高出力レーザーとは
高出力レーザーとは、レーザーの中でも高い出力を有し、物品の切削や切断、曲げ加工などをおこなえる産業用レーザーです。具体的には、金属やガラス、樹脂などに、穴あけや切断、スクライビングおよびマーキングなどの加工をおこないます。
高出力レーザーの使用用途
高出力レーザーは物品の加工に多く用いられますが、その出力によって使用用途が異なります。
1. 出力(20~100W)の高出力レーザー
この出力範囲の高出力レーザーは、金属やガラス、樹脂といった素材の加工に使用されます。
金属としては、アルミナやステンレス、鋼やマグネシウムなどが一般的です。樹脂としては、フッ素樹脂やアクリル樹脂およびポリイミドフィルムなどが使用されます。また、セラミックや有機ELなども加工可能です。
加工の種類としては、穴あけや切断、スクライビングおよびマーキング加工が挙げられます。出力が高出力側のレーザーでは、マイクロマシニングなどの微細加工も可能です。
2. 出力(100~1000W)の高出力レーザー
この出力範囲の高出力レーザーは、アニーリングなどの表面改質や表面加工、リソグラフィーやフィルム剥離などに使用されます。
3. 出力(1000W以上)の高出力レーザー
この出力範囲の高出力レーザーは、産業用ロボットなどに搭載されて、金属の3D加工などの大規模な加工に使用されます。
加工用高出力レーザーの波形について
加工に使用される高出力レーザーは、波形の違いにより「パルスレーザー」と「CWレーザー」の二種類に分類されます。
1. パルスレーザー
パルスレーザーは、パルス状に出力を発振するレーザーです。パルスレーザーは間欠的に出力することとなるため、その出力は以下のように表されます。
パルスのトップ値をピーク出力[W]とし、1パルス当たりのエネルギーをパルスエネルギー[J]、1秒当りのパルスエネルギーの総和を平均出力[W]、1秒当りのパルス数を繰り返し周波数[Hz]と表した時、平均出力[W]=パルスエネルギー[J] x 繰返し周波数[Hz]です。
2. CWレーザー
CWレーザーは一定の出力で連続的に出力を発振するレーザーです。したがって、その出力は、パワーメータで測った値をそのままワット[W]として表します。
加工用レーザーの種類と用途について
加工用レーザーを発振するレーザーは、大きく分けて「固体レーザー」と「気体レーザー」の二種類です。
一般的な加工では、固体レーザーが多く用いられており、この項では固体レーザーの種類について解説します。固体レーザーの種類としては「YAGレーザー」、「ファイバーレーザー」、「半導体レーザー」が一般的です。
1. YAGレーザー
YAGレーザーは固体レーザーの代表的な種類です。Y(Yttriumイットリューム)、A(Aluminumアルミニウム)、G(Garnetガーネット)の頭文字からYAG(ヤグ)と呼ばれています。
YAGレーザーはその出力に応じて、切断や溶接、穴あけや印字など様々な産業分野で使用されており、樹脂や金属など幅広い素材の加工が可能です。しかし、ガラスのような透明な物質はYAGレーザーが透過してしまうため加工に適していません。
2. ファイバーレーザー
ファイバーレーザーは、光ファイバーをレーザー発振器としているレーザーです。光ファイバーにドープ(添加)する元素によって発振波長を変えています。
ファイバーレーザーとしては、Yb(Ytterbiumイッテリビウム)をドープしたファイバーレーザーが代表的で、マーキングなどによく使用されています。
3. LD(半導体)レーザ
半導体レーザーは、半導体光源を使用したレーザーです。半導体光源としては、GaAlAs(ガリウム・ アルミニウム・ ヒ素)や・InGaAsP(インジウム・ガリウム・ヒ素・リン) などがあります。
高出力化に課題があるものの、表面硬化などの材料の熱加工や、表面被覆加工、スポット溶接などへの使用が期待されています。