シンナー再生機

シンナー再生機とは

シンナー再生機とは、塗料やインキ、樹脂などが混入した廃溶剤 (シンナーなど) を回収・リサイクルするための装置です。

別名では、ソルベントリサイクラー、溶剤再生機、溶剤再生装置などと呼ばれることもあります。再生された溶剤は、洗浄用の溶剤として使用される他、再生液と新液を混ぜて使用される場合もあります。廃溶剤の再生により、資源の有効活用、産業廃棄物の処理費用の削減、新規溶媒の購入費用の削減などに貢献する装置です。

シンナー再生機の使用用途

シンナー再生機は、溶剤を使用する多くの産業において用いられています。主な使用産業並びに具体的な使用例は、下記の通りです。

1. 輸送用機器・機械

  • 自動車やその関連部品の製造・修理
  • 航空機製造・修理
  • 造船 (鉄船・FRP船)

2.  電子機器

  • 精密部品加工
  • 基盤加工
  • 半導体等脱脂洗浄工程排気処理
  • その他エレクトロニクス

3. 印刷

  • ペイント・インキ製造
  • グラビア印刷
  • オフセット印刷
  • フレキソ印刷

4. 金属

  • 金属加工ならびに脱脂
  • 金属家具製造

5. 化学・医薬品

  • 薬品・樹脂などの製造における乾燥・反応工程排気処理
  • 医薬品原体・中間体の製造における合成反応・遠心分離・貯蔵タンクからの排気処理
  • プラスチック製造・加工

シンナー再生機の原理

1. 概要

シンナー再生機は、廃溶剤を蒸留することにより再生溶剤を取り出す仕組みです。廃溶剤の再生機構の概要は下記の通りです。

  1. 蒸留タンク内に廃溶剤を投入します。

  2. 蒸留タンクをヒーターなどで加熱して廃溶剤を気化させます。ヒーターは通常、底部などに埋め込まれています。

  3. 溶剤蒸気が気化して、空冷コンデンサー内に入ります。

  4. 冷却ファンでコンデンサーが冷却され、溶剤蒸気が液化します。

  5. 再生溶剤が回収されると共に、樹脂や顔料などが固形の廃棄物として排出されます。

2. 再生処理可能な溶剤

  • 炭化水素系溶剤: キシレン、トルエン、n-ヘキサン、イソヘキサンなど
  • アルコール系溶剤: メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール (IPA) など
  • ケトン系溶剤: アセトン、メチルエチルケトン (MEK) 、メチルイソブチルケトンなど
  • エステル系溶剤: 酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ノルマルプロピルなど
  • ハロゲン系溶剤 (塩素系やフッ素系・臭素系) :塩素系溶剤:塩化メチレン、トリクロールエチレン、テトラクロールエチレンなど

3. 再生困難な溶剤

シンナー再生機は多くの溶剤を再生処理することが可能ですが、下記のような場合は再生処理することが困難です。

  • 沸点が280℃以上の場合
  • 廃液もしくは、再生液が酸性やアルカリ性の場合
  • 粘度が高い場合
  • ニトロセルロースが混入されている溶剤

ニトロセルロースは、インキ・塗料に含まれる場合がある物質ですが、135℃~165℃で発火する物質であるため、大変危険です。

シンナー再生機の種類

シンナー再生機には様々な種類があり、用途に合わせたものを使用することが重要です。

1. 連続式とバッチ式

シンナー再生機には、連続式とバッチ式とがあります。連続式とは、シンナー再生機のタンク内の廃溶剤が減ってくるとポンプで連続自動充填される方式です。廃溶剤の減少は蒸留タンク内の液面センサーで感知されます。

バッチ式は、タンクに一回充填した分の廃溶剤のみを処理します。

2. 圧力

シンナー再生機には常圧で蒸留する製品と減圧で蒸留する製品とがあります。常圧で蒸留する製品の場合、主に溶剤の沸点温度が約50℃~180℃の溶剤を処理することが可能です。

それよりも沸点の高い溶剤を処理する場合は減圧式の製品を用いる必要があります。減圧式の製品では概ね沸点250℃までの溶剤に対応しています。

3. その他

シンナー再生機には、様々な大きさが有り、10〜600Lまでの様々な廃溶剤容量に対応しています。また、防爆型と非防爆型があり、防爆型では防爆モーターが使用され、モーターと電気制御系統がカプセルで覆われた構造です。自動運転、自動停止機能を備えた装置もあります。

基板ケース

基板ケースとは

基板ケースとは、プリント基板などの電子基板を収納・保護するために使用する筐体・収納ケースです。

プラスチックや金属など、様々な素材があり、また、外観や形状についても様々な製品が販売されています。単純な収納や保管を目的として使用される場合もありますが、筐体として使用し、ケース内に格納したまま基板を使用する場合もあります。

汎用のケースを使用したり、必要に応じて特注ケースを用意することがありますが、様々なサイズのケースとパーツの組み合わせでカスタマイズ性を高めた基板ケースもあり、そうしたものを活用すればコストパフォーマンスが高くなる可能性があります。

基板ケースの使用用途

基板ケースは、機器製作や、電子工作の分野において、プリント基板などの基板を内部に収納することに用いられます。過酷な条件下で使用する場合は防水タイプという選択肢もあるなど、外部の混入物や、事故による損傷や破損から基板を保護し、更に配線の整備をより安全に行うことも可能です。また電子機器の筐体として使用することで、使用者のケガや感電を防ぐことができます。

基板ケースを使用する目的は、

  • 基板の単純な保管収納
  • 透明ケースなどを用いた観賞用・ディスプレイ用としての収納
  • 輸送を目的とした保護
  • 基板の使用時における保護 (機器筐体など)

などが挙げられます。

基板ケースの原理

基板ケースは、使用用途に合わせて様々な組立形状をしており、シンプルなものでは、コの字型の上蓋と本体を組み合わせた形状をしています。そのままで開閉できるもの、ビスで開閉するタイプのもの、或いは、ハメコミ構成により簡単に開閉できないようになっているものなどがあります。

筐体など基板を収納したまま使用する場合は、放熱性の優れたものを使用することが必要です。また、基板に合わせた端子穴が必要であるため、元々ケースに加工されている端子穴以外にも必要な場合は、追加工にて別途穴あけ加工が行われる場合があります。

基板ケースの種類

基板ケースは様々なものが販売されており、用途に合ったものを選択することが必要です。

1. 材質

基板ケースの材質については、プラスチック、アクリル樹脂、アルミ合金、スチールなどがあります。

樹脂素材の中には、難燃ABS樹脂、耐熱ABS樹脂、帯電防止アクリル材などの機能性樹脂が使用されている場合もあります。

特徴としては、ファクトリーオートメーション向け電子機器では、難燃性規格”UL94-V0″の準拠が要求されることが多く、耐薬品性、難燃性の観点からABS樹脂を避ける傾向がります。

