エッチング加工とは
エッチング加工とは、被加工材である金属板の決められた部分を部分的に溶解あるいは切削して、金属板の所定部分をくり抜く、あるいは決められた厚みまで薄くするなどして、さまざまなパターン形状に加工する技術です。
エッチング加工の特徴
エッチング加工は、極めて薄い金属板や小さい金属板に対しても、複雑なパターン加工を高精度で行うことが可能です。加工できる金属の種類も多く、半導体などの電子部品や医療機器などの部品製造など幅広く用いられています。
なお、エッチング加工で、扱うことのできる材質としては、ステンレスや銅、鉄などの他にもモリブデンやチタンなどが挙げられ、金属ごとに適した使用用途があるため、最適な金属を選択することも重要です。
エッチング加工は、短時間かつ低コストで行えることがメリットですが、その一方で大量生産には適していないというデメリットもあります。
エッチング加工の使用用途
エッチング加工では、プレス加工では扱えない細かなパターンの加工や、薄い被加工材に対しても非常に高精度な加工が可能です。このため、前述の半導体などの電子部品や医療機器などの部品などを構成する集積回路の製造、薄型ヒーターのヒーター線(SUS箔)のパターニングなどに使用されています。
もちろん、電子機器や自動車のように多くの部品を組み合わせた製品の中にはエッチング加工された部品が多数組み込まれています。また、一般的な生活雑貨やインテリアなどの意匠品、衣料品など精度が必要とされる製品の製作にも好適です。
エッチング加工の原理と工程
エッチング加工の原理
エッチング加工は、被加工材である金属板の上に作製するパターン形状を転写した保護膜を形成し、金属板の保護膜のない部分を溶解あるいは切削します。その後、金属板をくり抜く、あるいは決められた厚みまで薄くするなどして、さまざまなパターン形状に加工していきます。
エッチング加工の工程
実際の工程としては以下の様なものが挙げられます。
1. 原版作成工程
CADを用いて作りたいパターン形状に合わせた原板を2枚作成します。これは、原板2枚の間に被加工材を挟むためです。このとき、原板の寸法にズレがあると加工後の品質に大きく影響するため、原板の作成には精度が要求されます。
2. ラミネート工程
これは、被加工材である金属板に保護膜を形成するためのフォトレジストを貼り付ける工程で、この加工のことをラミネートと呼びます。フォトレジストとは感光性を持つ物質で、後の工程で「被加工材である金属板にパターン形状を転写する」「金属板の除去しない部分をエッチングから保護する」などの役割があります。
なお、金属板とフォトレジストの密着度が加工後の品質に大きく影響するため、被加工材である金属板を脱脂洗浄した後にフォトレジストを貼り付けるのが一般的です。
3. パターン形状転写工程
フォトレジストを貼り付けた金属板を原板で挟み込みUVを照射します。すると、原板で遮光されていない部分のフォトレジストが感光し、結果、原板のパターン形状が被加工材である金属板に転写されます。
4. エッチング工程
まずは、被加工材の表面に現れたパターンに沿って、エッチングにより除去したい部分のフォトレジストを剥がします。そこに金属を溶解させるエッチング液を吹き付けると、被加工材である金属板のフォトレジストを剥がした部分のみが溶解し、パターン形状だけが残ります。最後に被加工材全体のフォトレジストを除去して終了です。
エッチング加工の種類
エッチング工程には上述のようにエッチング液を使用するウエットエッチングと、反応性のイオンガスやプラズマガスを反応させるドライエッチングがあります。
1. ウエットエッチング
ウエットエッチングは、前述のように所定のパターン形状にフォトレジストが転写された被加工物に、薬液を反応させる事でパターンの形状を得る加工方法です。この方法は、半導体製造工程などで使用されており、複数の被加工物を薬液に浸すバッジ式のウエットエッチングが広く用いられています。
複数の被加工物を同時処理出来るため生産性が高いというメリットがありますが、原理上フォトレジストの下側にも侵食して溶解するため、超微細なパターン形状の加工には向いていません。
2. ドライエッチング
ドライエッチングとは、所定のパターン形状にフォトレジストが転写された被加工物に、反応性のイオンガスやプラズマガスを反応させる事で、フォトレジストがない部分を切削加工して所定のパターン形状を得る方法です。ドライエッチングでは、フォトレジストに対して垂直に反応性のイオンガスやプラズマガスをぶつけて切削加工します。
つまり、ウエットエッチングが等方性のエッチング加工であるのに対して、ドライエッチングは異方性のエッチング加工が可能です。また、原理上、ガスはフォトレジストに対して垂直に侵食するため、ドライエッチングにおいてはウエットエッチングのようにフォトレジストの下側にガスが届くことはなく、ウエットエッチングよりも超微細なパターン形状の加工に向いています。
エッチング加工のその他情報
集積回路とエッチング加工
三次元構造を層状に堆積させる集積回路の作製工程にはエッチング加工が多く用いられています。集積回路を構成する三次元構造は非常に繊細なパターン形状を有するため、ウエットエッチングだけでなく、ドライエッチングも使用して、より繊細な加工を可能としています。
求められる生産性や、集積度(パターニングの微細さ)に応じて、ウエットエッチング加工やドライエッチング加工を適宜選択することが重要です。
参考文献
https://www.hirai.co.jp/technology/etching/
https://www.p1-net.co.jp/difference
http://www.wakae1960.net/etching/
http://www.jmq.jsr.co.jp/products.html