クラッチ

クラッチとは

クラッチ

クラッチ (英: Clutch) とは、エンジンとトランスミッション (変速機) 間に存在している動力伝達装置です。

エンジンの回転運動をトランスミッションに伝達したり、遮断したりする役割を果たしています。主に車やバイクの発進、停止、変速 (ギアチェンジ) のタイミングで使われ、車のスムーズな発進、停止、変速をサポートしています。

仮にクラッチが無ければ、変速時の衝撃が大きすぎてしまったり、まともに発進・停止ができなくなってしまうため、車やバイクにとってクラッチは必要不可欠な装置です。

クラッチと聞くと、マニュアル (MT) 車にしか搭載されていないと思われがちですが、実は、オートマチック (AT) 車にもクラッチのような働きをするトルクコンバーターという装置が搭載されています。クラッチの有無ではなく、クラッチを手動で操作しなければいけないのが、マニュアル車、自動でクラッチ同様の動力伝達を行えるのがオートマチック車です。

クラッチの原理

クラッチは、フライホイール、クラッチディスク、クラッチカバーという3つの部品で構成されています。エンジンと直接繋がっている部品がフライホイールで、エンジンにより生み出された回転運動をそのまま伝えます。

トランスミッション (変速機) に繋がっている部品がクラッチディスクです。クラッチペダルを踏むとフライホイールとクラッチディスクが圧着し、フライホイールの回転運動がクラッチディスクとトランスミッションに伝わり、タイヤへと伝わる仕組みです。

つまり、クラッチペダルを踏むとエンジンの動力がタイヤに伝わり、ペダルを元に戻すとエンジンの動力がタイヤに伝わらなくなるということです。

このフライホイールとクラッチディスクを覆うようについているのがクラッチカバーです。クラッチカバーはただクラッチ部品を保護する働きだけではなく、クラッチカバー内部にあるプレッシャープレートと呼ばれる円盤上の部品が、クラッチの圧着や分離をサポートする働きをしています。

クラッチの使用用途

クラッチは自動車やバイクなど、エンジンの動力をトランスミッションに伝える部品だと思われていますが、実際には異なっています。例えば、電動モーターの動力を回転軸の違う部品に伝えたり、遮断したりする必要がある場合にも、クラッチが使われることがあります。

また、自動車やバイク以外にも、草刈り機や芝刈り機、除雪機、ヘリコプター、船舶など、回転軸の異なるあらゆる動力伝達需要がある場所でも利用されています。

クラッチの種類

クラッチには「乾式」や「湿式」のようにオイルに浸っているかいないかではなく、構造自体の違いにより、次のような種類が存在します。

1. ドッグクラッチ (噛み合いクラッチ) 

ドッグクラッチは、フライホイール、クラッチディスク、それぞれの圧着面が、凹凸状になっています。それぞれの爪が噛み合うことで動力を伝達します。動力伝達がロス無くできるのが特徴です。

爪と爪を噛み合わせる必要があるため、伝達元と伝達先の回転数の差が大きい場合には使えません。そのため、回転数の差が大きい自動車のクラッチとしては使えず、主にトランスミッションや内装変速機などで使われます。

2. 摩擦クラッチ

摩擦クラッチは、摩擦力を使って動力を伝達します。ディスクホイールとクラッチディスクの摩擦を使って動力を伝達するため、伝達元と伝達先の回転数の差が大きくても、動力を伝えることが可能です。また、他のクラッチに比べて徐々に動力を伝えられるため、エンジンの動力を滑らかに伝える必要がある自動車などに使われています。

しかし、摩擦力を利用しているということからドッグクラッチなどと比べるとどうしても伝達ロスが発生します。摩擦クラッチには、ディスクの形状の違いによって次のような種類が存在します。

  • ディスククラッチ (円盤状) 
  • ドラムクラッチ (円筒状) 

また、次のようにクラッチの外部環境や細かい機構の違いによって次のような種類も存在します。

  • 湿式クラッチ: オイルに浸したもの
  • 乾式クラッチ: 空気中で働くもの
  • 多板クラッチ: ディスクの枚数を増やして動力伝達量を上げたもの
  • 電動摩擦クラッチ: クラッチの圧着などを電磁石で行うもの
  • 遠心クラッチ: クラッチの圧着などを遠心力で行うもの

3. 流体クラッチ

液体など流体によって動力を伝達するクラッチのことを流体クラッチと呼びます。伝達元の動力が回転すると、充填された液体がかきまぜられ、その液体の流れによって伝達先に動力が伝達されるという仕組みです。

この原理を発展させたものがトルクコンバーターと呼ばれ、主にオートマチック車にクラッチの代わりとして搭載されています。

クラッチのその他情報

半クラッチが必要な理由

マニュアル車で変速、発進する際に必ず必要になるのが半クラッチです。半クラッチが必要な理由は、変速や発進の際にエンジンの動力をいきなりトランスミッションに伝えてしまうと車に大きな衝撃が加わってしまうためです。

クラッチ操作に失敗すると車が大きくガタンと揺れてしまいますが、この衝撃を防ぐために必要なのが半クラッチ操作です。クラッチペダルを踏み、フライホイールとクラッチディスクを離した状態で、ギアを変え、ゆっくりとクラッチペダルをゆっくりと元に戻します。

徐々にフライホイールとクラッチディスクがくっつき出し、徐々にエンジンの動力が伝わり始めます。エンジンの動力をいきなり全て伝えず、徐々にゆっくりと伝えていくことで、スムーズな発進・変速が可能となります。