PC/ABSアロイ樹脂はハロゲンフローで難燃性は問題ありませんが、耐薬品性が高くないため、耐薬品性、難燃性の高いPA66樹脂、PC樹脂が選ばれることがあります。

2. 外観

基板ケースの色や外観は様々なものがあります。基板の様子がよく分かる透明ケースや、金属の質感を生かしたメタリックなものがあります。

色も、白やグレー、黒などのシンプルなものから、配色されたカラフルなものまで様々な製品から選ぶことが可能です。機器筐体として使用することを目的としたものは、デザイン性が高い傾向にあります。

3. 放熱性

基板ケースに基板を入れたまま機器として使用する場合は放熱性に配慮することが必要です。製品によって対策は様々ですが、主な対策には下記のようなものがあります。

  • 通気孔を設ける
  • 冷却ファンを使用する
  • アルミなどの放熱性の優れた素材を使用する
  • 熱対策用の専用ヒートシンクを用いる

放熱対策がされていないケースについても冷却ファンの増設により使用が可能になる場合もあります。ただし、冷却ファンの増設は補助的な対策になることが多いため、はじめから基板の使用を想定した基板ケースを使用する方が安全です。

4. 大きさ・端子

基板ケースには様々な大きさの製品があります。使用する基板の大きさに合わせて適切なものを選択することが必要です。基板ケース本体が中に格納できるようでも、基板ケースと基板の大きさが合っていない場合には、SDカードなどの取り出しや、ケーブルの取り回しが難しいことがあります。

また、端子穴も製品によって異なるため注意が必要です。単純な保管目的を想定したものは、穴が開いていません。製品によっては、基板取付位置がカスタマイズ可能になっており、様々な製品にフレキシブルに対応できる場合もあります。

5. 取り付け・設置

基板ケースの多くは、置いて使用することを想定されています。製品の中には、専用アクセサリを用いるなどの方法で、ブラケットや壁面への取付けが可能となるものもあります。主な設置方法は次のとおりです。

  • 卓上平置き
  • 卓上自立
  • 壁面取付け
  • DINレール取付け

その他、二段にスタックする方法や、VESAマウントインターフェイスに対応しているものなどがあります。

4. その他

その他には、特殊な機能を付加したケースなどもあります。例えば、高周波基板ケースは、高周波基板のシールドの役割となるケースです。

デバイスプログラマ

監修:株式会社ノアリーディング

デバイスプログラマとは

デバイスプログラマとは、各種半導体メモリ (ROM) やプログラマブルデバイスに関してデータの読出し、書込み、消去などを⾏うことができる装置です。

別名では、ROMライターと呼ばれています。デバイスプログラマで書き込むことのできるデバイスとしては、フラッシュメモリ (NOR、NANDなど) 、シリアルフラッシュ、フラッシュマイコン、ロジックデバイスなどです。また、eMMCメモリ、UFSメモリに対応している装置もあります。

デバイスプログラマの使用用途

デバイスプログラマは、主に開発したデータをメモリ媒体 (ROM) に書き込むために⽤いられます。個⼈開発などにも使⽤されますが、産業⽤途でも多く使⽤されている装置です。⾃動化システムへ組み込んで⻑時間⼤量の書き込みを⾏うことに⽤いられる場合もあります。

また、書込み生産数量が大量でない場合にはデバイスプログラマを購⼊せずに、外部のROM書込みサービスを使い書込み作業を委託することもできます。

産業⽤途において量産書き込み使⽤される分野には下記のようなものが挙げられます。

  • アミューズメント業界デバイス
  • 民生機器、ホームオートメーション
  • 車載機器、インフォテインメント
  • 産業機器、工業的制御機器
  • 通信機器、事務機器、医療機器など

デバイスプログラマの原理

1. 概要

デバイスプログラマは、電気的にROMへデータの書き込み、消去などを⾏う装置です。PCを経由してROMへデータの書き込みなどを⾏う場合や、PCを経由せず単体 (スタンドアロン) でROMへ書込みを⾏う場合などがあります。

ROMへの書込みには、デバイス単体への書込みを行うデバイスプログラマ方式とデバイスが実装されたボードと専用線で接続しボード上のROMにリモートで書込みを行うオンボードプログラマ方式がありますがどちらも一般的には同じデバイスプログラマと呼びます。デバイス単体プログラマのことを別名でオフボードプログラマとかプリプログラマと呼ぶことがあります。

2. 主な機能

デバイスプログラマで可能な機能の例は下記の通りです。

  • マスターROMからバッファメモリへのデータコピー
  • データの消去 (イレーズ)
  • データ書込み
  • ROM書込み後読出しデータとバッフメモリデータとの⽐較 (ベリファイ)

デバイスプログラマの種類

デバイスプログラマは、様々な種類の製品が販売されています。製品ごとの違いを理解したうえで適切なものを選択することが必要です。

1. メモリ/マイコン品種への対応

デバイスプログラマは、1台で複数種類 (フラッシュメモリ、フラッシュマイコンなど) のメモリの書き込みが可能ですが、プログラマ毎に書込み可能な対象メーカ、品種、シリーズなどが異なります。デバイスプログラマを選択する際には、使用するROMの品種すべてに対応できることを確認します。通常一台のプログラマに対して、対象となる全てのROM品種に対応する専用プログラムとROMを載せるためのソケットを選択します。

2. ソケット (変換アダプタ)

ROMを接続するソケット部の数は、プログラマ製品によって異なります。複数個のソケットを持つ製品は、主に⽣産現場で複数個のROMに書き込みを⾏う場合に⽤いられる場合が多いです。卓上装置では、8個、16個、32個などがあります。

⼤型の全⾃動プログラミング装置では、デバイスプログラマを複数台搭載することで書込み生産能力を向上させ、最大で96ソケット~112ソケットまで搭載するものまで提供されています。

3. 書き込みメモリサイズ

デバイスプログラマでは、装置によって用途が異なるため書込み速度の違い (数MB/s~100MB/s以上) や同時に書込みできる最大メモリサイズの違い (バッファメモリ:1Gビット (128Mバイト) ~512Gバイト) があります。512Gバイトではインフォテインメント⽤途などの⼤量書き込みに適しており、1Gビット以下は小型民生機器の生産に適切です。

4. デバイス搬送用メディア (トレイ、テープ)

大量書込み生産をする際に、対象ROMを搬送する際に使用する搬送メディア (トレイ、テープまたはリール、チューブ) への対応が必要となります。一般的にはトレイでの搬送が主ですが、最近の小型デバイス (小型マイコン、フラッシュ) などではテープでの搬送の需要が高まっています。大型全自動書込み装置ではこのテープメディアへの対応が可能なものの要求が増しています。

本記事はデバイスプログラマを製造・販売する株式会社ノアリーディング様に監修を頂きました。

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AGV制御

AGV制御とは

AGV制御とは、工場などで稼働されているAGV、すなわち無人搬送車の安全かつ円滑な運行を管理するために用いられる、システムや装置などの製品です。

AGV(英: Automated Guided Vehicle ※)は、予め設定されたガイド (磁気テープ、ビーコン、バーコードなどにより、固定された経路) に従い、自動的に走行を行う車両です。ソフトウェアによって制御され、施設内での資材の運搬などに用いられます。経路上の障害物を検出して自動的に停止することは可能ですが、障害物を避けて自律走行することなどはできません。稼働台数が増えるとスムーズな運用を行うための課題が発生します。このような場合に、全体の運用を監視・管理・制御するため、AGV制御が利用されます。

