ベアリング温度センサーとは
ベアリング温度センサーとは、ベアリング (軸受) の温度を測定し、ベアリングの異常を発見するために使用される温度センサーです。
ベアリングは、運転開始後に上昇しますが、一定時間経過すると室温より10〜40℃程度高い温度で定常状態になります。ベアリングの温度が定常状態にならず異常に上昇する場合は何らかの不具合が起こっているため対処が必要です。ベアリング温度センサーは、このような不具合を早期に検知するために使用されます。特に重要なベアリングは、焼付きなどによって損傷すると機器のダウンタイムが発生することを意味するため、温度センサーが使用されることが多いです。
ベアリング温度センサーの使用用途
ベアリング温度センサーは、様々な機械に使用されるベアリングのモニタリングのために使用されるセンサーです。ベアリング内部の温度を測定することで、ベアリングの異常昇温をすばやく発見し、不具合の迅速な検出と事故の防止に役立ちます。
ベアリングの使用用途
ベアリングとは、軸・シャフトなどの回転体を正確で滑らかに支持するための機械部品であり、軸受と呼ばれることもあります。ベアリングは、産業用機械、自動車や航空機、鉄道車両、家電製品などをはじめとするさまざまな工業製品に幅広く使用されています。
特に、ディーゼルエンジンなどのピストンエンジンでは、クランクシャフトを適切な位置で支え、エンジンブロック内で回転できるようにベアリングが使用されています (メインベアリング/主軸受)。ディーゼルエンジンは、船舶、発電、産業用途など様々なシーンで利用されています。
ベアリング温度センサーの原理
1. ベアリングの異常昇温の原因
ベアリングは、動作開始と共にゆっくりと温度が上昇し始め、通常1-2時間後に定常状態に達します。 ベアリングの常温は、機械の熱容量、熱放散、速度、負荷によって異なりますが、不具合がある場合軸受温度が急激に上昇し、異常高温になります。下記は異常昇温の原因となる主な不具合の例です。
- 潤滑剤の極度の不足もしくは過多、潤滑剤不適
- 軸受の取付け不良
- 軸受内部すきまの過小あるいは荷重の過大
- 密封装置の摩擦過大
- はめあい面のクリープ
2. ベアリング温度センサーの機構
ベアリング温度センサーは、ベアリングチャンバーの外側の温度から内部温度を推測するものや、 油穴を利用して軸受外輪の温度を直接測定するものなどがあります。製品によってはベアリングのグリースニップル取付穴に直接ネジ止め可能です。
温度を感知するセンサー機構は熱電対や測温抵抗体などです。熱電対とは、2種類の金属を接続し、温度差で発生する起電力を使った温度センサーです。サーミスタや測温抵抗体は、物質抵抗と温度の相関をとることにより温度測定を行うセンサーです。サーミスタは、狭い温度範囲を小型・高感度で測定するという特徴があり、測温抵抗体は広い温度範囲を直線性良くカバーできるもののサーミスタより感度が低いという特徴があります。
ベアリング温度センサーの種類
ベアリング温度センサーは、様々な製品が販売されています。動作温度も様々であり、例えば-40~105℃、-15〜60℃、0〜1200℃以下などの範囲で測定できる製品などがあり、製品によっては規定の温度でアラームを鳴らすことも可能です。
また、ディーゼルエンジンで使用されるベアリング温度センサーには、ピストンクラウンまで上昇する潤滑油の温度を測定する潤滑油センサーとセットで温度監視を行うことができるものがあります。また、製品によってはワイヤレス通信と自己発電システムにより完全無線化が可能です。リチウム電池を動力としている製品もあります。
また、温度の他、振動の速度や加速度エンベロープなどを同時に測定できるセンサーや、タブレット、スマートフォンやスマートウォッチとBluetoothで通信可能なセンサー製品、クラウドとの連携が充実している製品もあります。過酷な工業条件で使用されることから、防水防塵・耐炎・防爆などの基準を満たしている製品も多いです。