人通口

人通口とは

人通口とは、建物の基礎開口部に設置する構造補強部材です。

建築基準法や住宅の品質確保の促進等に関する法律 (品確法) において、住宅の床下空間は点検やメンテナンスのために人が移動できる構造が求められます。しかし、基礎の立ち上がり部分に開口部を設けると、断面欠損により構造強度の低下リスクが生じます。この課題を解決するため、従来は現場で鉄筋を複雑に配筋して開口部周辺の補強を行っていました。

現在では、あらかじめ工場で製造された鋼製などの補強枠をコンクリート打設前に設置する工法が広く普及しています。この製品を使用することで、構造計算に基づいた安定した強度を確保できるだけでなく、現場での配筋作業を省略し、施工品質の均一化と工期の短縮を実現できる点が大きな特徴です。

人通口の使用用途

人通口の主な使用用途を以下に示します。

1. 建築施工分野

新築時の基礎工事において、構造補強部材として使用されます。

基礎の立ち上がり部分に開口部を設ける際、断面欠損による耐力低下を防ぐために、コンクリート打設前に型枠内に設置します。これにより、複雑な補強筋の配筋作業を代替できます。工場で品質管理された部材を使用することで、現場作業員の熟練度に左右されずに均一な構造強度を確保できるほか、大幅な施工手間の削減と工期の短縮に寄与します。

2. 建築設備分野

電気・ガス・給排水などの設備工事 (MEP分野) において、床下空間の配管貫通ルートとして利用されます。

基礎完成後に配管を通すためにコンクリートを削孔 (コア抜き)すると、内部の鉄筋を切断してしまうリスクがあります。しかし、構造補強部材を計画的に配置することで、構造体を傷つけずに安全な配管ルートを確保できます。また、将来的なリフォームや設備更新の際にも、既存の配管を容易に入れ替えるためのスペースとして機能します。

3. 維持管理分野

建物竣工後のファシリティマネジメントにおいて、床下空間へのアクセスポイントとして使用されます。

長期優良住宅などの基準で求められる維持管理対策等級を満たすため、検査員が床下の各区画へ移動し、シロアリ被害・水漏れ・断熱材の脱落などを点検するための通路として機能します。近年では、狭小空間用ドローンや点検ロボットが走行するためのインフラとしても重要視されており、建物の長寿命化を支える必須の機能となっています。