リンクボール

リンクボールとは

リンクボール

リンクボール (英: Link Balls) とは、スタッド (ねじ加工された軸) の付いた球面すべり軸受です。

「ボールジョイント」「ロッドエンド」「ロッドエンドベアリング」「リンクボールロッドエンド」「球面滑り軸受」とも呼ばれていて、JIS B0601 球面滑り軸受−用語で下記のように規定されています。

  • ロッドエンド
    部品間の相対運動及び部品間を連結するためのロッドエンドハウジング及び軸受で構成する組立品
  • 球面滑り軸受ロッドエンド
    ロッドエンドハウジングとスタッド付き又はスタッドなし
    球面滑り軸受で構成する組立品

リンクボールの使用用途

リンクボール_図1

図1. 自動車のリンクボール使用例

リンクボールは、ボール部の隙間が小さく、スムーズな動作を実現する球面すべり軸受です。回転や揺動運動を行うと部品間の連結と運動伝達として各種のリンクモーション機構で使用されています。

リンクボールは、工作機械や繊維機械、包装用機械、ロボットなど大きな揺動角が求められる場面で使用されています。その他の使用例では、航空機、トラクターなどの建設・土木用機械、コンバインのような農業機、トンネル切削用シールドマシンなどです。

無給油タイプは、食品関連機械にも多く使用されています。また、自動車のサスペンションやステアリングは身近な使用例です。

リンクボールの原理

リンクボールは、ボール付きシャンクとボールを保持するホルダーで構成され、それぞれの球面が接触した状態で、シャンクの回転または揺動運動を支持しています。このような支持は、球面すべり軸受としての機能です。

ホルダー端部は「おねじ」または「めねじ」で、連結棒などの端部に締結して使用します。2つの部品の固定や連結するために使用し、回転や傾斜に自由度のある接続方法で、両部品の相対的な変位を、球面すべり構造によって許容する機械要素部品です。

リンクボールと連結棒のねじ込み深さで、部品間の距離が調整でき、リンク機構の角度調整することができます。

リンクボールの種類

1. シャンクの向きによる分類

リンクボール_図2

図2. リンクボールの種類

リンクボールは、ボールにねじ付加工されたシャンク (軸) が溶接され、このシャンクの向きによって下記2種類があります。

  • インライン形: ボール付きシャンクとホルダーが同軸
  • アングル形: ボール付きシャンクとホルダーが直角

リンクボールは、自動調心式の球面すべり軸受で、幅広い自動化装置において傾斜、揺動、低トルク回転、スムーズな動力伝達を可能にします。

2. 荷重負荷方向による分類

リンクボール_図3

図3. 押込荷重と引抜荷重

リンクボールのボール付きシャンク部の軸方向 (アキシアル方向) には、上図のようにホルダーに押し付ける方向の「押込荷重」と、ホルダーから引き抜く方向の「引抜荷重」がかかります。これらの荷重負荷方向に対して、リンクボールの種類で下記のように適用の可否が異なります。

リンクボールの種類 アキシアル方向 ラジアル方向
インライン形 ×
アングル形 ×

〇: 適用可 ×: 適用不可

3. 材質・製造方法による分類

リンクボールは、ボール付きシャンクの球面部に高精度の軸受用鋼球を使用し、ねじ加工された鋼製のシャンクを溶接して接合しています。また、ホルダーの材質は耐摩耗性が高く軽量の高強度アルミ合金です。

ホルダー球面部は、ダイカスト鋳造の際にボールを包みこんで成形し、シャンクとボールを溶接します。これにより、ボールがホルダー球面部に完全接触し球面転写され、それぞれの隙間は最小になり滑らかな動作になります。

4. 潤滑の有無

リンクボールは、ボールとホルダーの接触面がスムーズな動きになるように、精細加工がなされ耐摩耗性に優れた材質を使用しています。しかし、金属同士の接触であることから必ず摩耗が発生します。

そのため、球面の摺動部には、グリースなどの潤滑剤を充填し、長期間にわたりスムーズな動作と耐摩耗性を維持させています。ホルダーのボール付きシャンク貫通部は、ゴム製ブーツを取り付けて覆っているため、使用環境による粉塵や泥水の侵入を防ぎ、屋外での使用に最適です。

ローリングセンター

ローリングセンターとは

ローリングセンター

ローリングセンターは、旋盤などの工作機械の部品であるセンターの一種で、回転センターやライブセンターなどと呼ばれることもあります。

センターは旋盤などの心押台に取りつけ、切削加工の際に心押しを行うために、また、工作物(ワーク)の回転の中心を保持するために使います。

センターの種類には固定センターとローリングセンターがあります。ローリングセンターはベアリングを内蔵したセンターで、固定センターに比べ高速回転時の摩擦を抑えることができるという特徴があります。

