ウイスカ

ウイスカとは

ウイスカとは金属の表面、主にすず(Sn)めっきや亜鉛(Zn)めっきなどの金属表面から、ひげ状もしくは針状の金属結晶(単結晶)が成長したものを指します。形状は直径1~2μくらいであり、長さが1~10μくらいの形状が多く見られます。

ウイスカは自然に成長します。成長したウイスカが電子回路の信号線や電源線など電位差の異なる部分を短絡したり、成長したウイスカが折れて飛散して電子機器内部に入り込んだ場合には、電子回路の不特定な部分が短絡されるため、電子機器に様々な不具合を発生させます。

ウイスカは肉眼で確認することが困難であり、ウイスカの一時的な接触による短絡が原因で発生した不具合の原因を特定することは非常に困難な作業になります。

1940~1950年代には亜鉛(Zn)やすず(Sn)がメッキの材料やはんだ材料として使用されていました。このためウイスカの発生により装置類の故障が多発していました。この時、対策として微量の鉛(Pb)を含ませてウイスカの発生を抑制しましたが、2000年以降の鉛フリー化により再びウイスカの発生が問題となっています。

ウイスカの使用用途

一般的に言われているウイスカとは電気機器に悪影響を与える存在です。このため、ウイスカを発生させない対策が研究された結果、ウイスカの発生を抑制する技術が確立されました。

しかしウイスカ自体は欠陥の少ない単結晶であるため高強度であり耐熱性と耐食性などが非常に優れていることが分かっています。この特性を利用してセラミックスや金属及びプラスチックス複合材の強化材として用いられます。

具体的にはマイクロウェーブ加熱が可能なセラミックスの強化剤、切削工具の硬質セラミック用強化剤など強化剤として利用されています。

ウイスカの特徴

ウイスカは、真正ウイスカと非真正ウイスカの2種類に大別できます。

真正ウイスカとは主に金属の表面に成長する単結晶が成長したものを指します。
このウイスカは成長する下地金属と同じ元素であり常温で発生します。このウイスカの発生要因はメッキ膜に僅かでも圧縮応力が加わることにより成長が始まります。メッキ膜にかかる応力は予想が困難であるため、ウイスカの発生も予測ができない現象となっています。
真正ウイスカが成長しやすい金属はスズ(Sn)や亜鉛(Zn)カドミウム(Cd)であり、これらの金属に成長するウイスカは常温で発生します。また高温の状態であれば銀(Ag)、金(Au)、鉄(Fe)、鉛(Pb)などの金属でもウイスカが発生することがあります。

一方、非真正ウイスカとは多くの場合人為的に形成させたもの物を指します。
現在では非真正ウィスカを形成させる手法が数多く確立され、金属やプラスチックの強化剤などに利用されています。
真正ウイスカの形成には蒸気相を凝縮する手法、溶液から析出させる手法、あるいは電解析出そして還元や熱分解等などにより有益なウイスカを形成することが可能となっています。

また、真正ウイスカとして金属ではなく炭化ケイ素や窒化珪素のウイスカを強化剤として製品化している事例もあります。

りん青銅

りん青銅とは

りん青銅 (りんせいどう) とは、Cuを主成分とし、これにスズを加えた合金である「青銅」にりんPを加え、酸化銅CuOを脱酸した金属です。

酸化銅はサビとして存在しており、これを取り除くことで、硬度や強度が向上し、弾性や耐摩耗性が改良されます。そのため、りん青銅は、青銅の利点を維持しながら高性能化されたものです。

電子機器部品を中心に機械部品や自動車制御機器など、さまざまな産業で用いられています。中でも、有用なばね材として知られています。

りん青銅の使用用途

りん青銅 (英: Phosphor Bronze) は銅とりんの合金で、その特性からさまざまな用途があります。以下は、りん青銅の主な使用用途です。

1. ベアリング (軸受け)