オイルクーラー

オイルクーラーとは

オイルクーラー

オイルクーラーとは、車のエンジンオイルや産業用機械で使われているオイルを冷却し、適正温度に保つための装置です。

車やオートバイではラジエーターとも呼ばれており、広義では熱交換器と呼ばれています。オイルはその温度によって粘度が変化します。粘度はオイルの性能に大きく影響するので、オイルの性能が最も発揮される温度にオイルを保たなければなりません。

オイルクーラーはオイルを適温に保つよう、オイルを冷却する役割を担っています。

オイルクーラーの使用用途

オイルクーラーは、自動車やオートバイで使われています。自動車の場合には、エンジンオイルの冷却をするラジエーターと、A/TやCVTなどの自動変速機にも、ATFやCVTFを冷却するためのオイルクーラーが使われています。

FF用のA/TやCVTでは、トランスミッション本体に直接取り付けられる、ビルトインクーラーが多く使われています。そのほか、建設機械、産業機械、農業機械も使用用途の一つです。

オイルクーラーの原理

オイルクーラーには大きく分けて2つの方式があります。

1. 水冷式オイルクーラー

水冷式オイルクーラーは自動車で多く使われています。エンジンオイルを冷却するオイルクーラーは通常、ラジエーターと呼ばれています。クーラントと呼ばれる冷却水の力で、エンジンオイルを冷却する方式です。

その仕組みは、冷却水が循環するウォータージャケットで覆われたクーラーコアの中をエンジンオイルが通るというものです。基本的に、冷却温度の下限は冷却水と同じ温度であるため、外気温にとらわれず、エンジンオイルの温度が安定するというメリットがあります。

2. 空冷式のオイルクーラー

空冷式のオイルクーラーは、風によって熱を放出します。オイルクーラー内部を熱を持ったオイルが通過することによって、熱をオイルクーラー本体に伝えます。

定置型の産業機械のオイルクーラーには、黄銅や真鍮といった熱伝導率が高い金属でできており、表面には多くのフィンと呼ばれる羽根形状が設けられています。フィンによって表面積を増やすことによって、放出できる熱量を稼いでいます。

オイルクーラーのその他情報

1. オイルクーラーのメリット

オイルクーラーの最大の役割は、エンジンオイルを適正な温度に保つことです。エンジンオイルの場合は、一般的に80~100℃の温度で、最も性能を発揮するよう調合されています。

オイルクーラーでエンジンオイルを冷却することによって、様々な効果が得られます。最も重要な効果は、潤滑性を保つことです。自動車は歯車や軸受、ブッシュと呼ばれる滑り軸受など、様々な金属パーツを組み合わせることでできています。

また、エンジンでは、ピストン室内をピストンが摺動してしています。このような部品同士の摩擦を軽減させるために、オイルが必要不可欠です。オイルクーラーでオイルの温度を適正範囲に保つことで、部品同士の摺動抵抗が軽減され、機械として正常な動作を続けることができます。

特にエンジンの場合、出力が増えると排ガスや燃焼室、シリンダ壁面からの熱を受け、エンジンオイルの温度が上昇してしまいます。そのため、冷却水の力を利用して、温度を調節しています。なお、水冷式のオイルクーラーは他のオイルクーラーと比べ、エンジンオイルの温度が下がりすぎることを防げます。冷却水は室温よりも低くなることはないためです。

2. オイルクーラーに求められる性能

自動車用のオイルクーラーでは、十分な冷却能力が求められますが、他にも様々な要件があります。まず、小型・軽量であることです。自動車では乗員の居住空間が広いことが求められので、エンジンルーム内に収まる部品は常に小型化が求められます。軽量化も、低燃費の観点から重要な要件です。

他にも、通油抵抗が大きくなりすぎないことが求められます。通油抵抗が大きければ、オイルの循環量が減り、冷却能力も下がってしまうからです。また、低温環境においては、むしろオイルは早く温まる必要があります。低温時に早くオイルを温めるためにも、通油抵抗は大切な要件と言えます。

エアバック

エアバックとは

エアバッグ

エアバックとは、自動車事故などによる強い衝撃から乗員を保護する目的で使われる安全装置の1つです。

自動車に強い衝撃が加わることをきっかけに瞬間的に膨らみ、自動車が受けた衝撃を緩和する役割を果たしています。

あくまで、シートベルトのような拘束装置を付けた状態で性能を発揮する補助拘束装置(英: Supplemental Restraint System)であり、シートベルト未着用の場合を想定した安全装置ではありません。

日本の交通法規にはエアバックの標準搭載の義務はありませんが、現在、日本の各自動車メーカーからリリースされるほとんどの車にエアバックが標準搭載されています。(※欧米などではエアバック装着が義務化されている)

エアバックの原理

エアバックは、事故の衝撃を感知するセンサー、インフレータ(ガス発生装置)、バック、コントロールユニット、回転コネクタ(運転席のみ)で構成されている装置です。

自動車の特定部分に加わった衝撃をセンサーが感知し、エアバッグのコントロールユニットに信号を送ります。

その信号を受け、エアバックに内蔵されたインフレータ(ガス発生装置)が点火。

エアバック内でガス爆発を起こし、発生したガスで一気にナイロン製のバッグを膨らませます。

そのスピードは人間の瞬きよりも早く、衝撃を感知してから約0.03秒というスピードで膨らみます。

これにより、事故の衝撃で前に押し出された体がステアリング(ハンドル)や、ダッシュボードなどに直に打ち付けられるのを防ぎ、人体へ加わる衝撃を緩和するクッションの役割を果たしてくれるという訳です。