ローリングセンターの使用用途

ローリングセンターは、普通旋盤NC旋盤研削盤歯車研削盤・ホブ盤・研磨盤など、さまざまな工作機械で回転する工作物を支えるために使用されます。

ベアリングを内蔵しない固定センターが、回転によって生じる摩擦のために回転速度に制限があるのに対し、ローリングセンターはベアリングによって摩擦を低減しているため高速回転の加工が可能です。

一方、ベアリングの回転が加工精度に影響するため、ローリングセンターは高精度の加工には向いていません。

ローリングセンターの特徴

ローリングセンターは、本体にベアリングを内蔵しており、旋盤などの工作機械の主軸と連動して工作物を保持することができます。長い工作物であっても安定して保持し、高速回転の加工時でも工作物が振れるのを防ぐことができます。ベアリングによって摩擦が軽減されるため、ローリングセンターには寿命が長いというメリットもあります。

ローリングセンターは、ベアリングが内蔵されている分ヘッダ部分が太くなっています。そのため、工作物の形状や直径によっては、工具(バイト)とセンターが干渉して加工ができない場合もあり、加工前に治具間の干渉をチェックする必要があります。

ローリングセンターは、ヘッダ部にベアリングが内蔵されているため支点距離が長くなり、その距離に比例した大きさの荷重モーメントが先端部にかかります。また、支点距離が長い分、加工時のたわみも大きくなります。そのため、ローリングセンターは固定センターに比べ、剛性・精度の点で劣っているというデメリットがあります。

ロールボックスパレット

ロールボックスパレットとは

ロールボックスパレット

ロールボックスパレット (英:roll box pallet) とは、格子状のカゴの下に車輪が付いている運搬用台車です。

ロールボックスパレットは、物流の分野では欠かせないものとなっています。使用しない時は折りたたむことで場所をとらず、商品を積み込んで倉庫の所定の場所に移動して保管することも、あるいはそのままトラックにも積み込むことも可能です。

ロールボックスパレットは、「カゴ車」、「カゴ台車」、「カーゴテナー」、「ロールボックス」などとも呼ばれます。また、大型ディスカウントショップでは、ロールボックスパレットがそのまま商品陳列台として使用されます。

ロールボックスパレットの使用用途

ロールボックスパレットは、物流の配送センターをはじめ、保管倉庫、製造工場の搬出入エリア、農水産業関連の市場と各種部材や商品の入出庫を行う場所での用途が多いです。また、商業施設をはじめ、大型スーパー、小売店など商品流通関連施設でも使われます。

そのほか産業廃棄物処理場など環境衛生施設では、区分されたあとの運搬などにも活用されます。

ロールボックスパレットの特徴

ロールボックスパレットは、物流を支える簡易かつ使い勝手の良い移動ツールとなっているため、移動中の音を極力小さくし、軽量化させ、材質の防錆処理などを行います。

物流センターでは、ロールボックスパレットに商品を保管できます。また、ピッキング作業後、商品を入れたパレットをそのままトラックに積み込むことが可能なので、収納と搬送が効率的に行えます。トラックから荷下ろし後、店舗まで積み替えなしで搬送が可能です。

ロールボックスパレットは、スチール製の枠で囲われており、倉庫、物流センター、トラックに高く積み重ねることができます。

ロールボックスパレットの種類

1. 床板の材質

・床板が樹脂製のタイプ:軽量で錆びに強く、湿気が多いところでも使用できます。スチールに比べ頑丈さが劣るデメリットがあります。

・床板が鋼製のタイプ:底板は穴がないため、隙間から物品が落ちる心配はありません。また、頑丈であることから重い荷物の移動に適しています。懸念されるのは錆びの発生です。

2. かごのタイプ

・標準仕様:パレットの3方向が格子または網で囲われたパレットです。段ボールなどを重ねて運ぶ際によく使用されますが、搬送中に荷崩れの可能性があります。

・観音扉仕様:かごの扉が左右に開く観音扉付タイプです。背の高い荷物や大きな荷姿の荷物も容易に入ります。搬送中は扉を閉めるため、荷崩れの心配がなく、安定した輸送が可能です。