AGV制御の利用用途

AGVは、工場や大型倉庫、病院における医療器材や、食事の配膳の搬送に用いられます。台車・フォークリフトやベルトコンベアに代わる資材搬送手段として利用されている技術です。予め設定した経路に沿って自動で走行するため、省力化や効率化の上でメリットがあります。

しかし、自動車工場や物流における大規模倉庫など、大規模な導入先では、稼働面積が広くなるとともに、稼働台数も増え、下記のような課題が発生します。

  • AGVの交差点、合流点が必要になり、運行管理が難しい
  • 稼働面積が広いため、遠隔地の監視が難しい
  • 稼働台数が多いため、全てのAGVの稼働状況を把握することが難しい
  • 軌道上の偏りや渋滞でスループットが低下する
  • シャッター、エレベーターなどの設備と連動が難しい
  • AGVが緊急停止した場所に所在地がすぐに分からない
  • 稼働状況の記録が難しい

これらの課題を解決し、円滑で安全な運用を行うための一連のシステムや装置などがAGV制御です。

AGV制御の原理

1. 制御システム型

稼働域内全体を制御するAGV制御システムは、無線環境と、無線通信を中心としたシステムを整備し、その中で無線子機を搭載したAGVを制御します。主な機能は下記の通りです。

  • 現在位置や走行速度・時間、バッテリーの蓄電量、センサーの異常検知などのリアルタイム監視
  • 停止・発進・稼働終了などの遠隔操作
  • 最短経路の自動生成と効率的な配車

また、蓄積された運行データを整理して、見える化表示や、解析ツールなどの別のアプリケーションと連携させることにより、業務改善に役立つというメリットもあります。

2. 個別装置型

全体を統括するシステムとは異なり、個々のAGVに取り付けることで制御を行うタイプのAGV制御もあります。

例えば、自動牽引装置では、台車など物流アイテムとAGVを接続することで、ワンタッチでの接続や自動切り離しなどが可能になります。また、レシーバーをAGVへ搭載し、リモコンで操作することや交差点制御を簡単に行うことができる装置もあります。

AGV制御の選び方

AGV制御には、上記の通り全体を制御するシステムや、個別装置をAGVへ搭載するなどの方法があります。システム型の方が全体の複雑な統括が可能ですが、地上設備や無線導入AGV自体の改造など、システム構築に準備が必要です。また、コストも高くなる傾向にあります。一方、個別装置を搭載する方法は、より簡素な機能ではありますが、コストも安価であり、導入も容易です。簡単な交差点制御や分岐合流コースの構築では個別装置型も有効に利用することができます。

システム構築型も、2.4MHz帯の無線LANではなく、920MHz帯のマルチホップ通信を利用することでコストダウンの工夫を行っている製品もあります。920MHz帯は2.4MHz帯よりも回り込み特性が良く、電波干渉が低く、消費電力も低いとされます。また、マルチホップ通信とは、バケツリレー式にデータを転送する無線方式です。1台の無線ユニットでは届かないような広い範囲でも、中継器や他の無線ユニットを経由させて通信を行うことができます。

これら各製品の特性を踏まえ、目的に合った適切な製品を選択することが重要です。

※Automatic Guided Vehicleと表記することもあります。国際標準やISOではAGVをAutomated Guided Vehicleとしていることからこの記事ではAutomated Guided Vehicleとしました。

表面改質装置

監修:フロイント・ターボ株式会社

表面改質装置とは

表面改質装置とは、粒子の表面に物理的処理や化学的処理を施すことによって新たな特性や性質を付与することに用いられる装置です。

表面改質とは、固体の表面に物理的・化学的な処理を施して表面の性質を変えることを指します。表面改質装置は特に粒子表面に表面改質を施す装置であり、新規材料・素材の創製や、既存の材料の性能の向上をもたらす技術です。表面改質処理には下記に分類される種類の処理があります。

  • コーティング処理 (成膜化)
  • カップリング処理 (極性の異なる無機物と有機物を繋ぐ働きを持つ官能基を粒子表面に結合させる) 
  • 複合化処理 (母核となる粒子(母粒子)に別の粒子 (子粒子) を固定化する)
  • 球形化処理

粉粒体の物理的な処理による改質としては高分子の物理吸着,高分子の成膜による被覆(コーティング),微粒子の吸着・積層あるいは融合(粒子複合化)による被覆などをあげることができます。化学的処理としては,粒子表面での種々の化学反応による改質が可能です。この中には,懸濁法によるマイクロカプセル化も含まれます。一般的には,表面改質は表面活性を変化させると定義されますが,コーティング,マイクロカプセル化の例にみられるように,実際的には,種々の機能性をもたらす手法ととらえることができます。

これらの処理によって、親油性、親水性、伝導性、流動性などのさまざまな機能を粒子に付加したり、不定形粒子を均一に球形化したりすることが可能です。どの処理に対しても、ターゲット微粉粒子に対して均一な処理が施されます。

表面改質装置の使用用途

表面改質装置は、様々な産業分野における粒子の表面改質に用いられています。粒子に対して、濡れ性の改善、徐放性の制御、発色性の向上・改善、球形化に代表される形状制御、溶解性の促進、固溶体の調製、アモルファス化、などの効果が期待される技術です。

1. 医薬品

医薬品分野では、製剤において、分包材の細粒や顆粒、また、打錠用顆粒の製造に用いられています。また、健康食品についても、分包材用、乾式打錠用粉末の製造に利用することが可能です。

医薬品材料に表面改質装置を利用することにより、アモルファス化、溶解性の向上などの効果が期待されます。

2. 食品

食品産業では、粉体一般に表面改質装置が使用されています。表面改質装置を使用することのできる具体的な製品の例としては、下記のようなものが挙げられます。

  • 粉末スープ類
  • 小麦粉ミックス
  • ふりかけ食品
  • 調味料類・スパイス
  • 酵母豆乳
  • コラーゲン・澱粉・にがり
  • 健康食品や食品添加物

3. 化学

化学分野では、

  • 電池材料や電子材料
  • 化粧品材料
  • 化学肥料
  • 触媒・酵素
  • 粉体塗料・トナー・顔料
  • 樹脂 (ベークライト・メラミン・塩化ビニールなど)

などの表面処理に表面改質装置が用いられています。具体的に取り扱われる物質としては、
リン酸鉄リチウム、鉄粉、水酸化アルミニウム、水酸化ニッケル、カーボンブラック、酸化チタン、マイカ、タルクなどが挙げられます。

シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、酸化亜鉛、などを用いて、無機物のシランカップリングにも使用されている装置です。