乗員の衝撃を吸収した後は、自動的に収縮するような仕組みになっています。

エアバックが衝撃を吸収する仕組み

エアバックにはガスの排出口(ベントホール)が設けられています。

膨らんだエアバックに人が衝突して、エアバック内に充満したガスの圧力が高まると、この排出口からガスが噴出する仕組みになっています。

これにより、人がエアバックに衝突した瞬間に、エアバックは収縮し、ぶつかった衝撃をガスの噴出という運動エネルギーに変換し、外に逃がすことができるのです。

もし仮に排出口がなければ、衝撃がそのまま人体に加わってしまい、大怪我や命の危険につながってしまいます。

エアバックが開く条件

エアバックはどんな衝撃でも開く訳ではなく、開く条件は決まっています。

固定した壁に対して正面から衝突することを想定した時に、人体が受ける衝撃が大きくなる速度(約30km以上)でぶつかる事がエアバックが開く最低条件です。

しかし、約30km以上でぶつかった場合でも、衝撃が何らかの原因で分散・緩和してしまったり、センサーが反応しないぶつかり方をしてしまったりすると、開かなくなる場合があります。

エアバックの使用用途

エアバックは、自動車事故の衝撃から乗員を守る目的で使われる安全装置です。

しかし、実際はエアバックとぶつかった衝撃によって、命は助かったものの、乗員がエアバックと衝突した衝撃で鼻を折ってしまったり、肋骨を折ってしまったり、怪我を負ってしまう事例は多くあります。

あくまで、エアバックは「乗員を怪我から守る安全装置」ではなく、「乗員が死ぬことを防ぐ安全装置」であるという認識が正しいと言えるでしょう。

また、エアバックは基本的に1度しか使えません。

再利用が出来ない上に、エアバックが開いてしまった車は、損傷が激しいことが予想されるので基本的に廃車となるのが一般的です。

もし、修理できる場合であっても、エアバックを構成する部品一式、またステアリングやダッシュボード、シートベルトなど周辺部品も含めた交換や修理が必要になります。

エアバックの種類

エアバックは、格納されている部位によって様々な種類が存在します。

一般的なのは、運転席と助手席に備わっている「運転席エアバック」と「助手席エアバック」でしょう。

主にこれらは、自動車の前方衝突を想定したエアバックであり、日本では新車のほとんどが標準搭載しています。

また、自動車の側面からの衝突を想定した「サイドエアバック」や「サイドカーテンエアバック」などもあります。

欧米などはこの2つのエアバックも含め標準搭載が義務化されており、近年、日本でもその重要性が認識されてきています。

それ以外にも、格納されている場所によって以下のような種類のエアバックが存在します。

  • ニーエアバック
  • シートクッションエアバック
  • リアウィンドウカーテンエアバック
  • 後部エアバック
  • 後部センターエアバック
  • シートベルトエアバック
  • ドアマウントカーテンエアバック
  • ITSヘッドエアバック
  • ペルビスエアバック

自動車以外のエアバック

エアバックは自動車以外に使われるものも存在します。主に自動車以外では、次のようなエアバックが開発されています。

  • 歩行者保護用エアバック
  • オートバイ用エアバック
  • 自転車用エアバック
  • 雪崩対策用エアバック
  • 惑星探査機用エアバック

形状や作動方法など仕様は違いますが、衝撃を吸収する目的でどれも使用されています。

サスペンション

サスペンションとは

サスペンション

サスペンション (英: Suspension) とは、タイヤと車体をつなぐ役割をする部品です。

主にタイヤが路面から受ける衝撃を緩和し、自動車の走行安定性を保つという役割を持っているため、車の乗り心地に大きく影響します。サスペンションの設定次第で、走行安定性や乗り心地のバランスを調整することが可能です。

サスペンションは主に自動車やバイクの衝撃緩和部品の呼称として使われることが多いですが、機械などに組み込まれた振動を和らげる機構そのものを指してサスペンションと呼ぶ場合もあります。

サスペンションの使用用途

一般的な自動車やバイクはサスペンションを通じて車体とタイヤをつなげているため、全ての自動車やバイクに搭載されていると言えます。

基本的に物体への衝撃を和らげて支える役割を果たすため、そのような需要がある場合には自動車やバイク以外でも幅広く使われます。例えば、鉄道や戦車、自転車、家具、建築物などにもサスペンションが使われています。

サスペンションの原理

サスペンションは、スプリングやショックアブソーバー (ダンパー) 、サスペンションアーム、ブッシュ、アッパーマウントなどの部品で構成されていますが、主要部品はスプリングとショックアブソーバー、そしてサスペンションアームです。

路面から受けるタイヤに対する衝撃をスプリングにより緩衝し、発生したスプリング上下運動をショックアブソーバーが吸収します。それにより、車体に伝わる衝撃を和らげることができます。サスペンションに使われる部品の硬さや寸法などを調整することで、衝撃を緩和する度合いを調整することが可能です。

サスペンションの種類

サスペンションは、車体とのつなぎ方の違いによって「リジットタイプ」と「インデペンデントタイプ」の2つに分類されます。どのサスペンションタイプが最適かどうかは、ニーズや車に期待される性能によって異なります。

1. リジットタイプ (固定車軸方式) 

