温度監視システム

監修:タイムマシーン株式会社

温度監視システムとは

温度監視システム

 温度監視システムは、様々な分野で利用されています。例えば、ワクチンや治験薬など、医薬品の中でも特に温度の監視や記録が求められるものの保管。他には、温度変化によって変性して商品特性が変わってしまう恐れのある塗料や接着剤などの化学薬品、また、低温下で保存することで細菌増殖をコントロールする必要がある食品を製造・加工・販売している場所、HACCP義務化の対象となっている事業所で利用されています。

HACCPにおける温度監視

 IT技術の発展により、温度監視システムの導入事例は各業界で増えていますが、特に食品業界においては、2021年6月にHACCP(ハサップ)が義務化されたこともあり、温度監視システムや温度記録を自動化するシステムの導入が急速に進んでいます。

 HACCPとは、「Hazard(危害)」「Analysis(分析)」「Critical(重要)」「Control(管理)」「Point(点)」の5つの単語の頭文字に由来し、1960年代のアポロ計画で宇宙飛行士が食中毒にならないような食品の製造管理方法としてNASAが考案した衛生管理手法を発展させたもので、現在は、WHO(世界保健機関)と FAO(国連食糧農業機関)が合同で運営するコーデックス(CODEX)という食品の国際規格で定められた手法・ガイドラインとなっています。

 実はこのHACCPで最も重要な要素の1つが食品の温度管理で、冷蔵庫や冷凍庫の温度はもちろん、加熱殺菌槽や急速冷却するためのチラー(循環水冷却装置)など、水温の監視も重要です。また、直接食品の中心温度を記録管理する必要もあります。

 食品の温度管理は、HACCP義務化以前からも重要視されており、冷蔵品は10℃以下、冷凍品は-15℃以下、種類によっては-18℃以下など、厚生労働省が定めた基準範囲内で保管する義務があります。他にも、調理加工する場所の室温は25℃、80%以下が望ましい、といった温度だけでなく湿度についても推奨基準があります。ところが、温度や湿度を人間が常に監視することは不可能です。そこで、食品保管の温度状態が基準を満たしているか、人間の代わりに監視してくれるシステムが必要になってきます。

温度の監視の自動記録と遠隔監視化

 温度記録や温度監視について、製造工程がライン化され、機械制御、管理されている一部の単品目大量生産型の製造工場を除いて、これまで殆どの食品工場では、目視と手書き記録による監視が行われていました。昨今は、無線通信やセンシングなどのIoT技術発展にともない、IoTセンサを利用した温度監視システムの開発が進んでいます。

 実は有線LANを利用した温度監視システムは従来から存在していましたが、大掛かりな配線工事が必要なため、24時間体制で稼働しているような食品工場では設置が難しく、また、水を大量に使用し、蒸気が大量に発生する食品工場では有線配線に対する防水面での心配がつきものでした。

 そこへ近年IoTセンサを用いた温度監視システムや自動記録システムが登場し、また、年々悪化する製造現場における労働力不足の問題も相まって、システム導入の事例が増えています。防水性の高いセンサを提供している企業も多く、無線通信式のため、既存施設への後付が容易で、細かなレイアウト変更にも柔軟に対応できるのが有線配線システムとの違いです。その結果、零細や中小など、規模に関わらず様々な領域の食品事業者でHACCP義務化を意識した温度監視システムの導入が始まっています。

遠隔監視のメリット

 人手による目視確認と温度記録では、連続的なモニタリングが不可能で、どうしても実態把握が難しかった冷蔵庫内の温度ですが、システムを導入することで、連続データが可視化され、従来では検知できていなかった問題などが見つかるケースが多いようです。

 例えば、これまでは温度異常は発生(検知)していなかったが、システムにより24時間365日監視をしたことで、時おり温度異常が発生していることが判明した事例があります。その発生にはパターンがあることが分かり、原因を特定、改善処置につながった、という事例もあります。

 加熱殺菌槽やチラーの水温測定はHACCPにおけるCCP(重要管理点)に設定されているケースも多く、目視ではなくシステムで監視できることのメリットは非常に大きいです。

 リアルタイムで温度を遠隔監視・自動記録することは、食の安全安心だけではなく、冷蔵庫や冷凍庫の故障を未然に検知して食品ロスを回避するなど、企業のSDGs活動への貢献も期待されています。

温度監視システムの選び方

 各社から温度監視システムが提供されていますが、システム選定の際は注意が必要です。

 まずは、有線システムなのか、無線システムなのか。先に述べたように、有線システムの場合、既存施設への取り付けハードルは非常に高いです。また、導入後に測定箇所が増えた場合の柔軟な対応ができない可能性もあります。

 また、無線システムにも様々な特徴があります。まずはどのような無線方式を利用しているのかを確認することが必要です。例えば、WiFiなどの無線通信を利用している場合は、他の機器との干渉が発生する可能性が高く、また電力消費量が多いため、温度センサの電池やバッテリーの消耗が早く、メンテナンスコスト、労力が想定以上に掛かってしまう場合があります。

 IoT技術が急速に進んでいるとは言え、安価な製品を安易に選んでしまうと、通信が断続的に途切れて温度データ収集ができず、リアルタイム監視を実現できない、といった問題も発生しかねません。また、中長期的な視点で本質的な導入効果を得るためには、運用面での十分なサポートを提供してもらえる製品、サービスを選定することが重要です。システムの導入はしたけれど、誰もシステムを利用していない、通信の問題でリアルタイム監視が実現できていない、といった最悪の事態を避ける必要があります。また、温度センサは経年劣化しますので、例えば3年に1回など買い替えも必要です。センサ機器を定期的に交換してくれるなど、保守サービスの内容にも注意して製品やサービスを選定して下さい。

本記事は温度監視システムを製造・販売するタイムマシーン株式会社様に監修を頂きました。
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