・ダブルゲート仕様:かごの扉が上下2段になっています。棚板を設置すれば積載量が増えます。

・SGめっき仕様:かごを構成するパイプに溶融亜鉛アルミニウム合金めっきSG鋼管を使用し、耐食性を向上させたパレットです。

・内張りボード仕様:軽量で強いポリオレフィン製プラパールの内張りボードを使用したものです。ワンタッチで取付が可能です。

・樹脂ネット張り仕様:丈夫な素材の樹脂ネットで荷物や商品を保護します。ネットはインシュロックで固定します。

3. かごの折りたたみ方

・L字折りたたみ仕様:ロールボックスパレットを折りたたむ場合、底板を持ち上げ、右側の側面を折りたたみL字型にするタイプです。コンパクトに保管ができます。

・I字折りたたみ仕様:折りたたむ場合、底板を持ち上げ側面を左右共たたむことでI字型になるタイプです。L字タイプより小さくなるため、保管効率がより高くなります。

4. かごのサイズ

・幅1100×奥行800×高さ1700mm:JIS Z 0610で規定されているタイプで、もっとも流通しているものです。

この他、幅950×奥行800×高さ1700mm、800×600×1700mm、850×650×1570mmなどのタイプがあります。積載重量は最大500㎏までの仕様が多いが、JISでは300㎏、1t、1.5t、2tまで規定されています。

ロールボックスパレットのその他情報

ロールボックスパレットの安全対策

ロールボックスパレットによる事故防止のため、国や地方自治体の労働局などが主となり、「ロールボックスパレット使用時の労働災害防止マニュアル」が作成されました。

マニュアルの中で8つのルールが挙げられ、例えば、事故多発場所は「段差」や「傾斜のある場所」です。折り畳んだ状態やトラックへの搬入時などが特に注意喚起されています。

ロックライン

ロックラインとは

ロックライン

ロックラインとは、機械加工で必要となる加工スポットへの冷却などを行うパイプシステムのことです。

ホースやノズルといったパーツを組み合わせたもので、フレキシブル性とセットの容易性から主に機械加工の冷却で使用されます。液体のほか空気などにも使用可能です。

米国企業による登録商標「LOC-LINE」の称呼 (しょうこ: 商標法上の呼び方) で同じような分野での商品で出願した場合拒絶される場合があります。

ロックラインの使用用途

ロックラインは、機械加工で発生する加工スポットの発熱の冷却や潤滑油の給油、加工時発生する切粉の除去などが使用されています。加工スポットへのセッティングが容易で、一度セットすれば内部圧力で動いてしまうこともありません。

各種専用パーツの組み合わせによりマルチパイプラインといった構成や複数ポイントへの吐出なども可能となり、金属配管と異なり樹脂製パーツが使用されているため周辺機械との接触や腐食といった心配はありません。

ロックラインのその他情報

ロックラインの特徴

ロックラインの基本構成は、吐出ノズルと延長可能なホースで、ホースは「ピース」と呼ばれる基本部材を専用工具により継ぎ足していくことで延長することが可能です。微妙なクーラントのセッティングが容易なうえ、構造上一度セットしたパイプラインを保持できるため、あとのメンテナンスにもあまり手間がかかりません。

また、ロックラインは吐出だけでなく吸引も可能となるため1台で二役をこなすことができます。吸引パイプラインとしての使用例としては、健康被害が指摘されているはんだ付け時の煙 (ヒュームと呼ばれています) の吸引などがあります。

そのほか、湿式研磨のミストをはじめとした各種ミスト・グラファイト・粒子の吸引、薬品メーカなどで設置されているヒュームフード内に吸引、木工加工時の切りくず吸引などがあります。ロックラインの先端にスマートフォンなどのモバイル機器を取り付け自在スタンドに使用するケースもあります。

温水洗浄機

温水洗浄機とは

温水洗浄機

温水洗浄機 (英: hot water washing machine) とは、温水を使った洗浄機です。

温水を使用することでなかなか落ちにくい油汚れの除去や殺菌効果があり、広く活用されています。通常洗浄力を高めるため、高圧の温水を使用したものが主流です。

屋内で使用されるものだけでなく、屋外で使用される自動車洗浄機や、AC電源を必要としないエンジンで動かす機械も各種製作されています。高圧温水洗浄機は、吐出圧力10MPa前後、温水の最高温度80℃ぐらいが一般的です。

温水洗浄機の使用用途

温水洗浄機は、工場やホテルなどの屋内での使用や、工事現場といった屋外使用、さらに業務用や自家用と幅広く使用されています。

温水洗浄機の屋内での使用は、浴場を抱える旅館やホテル、共同浴場、厨房機器・換気装置の油汚れの洗浄、ゴムマットの洗浄、機械設備の洗浄などです。食品や水産物関連の工場でも温水洗浄機が使用されています。

温水洗浄機の屋外での使用は、自動車に関わる整備会社をはじめ、板金業者・運送会社・タクシーなどの業務用洗浄、ガソリンスタンドの洗車機やマット洗浄、鉄道車両・航空機・船舶の洗浄などです。また、クローラ走行車の洗浄などにも使用されます。

