エアバックとは
エアバックとは、自動車事故などによる強い衝撃から乗員を保護する目的で使われる安全装置の1つです。
自動車に強い衝撃が加わることをきっかけに瞬間的に膨らみ、自動車が受けた衝撃を緩和する役割を果たしています。
あくまで、シートベルトのような拘束装置を付けた状態で性能を発揮する補助拘束装置(英: Supplemental Restraint System)であり、シートベルト未着用の場合を想定した安全装置ではありません。
日本の交通法規にはエアバックの標準搭載の義務はありませんが、現在、日本の各自動車メーカーからリリースされるほとんどの車にエアバックが標準搭載されています。(※欧米などではエアバック装着が義務化されている)
エアバックの原理
エアバックは、事故の衝撃を感知するセンサー、インフレータ(ガス発生装置)、バック、コントロールユニット、回転コネクタ(運転席のみ)で構成されている装置です。
自動車の特定部分に加わった衝撃をセンサーが感知し、エアバッグのコントロールユニットに信号を送ります。
その信号を受け、エアバックに内蔵されたインフレータ(ガス発生装置)が点火。
エアバック内でガス爆発を起こし、発生したガスで一気にナイロン製のバッグを膨らませます。
そのスピードは人間の瞬きよりも早く、衝撃を感知してから約0.03秒というスピードで膨らみます。
これにより、事故の衝撃で前に押し出された体がステアリング(ハンドル)や、ダッシュボードなどに直に打ち付けられるのを防ぎ、人体へ加わる衝撃を緩和するクッションの役割を果たしてくれるという訳です。
乗員の衝撃を吸収した後は、自動的に収縮するような仕組みになっています。
エアバックが衝撃を吸収する仕組み
エアバックにはガスの排出口(ベントホール)が設けられています。
膨らんだエアバックに人が衝突して、エアバック内に充満したガスの圧力が高まると、この排出口からガスが噴出する仕組みになっています。
これにより、人がエアバックに衝突した瞬間に、エアバックは収縮し、ぶつかった衝撃をガスの噴出という運動エネルギーに変換し、外に逃がすことができるのです。
もし仮に排出口がなければ、衝撃がそのまま人体に加わってしまい、大怪我や命の危険につながってしまいます。
エアバックが開く条件
エアバックはどんな衝撃でも開く訳ではなく、開く条件は決まっています。
固定した壁に対して正面から衝突することを想定した時に、人体が受ける衝撃が大きくなる速度(約30km以上)でぶつかる事がエアバックが開く最低条件です。
しかし、約30km以上でぶつかった場合でも、衝撃が何らかの原因で分散・緩和してしまったり、センサーが反応しないぶつかり方をしてしまったりすると、開かなくなる場合があります。
エアバックの使用用途
エアバックは、自動車事故の衝撃から乗員を守る目的で使われる安全装置です。
しかし、実際はエアバックとぶつかった衝撃によって、命は助かったものの、乗員がエアバックと衝突した衝撃で鼻を折ってしまったり、肋骨を折ってしまったり、怪我を負ってしまう事例は多くあります。
あくまで、エアバックは「乗員を怪我から守る安全装置」ではなく、「乗員が死ぬことを防ぐ安全装置」であるという認識が正しいと言えるでしょう。
また、エアバックは基本的に1度しか使えません。
再利用が出来ない上に、エアバックが開いてしまった車は、損傷が激しいことが予想されるので基本的に廃車となるのが一般的です。
もし、修理できる場合であっても、エアバックを構成する部品一式、またステアリングやダッシュボード、シートベルトなど周辺部品も含めた交換や修理が必要になります。
エアバックの種類
エアバックは、格納されている部位によって様々な種類が存在します。
一般的なのは、運転席と助手席に備わっている「運転席エアバック」と「助手席エアバック」でしょう。
主にこれらは、自動車の前方衝突を想定したエアバックであり、日本では新車のほとんどが標準搭載しています。
また、自動車の側面からの衝突を想定した「サイドエアバック」や「サイドカーテンエアバック」などもあります。
欧米などはこの2つのエアバックも含め標準搭載が義務化されており、近年、日本でもその重要性が認識されてきています。
それ以外にも、格納されている場所によって以下のような種類のエアバックが存在します。
- ニーエアバック
- シートクッションエアバック
- リアウィンドウカーテンエアバック
- 後部エアバック
- 後部センターエアバック
- シートベルトエアバック
- ドアマウントカーテンエアバック
- ITSヘッドエアバック
- ペルビスエアバック
自動車以外のエアバック
エアバックは自動車以外に使われるものも存在します。主に自動車以外では、次のようなエアバックが開発されています。
- 歩行者保護用エアバック
- オートバイ用エアバック
- 自転車用エアバック
- 雪崩対策用エアバック
- 惑星探査機用エアバック
形状や作動方法など仕様は違いますが、衝撃を吸収する目的でどれも使用されています。