表面改質装置の原理

1. 表面改質処理の概要

表面改質は、物理的方法で処理を行う方法と化学的方法で処理を行う方法とに大きく分類することができます。物理的処理を行う表面改質は、物理的な分子の吸着や成膜による被覆などを利用した方法です。化学的処理を行う表面改質では、粒子表面での種々の化学反応による改質を行います。

2. 表面改質装置の概要

表面改質装置は、溶媒などを用いる湿式と、溶媒を用いない乾式とがあります。例えば、乾式で物理的処理を行う装置では、高速の気流中に原料を分散させるなどの方法によって、衝撃力を主体とした力を用いて微粒子の表面を微粒子で表面改質・複合化を行います。また、この衝撃力により不定形粒子を均一に球形化処理を行う球形化処理も可能です。

加熱を伴う表面改質を行うことが可能な装置もあり、動作機構の一例は下記の通りです。

  1. 粉粒体を熱風中に噴霧し、分散させる 
  2. 温度350〜500 ℃の熱風により粒子の溶融を行う
  3. 表面張力により球形化・成膜化・固定化が成される
  4. 周囲から冷却エアが導入され、急速冷却される

この方法では、瞬間的な加熱・冷却が行われるため、材料の熱劣化が少なく、また、完全な分散状態で処理されるために粒子同士の造粒がないという利点があります。

表面改質装置の種類

表面改質装置には、様々な製品があり、用途に合ったものを選択することが必要です。前述の通り、乾式や湿式、加熱の有無などの種類があります。

装置によっては窒素ガスやアルゴンガスを用いた不活性ガス雰囲気中での処理が可能です。また、乾式の装置であっても、少量の溶媒を噴霧して使用することが可能なものもあります。動作機構も装置によって異なり、それぞれ逆方向へ回転するチョッパーとアジテータースクレーパーを用いて粒子を混合分散させるものや、熱風中に一方向的に粒子を分散噴霧するものなどの種類があります。多くの製品は、メンテナンス性の観点から、分解清掃が容易な構造です。

本記事は表面改質装置を製造・販売するフロイント・ターボ株式会社様に監修を頂きました。

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クリーン袋

監修:大日本印刷株式会社

クリーン袋とは

クリーン袋とは、高い清潔度を確保するためにクリーンルームなどで製造されるポリ袋です。

クリーンポリ袋やクリーンバッグとも呼ばれ、異物の付着が少ないため医療、食品、電子業界など清潔性が要求される分野における部品や製品の包装やクリーンルームでのクリーン梱包に欠かせない製品です。

原材料への配慮により、外部からの汚染予防はもちろん、アウトガス (プラスチックや接着剤等、製品を構成する有機材料や梱包材から放出されるガス成分) や包装材の添加物による汚染を防ぐことができます。

クリーン袋の使用用途

クリーン袋は、高い清潔性が求められる医療分野、食品分野、電子・精密機器分野などにおいて、主に用いられています。

1. 医療

医療分野においては、クリーン袋は主に医薬品 (やその原料)、及び医療器具の包装に用いられています。異物・不純物の混入や付着防止を目的として用いられます。具体的な使用例は下記の通りです。

  • 原料への不純物混入対策
  • 医薬品製造工程内の輸送用包装
  • 医薬品原薬・中間体の出荷包装
  • 製剤 (カプセル・錠剤・粉体) の保管や出荷用包装
  • 医療器具の出荷用包装 (シリンジ・チューブなど)

2. 食品

食品分野では、食品一般の包装・パッケージや、食品添加物の出荷包装などに用いられています。

3. 電子・精密機器

精密機器や半導体装置は、梱包材からのガス放出(アウトガス)や添加物による汚染により歩留まり率が低下する可能性があります。電子・精密機器分野では、これらの汚染を防ぎ、部材を清浄に保つ必要があります。具体的な使用例は以下の通りです。

  • 液晶・精密機器部材の梱包
  • 半導体装置及び半導体装置部品包装
  • 基板包装 (シリコン・ガラスウェハーなど)
  • HDD部品包装
  • 高機能性樹脂包装
  • 輸送用機器(チップトレイ・キャリアケース・ワイパーなど)や部品の精密洗浄後包装

クリーン袋の原理

1. 製造工程

クリーン袋は、基本的に清浄度が管理されたクリーンルーム内で製造されています。クリーンルームの清浄度は厳密に管理され、ISO規格で定められています。クリーン袋は通常ISO class6もしくはclass7程度の清浄度のクリーンルームで製造されており、これは食品工場・医薬品工場・半導体工場などと同じ程度の清浄度です。

また、落下菌検査や浮遊菌検査、製品に付着している微生物検査なども定期的に行われています。作業員は防塵性能に優れた専用の作業服を身につけることになっています (クリーンルーム用ウェア) 。

2. 成分 (添加剤)

通常の低密度ポリエチレン製ポリ袋には、製造プロセスを改善するための添加剤が含まれており、これらの添加剤(酸化防止剤のBHT、脂肪酸系滑剤、シリカ系アンチブロッキング剤など)は、袋の内外面で凝集し粉化することがあります。この現象は「ブリードアウト」と呼ばれ、袋の中の製品に添加剤が付着したり混入するリスクがあります。

クリーン袋はこうした添加剤を使用せずに製造され、ブリードアウトによる汚染を防ぐことができます。また、一般的な梱包材から放出されるアウトガスに対しても配慮して作られているため、アウトガスによる汚染予防にも効果的です。

クリーン袋の種類

クリーン袋の外形には、厚みや幅、長さなど外形に様々な種類があります。また、フィルム構造も、単層フィルムから5層フィルムまで様々なものがあり、用途に合わせて選択することができます。色は、透明、半透明白、透明ブルーなどです。

特に、クリーン環境下 (クリーンルーム内) へ電子部品・半導体関連部品などを搬入する際は、 2重包装する必要があります。2重包装は製品投入・脱気・シールの工程を2度繰り返して中の製品を密閉することですが、製品によっては1重目2重目の袋の役割を一体化することで包装および開封の手間を簡略化したものもあります。

また、帯電防止や真空包装対応などの機能を持たせたものもあり、帯電防止袋は特に粉末や精密機器の包装に適しています。一般的な清浄度の規格には米国食品医薬局のDrug Master Fileの規定や、日本薬局方などの規定があります。用途によっては、これらの規定を満たす製品を選択することが必要です。

クリーン袋のその他情報

ここではクリーン袋を使用するクリーン梱包について概要を記載します。

1. クリーン梱包について

クリーン梱包とは、製品を異物や汚染から守り、高度な清浄度を要求される環境下で使用する製品を安全に輸送するために、特別な手順と材料を用いて梱包する手法です。サービスを提供する専門の業者もいます。

2. なぜクリーン梱包が必要なのか?