そのほか、移動可能な温水洗浄機は、屋外でビルの外壁洗浄、屋根の洗浄、仮設資材の洗浄、農業・畜産業をはじめ養鶏場などで使用されています。

温水洗浄機の原理

1. 温水洗浄の効果

温水洗浄機で使用する温水は、数々の効果があります。効果の1つは油汚れに対するものです。温水にすることで水の密度が下がり、常温の水よりも油分を溶解する能力が高まるためです。特に冬場は、油等も固まって除去しにくく、水では、きれいに汚れが落ちません。このような油脂含有の汚れでは、温水洗浄機を使うのが有効です。

除雪作業や車両や重機等頑固な油で汚れているものも、温水洗浄機ならすっきり洗えます。温水にすることで粘度が下がることも洗浄には好都合です。粘度の低下は、対象物の隙間などに入り込みやすくなるため洗浄効果が高まります。車の足回りなどに効果的です。

2. 温水洗浄の他の効果

温水は、油脂以外の鳥のふんや花粉による汚れにも効果があります。鳥のふんは、食物消化のため強めの胃酸が含まれており、付着したままにしておくと腐食の原因となり厄介です。温水を噴射することで除去しやすくなります。

花粉にはペクチンというたんぱく質が含まれ、温められることで凝固し流れやすくなります。このような温水の効果に加え、通常備わっている高圧による吐出力で汚れを吹き飛ばし洗浄効果を更に高めます。

また、温水洗浄機を除草用に使うことも可能です。熱湯を噴射して効果的な除草作業ができます。最大98℃の高温を維持可能なタイプは、除草に適しています。さらに、設備表面の除菌にも効果的です。

温水洗浄機の種類

温水洗浄機は、加熱源の種類から分類すると、電気加熱式、灯油・軽油加熱式、エンジン式などです。主に業務用途・産業用途のためエンジン式や200V電源の大型機種が主流です。100V電源で使用できる比較的コンパクトなタイプもあります。

1. 電気加熱式

電気加熱式温水洗浄機は、安全でクリーンなこと、効率的で省エネであること、燃料補給が不要なこと、軽量・コンパクト・低騒音であること、排気ガスを出さないことなどの長所があります。2種類あり、熱交換器を使用した瞬間加熱タイプと、温水タンクを有する貯湯タイプです。電熱ヒータを使用するため、比較的小型の洗浄機に使われます。

2. 灯油・軽油加熱式

灯油・軽油加熱式温水洗浄機は、灯油・軽油ボイラーを搭載しています。水道直結で水を加熱し、ポンプで加圧する方式であり、車輪付きが多く移動可能です。ボイラーは2重構造のため、熱が外部に逃げず、安全です。小型から大型まであります。

3. エンジン式

エンジン式温水洗浄機は、水を灯油・軽油ボイラーで加熱し、エンジン動力で加圧する方式です。電源のない所でも使用でき、自吸式ポンプを備えています。多くは高温スチーム洗浄も可能です。エンジンは、ガソリンやディーゼルタイプであり、排気ガス規制をクリアしています。バイオディーゼル対応のタイプもあり、環境を考慮しています。

開袋機

開袋機とは

開袋機とは、中身の入った密封袋を開封する機械のことです。

取り出した中身をサイロに溜めたり製造ラインへの部材投入の前工程に多く使用されています。対象となる袋は、紙袋やポリ袋のほかポリエチレンラミネート袋、PPクロス袋、さらに単層の袋や多層袋など多種多様です。

開袋機は、従来人手で行われていた開袋作業を機械で行うといった省人化とともに、内容物へのゴミなどの混入防止などにも役立っています。使用されていた袋の回収処理も可能です。

開袋機の使用用途

開袋機は、建築や土木といった分野では使用される生コンやコンクリート二次製品、ドライブミックス、添加剤などの袋の開袋に使われています。

また、食品関連工場では搬入されてきた袋詰め原材料の開封や農業・酪農・水産業といった分野でも産地へ搬入されてくる飼料添加物などに開袋機が使用されています。重工業の分野ではセメントや石灰、鉱物加工品や各種添加物といった搬入物にも開袋機が使われています。

開袋機は、このようなさまざまな分野や包装形態に応じた機種が製作されています。

開袋機のその他情報

開袋機の特徴

開袋機を含む一連の流れで行われている工程は、開袋する袋の搬送にはじまり、開袋機への投入を経て、開袋機による開袋と内容物の払い出し、そして空袋の排出と処理などがあります。様々な材質の袋のほか、フレコンパックと呼ばれる大容量向けの袋なども含まれ、全自動化をみすえ搬入から最終処理まで自動化された機械も製作されています。

