廃液処理装置

廃液処理装置とは

廃液処理装置とは、油や酸、アルカリなどの有害成分を含む廃液を処理するための装置です。

有害な物質汚染物質が含まれる場合が多く、適切に処理しないければ環境や健康へ悪影響が発生する可能性があります。廃液処理装置は、有害汚染物質を除去または不活性化するための技術を活用したものです。

ただし、廃液の組成や有害物質は廃液によって異なるため、廃液の種類と目的に応じて適切な装置を選択することが重要です。

廃液処理装置の使用用途

廃液処理装置は、さまざまな産業や施設で使用されます。特に工業・化学プロセスにおいて広く使用される装置です。

1. 工場・製造施設

工場や製造施設では、生産プロセスによって廃液が発生することが多いです。廃水や廃液などの形態で排出されます。廃液処理装置によって有害な物質や汚染物質を除去して廃液を浄化し、環境影響を最小限に抑えることが可能です。

2. 化学工業・研究所

化学工業や研究所では、化学反応や実験によって廃液が生成されることが多いです。これらの廃液には、有害な化学物質や有機溶剤が含まれている場合があります。廃液処理装置によって有害化学物質を除去することが必要です。

3. 食品加工工業

食品加工業においても、製造ラインや洗浄プロセスから廃液が発生します。廃液処理装置によってこれらの廃液を浄化し、環境基準に適合させる必要があります。

廃液処理装置の原理

廃液処理装置は、廃液中の有害物質や汚染物質を除去または不活性化するためにさまざまな原理や技術を利用しています。代表的な方式の1つが燃焼処理です。発生する廃液を燃焼させることで無害化する方法です。石油化学分野や製紙分野など、幅広い分野に普及しています。

また、物理的に汚染物質を除去する方法も広く使用されます。廃液中の固体や浮遊物を分離することによって廃液を浄化します。ろ過装置や遠心分離機がその一例であり、微小な固体粒子や不溶性物質を取り除くことが可能です。

化学的な反応を使用して、廃液中の有害物質を分解する方法もあります。沈降槽や沈降処理では、重い固体や不溶性物質を沈殿させることで廃液を浄化します。蒸留装置は、蒸気化・凝縮のプロセスを通じて廃液を分離し、純粋な成分を回収することが可能です。

廃液処理装置の種類

廃液処理装置にはさまざまな種類が存在します。以下は廃液処理装置の種類一例です。

1. フィルタープレス

フィルタープレスは、フィルターに加圧した廃液を押し付けることで固形物を分離する廃液処理装置です。廃液はフィルタープレートによって濾過され、固形物は圧力をかけて固体状に圧縮されます。廃液を固体と液体に分離することが可能です。

2. 遠心分離機

高速回転によって廃液中の固体物を遠心力で分離する装置です。廃液は遠心力によって回転ドラムの壁面に押し付けられ、重い固体はドラムの内側に集まります。清浄な液体はドラムの外側に排出されます。

3. シックナー

廃液中の固形物や不溶性物質を沈降させるために使用される装置です。重力によって固体が底に沈殿し、浄化された上澄み液が排出されます。沈殿した固体物は槽の底部で収集され、処理または廃棄されることが多いです。

4. 蒸留装置

廃液を蒸発させ、その蒸気を再凝縮することによって成分ごとに分離・精製する装置です。廃液が加熱されることで揮発性成分が蒸発し、再凝縮されて純粋な成分が得られます。このプロセスにより、廃液中の溶質や汚染物質が除去されます。

廃液処理装置のその他情報

1. 廃液の種類

廃液は、主に有機物系廃液と無機物系廃液に分類されます。

有機物系廃液
有機物系廃液は「特定有害等有機溶媒」「写真現像廃液」「写真定着廃液」「可燃性廃液」「難燃性廃液」の順に、5種類に細分類されます。写真廃液は家庭のカメラ撮影だけではなく、映画のフィルムやレントゲンなどから発生します。有機系廃液の主な処理方法は燃焼処理や生物処理などです。

無機物系廃液
無機物系廃液は「シアン系廃液」「水銀系廃液」「フッ素、リン酸系廃液」「重金属系廃液」「酸、アルカリ性廃液」の順に、5種類に細分化されます。無機物系廃液の主な処理方法は中和処理や活性汚泥処理、凝集沈殿処理などです。