製品の品質維持: 半導体部品や医療機器など、微細な異物混入が製品の性能や機能に直接影響を与える製品において、クリーン梱包は製品の品質を維持するために不可欠です。

環境汚染防止: クリーンルーム内の環境を維持するため、外部からの異物混入を防ぐ必要があります。
静電気防止: 電子部品など、静電気によるダメージを受けやすい製品を保護します。

3. クリーン梱包の主な特徴

清浄度の高い環境下での作業: クリーンルームやクリーンベンチ内で行われます。

特殊な梱包材の使用: 静電気防止袋、無塵紙、クリーンルーム対応のテープなど、清浄度の高い梱包材が使用されます。
厳格な手順: 梱包作業者は、クリーンルームへの入室手順や梱包手順を厳守します。
複数回の梱包: 外気との接触を防ぐため、二重梱包や三重梱包を行う場合もあります。

参考文献
https://www.po-aso.co.jp/publics/index/79/
https://www.aicello.co.jp/product/hyper-clean/

本記事はクリーン袋を製造・販売する大日本印刷株式会社様に監修を頂きました。

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CAD VR

CAD VRとは

CAD VRとは、建築や製造業などで設計に用いられている3次元CADとVR技術を融合し、VR空間内に3次元CADソフトで設計したデータを立体視できるようにしたものです。

3次元CADは、工業製品や建築物の三次元設計を行うためのツールです。産業界一般で広く設計に用いられており、2次元CADよりも高度なシミュレーションや解析を行うことができるという利点があります。一方、VR技術は、仮想空間内においてリアルな体験を提供することが可能な技術です。3D CADとVRの組み合わせによって、設計データを直接VR空間に取り込み、製品や建築物の形状やサイズ感を疑似的に体験することが可能となっています

CAD VRの使用用途

製品設計の現場では、完成品が想像と異なることがしばしばあります。「柱が予想より細い」といった問題は、2Dのディスプレイでの設計作業が一因です。3D CADで設計しても、2D画面での確認には限界があり、経験豊富な専門家でも実際のイメージを完全には掴むことができないのです。

ここで、VRが革新をもたらします。VRを利用すると、設計したオブジェクトを実際の大きさで立体的に見ることが可能になり、直感的に理解することができます。CADモデルを実物と同じスケールで体験できるため、専門知識がない人でも簡単に形状やサイズを把握でき、コミュニケーションが格段に向上します。設計の詳細が苦手な方も、VR を使えばまるで現場にいるかのような感覚で設計内容を確認できます。

特に設計や工学、建築の知識がない方にとって、VRは画期的なツールです。2D図面や3Dモデルからは理解しにくい立体的な形状やスケールを、実際に歩いて探索するかのような方法で感じ取ることができます。これにより、プロジェクトへの直感的な理解が深まり、より多くの人に受け入れられる設計が可能になります。

VRは、設計レビューから顧客プレゼンテーション、教育訓練に至るまで、多岐にわたる分野で活躍する有効なツールです。製品開発を次のレベルへと引き上げ、直感的で正確な設計を実現しましょう。

CADの種類と分類

VRは、利用方法、機能、データ処理方法等で分類することが可能です。これらの分類は、製造業向けのVRシステムの一部を示すものであり、実際の導入や利用に際しては、企業の要件や目的に合わせて適切なタイプを選択する必要があります。

① データ保存・処理の方法による分類

・ローカル版:
VRコンテンツやソフトウェアはユーザーのデバイス(例:PCやVRヘッドセット)に直接インストールされ、そのデバイス上で実行されます。ユーザーのデバイスが直接コンテンツを処理するため、ネットワークの遅延がなく、高いリアルタイム性が期待できます。また、機密性が高い製品等は、ローカル版を利用する場合が多くあります。

・クラウド版:
VRコンテンツやソフトウェアはクラウド上のサーバーで実行され、その結果がユーザーのデバイスにストリーミングとして送信されます。主にストリーミングの受信と表示に対応する能力が求められます。

インターネットの帯域や遅延、クラウドサービスの品質など、ネットワーク関連の要因がVR体験の品質に影響を与える可能性があります。5Gの普及やエッジコンピューティングの進展により、クラウドベースのVR体験の品質が向上してきており、多くの企業やサービスプロバイダがこの分野に参入しています

② 利用目的による分類

・デザイン検証・プロトタイピング:
製品のデザインや設計の確認、改善のためのVR利用。トレーニング・教育: 製造工程や安全教育などのトレーニング用途でのVR利用。

・リモートコラボレーション:
複数地点からの同時接続や共同作業のためのVR利用。

・製品プレゼンテーション:
顧客向けの製品紹介や展示会でのデモ用途でのVR利用。

③対応デバイスによる分類

・スタンドアロンVR:
一体型で独立して動作するVRデバイス用のシステム。どこでも簡単に持ち運びやセットアップが可能であり、外部のPCやセンサーが不要なため、導入やセットアップが手軽。デメリットとして、一体型のハードウェアのため、高性能なPCと比べて処理能力が制限される。工場等の現場で利用したいときには、便利です。

・PC接続型VR:
高性能なPCと接続して使用するVRデバイス用のシステム。
PCの性能を使うことが出来る。高性能なPCのリソースを活用できるため、複雑なシミュレーションやリアルタイムの高品質レンダリングが可能です。デメリットとして、 PCとの接続が必要なため、移動やセットアップが煩雑になります。また、 PCとの接続ケーブルが存在するため、動きの自由度が制限されることがあります。

④インタラクティビティによる分類

・静的VR:
シンプルな3Dビューワーのような、基本的な表示・閲覧のみを目的としたVR。3次元CADの中に入り込むような体験することが可能です。

・インタラクティブVR:
製品の操作シミュレーションや仮想空間内でのタスク実行が可能なVR。機構シミュレーションを体験することが可能です。

CAD VRの選び方

3Dデータを組織内で効果的に利用するためには、VRシステムの選定ミスは許されません。そのため、小規模から始めることをおすすめします。全員が手軽に使えることがキーとなります。誰もが、いつでも、簡単に使えることが重要です。
製造業向けVRシステムを選ぶ際には、以下の要点を考慮すると良いです。

① 目的の明確化

すべての目的に対応できるシステムは、ありません。製品のプロトタイプ評価、生産ラインのシミュレーション、研修用の教材など。目的に応じて最適なVRシステムを選定することが重要です。誰が何のために、どんな状況で使うのか確認してください。

② 予算

利用するハードウェアやソフトウェアのコストは、システムの選択に大きな影響を与えます。ハードウェアも毎年新製品が発表さるので、陳腐化のリスクも考える必要があります。最初に予算を設定し、その範囲内で最も適したシステムを選ぶことをオススメします。次年度以降の保守費も考慮にいれることを忘れないようにしてください。

③ システムの性能

製造業におけるシミュレーションや設計の詳細度、アッセンブリ数に応じて、必要なVRシステムの性能が変わります。高いリアルタイムレンダリング能力や複雑なシミュレーションが求められる場合は、高性能なPC接続型VRが適しています。

④ 使いやすさ

VRシステムは、技術的な背景を持たないユーザーにも使いやすいものを選ぶと良いです。直感的な操作性やサポート体制もシステム選定のポイントになります。特にVRの場合、直感的に目的地へ行けるか?イメージ通りの動きが出来るか? 現実と同じような感覚があるか?調査する必要があります。