りん青銅は、摩擦が生じる機械部品やベアリングによく用いられます。その耐摩耗性や耐食性があり、高い耐久性を提供します。これにより、機械部品の寿命を延ばすことができます。

2. 楽器の弦

りん青銅はギターの弦や他の弦楽器の弦として使用されます。その振動特性と耐食性が、楽器にとって重要な要素となります。

3. 電気コネクター

高導電性と耐食性のため、りん青銅は電気コネクターや端子などの電気部品にも使用されます。電子機器の内部で信号伝達をする際に重宝されます。

4. ばね

りん青銅は弾力性があり、疲労強度が高いため、ばねの材料としても広く利用されます。特に、高い反発力が求められる場面で使われます。

5. 船舶部品

海水に対する耐食性があり、船舶の部品や構造にも使用されます。錨や船のボルト、船底など、海洋環境にさらされる部品に適しています。

6. 建築材料

耐食性があり、外部の気象条件に強いため、建築材料としても使用されます。外部のデザイン要素や装飾品、屋外のスクリューやボルトにも適しています。

りん青銅の性質

りん青銅は、銅とわずかな量のりんを主成分とする合金です。りん青銅の特性は、元素組成や結晶構造の制御に起因しています。

銅とりんの結合が、強度や耐久性、導電性などの特性に寄与しており、それにより様々な産業分野で幅広く利用されています。主な性質は以下のとおりです。

1. 導電性と熱伝導性

銅を主体とする合金であるため、銅の高い導電性が維持され、電気信号や熱を伝導する特性があります。これは電気コネクターや冷却部材としての使用に適しています。

2. 機械的特性

りん青銅は強度があり、耐摩耗性にも優れています。これが、ベアリングや機械部品としての利用に適している要因です。りんが結晶構造を制御し、強度を向上させることが知られています。

3. ばね特性

りん青銅は弾性変形が可能で、疲労強度が高いため、ばねとしての使用に適しています。りんの添加が結晶構造に影響を与え、材料の変形特性を向上させています。

4. 耐食性

りん青銅は耐食性があり、特に湿気の多い環境や海洋環境においても酸化や腐食が進みにくい特性があります。これは船舶部品や屋外の建築材料において有益です。

5. 音響特性

ギターの弦などに使用されるように、りん青銅は優れた音響特性を持ちます。これは結晶構造の安定性と、振動の伝播に対する特有の反応に起因しています。

6. 加工性

りん青銅は鍛造や加工が容易で、複雑な形状や細部の加工にも適しています。この加工性は、様々な製品や部品の製造に貢献しています。

りん青銅の種類

りん青銅は、合金に含まれるスズの割合と低温焼きなましの有無によって、その種類が分けられます。材料記号では、銅合金を表すCおよび、5が頭につく4桁の数字で表記されます。

1. C51000 (Phosphor Bronze A)

低燐りん青銅で、通常は99.95%以上が銅から構成されます。良好な冷間加工性を持ち、ばねや小さな部品に適しています。高導電性を維持しながら、硬度も確保できます。

2. C51900 (Phosphor Bronze B)

通常は8-10%の燐を含む中燐りん青銅です。高い耐蝕性があり、海洋環境などでの使用に向いています。また、機械的特性も優れており、ベアリングやばねとして使用されます。

3. C54400 (Phosphor Bronze C)

通常は4-6%の錫と0.15-0.35%の燐を含む錫りん青銅です。耐食性と耐熱性が向上し、耐久性が増します。これにより、高温環境や特殊な用途に適しています。

4. C52100 (Phosphor Bronze D)

高燐りん青銅で、通常は14-16%の燐を含みます。非常に高い耐摩耗性を持ち、機械部品やベアリングとしての使用が一般的です。強度と硬度が重視される場面で選ばれます。

 

これらは一部のりん青銅の代表的な種類であり、異なる燐含有量や他の合金成分によって異なる特性を持っています。適切なりん青銅の種類を選ぶことで、特定の要件や用途に最適な性能を発揮できます。

