トランジスタとは
トランジスタ (英: Transistor) とは、電子回路に用いられる半導体素子で、電気信号を増幅する増幅作用や電気の流れを制御するスイッチング作用があります。
トランジスタは多くの電子機器に使われています。増幅作用を利用した用途として、オーディオのアンプやセンサの検出回路などが挙げられます。スイッチング作用を利用した用途として、集積回路を構成する論理回路や電源の整流回路などが挙げられます。
トランジスタの構造はn型半導体とp型半導体の組み合わせになっています。一般的にはシリコン (Si) 基板上に作製されますが、用途によっては、SiGe、GaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体が使われることもあります。
トランジスタの仕組み
トランジスタは3端子の素子です。薄いp型半導体のベースをn型半導体のコレクタとエミッタで挟んだ構造で、NPN型トランジスタと言います。また、n型半導体をp型半導体で挟んだPNP型トランジスタもあります。これらのNPN型とPNP型の組み合わせで、さまざまな機能を持った電子回路を作ることができます。
NPN型トランジスタの動作を簡単に説明します。PNP型の場合は電圧の極性と電流の向きが逆になります。NPN型トランジスタを使う際には、エミッタを基準にしてベースとコレクタにそれぞれプラスの電圧をかけます。そうすると、ベースに流れる電流の数十~数百倍の電流がコレクタに流れます。つまり、ベース電流の入力によってコレクタ電流の出力を制御することができ、増幅作用やスイッチング作用が得られます。
ベース電流とコレクタ電流の比を電流増幅率hFEと言い、トランジスタの性能を示す重要な指標の一つです。
トランジスタの種類
トランジスタの構造によっていくつか種類があります。トランジスタは大きく分けると、バイポーラトランジスタとユニポーラトランジスタの2つに分類されます。
「バイポーラ」は電流を流すために電子とホールが関わることから「双極」の意味を持つ名前が付けられています。これに対して「ユニポーラ」は電子とホールいずれかが電流を流すのに関わるので、「単極」の意味を持つ名前が付けられています。
1. バイポーラトランジスタ (BJT)
バイポーラトランジスタはP型半導体とN型半導体を組み合わせて作られていて、NPN接合かPNP接合になっています。 単純にトランジスタというとバイポーラトランジスタを指します。NPN型トランジスタやPNP型トランジスタはBJTと呼ばれます。
2. フォトトランジスタ
光の入射によってコレクタ電流を制御できるトランジスタです。フォトダイオードに比べて大きな光電流を取り出すことができます。
これらは用途に応じて適切に選択する必要があります。
4. 電界効果トランジスタ (FET)
トランジスターはベース電流を変化させてコレクター電流を制御しますが、電界効果トランジスターは電圧によって電流を制御します。
電圧で制御するトランジスタのため、BJTに比べて駆動電力が小さい、高速駆動しやすいといった特長があります。一方で高耐圧化や大電流化の面で劣ります。
FETはさらに、接合型FET (JFET) や金属酸化膜半導体FET (MOSFET) があり、それぞれNチャネル型とPチャネル型があります。FETにも3本の電極があり、それぞれソース、ゲート、ドレインと呼ばれます。 トランジスタは消費電力が大きく、発熱量が大きいので、密集した回路を組めません。
電界効果トランジスターはトランジスターと違って消費電力が小さく、小型化が可能なのでICやLSIなどの集積回路に多く使われています。
5. 絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ (IGBT)
大電力用途のパワートランジスタの一つで、大電流、高耐圧化が容易な構造です。
トランジスタの動作
トランジスタにはNPN型とPNP型があり、ベース、コレクター、エミッターという3本の電極を持つ半導体素子です。
乾電池のプラス極をベースに、マイナス極をエミッターにつないだ場合、エミッターから電子がベースに流れ込みます。この電子の一部はベース内のホールと結合しますが、残りの電子はベースとコレクターの接合面に流れ込みます。このときベースからエミッターに流れ込む電流をベース電流といい、コレクターからエミッターに流れる電流をコレクター電流といいます。コレクター電流はベース電流に比較して非常に大きく、少しのベース電流の変化に対しても大きな変化を起こします。これをトランジスタの増幅作用といいます。