左右両側の車輪を車軸で繋いだサスペンションタイプです。サスペンションが開発された当初から使われてきたタイプで、長い歴史を持っています。構造が単純なのが最大の特徴で、耐久性が高く、整備もしやすく、安いというメリットがあります。

一方で、左右の車輪が車軸で繋がっていることから、どちらか片方の車輪が地面から受けた衝撃が反対側の車輪にも伝わってしまうため、インデペンデントタイプに比べると衝撃が伝わりやすいのがデメリットと言えます。リジットタイプが使われているのは主に、トラックなどの商用車やSUVなどです。

2. インデペンデントタイプ (独立懸架方式) 

左右両側の車輪が別々の車軸に繋がっているサスペンションタイプです。リジットタイプと違い、片方の車輪の衝撃がもう片方に伝わることがないため、衝撃吸収性能が高く、乗り心地が良い点が特徴です。また、アライメント調整と呼ばれる細かい車軸角度の調整も行うことができます。

一方で、整備などに時間がかかってしまうことからリジットタイプに比べるとコストが高くなってしまうのがデメリットと言えます。インデペンデントタイプのサスペンションが使われているのは、ほとんどの自動車の前輪、高級スポーツカーやレース用車両、ハイスペック車の後輪などです。

インデペンデントタイプのサスペンションは形式の違いによって次の4種類に分類されます。

  1. ストラット式
    ショックアブソーバを内蔵したストラットが構成要素に入っている形式です。
  2. マルチリンク式
    ダブルウィッシュボーンの変化型です。
  3. Wウィッシュボーン式
    ストラット式の前身にあたる形式です。
  4. スイングアーム式
    アームがAの字になっている形式です。

3. トーションビームタイプ (可撓梁方式) 

左右両側の車輪から伸びるトレーリングアームを、クロスビームと呼ばれる梁でつないだサスペンションタイプです。リジットタイプほどではありませんが、構造がシンプルなため安いという点が最大の特徴です。

衝撃吸収性能としては、リジットタイプとインデペンデントタイプの中間のようなイメージです。主に前輪駆動車 (FF) の後輪や、商用車などに使われるため、コンパクトカーや軽自動車の後輪の多くは、このタイプのサスペンションが採用されています。トーションビームタイプを細かく分けると、次の3種類に分類されます。

  1. アクスルビーム式
  2. ピボットビーム式
  3. カップルドビーム式

サスペンションのその他情報

サスペンション性能が与える影響

「サスペンションが硬い」と言われる場合は、スプリングが硬くダンパーの減衰力が高い状態です。一方で「サスペンションが柔らかい」場合は、スプリングが柔らかく、ダンパーの減衰力が弱い状態です。

一般的にはサスペンションが柔らかい方が、衝撃吸収力が高く、乗り心地がよくなります。一方で、レーシングカーなどのように車体が揺れ動かない方が良い場合などはサスペンションが柔らかい方が良しとされます。車に求める性能や利用用途などによっても必要なサスペンションの性能は変わります。

自動車スプリング

自動車スプリングとは

自動車スプリング

自動車スプリングとは、自動車の「サスペンション」と呼ばれる装置を構成する部品の1つで、走行時の安定性や乗り心地に関わる部品です。

通称「コイルスプリング」と呼ばれています。自動車スプリングの主な役割は、以下の2つです。

  • 路面への接地性を高め、走行安定性を向上させる
  • 路面からの衝撃を吸収し、乗り心地を良くする

上記の2つの役割を果たすために、使用用途によってバネレート (スプリングの硬さ) を変更する必要があります。それに伴い、ショックアブソーバの調整も必須です。

自動車スプリングの使用用途

自動車スプリングは、衝撃吸収や安定性向上を目的に使用されています。サスペンションの設計では、ユーザーの使用用途及び使用する環境に応じて、コイルスプリングの軟らかさとショックアブソーバの減衰力をいかに調整するかが重要です。

サスペンションは、各部品の特徴を活かすことで、乗り心地と走行安定性のバランスを保っています。スプリングを軟らかくすると、路面に対し柔軟に反応するため、乗り心地は良くなりますが、地面に対し踏ん張ろうとする力が弱くなります。そのため、旋回時に発生するロール (進行方向に対し横方向に傾こうとする力) が大きくなり、安定性が低下します。

しかし、スプリングを硬くすると、ロールが抑えられ車体の安定性が向上する代わりに、乗り心地が悪くなります。そのため、一般的な走行目的の車両については、コイルスプリングの設定は軟らかめやスポーツ走行等となっており、走行安定性を重視する車両の場合、コイルスプリングの設定は硬めであることが多いです。

自動車スプリングの原理

自動車スプリングは性質上、負荷が掛かった際に、縮むことで衝撃を吸収し、伸びることで元の形状へと戻ります。この伸縮運動を行うことで、衝撃を緩和しています。

また、一般的な金属では地面からの衝撃に耐えきれず、 破損または バネが元の形に戻らない」等の不具合が発生してしまうため、特殊な金属を使用しています。コイルスプリングは上記の特性から、自動車のサスペンションだけでなく エンジン内の部品や クラッチにも使用される場合が多いです。

自動車スプリングのその他情報

1. サスペンションの構造

サスペンションは、コイルスプリング以外に、下記2つの部品から構成されています。

ショックアブソーバ (ダンパー)
ショックアブソーバは、コイルスプリングの伸縮運動を減衰する装置です。コイルスプリングは、地面から受ける衝撃が大きいほど、スプリングの伸縮回数が増え、車体を不安定な状態にしてしまいます。