びびり

びびりとは

びびりとは、工作機械関連で使用される用語で、切削したり研削したりする時に発生する異常な振動現象を言い、加工面に特有のびびりマークが生じます。

びびり振動は2種類あり、自励びびり振動、すなわち系が不安定になって発生する定常的な振動と、強制びびり振動、すなわち外部からの振動や機械内部からの振動によるワーク加工面に発生する振動です。再生びびりとも言われる自励びびりは、直前に加工した面が周期的に変動する影響や、複数の振動モードが連成して生ずる影響などで発生します。強制びびりは、工作機械の駆動電動機・駆動装置や切削力の変動によって発生する内部振動や機械外部からの振動により加工面の振動が発生します。

びびりの使用用途

びびりは、加工時に発生する異常な振動であるため、仕上げ面の劣化をきたし、工具の破損や場合によって工作機械の破損まで至ります。したがって原因を究明して適切な対策を行う必要があります。

自励びびりは、バイトや機械自身あるいはワークの微小な振動により、加工面に微小で周期的な凹凸が生ずることが発端です。そして直後の加工凹凸の周期が直前の加工凹凸の周期と干渉すると加工凹凸が大きくなり、さらに進行すると周期的な振動が発生します。

強制びびりは、機械の内部や外部からの振動により、顕著な加工凹凸が発生してびびり振動となります。

びびりの原理

びびりを抑制する方法は、その要因次第であるといえます。自励びびりの場合は、系の振動応答性の問題であるため、影響する因子として単位面積当たりの切削力、切削幅、及び主軸の1回転に要する時間などの切削条件や工作機械全体の動特性などがあります。具体的には切削条件では、切削速度の低下、切り込み深さの減少、及び主軸回転速度の変更などの対策があります。また、工具形状では、すくい角やねじれ角の増加、及び不等ピッチカッターへの変更などです。機械の動特性では、剛性を上げる設計、鋼板溶接構造への変更、及びレジンコンクリート構造の採用などの対策が取られます。工具動特性の改善では、ばねバイトやダンパー内蔵のバイトの採用などです。

強制びびり振動を抑制する方法ですが、機械の内部発生振動に対しては、ポンプなどを機外へ持ち出して振動源を除去するとか、フレキシブルカップリングを用いて振動伝播を低減するとか、回転数を変更して振動周波数を変えるなどを行います。外来振動に対しては、防振基礎やラバーマウントなどを使って振動伝達を小さくする方法があります。また、切削力の変動に対しては、工具形状やカッター刃数の変更、不等ピッチカッターの使用などにより切削力を低減したり、振動周波数を変える対策が取られます。

H鋼

H鋼とは

H鋼

H鋼とは、軸方向に長く断面がH字の形状をしている鋼材です。

主に構造用として、鉄骨造の建物の柱や梁などに使われます。熱間圧延による形鋼の製造法は1849年にベルギーの鉄鋼会社が特許を取得したことに始まりました。日本でH鋼の生産が始まったのは1960年代以降であり、霞が関ビルで大量に使われてから急速に普及しています。

H鋼の形状・寸法は、JISG3192、JISA5520により規格化され体系が整っています。これ以外にも、薄肉軽量のものから極厚のものまで、鋼材メーカーで生産されている種類は多いです。

H鋼の使用用途

H鋼は耐圧縮力や曲げ耐力が高いため、建築などに幅広く使用されます。H鋼の具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 岸壁・ビル・橋梁などの基礎杭
  • 高層ビルなどの構造物
  • 天井クレーン用のクレーンガーダ
  • 工場などにおける鉄骨階段

継手が単純化されることもあって、建築用に急速に普及しています。また、構造用H鋼と基礎柱用H鋼があり、それぞれ用途に応じて使い分けます。

H鋼の原理

H鋼の材料は基本的に鉄であり、一般構造用圧延鋼材 (SS材) や溶接構造用圧延鋼材 (SM材) などを加工して製作します。1994年以降は、建築用に特化した建築構造用圧延鋼材 (SN材) なども使用されています。