また、開袋機のメイン工程となる袋の切断に使用されるカッターは、用途に応じて最適なものが選択され使用されています。そのほか、粉粒体用の開袋機では内容物の払い出しをする時に袋に内容物が極力残らないよう高圧のエアを使った「吹き出し」やノズルを使っての「叩き処理」などがあります

開袋機には払い出した内容物にゴミや異物が混入しないよう周囲から遮蔽するものや、内容物を払い出した後の袋の回収も容易にできるような処理が施された機械も製作されています。

拡大鏡

拡大鏡とは

拡大鏡

拡大鏡 (英:magnifying glass) とは、物体を拡大して観察する光学機器です。

拡大鏡は、虫眼鏡やルーペなどとも呼ばれます。拡大の倍率は通常1桁台と低いですが、身近な道具として広く使用されます。昆虫など小さな虫の観察に使われることから虫眼鏡とも呼ばれ、顕微鏡や双眼鏡と並び子供のころから身近なものとして使われている光学機器の1つです。最近では樹脂製のレンズを使用した拡大鏡などもあります。

拡大鏡の使用用途

拡大鏡は、家庭では読書や子供の学習などに、生産現場では検査用機器をはじめ、医療現場での治療部位の拡大、宝石などの鑑定などに広く使用されます。また、ロービジョン (老眼、白内障、糖尿病など各種疾患による視力の低下) 用、あるいは時計修理や歯科治療などの精密作業用として単眼、または双眼のものなどが使われます。

樹脂製のレンズを使用することで大型化・軽量化が進み、さらに照明付きや眼鏡タイプのものなど次々と新製品が開発され一層身近なものとなっています。さらに、仕組みは異なりますがスマートフォンの1つの機能として、ソフトウェアで拡大する方法も使われるようになっています。

拡大鏡の原理

拡大鏡は、1枚もしくはそれ以上のレンズで構成されます。レンズには、凸レンズ又はフレネルレンズが使用されます。

1. 凸レンズの原理

凸レンズの光軸に平行な入射光線は、凸レンズを通った後、1点に集まります。これが焦点です。また、焦点を通った光線は、凸レンズを通った後は、光軸に平行な光線になります。さらに、レンズの中心を通った光線は、そのまま角度を変えずに進みます。

凸レンズの物体側の焦点より近い物体上のから出た光線のうち、光軸に平行な光線は観測側の焦点を通ります。また、レンズの中心を通る光線は直進して角度が変わりません。結果として物体からの光線を観測側から見ると、あたかも物体より遠くの1点から出たように見えます。このように、物体からの光が交わらずにできる像が虚像です。

拡大鏡は、凸レンズでできる拡大された虚像を目視観察する道具です。拡大鏡の倍率は、拡大鏡なしで物体を見た時の見かけの大きさと、拡大鏡を通して見た時の虚像の見かけの大きさとの比率です。見かけの大きさは、視角で表します。倍率は物体とレンズと目の位置により、変化します。

手持ち式の拡大鏡の使い方を次に示します。

・物体をレンズの焦点に置く:レンズを通った光線は、光軸と平行になります。この場合、目の位置に関わらず虚像は無限遠にあり、したがって、倍率は一定です。

・目をできるだけレンズに近づける:さらに、虚像の見かけの位置が目から明視距離250mm位に物体を置きます。この場合、倍率は上記より大きくなります。

・目を観察側の焦点位置にする:この場合、物体の位置によらず、倍率は一定になります。

2. フレネルレンズの原理

フレネルレンズは、通常の凸レンズを同心円状に分割して厚みを減らしたレンズです。断面がのこぎり状になります。同心円状の線が入り、回折の影響で結像性が悪くなることが欠点です。薄型化が有利な用途や照明用に使用されます。

拡大鏡にフレネルレンズを使う場合は、無色透明なアクリル樹脂などのプラスチックを同心円状の溝を持つ薄板に成形します。簡易な拡大鏡として使います。断面を非球面とすることにより、同心円状の溝を目立たなくし、明るい像にする製品もあります。

拡大鏡のその他情報

拡大鏡の特性

拡大鏡は、眼鏡のように各人の視力などに合わせ調整され製作されているものと異なり、一般に流通しているものは使う時にピントを合わせる必要があります。

適度の間隔をおけるデスクルーペや頭につけて使用されるヘッドルーペなどの製品が主でしたが、眼鏡式の拡大鏡の登場により拡大鏡は一気に身近なものとなりました。従来使用されているレンズは、ガラスに限られていましたが樹脂の性能向上と相まって、軽量で落としても割れない樹脂製レンズを使用した拡大鏡が増えています。

