。

歯科用3Dプリンターの原理

歯科用3Dプリンターは、一般の3Dプリンターと同様に積層方式で造形し、いくつかの造形方式があります。

下記の中でも、歯科向けの3Dプリンターとしては、造形速度、造形精度のバランスの観点で、光造形 (DLP、SLA) 方式が主に使用されます。

1. DLP方式 (Digital Light Processing)

DLP方式とは、液体樹脂 (レジン) に対し、プロジェクターを用いて紫外線を面照射して硬化させる造形方式で、光造形方式の一種です。面で積層していくため、積層スピードが速く、高精細で大小幅広いサイズの造形が可能であるという特徴があります。ただし、造形面積を大きくしようとすると、解像度は下がります。

光源によってもコストや精度に違いが出ます。積層範囲と速度の両立を図って4Kプロジェクターを採用している製品もあります。

2. SLA方式 (Stereo Lithography Apparatus)

SLA方式も光造形方式の一種です。DLP方式が紫外線を面状に照射したのに対し、SLA方式は点状に照射します。材料の液体樹脂 (レジン) に点状の紫外線を当て、土台から少しずつ樹脂を固めて積層する仕組みです。一筆書きの要領で紫外線を照射するため、積層面積は広く取ることができます。また、パワーを出しやすく、装置の大型化もしやすいという特長があります。ただし、積層時間はDLP方式に比べて長くかかります。

3. インクジェット方式

インクジェット方式とは、粉末剤を噴射させながら光を当てて積層をしていく造形方式です。材料噴射法とも呼ばれます。点で積層していくため、積層時間はかかりますが、一方広い面積で積層ができ、高精細でリアルな造形物を作ることができます。

4. FDM方式 (材料押し出し方式 )

FDM方式とは、熱溶解積層方式とも呼ばれ、フィラメントを熱で溶かして造形していく造形方式です。熱で溶かした樹脂をノズルから押し出し、一筆書き状に1層ずつ積み重ねて造形します。プリンターの構造自体はシンプルなため、機種の価格が安く、材料費も安く済むことが多いです。

歯科用3Dプリンターの種類

歯科用3Dプリンターは様々なメーカーから多様な製品が販売されています。上記の通り、造形方法にはいくつかの種類があります。

また、造形可能サイズ・積層速度・積層精度のバランスは機種によって大きく異なっているため注意が必要です。積層速度と精度を優先した製品では、積層面積が非常に小さい場合があります。一方、大きな積層面積に対応している製品では、積層時間が思いの外長くかかる場合もあるため、導入前に確認することが必要です。

使用する用途・目的・規模に合わせて、バランスを取りながら機種選定を行うことが重要と言えます。