テフロンコーティング

テフロンコーティングとはテフロンコーティング

テフロンコーティングとは、材料の表面処理の一種で、フッ素樹脂である「テフロン™」を使用してコーティングする表面処理の方法です。

この「テフロン™」は、旧デュポン社、現在の米国ケマーズ社により商標登録された商品です。そのため、「テフロン™」のブランド、名称を使用できるのは、ケマーズ社が認定してライセンス契約を締結した加工メーカーだけになります。

テフロンコーティングの使用用途

テフロンコーティングは、以下のように様々な分野で使用されています。

  • 身近な家庭製品
  • 航空宇宙機器
  • 自動車の部材
  • 電線の被覆

特に、エンジンにより高温となる自動車の変速機シール材ブレーキパッドベアリングはなどの表面処理に好適です。

テフロンコーティングの原理と特性

1. テフロンコーティングの原理

テフロンコーティングは、「テフロン™」 というフッ素系樹脂によりコーティングをする技術です。「テフロン™」テフロンは耐熱性と耐溶剤性に優れており、電気的に無極性という特性があります。このため、テフロンコーティングのコーティング膜は「テフロン™」の特性を反映しています。

なお、「テフロン™」以外のフッ素系樹脂も様々な企業で製造されており、これを使用したコーティングもテフロンコーティングと称されるのが慣用的です。

「テフロン™」とは?
「テフロン™」 (以下、「テフロン」と表記します) とは、フッ素元素と炭素鎖からなる熱可塑性ポリマーで、熱によって軟化し、成形できる性質を持ちます。テフロン中のフッ素は炭素鎖と安定的に結合しており、テフロンの優れた化学特性や電気特性、熱的特性や機械特性はこの分子構造に起因するものです。

なお、テフロンの種類は、「PTFE (ポリテトラフルオロエチレン) 」や「PFA (パーフルオロアルコキシアルカンポリマー) 」や「FEP (パーフルオロエチレンプロペンコポリマー) 」などの9種類です。

2.テフロンコーティングの特性

テフロンには、耐熱性と耐溶剤性に優れており、電気的に無極性という特性があるため、テフロンコーティング膜の特性はこれを反映したものとなります。

1.耐熱性
テフロンコーティングのコーティング膜は高い耐熱性を持ち、温度変化によって変形しにくい性質を持ちます。これは、テフロンが、フッ素と炭素鎖と安定的に結合している構造であり、ある程度の温度までは特性が変化しないためです。

このことから、エンジンから発生する高温に耐えうる耐熱性と温度変化により変形しにくい特性が求めらる自動車部材の表面処理に使用されています。

ただし、テフロンの融点である327℃以上の温度ではゲル状となるため、コーティング膜の機械性質は急激に低下します。

2.耐溶剤性
テフロンコーティングのコーティング膜は高い耐溶剤性を持ちます。これは、テフロンが、酸やアルカリ、有機溶媒に対しても安定性が極めて高い特性を有しているためです。

3.電気特性
テフロンコーティングのコーティング膜は、電気的に無極性です。これは、テフロンが、分子の構造の対称性から、電気的な極性をもたないためです。テフロンの誘電率や力率といったパラメータは、温度や周波数からの影響を受けず一定であり、絶縁抵抗も極めて高い数値を示します。

このことから、テフロンコーティングは、パソコンやロボット、航空機の電気系統にて使用される電線の被覆にもよく使われています。

テフロンコーティングのその他情報

1. テフロンコーティングの一般的な工程

テフロンコーティングする方法には、テフロンの種類、塗布する基材や母材の材質、使用する目的により、色々な方法や工程があります。一般的な工程は以下の通りです。

  1. 事前診断
    塗布する母材に問題となりそうな傷、打痕、溶接箇所などを点検します。
  2. 脱脂、空焼き
    油分、付着物を取り除くために、脱脂してから高温 (300℃程度) で空焼きをします。このとき、熱による歪が問題となる場合は、注意が必要です。
  3. 粗面化
    母材の汚れ、空焼きによる酸化皮膜を取り除くために、アルミナ研磨材でブラスト処理をします。
  4. プライマ (下塗り)
    母材とテフロンコーティングを接着させるための接着剤を塗布します。自己接着性のあるフッ素樹脂塗料の場合は、プライマの必要はありません。
  5. 乾燥
    100℃程度で乾燥を行います。プライマによっては、200℃以上の高温焼成が必要です。
    なお、テフロンコーティングの種類によっては、後工程のトップコートの前にミドルコートが必要な場合もあります。
  6. トップコート(上塗り)
    スプレーガン粉体塗装など所定の方法で、テフロンコーティング剤を塗布します。
  7. 焼成
    テフロンコーティング剤を硬化させるために、所定の温度と時間により焼成します。
  8. 検査
    テフロンコーティング膜の外観、膜厚、ピンホールなどの検査をします。

2. テフロンコーティングの膜厚について

上述のような工程を経て生成されるテフロンコーティング膜の膜厚は、使用目的により様々です。一般的には、金型の離型性向上といった非粘着目的であれば20~50㎛、外観の機能維持といった耐食目的であれば300㎛~2mmぐらいまでコーティング膜を生成することもあります。

また、非常に特殊なコーティングでは、1㎛といった非常に薄い膜厚のコーティング膜を生成します。テフロンコーティングにおいて、コーティング膜のピンホールは非常に重要な課題です。このため、あえて膜厚を厚くし、ピンホールを防ぐ場合もあります。例えば、250㎛以上の膜厚でのコーティングは「ライニング」と呼ばれます。

参考文献
https://www.yumoto.jp/technology/onepoint/teflon-coating
https://www.meikou.jp/fluororesin-2.html
https://www.fluorocoat.co.jp/more-fcc/
http://www.nf-technocoat.com/faq/

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