2. 廃液処理装置の規定

廃液処理装置の設置・管理は厚生労働省が定めた規定を守らなければなりません。廃液処理装置を設置する基準は、無機物系廃液を扱う場合は必ず必要です。

廃液処理装置では、排水溝やピットが塩酸硝酸または硫酸を含む廃液と、シアン化カリウムシアン化ナトリウムまたは硫化ナトリウムを含む廃液とで混ざらないことが重要です。混ざり合うことで、有毒なシアン化水素または硫化水素が発生します。廃液処理装置は年に1度の定期自主検査を実施する必要があり、その記録は3年間の保管義務が定められています。

参考文献
https://www.tske.co.jp/search/haieki.html
https://www.sumitomo-toolnet.co.jp/product/environment/jyohatsu-haieki.html
https://kokugoryokuup.com/haisui-difference/
http://irc1.lab.u-ryukyu.ac.jp/?action=common_download_main&upload_id=4792
https://www.chemical-substance.com/roudouanzen/kanri.html
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-29-3-0.htm
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-29-5-0.htm

固液分離機

固液分離機とは

固液分離機とは、液中の固形物を液体と分離し、取り除くための装置のことです。主に汚水処理の分野で用いられます。

汚水処理には、汚水から固形物を分離する過程と、水に溶けている汚濁物質を処理する過程の2段階があります。前者は、固液分離機で物理的に行うのがコスト面で有利です。後者は固液分離機では難しく、活性汚泥などの生物処理が一般的に行われます。汚濁物資が液中に残ったままだと、生物処理後の余剰汚泥が増えたり、処理効率が悪くなったりします。 

固液分離機の使用用途

固液分離機には汚水処理の前処理を行う装置と、汚泥の脱水や濃縮を目的とした装置があります。脱水を行うためのプレス方式や、凝集剤添加の有無といった点が異なります。

スクリーンなどにより固形分を取り除くものは、汚水の処理に用いられる装置です。スクリュープレス、ローラープレスや、ベルトスクリーンなどが該当します。汚水処理に用いる装置では、凝集剤を添加しないで運用する場合もあります。

真空脱水機、加圧脱水機、ベルトプレス、スクリュープレス、遠心脱水機などは汚泥処理に用いられる装置です。これらの汚泥処理装置では、基本的に凝集剤を使用します。 

固液分離機の原理

固液分離機は、ろ過によって脱水を行うものと、遠心力によって脱水を行うものが主流です。これらは処理後のケーキの含水率などが異なるため、処理したい汚泥の性質によって使い分けられています。

ろ過式の脱水装置の代表例は、加圧脱水機、ベルトプレスなどです。加圧脱水機では、加圧ポンプによって汚泥をろ室に押し込み脱水します。一回の脱水ごとにケーキの排出や組み立てが必要であるといったデメリットはありますが、ろ過の圧力を大きくとれるメリットがあります。

ベルトプレスは高分子凝集剤により汚泥を凝集させたのち、ベルト状のろ布で脱水する方式です。液状の汚泥をそのままベルトで挟んでもベルトの間から漏れてしまうため、重力による予備濃縮をかけた後にロールで圧搾します。ろ過式では従来加圧脱水機が主流でしたが、このベルトプレスも徐々に普及してきています。

遠心力で脱水を行うのが遠心脱水機です。高速回転による遠心力を利用した方式で、回転体の形状によって円筒型と円錐型に分けられます。液の清澄度が重要な場合は円筒型、ケーキの含水率を下げたい場合は円錐型が適しています。 

参考文献
https://kcr.kurita.co.jp/wtschool/047.html 

周波数変換器

周波数変換器とは

周波数変換器とは、受け取った周波数を任意の周波数に変換する機械のことです。

周波数とは振動数とも呼ばれ、電流や電波などが一秒間に何回波を繰り返すかという値を指します。電流には直流電流と交流電流がありますが、家庭や工場の電源は基本的に交流電源で、決まった周波数の電流を供給します。

しかし、機械によっては電源より高い周波数や低い周波数が必要になることもあります。そのようなときに、任意の周波数に変換するのが周波数変換器です。

周波数変換器の使用用途

周波数変換器は、周波数を変えたいときに使用されます。例えば、家電製品や海外の工場などです。

地域ごとの周波数は異なり、コンセントから供給される電流は東日本なら50Hz西日本なら60Hzと決まっています。異なる地域でも同じように使用できるように、周波数変換器を搭載している場合が多いです。