観察する物体自体が小型化しているため、中に使用されている部品も小さくなっており、標準視力の人でも拡大鏡を使用しないと作業できないといった場合が増えています。

曲尺

曲尺とは

曲尺

曲尺(かねじゃく)とは、直角に折れ曲がった形状をした、長手方向と短手方向の直線の物差しが正確に直角に交わって接続されている物差しのことです。金属製のものが多く、木材や鋼材の一辺の長さを測定したり、その金属のたわみや鋼性を利用して正確な直線や曲線を引いたりするために使います。

曲尺は別名で、かねざしやまがりがねなどとも呼ばれています。ちなみに、和裁用の物差しである鯨尺の8寸が、曲尺の1尺に当たります。

曲尺の使用用途

曲尺は、その構造上、建材等を日々扱う大工や建築士などの職人が主に用いる工具です。木材や鋼材は丸形のものも多く、その断面の測定から簡便に取得可能な一辺の長さの直方体の角材の柱を計測したり、大工作業の高度な計測の目的で使用されています。

実は曲尺の歴史は非常に古く、中国では漢の時代から、日本でも平安時代からすでに曲尺は広く用いられていたといわれており、江戸時代には大工職にかかわる曲尺関連の書物も出版がなされています。

曲尺の原理

曲尺の原理ですが、一般に表側にはメートル法のミリ単位の目盛りが記載されており、裏側にはこの表側の目盛りの数字に2の平方根(ルート)をかけた数字と円周率で割った数字が記載されています。前者の数を角目、後者の数を丸目と呼ぶことがあります。

真鍮(黄銅)やステンレス、および銅などの金属製が多い曲尺ですが、上記の目盛りは通常は直角の長手方向と短手方向の物差しの双方についています。

使い方の一例として、例えば丸太の直径に曲尺を当てると、そこから取得できる角材の1辺の長さや、その丸太の円周の長さが一目でわかる仕組みになっています。ただ、正確に円ではない、丸太の直径を判断するのは容易ではありません。よって曲尺を用いて円周角の定義から、曲尺の直角の箇所を丸太の円周にあて、長手方向と短手方向が丸太の円周と交差する箇所に印をつけて結ぶとその線は丸太の直径に相当します。さらにこの操作を繰り返すことで、正確に円ではない丸太のおよその中心がわかります。

直角を計測する上記の目的以外の、他の高度な使い方として、相似三角形の平方根の数字の関係を巧みに使い、直角で無い角度をもつ屋根の傾斜と柱での適した組み合わせの長さを求めるためにも、曲尺は使われています。

なお、建築士や大工などの職業に就いている方は、寸法精度が高く保証されているJIS規格に適合された製品を選ぶとよいでしょう。

歯切り盤

歯切り盤とは

歯切り盤

歯切り盤 (英: gear cutting machine) とは、歯車の溝を切削によって作出する工作機械の一種です。

歯車は転造歯車や鋳造歯車によって製造され、歯切り盤で加工された歯車を使う場合が多いです。歯車の形状や寸法に対応した工具を用いて歯切り加工が行われます。

歯切り盤にはホブカッタを使った外歯車加工の「ホブ盤」や外・内歯加工が可能なピニオンカッタによる「形削り盤」などがあり、ブローチカッタを使った「ブローチ盤」も製造可能です。歯割り盤、ラック歯切り盤、ウォームホイールホブ盤、すぐばかさ歯車歯切り盤、まがりばかさ歯車歯切り盤などもあります。

歯切り盤の使用用途

歯切り盤で製作される歯車には「平行軸」と言われる平行した軸の間で動力を伝える「平歯車」「はすば歯車」「内歯車」「ラック」などがあります。

歯切り盤は動力伝達軸が交差した「交差軸」として「すぐばかさ歯車」「まがりばかさ歯車」「フェースギア」などの製作にも使用可能です。そのほか「食い違い軸」と言われる「ウォームギア」「ハイポイドギア」「ねじ歯車」や特殊形状歯車である「非円形歯車」「円錐歯車」「間欠歯車」などの製作に使われています。

歯切り盤の特徴

歯切り盤は歯車を作る加工の中で切削加工で用いられます。切削による歯切り加工には「創成法」「成形法」「ギアスカイビング」があり、歯切り盤による加工は製作する歯車でも変わります。例えば平歯車では創成法、特殊な歯車では創成法と成形法を組み合わせて加工可能です。