車体が不安定になると、走行安定性や乗り心地に悪影響を及ぼします。そこで、ショックアブソーバを用いて、コイルスプリングの伸縮回数を減らし、走行安定性と乗り心地の向上を実現しています。

サスペンションアーム
サスペンションアームは、サスペンションの形式によって様々な種類があります。一般的に用いられるストラット式やダブルウィッシュボーン式は、アッパーアームとロアアームの2つを組み合わせたものです。

タイヤを支持するとともに、路面に対してタイヤの位置を限定することで、走行安定性を高めます。

2. サスペンションの方式

サスペンションは車軸懸架方式と独立懸架方式の2方式に分けられます。

車軸懸架方式
左右の車輪が車軸で連結されている方式です。構造が比較的単純であるため耐久性に優れていること、整備がしやすいのがメリットです。一方で、片方の車輪で受けた路面からの衝撃が他の車輪に伝わるために、乗り心地が悪いデメリットがあります。

独立懸架方式に対して低いコストで生産できるため、新車販売価格が安価に設定されている車両の後輪側に使用されることが多いです。

独立懸架方式
左右の車輪がそれぞれ独立して可動するものです。路面の変化に柔軟に対応できるため、固定車軸方式に比べ「走行安定性が高い」「乗り心地がよい」などのメリットがあります。

しかし、生産コストが掛かるため、スポーツカーや高級車などに用いられることが多いです。また、価格帯の安い車両においても前輪側は独立懸架方式が多く採用されています。

ステアリングホイール

ステアリングホイールとは

ステアリングホイール

ステアリングホイールとは、自動車においてステアリング機構を操作し、回転させて進行方向を調整するための環状の部品です。

いわゆるハンドルと同義ですが、これは和製英語です。ステアリングホイールは通常円形をしており、ドライバーが手で握るグリップ部分をリム、ステアリングシャフトへと接続される中心部分をハブ、そしてステアリングホイールとステアリングシャフト (ステアリングコラム) をつなぐ部分をスポークと呼びます。

ステアリングホイールの使用用途

ステアリングホイールは、自動車の車輪の角度を変え、進行方向を調整する際に使用されます。運転者はステアリングホイールを両手で握り、回転させることで進行方向を調整します。

右前に前進したいとき、または右後に後退したいときは右回りに、左前に前進したいとき、または左後に後退したいときは左回りに回転させ、前進・後退するのが基本動作です。タイヤ径が大きく車重の重いトラックやバスは、大径のステアリングを使用して操作トルクを下げます。

レーシングカーやスポーツカーは、小径のステアリングを採用して小さな操作角でクルマが俊敏に反応するようにしています。

ステアリングホイールの原理

ステアリングホイールは基本的に円形であり、その大きな円を回転させることで中心の小さな円 (ステアリングシャフト) へと回転を伝えます。このテコの原理によって、軽い力で操舵可能です。

ステアリングシャフトに伝達した操作は、ステアリングギアボックスを経由してタイロッドと呼ばれる部品に伝達されます。タイロッドは操舵輪を左右に動かすためのロッドであり、ステリングギアボックスと操舵輪をつなぎます。ここで、シャフトの回転運動がタイロッドを左右に動かす運動へ変換されます。

ステアリングホイールのその他情報

1. アッカーマン機構

タイロッドの終端 (タイロッドエンド) と左右のタイヤの中心点は、上から見ると台形になる位置に設計されています。これによって、ハンドルを切ると車体の回転方向の外側よりも内側のタイヤのほうがより大きな角度で曲がります。これがアッカーマン機構です。

通常の4節リンクでのステアリング機構は、パラレルステアリング機構と呼びます。パラレルステアリング機構ではパラレルと呼ばれるように内側と外側のタイヤは角度の差が生じません。そのため、コーナーを通過する際にスリップ角が生じます。

一方、アッカーマン機構では、左右の前輪が同じ中心を持つ円を描くことからタイヤに負担が少ない状況で旋回ができます。

2. ステアリング機構

ステアリング機構は大きく次に示す方式があります。

ラック&ピニオン式
ラック&ピニオン式とは、ステアリングシャフトと同軸の小径歯車 (ピニオンギア) と、ピニオンギアに対応するラックバーを使用した方式です。構造が比較的単純であるため、軽量なシステムを作り出すことができます。

また、ステアリング操作時の剛性が高く、応答性にも優れているので、スポーツモデルなどに採用される傾向にあります。

ボールナット式
ボールナット式は、ラック&ピニオン式と比べてパーツ数が多く、構造が複雑になります。一方で、動作がスムーズかつステアリングのギヤ比を大きくできるというメリットがあります。

したがって、大きな操作力を必要とするトラックなどの大型車に採用される傾向にあります。

パワーステアリング
現在の自動車には、軽い力でステアリングを回すことができるパワーステアリングというシステムが搭載されています。自動車の前方にはエンジンなど重量物が搭載されており、タイヤと地面との摩擦も発生します。

これらの要因から、パワーステアリングが無い自動車は反力を受けてハンドルが重くなってしまうことがありました。パワーステアリングには大きく分けて、油圧式と電動式があります。