さらに、工作機械には低周波数や高周波数の電源が必要なものがあります。50Hzや60Hzの電源から、必要な周波数まで変換します。

周波数変換器の原理

周波数変換器は電流を流すことによって、任意の周波数に変換できます。周波数変換器では、インバータやコンバータが用いられます。

インバータとは直流電流を交流電流に変換する装置で、コンバータとは交流電流を直流電流に変換する装置です。

1. コンバータ回路

コンバータ回路に電流を流すことで、元の交流電流を直流電流へと変換させます。交流電流は正弦波なので正負が存在しますが、コンバータ回路に含まれたダイオードによって全波整流を引き起こすことで、どちらも正の値で取り出すことが可能です。

次に取り出した電流をコンデンサに通します。何度も充電と放電を繰り返すことで平滑化し、なめらかな直流電流を作ります。

2. インバータ回路

最後にインバータ回路に電流を流すことで任意の周波数に変えた交流電流を流します。インバータ回路にはトランジスタが含まれており、オンオフのスイッチング間隔を調節することで周波数を変化させた波を作り出すことができるのです。

インバータ回路では、一般的にパルス幅変調が用いられています。略称ではPWM (英: Pulse Width Modulation) と呼ばれ、スイッチのON/OFF比率をコントロールすることで所定の出力を制御します。

本制御を用いることにより、低消費電力と小型化をすることが可能です。インバータ回路ではスイッチのON/OFFで負荷を流れる電流の向きが逆向きになります。このスイッチング技術と呼ばれる技術で、交流の生成を実現しています。

3. PWM

PWM制御方式の1つに、三角波比較方式と呼ばれるものがあります。三角波比較方式では、実現したい周波数の正弦波 (交流) とキャリアと呼ばれる三角形の形をした波の高低をオペアンプに入力して比較します。

正弦波がキャリアよりも大きい値を持つときは、スイッチング制御信号はONを出力します。一方、正弦波がキャリアよりも小さい値を持つときはOFFを出力します。この比較を繰り返すことで、スイッチング制御信号であるパルス波を出力することが可能です。

サイリスタなどの半導体スイッチング素子を用いて直流をスイッチングして、交流電圧を供給します。

周波数変換器のその他情報

1. サイリスタ

周波数変換器でも、使用されるサイリスタはダイオードにゲート端子がついた構成です。ダイオードを使用することで電気が一方向にしか流れなくなる働きを得ます。

ゲート端子の役割は電路の開閉を制御することで、ダイオードと組み合わせることにより電流の方向と出力が制御可能です。

2. サイリスタバルブ

複数個のサイリスタ素子を直列あるいは並列に接続することで十分な高電圧に耐えて、必要量の電気容量を持つ装置のことをバルブ (整流器) と呼びます。

以前のサイリスタバルブは空気絶縁風冷方式、油絶縁油冷方式を採用していましたが、近年は光直接点弧大容量サイリスタ素子を使用した空気絶縁水冷方式が主流です。

参考文献
http://www.mohno-pump.co.jp/learning/manabiya/b3a.html
https://www.yasnaga.co.jp/product/2018/08/post-29.php
https://www.matsusada.co.jp/column/inverter.html
https://www.fujielectric.co.jp/products/column/inverter/inverter_02.html

レーザー溶着機

レーザー溶着機とは

レーザー溶着機とは、レーザー光を使用して2つの物体を結合させる装置のことです。

主に樹脂の接着に適用され、レーザー光によって生じる熱を利用しています。他の溶着方法として、熱板や超音波を用いたものも存在しますが、いずれも熱を発生させて対象物を溶かし、冷却時に結合させる原理は同じです。

レーザー溶着機は、溶けた部分が冷却される際に境界部分をつなげ、固まることで結合が成立します。微細な部分の接合も可能であり、粉じんなどの発生が少ないクリーンな装置として評価されています。さまざまな産業で利用され、品質や効率の向上に貢献している装置です。

レーザー溶着機の使用用途

レーザー溶着機は、美しい外観や高い防水性が要求される製品において幅広く活用されています。例として、車のテールランプが挙げられます。

テールランプは、鮮やかな色で美しい光を放つことが求められますが、ネジや接着剤を用いてプラスチック部品を結合すると、見栄えが悪くなることが難点です。そこで、レーザー溶着機が活躍します。接着剤を使わず、綺麗な仕上がりが実現可能です。

さらに、医療用タンクのような高い防水性が必要な製品でも、レーザー溶着機は有用です。ネジや接着剤を使用せず、レーザー溶着機によって接合された製品は、防水性が向上し、経年劣化も起こりにくくなります。