⑤ 拡張性

将来的なニーズや技術の進化に対応できるシステムを選択することは、長期的な投資として重要です。ソフトウェアやハードウェアのアップデートが容易なもの、または追加機能が後から導入可能なものを選ぶと良いと思います。

⑥ 互換性

既存のCADデータや他のソフトウェアとの互換性を確認することで、効率的にVR環境を構築することができます。Parasolid、STEPなど、中間フォーマットの対応も確認する必要があります。

⑦ セキュリティ

製造業のデータは機密性が高い場合が多いため、VRシステムのセキュリティ機能やプライバシー対策が万全であるかを確認することは重要です。機密性が高い場合は、ローカル版をおすすめします。

⑧ サポート体制

ソフトウェアやハードウェアのトラブル対応、アップデートのサポート、研修など、アフターサポートの体制も考慮する必要があります。初心者の場合は、国内開発、日本語対応のシステムをオススメします。

CAD VRのその他情報

製造業とゲームエンジン

製造業向けのVRシステムとゲームエンジンには大きな関連性があります。
ゲームエンジンは、本来はゲーム開発のためのツールですが、その高度な3Dレンダリング機能や物理エンジン、スクリプト機能などが、VRシステムの開発にも利用されています。

製造業でのVRアプリケーション開発には、UnityやUnreal Engineなどのゲームエンジンが一般的に利用されます。
ゲームエンジンを利用することで、VRアプリケーションの開発を迅速に行うことができます。リアルな表現や仮想空間を簡単に作成することが出来ます。

リアルな表現: 現実的な物理演算や高品質な3Dグラフィックスにより、リアルな仮想空間を作成することができます。また、豊富なスクリプトやプラグインを用いて、特定の用途に合わせたカスタマイズが可能です。近年大手製造業における活用が見られます。

VR/AR/MR/XR

近年、製造業においてVR(Virtual Reality)だけでなく、AR(Augmented Reality)、MR(Mixed Reality)、そしてこれらを総称するXR(Extended Reality)の技術が積極的に活用されています。これらの技術は、製造プロセスの効率化、品質向上、コスト削減、トレーニングの強化など、多方面で革新をもたらしています。

これらの技術は、製造業において革新的な変化をもたらし、生産性の向上、コスト削減、品質の向上、従業員の安全性と満足度の向上に寄与しています。今後もXR技術の進化は、製造業におけるさらなる効率化とイノベーションを推進する重要な要素となるでしょう。これらの技術を活用することで、製造業はより柔軟でスマートな生産体制を構築し、市場の変化に迅速に対応することが可能になります。また、製品の品質向上、生産コストの削減、作業環境の安全性向上など、製造業全体の競争力を高めることが期待されています。

参考文献
https://prono82.com/pronodr-2/
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/1704/05/news029.html

データ分析ツール

監修:ニュートラル株式会社

データ分析ツールとは

データ分析ツールとは、大量のデータの収集、整理、分析を行い、結果を可視化するソフトウェアツールです。

データ分析ツールは、ビジネスや学術研究など、幅広い分野で活用されています。データを視覚的にわかりやすくすることができるため、データの傾向を把握することが容易となるツールです。データの分析結果を元に、方針の立案や課題の抽出、改善方法の発見・決定など、業務上の決定・判断を行うことに用いられます。

また、データ分析ツールの一種に分類されるものとして、BIツール (Business Intelligence tools) があります。BIツールは、業務プロセスに合わせたデータの収集、分析、可視化に特化しており、ビジネスにおける意思決定・判断を目的とするツールです。

データ分析ツールの使用用途

データ分析ツールは、大量かつ多様な形式のデータに対して分析を行うことができるツールであり、様々な業種の業務において用いられています。事業一般では、大量のデータを分析して必要な情報を得ることで、経営に役立てることが可能です。具体的な利用例としては下記のようなものが挙げられます。

  • 経営分析・財務分析
  • 営業分析・売上分析
  • 人事データ分析
  • 予算管理システム
  • データ集計
  • 帳票自動作成

また、事業活動以外では、地方創生において産業振興や観光振興などの方針決定などにも活用されています。その他、具体的な各業種における使用用途は下記の通りです。

1. 製造業

製造業では、工場における様々なデータを分析し、業務の効率化や生産性向上に役立てることが可能です。具体例は下記のようなものがあります。

  • 工場内のセンサーやカメラなどからリアルタイムでデータを収集し、生産ラインの稼働状況の把握と生産管理を行う
  • 設備の点検データから故障やトラブルを予測し、設備保全に活かす
  • 製品の検品データの分析から、ミスが多く発生している工程を割り出す

2. 小売業

小売業においては、売上記録をはじめとする様々な属性のデータが蓄積します。これら大量のデータの分析を行うことで、効果的なマーケティング展開を行う事が可能となります。小売業で活用されるデータの例は下記の通りです。

  • 商品の売上データ
  • 顧客の年齢や性別などの属性 (会員情報などから得ることが可能)
  • 店舗の立地や商圏
  • 天候、気温
  • ECサイト内のデータ: 顧客の動き、バナーのクリック率、カゴ落ち、決済手段
  • SNS上での自社に関するつぶやきや投稿

3. 農業

農業においても、IoT によるデータ収集が盛んになりつつあり、データ分析ツールの有効活用が可能です。 具体的な用途例としては、センサーなどから気候や土壌データを収集して適切な栽培計画を立てたり、農業用機器の稼働状況から適切な点検タイミングを決定したりすることなどがあります。

4. その他

上記以外でもデータ分析ツールは、多くの分野で有効に活用されているツールです。具体例として下記のような用途があります。

  • 医療、福祉分野: 患者に関する医療情報 (CTやレントゲンなどの画像データ、投薬情報などの診療データ)
  • 教育分野: 児童・生徒の学習履歴や試験結果などのデータ
  • 飲食サービス業: 顧客の属性や来店日時、立地、天候、メニューごとの売上、食材のロスなど
  • 金融業: 顧客の属性データや取引履歴など
  • データ分析ツールの原理

データ分析ツールの原理

1. 分析の概略

データ分析ツールでは、必要なデータを収集して整理し、目的に沿った情報を抽出します。データ分析ツールの分析の流れは下記の通りです。

  1. データの処理:
    膨大なデータを扱いやすい形に処理・変換する。
  2. データの抽出:
    扱いやすい形に処理されたデータから必要な部分だけを抽出する。
  3. データのレポート:
    複雑なデータをグラフやチャート、表などを用いて可視化し、素早く正確なレポートを作成する。

データの処理によって、膨大なデータが取り扱いやすくなります。また、抽出によってデータの整合性や品質が向上し、正確でわかりやすいレポートによってデータの理解が深まります。これらの効果により、精度の高い決定・判断や、考察・報告を行うことが可能です。