前述したハンドルが重くなる現象を和らげるために、エンジンや電気の力を利用してハンドル操作を補助しています。

自動車ラジエーター

自動車ラジエーターとは

自動車ラジエーター

自動車ラジエーターとは、車のエンジンを冷却するシステムの主要部品です。

長時間の運転や炎天下での走行でエンジンの温度が過度に高くなることを防ぎます。エンジンで高温になった冷却液は、ラジエーターのコアに通液されます。

そして、走行風を受けて冷却された後、再びエンジンに戻り、エンジンを冷やします。

自動車ラジエーターの使用用途

自動車ラジエーターの役割は、エンジンの冷却です。正確には、過度に温度が上昇したエンジンと熱交換し、高温となった冷却液を放熱、冷却します。

長時間・炎天下での走行時には、エンジンの温度が上昇し、オーバーヒート状態になります。最悪の場合、エンジンが焼き付き、廃車となる可能性もあります。

そこで、ラジエーターを通して冷却液を冷却しながら、これを循環させることでエンジンの熱を吸収し、エンジンを正常に動作させる手助けをしています。 

自動車ラジエーターの原理

ラジエーター内のコアを通過する冷却液を、走行風およびファンによる送風で冷却します。なお、コア内部はパイプに放熱面積を稼ぐためのフィンまたはプレートがつけられており、表面積を増やすことで効率的に空気と熱交換できる構造です。

コア内部を通って冷やされた冷却液をラジエーター下部のロアータンクに溜めます。ロアータンク内の冷却液がホースを通じてエンジン付近の流路 (ウォータージャケット) へと流れ、エンジンの熱を吸収します。

エンジンの熱を奪い高温になった冷却液は、ラジエーター上部のアッパータンクに溜められ、コアへ送られて再度冷却されます。これが繰り返されることで、連続的にエンジンを冷却しています。 

自動車ラジエーターの構造

自動車用ラジエーターは、金属製またはプラスチック製の2つのヘッダータンクを、多数の細い通路を持つコアでつないだ構造です。体積に対して高い表面積を有しています。このコアは通常、金属板を積み重ねて溝を作り、はんだ付けなどで接合したものです。

長年、ラジエーターは真鍮や銅のコアを真鍮のヘッダーではんだ付けして作られていました。最近のラジエーターはアルミニウム製のコアを持ち、ガスケット付きのプラスチック製ヘッダーを使用してコストと重量を削減している場合が多いです。

この構造は、軽量で錆が発生しにくいメリットがある反面、樹脂部分の熱劣化や、樹脂と金属部分の接合部分からの水漏れなど耐久面でのデメリットがあります。

自動車ラジエーターのその他情報

1. フロー式の違い

ラジエーターには、冷却液を流す方向によって縦流れ式 (ダウンフロー) 、横流れ式 (クロスフロー) の2種類の方式があります。縦流れ式は、重力にしたがって上から下に冷却液を流します。横流れ式は、地面に水平に冷却液を流します。

日本車はダウンフロー式が多く、欧州メーカーの車はクロスフロー式が多い傾向があります。ダウンフロー式の場合、ラジエーターは、リザーバータンク、アッパータンク、コア、ロアータンクの4部分に大きく分けられます。

2. 自動車の冷却システム

ラジエーター以外の、自動車の冷却システムの部品には、以下のようなものがあります。

ウォータージャケット
冷却液を通すための通路で、燃焼室やシリンダー壁などの熱を効果的に冷却液に伝熱するための工夫がされています。

ラジエーターキャップ
ラジエーターを密封して冷却系統内に圧力をかけ、冷却液の沸点を上げることで冷却効果を高めます。加圧弁と負圧弁が組み込まれ、冷却系統内の圧力が一定の限度を超えると加圧弁が開き、蒸気がオーバーフローパイプを通じて大気中に放出されます。

ウォーターポンプ
エンジンの回転力を利用して冷却液を循環させるためのポンプです。ウォーターポンプは、エンジン回転数に比例して回転します。 ウォーターポンプが回転して、ポンプの内部にあるインペラが回転し、冷却液をポンプ内部に吸い上げ、ラジエーターに送ります。

サーモスタット
冷却液の温度が上昇すると開く、流路に設けられたバルブです。サーモスタットには開始温度と完全開弁温度があり、開始温度に達するとバルブが開いて冷却液が流れ始め、完全開弁温度に達するとバルブが全開になります。

サーモスタットは、エンジンが運転を始めた直後の冷却液が低温の状態では閉じており、ラジエーターに冷却液を送らないようになっているため、エンジンの暖気の時間を短縮します。

冷却液 (クーラント)
冷却液は、エンジンの冷却に使われる水とエチレングリコールと添加剤からなる液体です。冷却液には、防錆・防腐剤、防凍剤、洗浄剤、消泡剤、粘度改良剤などが含まれています。これらの添加剤により、エンジン内部の腐食や凍結、沈着の防止、冷却性能の向上が図られています。

シートベルト

シートベルトとはシートベルト

シートベルトとは、主に自動車で衝撃を受けたときや急な減速時に搭乗者の安全を確保するため座席に備えるベルトです。

安全ベルトとも呼ばれます。大きな動揺や衝突により乗員が座席から放り出され車内にぶつかる、あるいは車外に飛び出すなどの二次衝突を防ぎます。

近年では衝突時に瞬時にベルトを巻き取り乗員を強く拘束する一方で、その後はベルトを緩めて胸部への圧迫を和らげる機能を持つロード (フォース) リミッター付きプリテンショナーシートベルトが用いられています。

また、ショルダーベルト上部アンカー (固定装置) の位置を乗員の座高に合わせて上下に動かせるアジャスタブル・ベルトアンカーが一般的です。

シートベルトの使用用途

自動車を代表として、高速船、飛行機、ローラーコースター、ロケットのような乗物で用いられています。大きな動揺、衝突、急ブレーキの際に搭乗者を保護するためにシートベルトによって乗員を座席に固定可能です。