レーザー溶着機の原理

レーザー溶着機は、レーザー光を用いて樹脂を溶かし、2つの物体を結合させています。まず、透過性樹脂と吸収性樹脂を用意し、透過性樹脂を上に、吸収性樹脂を下に配置します。上からレーザー光を当てると、透過性樹脂を通過した光が吸収性樹脂に連続して照射され、両者の境界面で発熱が生じます。

この熱で樹脂が溶けて溶着が発生し、レーザーを止めると、溶けた樹脂が冷え固まり、2つの樹脂が結合可能です。ただし、全ての樹脂に対応できるわけではありません。透過性樹脂と吸収性樹脂が必要になります。

透過率が高い樹脂は白や透明で、吸収率が高い樹脂は黒色に近いです。白や透明同士の樹脂を溶着する場合、下の樹脂にレーザー吸収剤を塗布し、通常の方法と同様に溶着を行います。また、黒同士の樹脂の場合は、上側の樹脂に透過性のある黒色に近い樹脂を使用して溶着を実施します。

レーザー溶着機は、多様な分野で活用され、高い効率と品質向上に貢献している装置です。特に、外観や防水性が重要な製品において、レーザー溶着機は非常に有益な技術となっています。

レーザー溶着機の種類

レーザー溶着機は、産業界で広く利用されている技術です。適切なレーザー溶着機を選択し、各分野での効率的な製品開発に役立てられます。

1. CO2レーザー溶着機

CO2レーザー溶着機は、一般的に高い出力が得られることで知られています。樹脂や金属などの素材に対して、高速で綺麗な接合が可能であり、広い分野で活用されています。

2. ファイバーレーザー溶着機

ファイバーレーザー溶着機は、波長が短いため、精密な加工が可能です。主に金属加工や電子部品の接合に使用されており、高い品質が求められる分野で活躍しています。

3. ダイオードレーザー溶着機

ダイオードレーザー溶着機は、コンパクトで効率的な機械です。消費電力が少なく、熱の影響が小さいため、樹脂や薄い金属の溶着に適しています。省エネルギーで低コストな加工が可能なため、幅広い産業で利用されています。

4. YAGレーザー溶着機

YAGレーザー溶着機は、中赤外領域の波長を持つレーザーで、金属やセラミックスの接合に適しています。高いエネルギー密度と熱影響の少なさから、医療機器や宇宙機器などの精密加工に使用されています。

参考文献
https://www3.panasonic.biz/ac/j/fasys/processing/tech_welding_plastic/laser/index.jsp
http://www.finedevice.co.jp/laser-resin
https://jp.lpkf.com/products/laserwelding/laser-welding.htm

ベルト張力計

ベルト張力計とは

ベルト張力計とは、ベルトの張りの強さを測定するための機器のことです。

一般的な張力計でのベルト張力の測定方法は、プーリに張られたベルトを張力計で押し、その時のたわみ量や反発力から張りの強さを測定します。張力計でベルトを押すだけなので、誰でも簡単に測定ができますが、測定者の勘に依存する部分が多く、測定結果に個人差が出てしまうというデメリットもあります。

最近では、より定量的に張力を測定する方法として、音波を用いたベルト張力計も使用されています。

ベルト張力計の使用用途

回転機構を持つ機械の中で、ベルトとプーリによる回転動力の伝達が行われているものは非常に多くあります。こういった機械の性能を維持するためには、ベルト張力の調整が必要不可欠です。そのため、ベルト張力計は、家庭の車から工業用の機械装置まで、ありとあらゆる機械のメンテナンスに用いられる測定器具といえます。

ベルト張力は、低すぎると動力伝達の効率が落ち、高すぎるとベルトやプーリの不具合・破損の原因になるため、適正に調整することが重要です。

ベルト張力計の原理

ベルト張力計には、測定に音波を用いるものと、たわみ量から計測するものの、2種類に大別されます。

  • 音波で測る
    静止した状態のベルトを指などで弾くことで生じた音波を、マイクロホンで読み取る方法です。検知した音波からベルト張力が自動で算出されるので、アナログタイプの張力計のような測定結果の個人差をかなり抑えることができます。
    また、測定したデータをUSB経由でパソコンに伝送できるものもあり、データ管理もしやすくなります。
    一方で、周りの騒音が大きい場所ではマイクロホンにノイズが入ってしまうため、測定できないというデメリットもあります。
  • ベルトのたわみ量で測る
    プーリに張られたベルトを張力計で直接押すことにより、ベルト張力を測定する方法です。
    プーリとプーリの間の距離をスパン長さといい、ベルト張力計を使う際はスパン長さの中心位置を押します。この位置でベルトに一定の負荷をかけ、その時のたわみ量からベルト張力を算出します。
    電源が必要なく、騒音環境下でも測定可能ですが、測定者によって測定結果にばらつきがでやすいのがデメリットです。

