ウイスカとは
ウイスカとは金属の表面、主にすず(Sn)めっきや亜鉛(Zn)めっきなどの金属表面から、ひげ状もしくは針状の金属結晶(単結晶)が成長したものを指します。形状は直径1~2μくらいであり、長さが1~10μくらいの形状が多く見られます。
ウイスカは自然に成長します。成長したウイスカが電子回路の信号線や電源線など電位差の異なる部分を短絡したり、成長したウイスカが折れて飛散して電子機器内部に入り込んだ場合には、電子回路の不特定な部分が短絡されるため、電子機器に様々な不具合を発生させます。
ウイスカは肉眼で確認することが困難であり、ウイスカの一時的な接触による短絡が原因で発生した不具合の原因を特定することは非常に困難な作業になります。
1940~1950年代には亜鉛(Zn)やすず(Sn)がメッキの材料やはんだ材料として使用されていました。このためウイスカの発生により装置類の故障が多発していました。この時、対策として微量の鉛(Pb)を含ませてウイスカの発生を抑制しましたが、2000年以降の鉛フリー化により再びウイスカの発生が問題となっています。
ウイスカの使用用途
一般的に言われているウイスカとは電気機器に悪影響を与える存在です。このため、ウイスカを発生させない対策が研究された結果、ウイスカの発生を抑制する技術が確立されました。
しかしウイスカ自体は欠陥の少ない単結晶であるため高強度であり耐熱性と耐食性などが非常に優れていることが分かっています。この特性を利用してセラミックスや金属及びプラスチックス複合材の強化材として用いられます。
具体的にはマイクロウェーブ加熱が可能なセラミックスの強化剤、切削工具の硬質セラミック用強化剤など強化剤として利用されています。
ウイスカの特徴
ウイスカは、真正ウイスカと非真正ウイスカの2種類に大別できます。
真正ウイスカとは主に金属の表面に成長する単結晶が成長したものを指します。
このウイスカは成長する下地金属と同じ元素であり常温で発生します。このウイスカの発生要因はメッキ膜に僅かでも圧縮応力が加わることにより成長が始まります。メッキ膜にかかる応力は予想が困難であるため、ウイスカの発生も予測ができない現象となっています。
真正ウイスカが成長しやすい金属はスズ(Sn)や亜鉛(Zn)カドミウム(Cd)であり、これらの金属に成長するウイスカは常温で発生します。また高温の状態であれば銀(Ag)、金(Au)、鉄(Fe)、鉛(Pb)などの金属でもウイスカが発生することがあります。
一方、非真正ウイスカとは多くの場合人為的に形成させたもの物を指します。
現在では非真正ウィスカを形成させる手法が数多く確立され、金属やプラスチックの強化剤などに利用されています。
真正ウイスカの形成には蒸気相を凝縮する手法、溶液から析出させる手法、あるいは電解析出そして還元や熱分解等などにより有益なウイスカを形成することが可能となっています。
また、真正ウイスカとして金属ではなく炭化ケイ素や窒化珪素のウイスカを強化剤として製品化している事例もあります。