硬爪

硬爪とは

硬爪とは、主に旋盤で被削材となるワークを旋盤のチャックに固定するための治工具の一つです。硬爪と同じ役割を果たすものに生爪がありますが、目的に応じて使い分けられるものです。

硬爪も生爪も旋盤のチャックに取り付けられるものであり、多くは3つセットで使われます。旋盤のチャックには油圧や空気圧を利用するパワーチャックと、手動のスクロールチャックがありますが、硬爪も生爪もどちらにも利用されます。

硬爪は生爪に比べて硬いのが特徴です。硬さが高いために摩耗しにくく、繰り返しの使用に対しても高い耐久性があります。一方で生爪は被削材の形状に合わせて、成形加工を施してから使用するものです。事前に成形することによって被削材をより確実に固定できるようになるため、精度の高い加工に向いています。逆に硬爪はあまり精度を必要としない、粗加工に用いられる爪です。

硬爪は、オニ爪やハードジョーという名称で呼ばれることもあります。

硬爪の使用用途

硬爪は主に汎用旋盤などの工作機械で加工をする際に、ワークをチャックに固定するために使用されます。爪がワークと接してねじ締結などによって固定されることによって、ワークが加工できるようになります。旋盤のようにワークが回転する場合、硬爪は円周上120°間隔で3つセットで使用されるのが一般的です。

また硬爪は、加工精度をあまり必要としない粗加工時に使用されます。硬爪は硬くて耐久性がある一方で、生爪のようなワーク形状に合わせた成形加工を施すことを前提にはしていません。そのためワークを点接触で固定する場合が多く、固定力の強さにおいては成形された生爪に劣ります。また爪が硬いため、ワークとの接点に傷や凹みなどを生じさせてしまう可能性もあるので注意が必要です。

硬爪は汎用旋盤で多く用いられますが、NC旋盤、マシニングセンタ、ボール盤、フライス加工において使用されることもあります。

硬爪の特徴

硬爪の特徴は頑丈であることから、何度でも繰り返し使用できることです。通常は靱性のある合金鋼を熱処理することによって、硬さを高くしています。

硬爪は表面が加工されていない黒皮付きのワークを旋盤などで切削加工する際にも適しています。また生爪のようにワークに合わせた事前の成形をすることもありません。

逆に硬爪ではワークと点接触になることが多く、高い加工精度を要求される加工には向いていません。硬爪は硬さが高いことから、ワークを固定する際に強い力でクランプしてしまうと、ワークに傷や凹みを生じさせてしまう可能性もあります。

硬爪の選び方

硬爪は汎用旋盤などには、標準で付属していることが多い治工具です。また硬爪は生爪同様に旋盤に使用されているチェックに合わせた製品から選ぶことができます。チェックメーカーに合わせて、寸法が異なる複数の製品から選べるようになっているのが一般的です。また多くは1セット3つで販売されています。

硬爪は同じチェックメーカーのものでも、形状によってチェック把握範囲が設定されており、チェックできる外径や内径の寸法が定められています。また最高使用回転数にも注意が必要です。硬爪は旋盤で用いられる際には、硬爪自体も回転するため遠心力が発生します。遠心力によってワークの把握力も低下するため、定められた最高使用回転数以下で使用することが安全上、とても重要です。最高回転数以外には、最大静的把握力、ハンドルトルクも定められています。ハンドルトルクは硬爪の把握力を発生させるものであり、適切なトルクで締め付ける必要があります。

また同じチェックメーカーであっても使用できるチェックが指定されている場合もあるので、事前に確認してから選ぶことが大切です。