手動バルブとは
手動バルブ (Manual Valve, Manual Operated Valve, Hand Operated Valve) とは、人的な操作 (手動操作) によって、開閉もしくは開度調整を行うバルブです。
一般的に手動バルブは、構造によってグローブバルブ、ボールバルブ、ゲートバルブ、バタフライバルブ、ダイヤフラムバルブなどの種類があります。バルブは流路の開閉によって流体を遮断し、「流す」「止める」を行い、また流量を調節するために用いられます。
手動バルブの使用用途
図1. 手動バルブの使用例
手動バルブの使用用途は、一般的に流体の遮断または流量・圧力の調整です。流体の遮断を行う場合は、ボールバルブやゲートバルブを使用します。一般的には、構造上の強度が高く、流路に弁体 (ボール、ディスク) が残らず、簡単に開閉できるため、こボールバルブが使用されています。
どちらのバルブも、途中開度で利用することはできません。途中開度のまま弁体を全開にしない状態で使用すると、キャビテーションが発生するため注意が必要です。
なお、キャビテーションとは、液体が低圧状態になり気化して気泡が発生する現象です。キャビテーションが発生すると、振動・騒音・流れの脈動が増大し、配管や機器の損傷にいたる可能性があります。
流量・圧力の調整を行う場合は、グローブバルブやバタフライバルブを使用します。一般的には、ハンドル操作で流量・圧力調整が容易なグローブバルブが使用されています。しかし、グローブバルブは弁箱 (ボディ) 内の流路が入り組んだ構造をしているため、流体の圧力損失が大きくなります。
手動バルブの原理
手動バルブは、弁箱 (ボディ) 内に弁体 (ボール、ディスクなど) を備え、弁体を上下・回転させることで、弁体が弁箱内の弁座に密着し流路を遮断します。弁体を上下・回転させるための操作を手動で行うのが手動バルブです。
流体がバルブを通過する際の圧力損失は、バルブの構造によって異なります。圧力損失はバルブ選定において重要な要因です。圧力損失の計算は、下記のファニングの式を用いて計算します。
ΔP=4f (ρμ2L/2d)
ΔP:圧力損失 (Pa)、f:摩擦係数、ρ:流体の密度 (kg/m3)、μ:流体の平均速度 (m/sec)、L:配管長さ (m)、d:内管内径 (m)
手動バルブの種類
手動バルブの種類は、構造や機能によって幾つかあります。手動バルブを選定する際は、使用流体の種類 (水、蒸気、空気、ガス、薬品など) 、流体の圧力・温度、腐食性の有無、および使用目的 (閉止、流量・圧力調整など) を考慮することが大切です。
1. グローブバルブ
図2. グローブバルブ
グローブバルブは、玉形弁とも呼ばれています。流体の遮断と流量・圧力調整に優れているため、止弁や絞り弁として使用されます。
弁箱 (ボディ) 部分が丸みを帯びていて、内部の流路は曲線を描いています。弁箱内の弁体 (ディスク) は、弁軸 (ステム) に取り付けられたハンドルを回転させ上下動します。
これにより弁体が弁座に密着し流体を遮断します。ハンドルを回転させる程度で、弁体と弁座の距離で変わり、流量・圧力調整を行うことが可能です。流量・圧力調整が必要な蒸気、冷却水、温水、圧縮空気、真空ラインなどユーティリティの量を調整する弁として用いられます。
2. ボールバルブ
図3. ボールバルブ
ボールバルブは、弁箱 (ボディ) 内の弁体 (ディスク) が球状 (ボール形) であることが特徴です。弁体は弁軸 (ステム) に取り付けられたハンドルを90度回すことで、弁体が回転し流路の遮断を行います。ボールバルブは、開弁中に弁体が流路に残らないため、圧力損失が小さくなります。
基本的には、途中開度では使用せず、流量・圧力調整には使用しません。比較的コンパクトで安価なものも多く、ハンドルを90度回転させるだけで閉弁できるため、小型の止弁として多く使用されています。
3. ゲートバルブ
図4. ゲートバルブ
ゲートバルブは、流体の遮断に特化して使用されるバルブです。弁箱 (ボディ) 内の弁体 (ディスク) は、弁軸 (ステム) に取り付けられたハンドルを回転させ上下動します。
これにより弁体が弁座に密着し流体を遮断します。弁箱内の流路が真っすぐで圧力損失が小さくなります。途中開度では使用せず、開弁・閉弁で使用するため、止弁として使用します。
4. バタフライバルブ
図5. バタフライバルブ
バタフライバルブは、弁箱 (ボディ) 内の弁体 (ディスク) が円盤状であることが特徴です。弁体は弁軸 (ステム) に取り付けられたハンドルを回すことで、弁体が回転し流路の遮断を行います。
また、弁体が半円状で蝶の羽のように回転する形のものあります。バタフライバルブは、弁体の回転角度を調整することで、流量・圧力調整が可能です。
5. ダイヤフラムバルブ
図6. ダイヤフラムバルブ
ダイヤフラムバルブは、ゴムやフッ素樹脂などの隔膜 (ダイヤフラム) で流路を遮断します。弁箱 (ボディ) 内の弁体 (ダイヤフラム) は、弁軸 (ステム) に取り付けられたハンドルを回転させ、ダイヤフラムが上下に変形します。これにより弁体が弁座に密着し流体を遮断します。
他のバルブに比べて構造がシンプルで、流路と駆動部分がダイヤフラムで隔離されているため、腐食性の高い流体に優れています。そのため、薬品・食品・医療などの分野使用される場合が多いです。また、高圧流体では使用できず、主に0.5 MPa以下の低圧で使用します。
手動バルブの選び方
目的や圧力損失、コストなどを考えて適したバルブを選択します。手動バルブは、駆動装置用の電気配線や空気配管が不要で、より低コストにバルブ操作を行うことができます。
手動バルブに対して自動バルブがあり、駆動装置 (アクチュエータ) によって遠隔もしくは規則で開閉もしくは開度調整を行います。駆動装置 (アクチュエータ) は、圧縮空気や電気駆動で行われます。
圧縮空気駆動の場合は、開動作のみ空気駆動で閉動作をスプリングなどで行う単動式と、開閉動作どちらも空気駆動で行う複動式があります。電気駆動の場合は、電動機 (モーター) 付きスクリュージャッキや、電磁コイルで開閉動作を行うものがあります。
手動バルブのその他情報
手動バルブの記号
手動バルブを使用するとき、非常に大きい設備や広範囲な場所になることが多いです。そのため、図面などはとても複雑なものとなります。
通常は、図面に手動バルブの完全な形状を書かずに、手動バルブの記号を記入します。
手動バルブの記号は、下記JIS規格に示されています。
- JIS Z8204 計装用記号
- JIS Z8207 真空装置用図記号
- JIS Z8209 化学プラント用配管図記号
参考文献
https://j-valve.or.jp/valve/automatic/
https://j-valve.or.jp/valve/letslearn/
https://kenchiku-setsubi.biz/valve-kigo/