自動車が大きく動揺したり、衝突や急ブレーキによって大きな慣性力が生じた場合に搭乗者が車体から離れ、当初の進行方向に投げ出されます。そして、乗員が車内内装に衝突したり車外に投げ出されて二次被害を引き起こします。これらの被害を防ぐためにシートベルトは重要です。

シートベルトが開発され始めたきっかけは1899年に発生したイギリスでの交通事故でした。乗員2名が車外に放り出されて死亡し、この交通事故をきっかけにシートベルトの開発が進んでいます。そして、1946年に初めて一般の乗用車にシートベルトが採用されました。 

シートベルトの原理

三点式シートベルトは乗員の上体の動きを制約し、平常時には不便なため自由に伸縮し、強い衝撃が加わったときにのみロックして上体を保持可能です。この装置は緊急ロック式巻き取り装置 (英: Emergency Locking Retractor) と呼ばれ、パチンコ玉程度の大きさの球 (センサー) 、ロックのためのギア、ツメ (アクチュエータ) の3点から構成されます。

まず、急ブレーキや衝突した場合に慣性によって球は自動車の進行方向に動きます。次にこの球によってツメが上に持ち上がってギアの歯にかみ合うことでベルト (ウェビング) を固定可能です。

シートベルトの種類

シートベルトには、二点式、三点式、フルハーネス式などの種類があります。現在は、肩と腰の両側で固定する三点式シートベルトが主流です。

1. 二点式

二点式は2ヶ所のみを支持するシートベルトです。腰の両端と腰前部に着用します。衝突時の拘束性は三点式に劣ります。

2. 三点式

三点式は二点式に肩を含めた3ヶ所を支持する形式です。乗員の保護性能に優れ、最も実用的です。

3. フルハーネス式

フルハーネス式は1本の腰部用ベルトと2本以上の胸部用ベルトを使用します。衝突時の拘束性は最も優れており、四点式、五点式、六点式などもあります。

シートベルトの構造

自動車のシートベルトは布製です。体重の約50倍の力にも耐えるように設計されています。

1. ベルトアセンブリ

ベルトアセンブリはシートベルト全体を指し、リトラクター、アンカレッジ (アンカー) 、ストラップ (ウェビング) 、固定用バックルなどを有する装置です。

2. リトラクター

リトラクターは固定用バックルベルトを巻き取る装置です。

3. アンカレッジ

アンカレッジは、車体から取り付けられています。

4. バックル

バックルは着用者の固定や解放ができ、ベルトの先端に組み込まれた装置です。

5. ストラップ

ストラップはベルト部分のことで、腰部ストラップ、肩部ストラップ、脚部ストラップに分類されます。腰部ストラップはラップストラップや腰ベルトとも呼ばれ、腰部を横切るベルトです。

肩部ストラップは着用者の胸部を斜めに固定するベルトで、ダイアゴナルベルトやショルダーストラップとも呼ばれます。脚部ストラップはクロッチストラップとも呼ばれ、股部分を固定します。

カーエアコン

カーエアコンとは

カーエアコン

カーエアコンとは、自動車の空調設備のことです。

カーエアコンを適切に使用することで、車内を快適な温度・湿度で過ごせるようになります。カーエアコンの仕組みを平たくまとめると、「温度」を運ぶ媒体である冷媒を循環させることで、室内の温度を調節するものです。

コンプレッサと呼ばれる装置の駆動は、基本的にエンジンにより行われます。また、一部の電気自動車の暖房機能では、エンジンの廃熱を利用できないため、電熱線でヒーターコア内の水を温めて発熱する方式を採用しています。

カーエアコンの使用用途

カーエアコンはその名の通り、車に使用されています。車内の温度と湿度の調節、窓ガラスの曇り止めが役割です。部屋に設置されているエアコンと同様に、車内のカーエアコンを使用することによって、車内を快適な温度・湿度で過ごせるようになります。

また、湿度の多い時期や乗車人数の多い場合には、内気の温度・湿度と外気の気温の条件によっては窓ガラスが結露し曇りが発生します。特に、冬に除湿せずに内気を温めるだけだと、同様に曇りが発生します。

この場合には、除湿された空気を窓ガラスに当てることで、曇りが軽減します。したがって、ヒーターに加えてエアコンのスイッチもONにすることで、内気の除湿が促され、曇りの防止が可能です。

カーエアコンの原理

エアコンシステム内には冷媒が循環しており、通称エアコンガスと呼ばれています。これが熱交換の担い手です。

1. 圧縮

コンプレッサーによってエアコンガスを圧縮します。エアコンガスを低温低圧の気体の状態から機械的に圧縮し、高温高圧の半液体の状態へと変化させます。

2. 冷却

コンデンサーによってエアコンガスを冷却します。コンプレッサーで圧縮され半液体となった冷媒がコンデンサーに送られ、細い管が何重にも折りたたまれて表面積を広くとったコンデンサー内で放熱し、低温高圧の液体になります。

3. 霧状化

この冷媒がレシーバー (レシーバータンク、リキッドタンク) に溜められ、エキスパンションバルブを通して噴霧されます。圧縮し高圧となっている冷媒を瞬時に膨張させ、低温低圧の霧状にします。

