ダインペン

ダインペンとは

ダインペンとは、物体の表面のぬれ特性 (表面張力、ダインレベル) を簡易的に図るためのペンです。

テンションチェッカー、ぬれ性チェックペンと呼ばれる場合もあります。ダインレベルとは、物体表面の接着性を表す指標です。ダインペンを用いることにより、インク、ニス、プライマーなどがプラスチックや金属などの素材表面にどれだけ接着するかを測ることができます。蛍光ペンのように手軽に塗って確認できることが特徴です。

ダインペンの使用用途

1. 概要

ダインペンは、様々な物質の表面張力やぬれ特性を測定したり、表面エネルギーの値を測定するために使用されます。主な用途例は下記の通りです。特に、印刷・塗装・接着が必要となる産業分野で多く使用されます。

  • プラスチックやその他の無孔質基材の表面張力の測定
  • 印刷前の印刷対象物の表面状態 (印刷適性) の確認
  • 光洗浄など各種洗浄後の対象物の状態の確認
  • プラズマ表面処理をはじめとする、表面改質後の素材表面の接着性、親和性の確認 (PE・PP・プラスチックフィルムなど)
  • 金属加工部品の脱脂洗浄後の油分残渣テスト

これらが行われる主な分野には下記のようなものがあります。

  • 自動車内外装部品
  • 電子機器・電子部品
  • 樹脂製品・セラミック製品
  • 鉄鋼・非鉄金属等の製造部門・研究開発部門
  • 各種印刷 (グラビア印刷、オフセット印刷、UV印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、インクジェットプリンタ)
  • ドライラミネーター、押し出しラミネーター
  • インフレーションフィルム、Tダイフィルムシート、延伸フィルム
  • コーティング

ダインペンの原理

1. 濡れ性とは

濡れ性とは、液体と固体表面の親和性です。液体が固体表面上で分子間力の作用によって均一に広がる現象を「濡れ性が高い」と評価します。

濡れ性には表面張力が関係しており、主に液体と固体の表面エネルギーによって決まります。液体が固体表面上で広がるための条件は、液体の表面エネルギーが固体の表面エネルギーより小さいことです。すなわち、固体の表面エネルギーは高ければ高いほど濡れ性が高くなります。表面エネルギーはダイン数と呼ばれる場合もあり、その単位は、SI単位系でmN/m (ミリニュートン毎メートル) 、CGS単位系でdyn/cm (ダイン毎センチメートル) が使用されています。

このような指標である濡れ性は、インクやのり・ニスなどが、プラスチックや金属の表面にどれだけ接着するかを測ることに用いられます。

2. ダインペンによる濡れ性の測定の方法

ダインペンは、測定するダイン数ごとにペンが用意されており、離散的にダイン数を測定することができます。使い方の概要は下記の通りです。

  1. 希望するダイン数のテストペンでテストする素材表面を塗布します。
  2. 塗布後、約2〜4秒後の液膜の状態で適正を判断します。液膜に破れや収縮が起きていなければ塗れているため、更に高いダイン数のインクで順次テストし、判定します。逆に液膜に破れや収縮が起きているときは低いダイン数のインクで順次テストし判定します。 
  3. 2を繰り返し、液膜に破れや収縮が起きなかった最も高いダイン数が素材表面のダイン数となります。

3. ダインペンの成分

ダインペンの成分としては、ホルムアミドが用いられることが多いです。一方で、非毒性・非刺激性の観点からホルムアミドを含まないダインペンも販売されています。

ダインペンの種類

ダインペンは、異なるダイン数のペンが4本〜8本前後のセットで販売されていることが一般的です。30番台や40番台のダイン数のペンが最も汎用されますが、50番台や60、70も販売されています。

インクカラーは、赤、青、緑などがあり、通常の容量 (50mLなど) のペンタイプの他、使い切りの少量タイプ (10mLなど) もあります。ホルムアミドなどを含まない非毒性・非刺激性の製品もありますが、キシレンやホルムアミドなどの有機化合物を含むものでは製品安全データシート (SDS) を確認することが必要です。