2. 分析手法

データ分析ツールでは様々な分析手法をシチュエーションごとに使い分けています。使用されている主な分析手法は下記の通りです。

  • クロス集計:
    収集したデータを性年代別などの属性や、アンケートなどの設問などに分けて傾向を把握する手法です。属性ごとの傾向を把握しやすい手法です。
  • クラスター分析:
    収集したデータの中から類似性の高いものをグループに分けて分析する手法です。特に、顧客の嗜好を把握する際などに有効です。
  • バスケット分析:
    顧客が買い物かごへ一緒に入れる商品を分析し、商品やサービスの相関関係を分析する手法です。アソシエーション分析の一種でもあります。
  • 回帰分析:
    結果となる数値と要因になる数値の関係を調べて、その関係性を明らかにする手法です。
  • 決定木分析:
    予測の繰り返しにより複数の結果を導き出す手法です。目的変数に対して何度も説明変数のクロス集計を繰り返し、関連性を見出します。
  • 主成分分析:
    複数のデータを少数のデータ (主成分) に要約する手法です。多数のデータを主成分に要約することで、データを理解しやすく処理します。

これら以外にも、商品や売上、顧客などをランク分けするABC分析や、明瞭なデータと不明瞭なデータから曖昧なデータを予測するグレイモデル、複数の変数データに共通している因子、原因を探る因子分析などがあり、様々な手法が複合的に用いられます。

データ分析ツールの選び方

データ分析ツールを選ぶ際の主な着眼点は、

  • 導入目的
  • 機能の内容
  • 操作性
  • コスト・サポート

の4つに分類されます。

1. 導入目的

データ分析ツールを有効に活用するためには、導入する目的が明確である必要があります。データ分析ツールはあくまでもビジネス上の目的を達成するための手段です。

ツール選択の段階で、データ分析をする必要があるのは何故か、データを分析するビジネス上の目的は何であるかをはっきりさせておくことで、ツール導入自体が目的化するのを防ぐことができます。また、これによりツールに求める機能がはっきりとするため、ツール選定のプロセスもスムーズになり、導入後の目的達成もスムーズになると考えられます。

2. 機能の内容

ツールの機能を吟味する際は、第一に自社の業種・業務内容等に合っているかどうか、自社の目的を達成するのに必要な機能があるかどうかを検討することが必要です。

また、自社内の既存データやツールとの連携が可能であるかどうかも事前に確認する必要があります。企業内におけるデータ形式には、独自のデータベースやPDF、エクセルファイル (.xls, .xlsx) など色々な形式があります。データ分析ツールを用いて既存のデータを収集し、分析を行うためには既存システムとの互換性を満たすことが必要です。

3. 操作性

データ分析ツール導入に際しては、現場担当者にとっての使いやすさを検討することも必要です。直感的に操作できるデータ分析ツールもありますが、一方でプログラミングのスキルを前提としていたり専門知識を要するツールも存在しています。担当者 (利用者) のスキルに合わせて、担当者が簡単に操作できる製品を選ぶことが重要です。

トライアルが可能なツールもあるため、トライアルを試してみるのもおすすめです。

4. コスト・サポート

データ分析ツールには、無償ツールと有償ツールとがあります、有償ソフトでは、製品によってコストのかかり方が異なります。

例えば、ある製品では初期費用が無料である一方でランニングコストが高く、また別の製品では逆に初期費用は高いもののランニングコストが安くなっています。投資対効果について十分に吟味し、継続的にコストをかけられる予算内での製品を選ぶ事が必要です。

また、開発元のサポート体制については製品によって大きく異なるため、充実度を確認することが大切です。海外の企業で開発されたツールの場合、日本語でのサポートが提供されない場合があります。また、特に無償ツールでは、不明点や不具合が発生した際のサポート窓口自体が存在しない場合があります。

参考文献
https://business.ntt-east.co.jp/bizdrive/column/bizdrive_dataanalysis_tools.html
https://yellowfin.co.jp/blog/9-jpblog2-excel-vs-bi-tool#i-4
https://www.ntt.com/business/sdpf/knowledge/archive_63.html https://www.tryeting.jp/column/2391/

本記事はデータ分析ツールを製造・販売するニュートラル株式会社様に監修を頂きました。

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故障予測ツール

監修:ニュートラル株式会社

故障予測ツールとは

故障予測ツールとは、過去の蓄積データなどを元に装置・設備・機器などの異常や故障の前兆を検知するツールです。

データサイエンス・AIを活用し、データ分析を元に予兆検知モデルを実装し、故障を予知します。故障予測ツールを用いることで、製造業では製造ラインの停止や不良品の発生を予防し、稼働率向上と歩留まりの向上を図ることができます。サーバー機器やハードディスクなどの故障予測にも用いられることがある技術です。

故障予測ツールの使用用途

1. 製造業

故障予測ツールの主な用途は、製造業一般の設備・機器における設備の異常や不具合の予知です。製品不良の発生率を削減することができ、歩留まり向上の効果があります。また、故障を予知することで結果的に製造設備の稼働率を上げることができます。

2. プラント設備

プラント設備の点検では、場合によってはセンサーによる検知が困難であるクラック、腐食などがあることがあります。画像データを収集して分析することにより、クラック、腐食の識別、判定について評価を行い故障予測を行っている場合があります。

3. 航空機

航空機の整備において、故障予測ツールが活用されている事例もあります。ある事例では、仮説探索を実施し、整備士の知見と組み合わせて活用することで、多くの予兆が検知されました。

4. サーバー・ネットワーク機器・コンピュータ

企業などの業務内容によっては、ネットワーク内にサーバー機器やネットワーク機器、設備機器など、大量の機器を管理している場合があります。このようなネットワーク内に多くの機器を管理する場合に、突発的な故障を防ぎ、予め故障に対して対処しておく目的で故障予測ツールが活用されます。

また、企業全般においてハードディスクの故障は業務に致命的な影響を及ぼします。企業のクライアントPCを対象として、ハードディスクの故障を予測するデータ保全対策ツールも使用されています。このツールでは、HDDに搭載されるS.M.A.R.T.の情報を元に、ハードディスクの故障予測日を独自に算出することが可能です。

また、一般消費者向けにPCの故障を予測する製品「PC故障チェッカー」として提供されている製品もあります。

故障予測ツールの原理

故障予測ツールでは、主に統計解析、ディープラーニング、機械学習、AIなどの高度なデータ分析技術が用いられています。故障予測に用いられている主な検出原理は下記のとおりです。

  • 外れ値検出:
    他のデータと比較して乖離している値を検出する
  • 変化点検出:
    時系列のあるデータ群において、急激にパターン・傾向が変化するタイミングを検出する
  • 異常部位検出:
    時系列のあるデータにおいて、外れ値が発生した特定の期間を異常なデータとして検出する

また、AIに学習させる方法では、大量の過去データ (教師データ) を用意してAIに学習させる方法である教師あり学習と、教師データを用意せずに学習させる教師なし学習の2種類に大きく分類することができます。

1. 教師あり学習

教師あり学習は、過去のセンサーデータ (温度、湿度、振動、音など)・画像など、既に過去のデータが十分に集まっている場合に適しています。故障予測ツールのシステム構築の大まかな流れは下記の通りです。