参考文献
https://www.kougu-damashii.jp/product/7082

プラズマ溶接機

プラズマ溶接機とはプラズマ溶接機

プラズマ溶接機とは、電極と母材の間に生じさせるプラズマアークを利用して溶接を行う機器のことです。

アーク放電のエネルギーを利用して溶接を行うアーク溶接の1種であり、ティグ溶接と同じ非消耗電極式に分類されます。他の溶接機と比べて、トーチから噴射されるアークの幅が狭いため、より細かな場所での溶接が可能です。また、プラズマアークの熱が高く、溶接作業が迅速に行えるというメリットもあります。

しかし、機器自体を持っている業者が少なく、一般的には存在があまり認知されていないので、使用頻度は低い機器です。プラズマ溶接機は、特に精密な作業や微細な溶接において、高い性能を発揮するため、専門的な分野で使用されています。

プラズマ溶接機の使用用途

プラズマ溶接機は、他のアーク溶接とは異なる特性を持ち、厳密な加工精度が求められる場合に使用されます。消耗電極式のアーク溶接を行った場合、構造上母材にひずみができてしまいますが、プラズマ溶接機なら、アークの熱をより狭い範囲に集中させることができるため、ひずみを最小限に抑えることが可能です。精密な加工精度が求められる素材の溶接や、製造業界での使用に適しています。

さらに、プラズマ溶接機は、スパッタと呼ばれる粒も残らないため、仕上がりをきれいに仕上げたい場合にも便利です。例えば、食品産業で使用される機器の溶接や、美術品、宝飾品、医療機器の製造でも、プラズマ溶接機が活用されています。

また、鉄以外の金属材料でも使用することが可能です。例えば、アルミニウムやステンレス鋼など、高温に弱い素材でも使用可能で、航空宇宙産業や自動車産業などでも多く使用されています。

プラズマ溶接機の原理

プラズマ溶接機は、アーク放電を起こすためにガスをプラズマ化させることができます。プラズマとは、物質の第4の状態です。気体にエネルギーを与え続けることで発生します。この状態の気体は、荷電粒子を含んでいるために電気性を帯びており、このプラズマ化したガスを噴射することで、導電体となりアークが生成されます。

プラズマ溶接機は、ティグ溶接に比べ、アークの範囲が狭く絞られているため、より細かいスペースでの溶接が可能です。また、アークの指向性が高く、隅肉溶接にも適しています。さらに、電極棒が溶けない非消耗電極を使用するため、長時間にわたって運転可能で、工場の製造ラインなどで自動溶接としても活用されています。

ただし、ティグ溶接よりもコストが高くなるのがデメリットです。プラズマ溶接機は、他の溶接方法とは異なる原理で作動するため、特性を理解することが重要です。特に、精密な加工が求められる場合や、長時間の連続運転が必要な場合には、プラズマ溶接機が最適な選択肢になることがあります。

プラズマ溶接機の種類

プラズマ溶接機の種類には非パイロットアーク方式とパイロットアーク方式があり、さらにプラズマ関連でプラズマ切断機があります。

1. 非パイロットアーク方式

非パイロットアーク方式は、電極を使用せず、代わりにガス導管から直接アークを発生させる方式です。この方式は、高周波の放電装置を使用してアークを起こし、プラズマ化したガスを噴射することで溶接を行います。長時間の連続運転が可能で、高い溶接品質が得られるため、工場の自動化に適しています。

2. パイロットアーク方式

パイロットアーク方式は、電極を使用してアークを起こし、そのアークを利用してプラズマ化したガスを噴射する方式です。この方式は、溶接に必要なエネルギーを調整でき、高い安定性が得られるため、精密な溶接に向いています。

3. プラズマ切断機

プラズマ切断機は、プラズマアークを利用して素材を切断するための機器です。高温のプラズマアークを素材に当てることで、熱によって素材を溶かし、高速で噴出したプラズマによって切断します。この方式は、高速で切断でき、厚い素材でも切断が可能なため、船舶や建築物の解体作業に使用されます。

