拡大鏡とは
拡大鏡 (英:magnifying glass) とは、物体を拡大して観察する光学機器です。
拡大鏡は、虫眼鏡やルーペなどとも呼ばれます。拡大の倍率は通常1桁台と低いですが、身近な道具として広く使用されます。昆虫など小さな虫の観察に使われることから虫眼鏡とも呼ばれ、顕微鏡や双眼鏡と並び子供のころから身近なものとして使われている光学機器の1つです。最近では樹脂製のレンズを使用した拡大鏡などもあります。
拡大鏡の使用用途
拡大鏡は、家庭では読書や子供の学習などに、生産現場では検査用機器をはじめ、医療現場での治療部位の拡大、宝石などの鑑定などに広く使用されます。また、ロービジョン (老眼、白内障、糖尿病など各種疾患による視力の低下) 用、あるいは時計修理や歯科治療などの精密作業用として単眼、または双眼のものなどが使われます。
樹脂製のレンズを使用することで大型化・軽量化が進み、さらに照明付きや眼鏡タイプのものなど次々と新製品が開発され一層身近なものとなっています。さらに、仕組みは異なりますがスマートフォンの1つの機能として、ソフトウェアで拡大する方法も使われるようになっています。
拡大鏡の原理
拡大鏡は、1枚もしくはそれ以上のレンズで構成されます。レンズには、凸レンズ又はフレネルレンズが使用されます。
1. 凸レンズの原理
凸レンズの光軸に平行な入射光線は、凸レンズを通った後、1点に集まります。これが焦点です。また、焦点を通った光線は、凸レンズを通った後は、光軸に平行な光線になります。さらに、レンズの中心を通った光線は、そのまま角度を変えずに進みます。
凸レンズの物体側の焦点より近い物体上のから出た光線のうち、光軸に平行な光線は観測側の焦点を通ります。また、レンズの中心を通る光線は直進して角度が変わりません。結果として物体からの光線を観測側から見ると、あたかも物体より遠くの1点から出たように見えます。このように、物体からの光が交わらずにできる像が虚像です。
拡大鏡は、凸レンズでできる拡大された虚像を目視観察する道具です。拡大鏡の倍率は、拡大鏡なしで物体を見た時の見かけの大きさと、拡大鏡を通して見た時の虚像の見かけの大きさとの比率です。見かけの大きさは、視角で表します。倍率は物体とレンズと目の位置により、変化します。
手持ち式の拡大鏡の使い方を次に示します。
・物体をレンズの焦点に置く:レンズを通った光線は、光軸と平行になります。この場合、目の位置に関わらず虚像は無限遠にあり、したがって、倍率は一定です。
・目をできるだけレンズに近づける:さらに、虚像の見かけの位置が目から明視距離250mm位に物体を置きます。この場合、倍率は上記より大きくなります。
・目を観察側の焦点位置にする:この場合、物体の位置によらず、倍率は一定になります。
2. フレネルレンズの原理
フレネルレンズは、通常の凸レンズを同心円状に分割して厚みを減らしたレンズです。断面がのこぎり状になります。同心円状の線が入り、回折の影響で結像性が悪くなることが欠点です。薄型化が有利な用途や照明用に使用されます。
拡大鏡にフレネルレンズを使う場合は、無色透明なアクリル樹脂などのプラスチックを同心円状の溝を持つ薄板に成形します。簡易な拡大鏡として使います。断面を非球面とすることにより、同心円状の溝を目立たなくし、明るい像にする製品もあります。
拡大鏡のその他情報
拡大鏡の特性
拡大鏡は、眼鏡のように各人の視力などに合わせ調整され製作されているものと異なり、一般に流通しているものは使う時にピントを合わせる必要があります。
適度の間隔をおけるデスクルーペや頭につけて使用されるヘッドルーペなどの製品が主でしたが、眼鏡式の拡大鏡の登場により拡大鏡は一気に身近なものとなりました。従来使用されているレンズは、ガラスに限られていましたが樹脂の性能向上と相まって、軽量で落としても割れない樹脂製レンズを使用した拡大鏡が増えています。
観察する物体自体が小型化しているため、中に使用されている部品も小さくなっており、標準視力の人でも拡大鏡を使用しないと作業できないといった場合が増えています。