SS材はメイン部ではなく小梁などの2次部材に使われ、SM材は溶接する梁に使用されることが多いです。また、SN材は新しい建築用の鋼材で大梁などに使われます。

H鋼は単位重量当たりの曲げ抵抗性が大きいため、経済的な鋼材です。曲げ抵抗性は梁の高さの3乗に比例し、曲げの中心軸からの距離が遠いほど大きくなります。

H鋼はこの観点から理にかなった形状であり、上下のフランジを厚くすることで、さらに曲げ抵抗性を大きくできます。

H鋼の種類

H鋼には、ロールH鋼やビルドH鋼、外法一定H鋼などの種類があります。

1. ロールH鋼

ロールH鋼は、鉄の圧延によってH型に成形された鋼材です。大量生産に適しているため、一般的に市販されているH鋼はロールH鋼です。

2. ビルドH鋼

ビルドH鋼は、鉄板を溶接してH型に成形した鋼材です。板厚や寸法を自由に製造できる点が特徴です。ただし、ロールで圧延するよりも高価な点がデメリットとして挙げられます。

3. 外法一定H鋼

外法一定H鋼は、上端から下端までの幅が一定のH鋼です。スパンの大きな梁などに使用します。

H鋼のその他情報

H鋼の熱間圧延製造

H鋼の熱間圧延による製造法は急速に進歩しており、矩形断面でないH鋼も圧延法で製造が可能です。まず、ブルームと呼ばれる鋼塊の素材を加熱し、溝を有するロールで粗圧延をしてH鋼に近い断面形状にします。

そして、水平ロールと縦ロールを一対ずつ有するユニバーサル圧延機によってH鋼の形状に圧延します。ユニバーサル圧延機はロール位置を変えることにより、フランジやウェブの厚さを比較的容易に変更可能です。

以前はウェブ高さやフランジ幅を変えるにはローラの交換が必要でした。最近では、幅可変の水平ロールを使用することで、ウェブ高さを変える製造法が実用されています。

また、素材についても、鋼塊の工程を省き連続鋳造法によるスラブを直接圧延工程に接続して製造する場合もあります。

                                                                                                                                                                                                                                                                           

鋳鋼品

鋳鋼品とは鋳鋼品

鋳鋼品とは、溶けた鋼を鋳型に流し込んで冷却・凝固させ、所定の形状、寸法の製品としたものをいいます。鋳鉄に比べ強度が大きく、粘り強さも大きいため、主に大きな力がかかる機械構造物の部品として使われます。

鋳鋼品の特徴は、複雑な形状の部品の生産が可能で、組織の方向性がなく、靭性が大きいので衝撃や変動荷重がかかる部品に使える等です。また、溶けた鋼を直接型に入れて生産するため、鍛造や圧延に比べ生産工程が少ないメリットもあります。

鋳鉄は黒鉛すなわちグラファイトがあるのに対し、鋳鋼にはグラファイトがないのが大きな違いです。物理的には炭素を2.1%以上含むのが鋳鉄で、2.1%未満が鋳鋼です。

鋳鋼品の使用用途

鋳鋼品は、大別すると炭素鋼鋳鋼と合金鋼鋳鋼とがあります。炭素鋼鋳鋼は、焼なまし、焼ならし処理後に使用され、電動機や発電所に用いる機械部品、鉄道車両部品などの用途があります。低炭素鋼は含有炭素量が0.2%以下のものを言い、マンガン、シリコン、クロームなどを添加することで強度、耐食性、耐摩耗性などを向上させた低合金鋳鋼品は、ブラケット歯車、自動車・鉄道車両・建設機械の部品などに広く使用されます。