  1. データの可視化:
    収集したデータを可視化します。特徴、パターン、傾向などを分析するとともに、予兆検知すべき異常とデータの関係性を把握します。
  2. 前処理・特徴量設計:
    データを分析できる状態に加工するため前処理を行い、続いて高いレベルの情報を捉えた 「特徴量」に変換する作業を行います (特徴量設計) 。
  3. 故障予測モデルの構築:
    適切な統計分析手法や、AI・機械学習の手法を検討し、評価を行い、異常予兆検知モデルを構築します。
  4. 故障予測モデルの実装・稼働

2. 教師なし学習

教師なし学習では、基本的には、正常に分類されるデータのみを用いて、そこから外れたものを異常とします。主な手法にはSVDD (英: Support Vector Data Description) やPCA (英: Principal Component Analysis)などがあります。

SVDDでは、 カーネル関数で2つのデータの類似度を表し、「正常」の領域のみを定義します。主成分分析の一種であるPCAは、複数の要素で構成されたデータの特徴からデータの「主成分」を作成し、「正常な領域」の定義を行います。それ以外では、PCAに修正を加えた手法としてRPCA (英: Robust Principal Component Analysis)と呼ばれる手法もあります。

故障予測ツールの選び方

故障予測ツールは、様々な業種で用いられていることから、多様な製品が提供されています。導入の際は、課題や目的を明確にし、業務内容・用途に合ったものを選択することがまずは重要です。

また、「現状どのようなデータが取得できているのか」を明らかにすることは、どのような分析モデルを構築するのかや、教師あり学習が適しているのか教師なし学習が適しているのかを決定する上でも必要となります。用途においても、「とにかく故障を予測できれば、故障の原因追求までは必要としていない」のか、「故障の原因まで予測できなければならない」のか、など、どこまでをツールに求めるのかを明らかにする必要があります。

参考文献
https://www.ntt-at.co.jp/product/da-anomary-detection/
https://www.iim.co.jp/products/luina/
https://jpn.nec.com/solution/dotdata/tips/failure-prediction/index.html

本記事は故障予測ツールを製造・販売するニュートラル株式会社様に監修を頂きました。

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防水サーボ

監修:株式会社Hitec Multiplex Japan,inc.

防水サーボとは

防水サーボとは、サーボモーターのうち、防水仕様となっている製品のことです。

完全防水(IP67)規格の製品では、徹底した防塵・防水性能を備えており、水中だけでなく、劣悪な環境の汚水、油の中、噴霧塗装の中でも使用できます。

防水サーボの使用用途

防水サーボも基本的には普通のサーボモーターと同様に、生産ラインや計測装置、医療機器などの産業用途一般や、無人航空機、ラジコンなどに用いることが可能です。

産業用途・業務用途などでは、明らかに水没する用途ではなくとも、もし水がかかった場合に備えて、防水サーボが好まれる場合もあります。特にIP67の完全防水の製品は防塵性能も高いため、耐久性および耐環境性能が求められる産業用途で特に有効です。

具体的な用途例には、以下のようなものが挙げられます。

  • 各種産業機器
  • UAV・UGVなどの舵可動部
  • ロボット (産業用途及び研究分野) 
  • ヘリコプター、ドローン、ボートなどの産業用無人機
  • 屋外設備の解錠装置
  • 生産設備

それ以外の防水サーボ特有の用途の1つは、ホビー用途におけるボートなどの水場で用いるラジコン機械などです。ボートのように明らかに水場で使用するラジコン以外でも広く用いられます。電子工作・ラジコン関係の主な用途例は下記の通りです。

  • 各種スケールのラジコンボート (EP、GP) 
  • 各種スケールの飛行艇、ラジコンエアープレーン
  • 各種ラジコンカー (1/10、1/8、1/5、1/4 スケールのオンロードカー及びオフロードカー、ジャイアントスケールカー、EPカー、1/10GPカー)
  • 各種ラジコンヘリコプター (30〜90クラスのGPヘリコプター、600クラスEPヘリコプター、ジャイアントスケールヘリコプター)
  • ロボット、ドローン

防水サーボの原理

1. 動作原理

防水サーボでは、製品によって、ブラシレスモーターやコアレスモーター、3極コアードモーター、5極カーボンブラシモーターなどが使用されており、高効率にトルクを発生させています。また、通常のサーボモーターと同様にエンコーダが付属しており、エンコーダによって、モーター変位を制御機器へフィードバックすることができます。

ブラシレスモーターとは、整流子やブラシなどの機械的な接触部を取り除いたモーターです。整流子の代わりを電子回路が行っています。直流モーターは、ステータの巻き線の磁力移動によって、永久磁石のロータを回転させます。巻き線の電流切り替えを、位置センサ検出で行い、適切なタイミングで回転させます。

コアレスモーターとは、ロータに鉄心のないモーターです。内側に永久磁石を配置し、磁石の外側に樹脂で固めたカップ状のコイルが巻かれています。コイルに電流を流すと、フレミングの左手の法則を受け、コイル部分が回転する仕組みです。コイル部分が回転するのでロータと呼びます。

2. 防水・防塵

電子機器の防水性能・防塵性能を表す指標は、IP保護等級 (IP規格) と呼ばれ、IEC (国際電気標準会議 ) で国際的に定められており、日本国内においてもJIS (日本工業規格) によって採用されています。

IP保護等級は2桁の数字で表され、1つ目の数字が防塵性能、2つ目の数字が防水性能を表します。防塵・防水いずれかの保護性能だけを表す場合は、もう一方がXで表されます (IP6Xなど)。

IP67等級の防水サーボは完全防水で、防塵性能を表す等級の「6」は、規格において最高レベルです。耐塵型であり、接続端子など保護が必要な部分を除き、粉塵が機器内部に侵入することはありません。防水等級「7」は防浸型で、規定の圧力、時間で水中に浸漬しても有害な影響を受けない性能が担保されている等級です。

防水サーボの外装ケースは、フルメタルケース/エンジニアリングプラスチック/エンジニアリングプラスチックとメタルとの組み合わせなど様々な種類がありますが、いずれも防水構造で保護等級の規定を満たすようになっています。

防水サーボの種類

防水サーボは、製品によって定格トルクピークトルクや、回転数・スピードが異なります。これは、前述の通り内部で採用されているモーターについてブラシレスモーターやコアレスモーター、3極コアードモーター、5極カーボンブラシモーターなどの種類があることや、対応電圧が異なることなどによります。

コントローラーユニットも、製品によって差異があり、特に32ビットMCU (マイクロコントローラーユニット) と12ビットADC (アナログ-デジタルコンバーター) を搭載しているような機種では、高分解能、高速応答が実現可能です。

制御信号は、PWM方式でもTTL (半二重通信) コマンド方式でも使用が可能となっている製品も多くあります。製品によっては専用プログラマーにて操作フィーリングや各機能を変更可能な機能もあります。

使用する際は、各機能・仕様をよく吟味し、用途に合ったものを選択することが重要です。

参考文献
https://hitecrcd.co.jp/industrial/hitecservo/d-series-waterproof.html

本記事は防水サーボを製造・販売する株式会社Hitec Multiplex Japan,inc.様に監修を頂きました。

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