歯切り盤は主に円筒歯車の加工に使用され、ホブを使ったホブ盤とピニオンカッタ (英: pinion type cutter) を使った研削盤、ギアシェーパー (英: gear shaper) などがあります。かさ歯車のような特殊な歯車を加工する「かさ歯車歯切り盤」では創成法と成形法の両者を組み合わせて加工可能です。

ホブ盤で加工される歯車には平歯車以外にも「はすば歯車」「ウォームギヤ」などがあります。創成法による歯切り加工は溝を一本一本切削していく成形法より精度的に優れていますが、コスト的にNC工作機械での加工が可能な成形法には劣ります。

歯切り盤の種類

加工の方式で歯切り盤は複数の種類に分類されます。

1. ホブ盤

ホブを取り付けて旋回させながら歯切り加工を行います。ホブは成形する歯車に食い合うように切れ刃や溝が外周に設置されています。

2. ギアシェーパー

歯切り加工にピニオンカッタやラックカッタ (英: rack type cutter) を使い、歯車形削り盤とも言います。刃物の上下運動によって形削り加工を行います。作業効率は低いですが、一部の加工が難しい特殊な歯車の形にも対応可能です。

3. 歯車研削盤

高速で砥石を旋回させて歯車を成形します。焼入れした硬い素材から歯車を高精度で加工可能です。

4. 歯車シェービング盤

歯切り加工で作られた歯車の最終プロセスに使用します。食い合わせた歯車状の工具を旋回させて表面を滑らかにでき、食い合わせも補正可能です。

5. かさ歯車歯切り盤

円盤のような形状の切削工具を使って旋回によって歯切りを行い、かさ歯車の歯切りを専門としています。 

歯切り盤の構造

歯切り盤による加工で数多くの形状の歯車が作れます。

1. 平歯車

最もありふれた歯車で、歯すじが歯車軸に平行です。平行な2つの歯車を組み合わせて動力を伝達します。

2. はすば歯車

平歯車の歯すじが斜めになっているため歯車と歯車が食い合いやすい構造です。平歯車と比べて音が静かで強度を持っています。

3. 内歯車

歯すじが円筒の内向きにあります。円筒内部にある小型の歯車を旋回させて使用します。

4. かさ歯車

傘のような円錐形で、歯すじが外向きにあり、軸の向きが違うかさ歯車と歯車を食い合わせてエネルギーを伝えます。かさ歯車の歯すじによって、直歯かさ歯車と斜歯かさ歯車に分類されます。直歯かさ歯車はすぐばかさ歯車とも呼ばれ、平歯車の歯すじと同じようにまっすぐです。斜歯かさ歯車ははすば歯車のように歯すじが斜めで、別名はすばかさ歯車です。

5. ウォームギヤ

棒状の素材に螺旋状の斜歯を取り付けたねじ歯車であるウォームと歯車に合うウォームホイール (英: worm wheel) を食い合わせています。かさ歯車と同様に軸の方向を変更でき、かさ歯車と比較して小さくて軽く音も静かです。

6. ラックアンドピニオン

ラックピニオン (英: rack pinion) とも呼ばれ、まっすぐな棒に歯すじを付けたラックと平歯車のようなピニオンを組み合わせ、歯車の回転力を直線に変える際に利用されます。身近な使用例はカメラの三脚の高さを調節する部分です。

軸付砥石

軸付砥石とは

軸付砥石

軸付砥石とは、砥石を取り付けるための軸が付いた砥石のことです。

軸付き砥石は主に金属加工の現場で使用され、工具の研削や加工品の研磨、面取り、除錆などの作業に用いられます。砥石の種類や形状に応じて、多様な材質や硬度の砥粒が使用されます。一般的にアルミナシリコンカーバイド、セラミックスなどが砥粒として使用され、砥石の種類によって適した砥粒を選択することが重要です。

使う際は電動工具や研削盤などに取り付けます。機械に取り付ける際には、適切なサイズを選択する必要があります。

軸付砥石の使用用途

軸付砥石は、自動車関連部品をはじめ、半導体のようなエレクトロニクス関連部品、ベアリング歯車のような機械部品のように精密かつ高精度が要求される分野での研磨に使用されています。

また軸付砥石は通常の研磨盤では作業が難しい内面研削、溝の底擦り研削、穴あけ加工といった局所的な研磨や深い部分の研磨に重用されています。軸付砥石を使った作業は、さびや汚れの除去、被削物についた各種マーキングの除去などにも使用されています。

軸付砥石の特徴

長所

軸付砥石は研削面が正確に軸に合わせて取り付けられるため、高精度で研削できます。研削作業中に研削面がぶれることがなく、安定した切削能力を発揮できるためです。

また軸付砥石は軸に直接取り付けられているため、砥石の寿命を過度に短くする振動が発生しにくく長時間使用できます。交換や調整が簡単で作業効率が高く、素早く正確に研削できるため、作業効率も高いという特長があります。