高合金鋼鋳鋼は、ニッケル、クローム、マンガンなどを20%近辺まで添加して耐食性、耐熱性、耐摩耗性などを向上させたもので、耐熱鋼鋳鋼、ステンレス鋼鋳鋼、高マンガン鋼鋳鋼などがあります。高温高圧にさらされる蒸気タービンのケーシング、圧延機ロールのフレームや各種ロールなどの他、車両の連結器、ポンプや水車の部品などに使われます。

鋳鋼品の原理

鋳鋼品の製造は鋳型を使用して成型しますが、古くから使われているのは、砂型鋳造法です。木型から砂型を作って溶鋼を注ぎ、冷却・凝固後、砂型を壊して鋳鋼品を得る方法です。

この他各種の鋳造法があります。フルモールド法は、木型の代わりに発泡スチロールの型を使って、鋳造後は型を完全に消滅させる方法です。また、ロストワックス法は、型をろう材で作る方法で、精密鋳造に適しています。シェルモールド法は、珪砂と石炭酸系のレジンとの混合したものを加熱して金型に注ぎ、冷却して薄い半殻状の鋳型を作り、この鋳型を使って鋳鋼品を製造する方法です。大量生産に適しています。

鋳鋼品の製造工程は、製作図の作成から始まって、鋳造方案の設計、模型の製作、造型、鋼の溶解、鋳鋼の鋳込み、湯口等の切断、熱処理、鋳物の仕上げと続き、最後は検査、梱包の各工程となります。

製作図のデータは、鋳造シミュレーションに使用して、事前に湯流れの最適化、巣の防止、確実な凝固などを検討します。鋳造方案の設計では、凝固時の寸法変化や体積変化、変形を予測し、湯道や押し湯の最適化などを行います。熱処理の工程も重要で、熱処理の温度や時間、回数など合金鋼の金属組織を確実にして、所定の性能を発揮するようにします。

軟鋼線材

軟鋼線材とは

軟鋼線材

軟鋼線材とは、炭素の含有率が、約0.12~0.30%の炭素鋼線材のことです。引張強度では、490未満のものです。記号では、SWRM(Steel Wire Rod Mildより)と表記されています。

現在、炭素の含有量の違いにより、「SWRM6」~「SWRM22」の8種類の線材が販売されています。炭素の含有量が低いため、高い強度が求められるものには向きません。また、強度にばらつきがあるため、高度な品質が求められる冷間加工用にも向いていません。そのため、主に小ねじなどに使用されています。

軟鋼線材の使用用途

軟鋼線材の用途は、主に釘や細物の伸線用として使用されています。具体的には、釘・ワリピン・リベット・鉄線・有刺鉄線・亜鉛メッキ鉄線・溶接金網・建築金具・小ネジ・木ネジ・ボルト・ナットなどに利用されています。

炭素の含有量が低く、精度にばらつきがあるため、精密さが求められる用途で使われることはありません。また、冷間加工を行う場合には、冷間圧造用炭素鋼線という専用の線材があるため、低温環境下でも使用されることはありません。

軟鋼線材の特徴

軟鋼線材には、炭素の含有量の違いにより、現在「SWRM6」~「SWRM22」の8種類の線材があります。
「SWRM6」:炭素の含有量の上限が0.08%に設定された特別極軟鋼です。柔らかく、延性に優れています。普通鉄線の材料や釘やワリピンの素材として使用されています。
「SWRM8」:炭素の含有量が0.10%以下に設定された極軟鋼です。柔らかく、伸びが良く、加工しやすい素材です。鉄線や釘の材料として使われています。
「SWRM10」:炭素の含有量が0.08~0.13%の鉄鋼材料で、線材として規格されているものです。硬引鉄線の素材として利用されています。
「SWRM12」:炭素の含有量が0.10~0.15%の鉄鋼材料です。硬引鉄線の素材として使用されています。
「SWRM15」:炭素の含有量が0.13~0.18%の軟鋼線材です。
「SWRM17」:炭素の含有量が0.15~0.20%の軟鋼から半軟鋼に該当する鋼材です。
「SWRM20」:炭素の含有量が0.18~0.23%の半軟鋼です。
「SWRM22」:炭素の含有量が0.20~0.25%という、軟鋼と硬鋼の境界に位置する半軟鋼に分類されています。軟鋼線材の中では、もっとも硬度、引張強度に優れている素材です。