参考文献
https://www.weld.nipponsteel.com/techinfo/weldqa/detail.php?id=27V4RZ5

クリーンペーパー

クリーンペーパーとは

クリーンペーパーとはクリーンルーム内で使用可能な用紙のことで、防じん紙、無じん紙とも呼ばれています。

クリーンルーム用品としての必須条件である低発じん性を有しながら、コピー・印刷のしやすさや断裁しやすさといった、紙としても優れた機能を兼ね備えている製品です。コピー用紙だけでなく、ノートや付箋状のものもあります。

通常のコピー用紙やノート用紙は発じん性があるため、クリーンルームで使用できません。クリーンペーパーの多くは、これらの用紙と容易に区別できるように、青色をはじめとした色味が付いています。 

クリーンペーパーの使用用途

クリーンペーパーは発じん性が低いため、発じんが許されないクリーンルーム内において、通常のコピー用紙やノート用紙の代わりに使用できます。例えば半導体の製造工場などでは、作業の条件や製品の種類などが記載された表(流動表)に、クリーンペーパーが採用されています。

クリーンペーパーの中には、導電性繊維を使用することによって、導電性を付与したものもあります。シリコンウエハー、基板などの電子工業製品は、作業の際に静電気を嫌うものの1つです。導電性クリーンペーパーは静電気が生じにくいため、これらの製品の間紙に用いることができます。導電性クリーンペーパーは、コピー機の機種によっては印字が定着しない場合があるため、コピー用紙として使用する場合はテストが必要です。

クリーンペーパーの原理

クリーンペーパーは、通常の用紙と異なる製法や素材で製造されます。これらの違いは用紙の発じん性に大きく影響しています。

通常のコピー用紙やノート用紙の原料には、多くの場合、木材パルプの短繊維が用いられます。短繊維は用紙から繊維が脱落しやすいので、短繊維から作られた製品は発じん性が高いのが普通です。クリーンペーパーには長繊維が選択的に使用されており、繊維同士の結合が強いため、発じん性が低くなっています。

通常の用紙とのもう1つの違いとして挙げられるのは、クリーンペーパーの着色には顔料が使われていないことです。炭酸カルシウムチタンに代表される顔料は、用紙を白くしたり、不透明性を持たせたりする目的で添加されます。通常の用紙からは、これらの顔料由来の粉じんが発生します。クリーンペーパーでは、液体の染料を着色料として使用するため、顔料による発じんは生じません。

他の発じん対策としては、樹脂で繊維を固め、繊維の脱落を防止する方法などがあります。 

参考文献
https://www.tanimura.biz/catalog/conductive_cleanpaper.html
https://www.monodukuri.com/gihou/article/273
https://www.sakurai.co.jp/products/clean/cleanpaper/data/clean_paper_how.pdf 

ガス発電機

ガス発電機とはガス発電機

ガス発電機とは、ガスを電気エネルギーへと変換させる発電機のことです。

内燃機関の1種であり、燃料を燃焼させて発生した高温のガスを利用して発電します。ガス発電機の利点としては、燃料コストが比較的安いことや燃料の供給が安定していること、高い効率で電力を生成できることなどです。そのほか、重油やガソリンよりも排出CO2が少ない点も利点として挙げられます。

また、環境にやさしい燃料であるバイオガスを利用することで、さらに二酸化炭素の排出量を削減することも可能です。一方、ガス発電機の欠点としては、初期投資費用が比較的高いことや燃料供給インフラが必要な場合があることです。燃焼による排気ガスや騒音が発生するため、適切な排気や騒音対策が必要です。

電力需要が安定していない場所や、燃料供給が容易な場所で有用な電源として利用されています。

ガス発電機の使用用途

ガス発電機はさまざまな使用用途・分野で使用されます。常用発電機として使用する場合と、非常用として使用する場合があります。

1. 常用用途

常用用途として使用する主な施設は、工場・発電所です。大規模工場は電力系統の停電によって、多大な損害や環境破壊に直結する場合があります。電力会社送電線網で瞬時停電が発生することは珍しくないため、常時ガス発電機で電力を生成し、いつでも送電線網と切り離せる状態とする工場も多いです。

また、工場では熱エネルギーの供給源として蒸気を使用することも多いです。ガス発電機は排熱などから蒸気を取り出すことが可能なため、電気と熱の供給源として使用する場合もあります。

2. 非常用用途

非常用用途として使用する主な施設は、オフィスビルやショッピングモールなどです。大規模なショッピングモールやオフィスビルでは、多くのテナントや施設が電力を必要とします。ガス発電機は、停電時にも営業を継続させるためのバックアップ電源として使用されます。