短所

軸付砥石は回転軸に取り付けて使用するため、砥石の直径や幅に制限があり、特定の大きさの軸にしか取り付けられません。

また砥石の直径が大きい場合、砥石の周辺部分の速度が上がりすぎて砥粒が飛び出してしまう恐れがあり、回転数を抑えることが必要です。回転数に制限があるため研削作業の効率が低下する可能性があります。

さらに軸付砥石は軸に取り付ける必要があるため、取り付けに時間がかかります。また取り付けに慣れていない作業者が作業する場合には、取り付け不良による事故が起きる可能性があります。

軸付砥石の使い方

軸付砥石は以下のような過程で穴をあけます。

1. 砥石の取り付け

電動工具や研削盤などに適切なサイズの軸受砥石を選択し、研削面を軸に合わせて正確に取り付けます。

2. 研削位置の調整

研削する素材の位置を調整し、砥石が素材に正確に接触するようにします。

3. 砥石の回転

軸受砥石を回転させながら素材に接触する研削面に砥粒を当てます。回転数や砥石の位置、素材の加工条件などを適切に設定することで効率的に研削できます。

4. 砥削作業

砥石を研削面に正確に接触させながら、素材を切削していきます。素材に接触する砥石の砥粒が、素材の表面を削り取ります。砥石の種類や砥粒の大きさ、加工条件などによって、研削の精度や加工時間が変化します。

研削時には素材と砥石の摩擦によって熱が発生します。この熱を逃がすために、冷却液や潤滑剤を使用することが一般的です。冷却液や潤滑剤は、研削によって発生する砥粒やカスを除去する効果もあります。

5. 研削面の仕上げ

研削作業が終了した後、素材の表面に仕上げ加工を行うことがあります。研磨布やポリッシュ剤などを使用して、研削面を滑らかに仕上げます。

軸付砥石の種類

軸受砥石は形状や切削材料、粒度、結合剤などによって分類されますが、切削材料で分類した場合は以下のような種類があります。

1. アルミナ砥粒

アルミナ砥粒は、アルミナ (酸化アルミニウム) を主成分とする砥粒を使用しています。硬度が高く切削精度が高いため、硬質鋼や超硬合金の加工に使用されます。また金属加工以外にもガラスやセラミック、石材などの非金属素材の加工にも適しています。

2. シリコンカーバイド砥粒

シリコンカーバイド砥粒は、シリコンカーバイドを主成分とする砥粒を使用しています。硬度はアルミナ砥粒に比べて低く耐摩耗性や耐熱性が高いため、鉄鋼やステンレス鋼の加工に使用されます。また砥石自体の熱伝導性が高いため、高速回転での加工にも適しています。

3. その他の材質

軸付砥石の切削材用には、他にも窒化ホウ素やダイヤモンドなどが使用されることもあります。

窒化ホウ素砥粒は、非常に高い硬度と耐摩耗性を持っているため硬質鋼や超硬合金の加工に適していて、高速回転での加工や深穴加工も可能です。

またダイヤモンド砥粒は、極めて高い硬度と切削精度を持っているため、非常に硬い素材や精密加工が可能です。高温下でも変質しにくく高速回転に対応できます。

軸付砥石のその他情報

軸付砥石に使用される結合剤

軸付砥石に使用される結合剤は、砥粒を砥石の基材に結合するために使用されますが、結合剤の種類によって砥石の特性や用途が異なります。一般的に使用される結合剤には金属やセラミックス、樹脂などがあり、主な特徴は以下ようになります。

1. 金属結合剤
金属粉末を焼結して作られた結合剤を使用しており、砥粒を砥石の基材に強固に結合できます。このため金属結合砥石は高速回転での加工に適しており、また熱にも強いため寿命が長くなります。ただし砥粒の露出量が少なく精度が低下することがあるため、細かい研磨作業には向いていません。

2. セラミックス結合剤
セラミックス結合剤を使用した砥石は、高温下でも耐久性に優れるため、高温での加工に適しています。また結合剤として使用されるガラス質の材料によって結合強度や耐久性を調整できるので便利です。セラミックス結合砥石はアルミナ砥粒を使用したものが一般的で、金属結合砥石に比べて砥粒の露出量が多く細かい研磨作業に向いています。

3. 樹脂結合剤
結合力が弱く低速回転での加工に適しています。樹脂結合砥石は金属や非金属の加工に使用され、砥粒の露出量が多いため滑らかな表面仕上げが可能です。ただし砥粒が容易に剥離するため砥石の寿命が短くなります。