溶接構造用圧延鋼材

溶接構造用圧延鋼材とは

溶接構造用圧延鋼材とは、その名前の通り、溶接接合に使用されている鋼材のことです。もともと造船用として、開発された鋼材であることから、「Steel」と「Marine」の頭文字を取り、「SM400B」「SM490C」などと表記されています。

数値は、引張強さの最低保証値を表しています。また、最後のアルファベットは、グレードを表し、A、B、CとCに行くほどグレードが高くなります。
溶接構造用圧延鋼材は、降伏点や引張強さ、化学成分の違いにより、現在11種類の鋼材があります。

溶接構造用圧延鋼材の使用用途

溶接構造用圧延鋼材は、主に溶接部材に使用されています。もともと造船用として開発された鋼材であることから、ほとんどが船体に使用されていました。

かつては、柱や梁などの剛接合時に建築用としても使用されていました。しかし、建築構造用圧延鋼材も溶接性に優れていることから、現在は、利用が減りつつあります。

近年、船体以外に、パイプラインや産業機械、発電プラントなどの社会インフラ関連にも非常によく使用されています。

溶接構造用圧延鋼材の特徴

溶接構造用圧延鋼材は、化学成分・降伏点・引張強さなどの性能の違いにより、現在以下の11種類の鋼材が販売されています。「SM400A」「AM400B」「SM400C」「SM490A」「SM490B」「SM490C」「SM490YA」「SM490YB」「SM520B」「SM520C」「SM570」

溶接構造用圧延鋼材は、一般構造用圧延鋼材(SS材)と添加成分が似ていますが、一般構造用圧延鋼材はリムド鋼、溶接構造用圧延鋼材は、キルド鋼から生成されています。

キルド鋼とは、溶融状態の鋼にケイ素やアルミニウムなどの脱酸剤を加え、酸化物を取り除いた鋼のことです。脱酸をしないものがリムド鋼になります。脱酸することで低温でも靭性を保つことができます。

そのため、―10℃から350℃の温度範囲で使用できます。末尾のB、C種は、衝撃試験を実施しており、低温じん性を保証しており、脆性破壊を起こさないタイプの鋼材です。A種は、耐候性・強度に優れたタイプの鋼材です。

Y種は、SM490A及びBクラスよりも降伏点が約40N/mm2程高く設計された鋼材です。長期間使用される橋梁や土木分野での使用を目的としています。

圧延鋼材

圧延鋼材とは

圧延鋼材

圧延鋼材とは、鋼片を二本以上のロールによって、押しつぶしながら、引き延ばし、板状にしたものです。比較的安価で、板状の材料であるため、「曲げ加工」「プレス」「板金加工」に適しています。機械強度を必要としない、外装やカバーなどによく利用されています。

圧延鋼材は、圧延する際の温度により、大きく2種類に分けられます。熱間圧延で得られたものを熱間圧延鋼材(SPHC)、冷間圧延で得られたものを冷間圧延鋼材(SPCC)と言います。

圧延鋼材の使用用途

圧延鋼材には、用途により、「一般構造用圧延鋼材(SS材)」「建築構造用圧延鋼材(SN材)」「溶接構造用圧延鋼材(SM材)」の3種類の鋼材があります。

一般構造用圧延鋼材は、建築の主要部分や溶接部材以外で、最も汎用的に用いられている鋼材です。

建築構造用圧延鋼材は、塑性変形能力の高い鋼材であることから、主要な柱や大梁などに使用されています。

溶接構造用圧延鋼材は、溶接性に優れた鋼材です。梁同士を接合する際に使われています。

圧延鋼材の特徴

圧延鋼材には、圧延する際の温度により、大きく「熱間圧延鋼材」「冷間圧延鋼材」の2種類に分けることができます。

熱間圧延鋼材は、金属を約1000℃から1200℃に加熱して、圧延することで得られた鋼材です。高温で圧延することから、比較的小さな力で圧延できること、結晶構造が強固となり、粘り強い鋼材が得られるなどのメリットが挙げられます。一方、高温であるため、酸素と結合して、表面に酸化被膜を生じたり、寸法精度が落ちるなどのデメリットがあります。