ガス発電機の原理

ガス発電機は吸気、燃焼、排気のサイクルによって電気を生み出す内燃機器です。ガス発電機には燃料供給装置があり、プロパンガスなどの可燃性ガスが供給されます。

これらの燃料は燃料噴射装置などを通じて内燃機器内に供給され、空気と混合されます。混合されたガスと空気の組み合わせは、燃焼に適切な混合比を持つように設計される場合が一般的です。

燃料と空気の混合物は、点火プラグや点火装置によって点火されます。点火によって燃焼した混合物は高圧高温のガスを生み出し、このガスによって回転機器を動作させます。回転機器は発電機と直結しており、発電機が回転することで回転エネルギーを電力へ変換するというのが一般的なガス発電機の原理です。

燃焼と同時に、排気ガスが形成されます。ガス発電機の排気には、酸化触媒や還元触媒などの排気ガス処理装置が装備されることがあります。これによって、排気中の有害物質や環境への影響を低減します。

ガス発電機の種類

ガスを利用した発電方法にはガスエンジン方式とガスタービン方式の2種類が用いられることが多いです。

1. ガスエンジン式発電機

ガスの膨張を利用してエンジンを回して発電する方法です。発電機内にガスや空気を注入した後、エンジンと繋がったピストンで気体を圧縮させます。

圧縮させたガスや空気に着火することで急激な膨張を引き起こし、ピストンを動かします。最終的にピストンの運動は、エンジンの回転に変換されて発電する仕組みです。

小型でも効率の良い発電を行うことが可能です。大型機では、排気ラインにボイラを設置することで蒸気による排熱利用も可能です。ただし、ピストン周辺部品の摩耗が発生するため、高頻度でメンテナンスする必要があります。

2. ガスタービン式発電機

タービンにガスを吹き付けることで発電する方法です。継続的にガスを燃焼させて高温高圧のガスを発生させ、この燃焼ガスがタービンを回すことにより発電する仕組みです。メンテナンスが容易であるため、ランニングコストが低い点が特徴です。

また、熱回収率が高いため、コジェネレーションシステムなどと併用すれば高効率な設備運用が可能です。熱利用が多い工場などで重宝されます。一方で、発電効率はさほど高くないため、エネルギー消費のうち電気の比率が高い場合はエンジン方式を採用します。

参考文献
https://generac.jp/features/
http://reneria.co.jp/howabout/construction/power_generation/
https://www.ace.or.jp/web/chp/chp_0020.html

FRP樹脂

FRP樹脂とはFRP樹脂

FRP樹脂とは、繊維強化プラスチック (英: Fiber Reinforced Plastics) のことです。

エポキシ樹脂などのマトリックス樹脂にガラス繊維などの強化材を混ぜて作られており、軽くて強い素材として幅広く用いられています。FRP樹脂は航空機などの輸送機の部品や建材、スポーツ用品、更にはロケットや人工衛星の部品などの宇宙産業でも用いられます。

FRP樹脂は用いるマトリックス樹脂、強化材によって物性が異なります。そのため、使用用途によって最適なFRP樹脂を選択することが大切です。

FRP樹脂の使用用途

FRP樹脂は、航空機などの輸送器の部品や薬品を貯蔵するタンク、建材やスポーツ用具、更にはロケットや人工衛星の部品に使用されています。

FRP樹脂は、加えられた強化材によって異なる名称で呼ばれ、それぞれ特徴も異なります。ガラス繊維が入ったFRP樹脂はGFRPです。

GFRPは金属材料よりも大きな比強度を有し、軽い材料で、ガラスが入っているため非伝導性材料です。一方で、炭素繊維が入ったCFRPはGFRPよりも強度、硬度が優れていますが電気を通します。ただし、どのFRP樹脂でも軽くて強いという性質は共通しています。

FRP樹脂の構造

FRP樹脂の構造

図1. FRP樹脂の構造

FRP樹脂はマトリックス樹脂と強化材から構成されます。マトリックス樹脂には不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂などが用いられます。

それぞれ化学構造が異なるため特徴も異なり、不飽和ポリエステル樹脂は成形が容易であること、耐水性に優れていることなどが利点です。また、ハロゲンを含ませると、耐燃性も付与することができます。

エポキシ樹脂は耐酸、アルカリ性に優れるほか、耐薬品性にも優れますが成形性に難があります。ビニルエステル樹脂は成形が容易で機械的強度に優れ、ビスA型系は耐溶剤性に劣るものの耐酸、アルカリ性に優れ、ノボラック系は耐酸化性に劣るものの耐溶剤、耐熱性に優れます。