4. 熱交換

低温となった霧状の冷媒はエバポレーターに送られ、ブロアファンから送風される空気と熱交換し、これを冷却します。また、エバポレーターには除湿の役割があります。

水蒸気を含んだ空気を冷却すると、エバポレーター表面が結露します。この水滴を排水することで、車内に供給される空気に含まれる水蒸気量を減らす仕組みです。

カーエアコンのその他情報

1. 燃費の良い使用方法

カーエアコン作動時はエンジンの回転数が上がり、負荷がかかるため、燃費に影響を与えます。コンプレッサーの稼働時間が減る程燃費は良くなります。

そのため、家庭用エアコンと同じく弱い状態で長く使うよりも、急速に冷却して設定温度に到達させる方が燃料の節約につながります。

カーエアコンの使用以外に、車内温度を低く抑えるためには太陽光を防ぐことも効果的です。車内温度を高くする要因として、赤外線が挙げられます。この赤外線を遮断することで、高温防止につながります。

2. エアコンガスの種類

以前は「R12」と呼ばれるガスを使用していました。しかし、オゾン層破壊効果が高いことから、1995年末までに生産が中止されています。

その後「HFC134a」という種類のエアコンガスが使用されていました。このガスはオゾン層を破壊することはありませんが、二酸化炭素よりも強力な温室効果ガスと言われ、モントリオール議定書 キガリ改正(HFC改正) により削減が義務化されています。

さらに、HFC134aの代替として出てきたR1234yfもPFAS規制案により今後規制が予想され、自然冷媒であるCO2、プロパンなどに注目が集まっています。

EV充電器

EV充電器とは

EV充電器

EV充電器とは、電気自動車 (EV: Electric Vehicle)・プラグインハイブリッド車 (Plug-in Hybrid EV) を充電する装置です。

電気自動車の普及とともに、家庭・ホテル・病院・商業施設・高速道路・ガソリンスタンドなど、さまざまな場所に設置されるようになりました。EV充電器には、ケーブルを使う有線給電方式とワイヤレスの非接触給電方式があります。

現在は非接触給電方式より充電時間が短い有線給電方式が主流ですが、将来的には利便性の高い非接触給電方式との併用が進むものと予想されます。なお、有線給電方式は、さらに普通充電器と急速充電器に分類できます。

EV充電器の使用用途

EV充電器は、電気自動車・ハイブリッド車の充電に使われます。現在一般的に普及している有線給電方式には、普通充電器と急速充電器があります。

1. 普通充電器

普通充電器は、主に一般家庭・事業所駐車場・ホテル・病院・商業施設などに設置されています。普通充電器は充電時間の目安が8〜10時間と長いため、自宅やホテルで夜間など自動車を使わない時間帯に完全に充電し、病院・商業施設などの目的地で滞在時間に応じて充電するという使い方をします。

2. 急速充電器

急速充電器は、高速道路・ガソリンスタンドなど短時間の利用者が多く設置スペースに制限が少ない場所に設置されています。急速充電器は30分程度で充電可能であるため、自宅・目的地間往復の経路上で継ぎ足し充電する使い方をします。

EV充電器の原理

有線給電方式の普通充電器には、電圧が100V・200Vの2種類があります。家庭用の単相交流電流 (AC) をそのまま自動車に供給し、自動車側に搭載されている整流回路が直流電流 (DC) に変換してEV電池を充電する仕組みです。

有線給電方式の急速充電器は、三相200V交流電流を急速充電器内のAC/DC変換器で高電圧・大出力の直流電流に変換して、自動車に直流を供給します。急速充電器には主に、日本中心に開発されたCHAdeMO (チャデモ) 、欧米の自動車メーカー中心に開発しているCCS (Combined Charging System) 、Tesla車が独自に開発したTesla Supercharger (テスラスーパーチャージャー) の3種類の充電プロトコルがあります。

EV充電器のその他情報

1. 非接触給電方式

非接触給電方式も、現在開発と標準化が進められている方式です。非接触給電方式とは、地面に設置された送電コイルからEV側の受電コイルへワイヤレスで電力を供給するシステムです。

自動車から降りずに自動的に充電できるという利便性、充電器に触れる必要がないため感電のリスクがないという安全性などのメリットがあります。非接触給電方式は大きく分けて、電磁誘導方式と磁界共鳴方式の2種類あります。磁界共鳴方式は長い空間距離を送電できる点や電力伝送効率において、電磁誘導方式よりも優れています。

2. CHAdeMO (チャデモ)

CHAdeMOプロトコルでは、さまざまなメーカーのEV・急速充電器がマッチするよう、CAN通信規格で車両・充電器間のデータ通信を行い制御します。また、大電流を扱う急速充電器の安全性を確保するため、制御電源を独立にして主電源で発生した異常から充電器全体を保護する機能や主電源側と2次側 (直流側) との間に絶縁トランスを入れることが必須です。

さらに、EV電池の寿命に悪影響を与えないよう、車載ECUがEV電池の残量などの条件によって最適な充電電流値を求めて急速充電器に指示を送り、急速充電器はECUの指示通りに電流を送るというシステムになっています。

2. CCS (Combined Charging System)

CCS車両用インレットは、1つの車両用充電インレットのみでAC充電もDC充電も可能な設計となっています。インレットとは車両内に配置された電源コードの先端についているプラグを指し、レセプタクルとも呼ばれます。

CCSの接続タイプは北米ではSAE J1772 (コネクタタイプ1) 、欧州ではIEC 62196 (コネクタタイプ2) で標準化されています。通信は電力線を用いた通信ではなく、PWM信号に重畳する方式です。充電シーケンスはEV側が要求を送信し、充電スポットが応答を返す形で通信します。