冷間圧延鋼材は、常温で圧延することで得られる鋼材のことです。常温であるため、なめらかで光沢のある表面が得られることと、寸法精度が高いことがメリットとして挙げられます。一方で、加工に大きな力を必要とすること、加工硬化が発生する可能性があること、酸化しやすく、表面処理が必要などのデメリットが生じます。

あまり使われていませんが、冷間と熱間の中間をとった、「温感圧延」というものもあります。

一般構造用炭素鋼鋼管

一般構造用炭素鋼鋼管とは

一般構造用炭素鋼鋼管

一般構造用炭素鋼鋼管とは、「耐震性」「高強度」「高耐食性」などの特性を持った、支柱、鉄塔、足場、基礎杭、地すべり抑止杭などの土木/建築の構造物に使用される鋼材のことです。

「いっぱんこうぞうようたんそこうこうかん」と読みます。一般的には、「丸パイプ」「丸鋼管」と呼ばれており、形状は、円のパイプ状をしています。

一般構造用炭素鋼鋼管は、記号で「STK」と書きます。管の種類は、化学成分や機械的性質などの違いから5種類に分けることができます。

一般構造用炭素鋼鋼管の使用用途

一般構造用炭素鋼鋼管は、建築、土木の分野において広く利用されています。土木・構造用として、「フレーム」「支柱」「杭」「地すべり抑止杭」「鉄塔」「足場」などに使用されています。

用途が建造物であるため、強度に関する規定があります。例えば、基礎杭に使用するのであれば、外径が318.5mm未満の溶接鋼管、地すべり抑止が目的であれば、同じ寸法で継目無鋼管、または溶接鋼管と規定されています。ちなみに、一般構造用炭素鋼鋼管の直径は、21.7mmのものから1016.0mmのものまであります。

そのほか、機械類として、農機具などにも使われています。

一般構造用炭素鋼鋼管の種類

化学成分による一般構造用炭素鋼鋼管の区分

一般構造用炭素鋼鋼管には、化学成分などの違いにより、「STK290」「STK400」「STK490」「STK500」「STK540」の5種類の鋼管があります。

1. STK290

抗張力が最も低く、低強度設計のため、軽易な構造部材のみに使用されます。そのため、土木建築の主要構造には使用できません。

2. STK400

建築構造計算基準に対応しており、「一般構造用途」に使用される種類の鋼管です。STK400が、最も多くの構図部材に使われています。

3. STK490

建築構造計算基準に対応しており、溶接構造用高張力鋼管です。高強度を必要とする構造部材に使用されています。

4. STK500

炭素含有量が多い鋼管です。主に足場用として利用されています。

5. STK540

抗張力が最も強く、溶接性を重視した構造用高張力鋼管です。

 

化学成分の違いのほか、鋼管の製造方法と仕上げ方法にも以下の通り、いくつかの種類があります。

製造方法と仕上げ方法による一般構造用炭素鋼鋼管の区分

1. 指定されている製造方法

「継目無し(シームレス)」「電気抵抗溶接(電縫)」「鍛接」「自動アーク溶接」

2. 指定されている仕上げ方法

「熱間仕上げ」「冷間仕上げ」「電気抵抗溶接したまま」

エームス試験

エームス試験とは

エームス (英: Ames) 試験とは、化学物質が遺伝子に突然変異を引き起こす力 (変異原性) を持っているかどうかを、細菌を用いて評価する試験です。

変異原性試験とも呼ばれます。この試験はカリフォルニア大学B. N. Ames博士によって開発され、化学物質の発がん性などを評価するために使用されています。

エームス試験の使用用途

Ames試験 (変異原性試験) は、化学物質の変異原性を検出する目的で実施されています。例えば、新しい医薬品や農薬の開発において、安全性評価のために使用されます。また、化学物質が環境中での健康被害の原因になる可能性がある場合、エームス試験はその評価にも使用されます。

