キュービクルとは
キュービクル (英: Cubicle) とは、高圧の受電機器と低圧への変電機器を一式収納した設備です。
発電所から送電される電気の電圧は一般的に6,600Vで、コンセントや照明などは100Vまたは200Vで駆動する場合がほとんどです。キュービクルは、受電した電力を需要設備に必要な電圧へ降圧する機器類を金属製の箱 (筐体) に収納した設備を指します。
一般的には、電力会社との電気供給契約が50KW以上の施設設備に対して設置されます。
キュービクルの使用用途
キュービクルは市街地や住宅地など、あらゆる場所に設置される設備です。気を付けて街中を歩くと、各所で見ることができます。以下はキュービクルの使用一例です。
- ショッピングモールやスーパーなどの商業施設
- 公民館や学校などの公共施設
- 学生寮やマンションなどの住宅施設
- 高層オフィスビル
- 加工工場や小規模の工場
キュービクルの原理
キュービクルは受電機器、変電機器、低圧機器、筐体などで構成されます。
1. 受電機器
受電機器は高圧配電を受け入れるための機器です。主に断路器や遮断器で構成されます。断路器はメンテナンス時の安全確保などを目的に設置され、遮断器は波及事故を防止するために設置されます。
キュービクル内の変電機器や高圧配電線が故障して短絡・地絡すると、電力会社の送電網などの上位回路に大電流が流れます。この大電流を放置すると電力会社の送電網が安全のために遮断され、周囲一帯が停電します。これが波及事故です。
遮断器は波及事故を防止するために、キュービクル内で過電流や地絡を検知すると電力供給を遮断することが役割です。キュービクル内の遮断器には、PF・S方式とCB方式があります。
PF・S方式は高圧限流ヒューズ(Power Fuse)と負荷開閉器(load break Switch)を採用した方式です。CB方式は遮断器と保護継電器を採用した方式で、遮断器のほとんどが真空遮断器です。PF・S方式は安価であり受電容量が小さい場合に使用され、CB方式は受電容量が大きい場合や負荷電流の開閉が頻繁な場合に使用されます。
2. 変電機器
変電機器は受電した高電圧を低電圧へ変換する機器類です。一般的には、変圧器やコンデンサが変電機器に当たります。
変圧器には油入変圧器やモールド変圧器が使用されます。キュービクルに収納するには750kVA程度が上限であり、それ以上の容量の場合は別置が必要です。
また、変電機器を使用すると電流が遅相してしまいます。電流が遅相すると送配電にロスが発生します。そのため、電力会社の供給契約では力率が低くなると割り増しされる条項がある場合が多く、コンデンサによって遅相した力率を1に近づけます。
3. 低圧機器
低圧機器は変圧した電力を各所へ分配するための機器類です。配線用遮断器や漏電遮断器が該当します。機器構成によっては電磁接触器や電磁開閉器がキュービクル内部に取り付けられることもあります。
4. 筐体
筐体は内部機器を保護するための金属製外箱です。主に1~3mm程度の鉄板が使用されます。外面は腐食防止と景観への考慮の観点から乳白色やベージュ色で塗装されます。
キュービクル内部には、防護措置を講じずに触れると感電してしまう充電部が露出している箇所があります。公共施設などのキュービクル内部へ容易に侵入されると感電事故が発生する危険があります。したがって、扉の開閉ハンドルには錠が付いていることが多いです。
変電機器や配電線は、電気を使用すると発熱する性質があります。発熱量が多い場合はキュービクル内部に熱がこもって高温となる危険性があるため、変電機器が大容量の場合は換気ファンや盤用クーラーが設置されます。
キュービクルのその他情報
キュービクルの名称
キュービクルの名前は、立方体を意味するCubeから生まれました。立方体のような箱状の筐体に機器が収納されていることが由来です。
ただし、変圧器を内部に含まない受配電盤はキュービクルと呼ばれません。金属筐体に受配電機器が収納されているため同様に立方体に近い形状ですが、この場合はメタルクラッド (略してメタクラ) と呼ばれます。
参考文献
http://www.kikakurui.com/c4/C4620-2018-01.html
https://electric-facilities.jp/denki8/cube.html
http://www.nihondenkisangyo.jp/wh/pdf/pf_s.pdf
https://www.nihondenkisangyo.jp/wh/pdf/cb.pdf