FRP樹脂の種類

表1. FRP樹脂の種類

表1. FRP樹脂の種類

FRP樹脂の強化剤としてはガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などが用いられます。ガラス繊維が用いられたGFRPは金属よりも優れた比強度を示し、非伝導性、比較的安価、といった特徴があります。

一方、炭素繊維が用いられたCFRPはGFRPよりも高強度で軽く、硬度も優れていますが導電性を有します。また、アラミド繊維が用いられたAFRPは軽くて高強度ですが加工性があまり優れていません。

それぞれの強化材は化学構造が異なるため、耐食性も大きく異なります。用いられるガラス繊維のグレードが変わることでGFRPの性質も変化し、FRP樹脂に最もよく用いられるEガラスはアルカリ金属の含有量が非常に少なく耐水性に優れますが、強酸と接触するとAl, Caなどの成分が溶出してクラックを生じやすくなります。

一方で、炭素繊維は強い酸化性薬品には侵されますが、殆どの環境では問題なく使用可能です。また、アラミド繊維はアミド結合を有するためアルカリ性薬品と接触すると加水分解を起こしやすく、紫外線によっても劣化しやすいという特徴があります。

FRP樹脂のその他情報

FRP樹脂の加工性

FRP樹脂の加工性

表2. FRP樹脂の加工性

炭素繊維のFRP樹脂 (CFRP) では、炭素繊維に液状の熱硬化エポキシ樹脂を浸透させ、半硬化したシートを切り出し、オートクレーブで加圧・熱硬化することで成形します。しかし、上記の手法は繊維にマトリックス樹脂を浸透させる必要があるため、粘性が高い熱可塑性樹脂に適用することは困難です。

一方で、熱可塑性樹脂を用いたCFRPの成形法は今も研究されており、例えばプレス成形が検討されています。熱可塑性樹脂を含んだ炭素繊維を加熱、搬送して金型でプレスを行った後に冷却、切断して加工する方法です。

しかし、本手法では強度が大きいCFRPをきれいに、刃の摩耗なく切断する方法が必要であるなどの課題が残っています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscm1975/33/4/33_4_131/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/plastos/1/1/1_44/_pdf/-char/ja

音響測深機

音響測深機とは

音響測深機

音響測深機とは、超音波を用いて深さを計測する装置のことです。

船舶に取り付けられているものが多く、海や川などの底までの深さを測定するために使われます。超音波を送信し、海底で反射して帰ってくるまでの時間から深さを測定します。海水中において、音は約秒速1500mで進むため、送信から受信までが2秒だったとすると、海底までの深さは1500mであることが分かります。

また、近年では複数の超音波ビームを用いるマルチビーム測深機が主流となっており、一度に広範囲の測深が可能となっています。

音響測深機の使用用途

音響測深機は主に海底までの深さを計測するために使用されます。

海底面までの深さを知ることができると、正確な海図を作成することが可能となり、船の運航や湾岸工事において非常に重要な役割を果たします。また、海底には確認の難しい火山や断層などが数多く存在しています。海底の情報を知ることはこれらの海洋資源の活用にも繋がるのです。さらに、地震大国である日本にとって海底の情報はとても大切で、防災面においても必要不可欠な情報です。

音響測深機の原理

音響測深機はと超音波の跳ね返りを利用して深さを計測しています。船舶に取り付けられた送信機から海底に向けて超音波を放ち、反射してきた音波を受け取ります。送信から受信までの時間を計測することで、計算によって深さを調べることができるのです。具体的な深さの計算方法は「音速×受信までの時間÷2」です。海水中を進む音の速さは約1500m/sと言われていますが、海水温や塩分濃度によって変わります。正確な深さの計測には調べる条件下での正確な音速設定が不可欠です。

また、近年では複数の超音波ビームを用いるマルチビーム音響測深機が主流となっています。マルチビーム音響測深機では、クロスファンビームと呼ばれる扇状の音響ビームを用います。放射状に複数の超音波ビームを放つことで、一度に複数点の計測が可能となるのです。垂直に送信した音波と斜めに送信した音波で細かな補正が必要になりますが、この技術により広範囲の測深が可能となり、面として海底の地形を正確に知ることができるようになりました。

参考文献
http://mogist.kkc.co.jp/word/b3b53f70-070d-4be1-a8da-6e99ecde47a3.html
https://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/KENKYU/report/tbh15/tbh15-14.pdf