人体や環境への有害性が懸念される化学物質の安全性を評価するため、労働安全衛生法、医薬品医療機器等法、農薬取締法などでは、エームス試験を含む遺伝毒性試験の実施が義務付けられています。

化学物質を使用する産業分野においては、労働者の健康を守るために、労働安全衛生法によってエームス試験の実施が義務付けられています。また、医薬品や医療機器の開発や製造においても、安全性の確保のためにエームス試験が必要とされ、医薬品医療機器等法によって規制されています。同様に、農薬についても農薬取締法によって安全性の確保が求められており、エームス試験が必須の試験とされています。

エームス試験の原理

1. 原理

エームス試験の原理は、遺伝子操作によってアミノ酸合成をできなくした細菌を使用して、化学物質の変異原性を評価することにあります。化学物質を細菌が繁殖する培地に添加し、突然変異を起こした細菌を検出するための遺伝子突然変異試験を行います。変異原性の強い化学物質は、より多くの突然変異を引き起こすことが知られています。

がんの原因物質の多くが変異誘発物質であることから、変異を引き起こす作用の強さによって発がん性を評価することができます。また、細菌のコロニーの大きさや形成状態によって、試料に変異原性があるかどうかを判断することができます。

2. 試験方法

具体的には、ネズミチフス菌のヒスチジン要求株を使用します。ヒスチジン要求株とは環境に必須アミノ酸のヒスチジンがないと増殖できない変異株です。ヒスチジン要求株を化学物質を含む培地で培養します。

化学物質に変異原性があれば、菌が分裂する過程で突然変異が起こり菌自身でヒスチジンを生産できるようになります。その結果菌が増殖してコロニーを形成するため、コロニー数を計測することで突然変異を起こす性質があるか調べることができます。

3. 発がん性との関連

エームス試験は、化学物質の変異原性を検査する試験であり、がんを引き起こすかどうかを判断する試験ではありません。しかし、がんの原因物質の大部分は変異誘発物質であるため、エームス試験の結果は潜在的な発がん性を評価するために利用されることがあります。ただし、エームス試験の結果だけで発がん性を決定することはできず、他の種類の試験結果と組み合わせて総合的に判断する必要があります。

エームス試験の種類

エームス試験には、直接試験と間接試験の2つの種類があります。

直接試験では、化学物質が細菌に直接影響を与えるために使用されます。一方、間接試験では、化学物質が肝臓などの代謝器官を通過した後に、変異原性を示す代謝産物を生成することによって評価されます。具体的には、肝臓の代謝活性化の働きを加えるために、ラットの肝臓を処理して得られた「S9 mix」という試薬を細菌と化学物質含む培地に加えます。

エームス試験のその他情報

試験の規定

日本国内のガイドライン (医薬品医療機器等法、農薬取締法労働安全衛生法など) では、試験方法として予備試験と本試験を行うことが定められています。一方、ヨーロッパなどで用いられているOECD の化学物質ガイドラインでは、再現性確認として本試験を2 回同一条件で繰り返すことが義務付けられています。予備試験と合わせると3回行うことになります。

化学物質の発がん性を動物実験等で検査することは非常にコストがかかります。エームス試験は非常に迅速で比較的低コストであり、化学物質の変異原性を高精度に評価できるという利点があります。しかし、この試験は細菌を用いるため、動物実験に比べて生物の複雑な反応や副作用を評価することができないという欠点もあります。