寒冷紗

寒冷紗とは

寒冷紗

寒冷紗 (かんれいしゃ) とは、農作物を守るための農業用の被覆資材です。

高温によって枯れやすくなる夏の日差しから農作物を保護してくれます。防寒・防風・防虫などの効果もあり、用途・時期によって素材やサイズなどを使い分けます。

また、目的に合った色を選ばないと、期待する効果を得られません。

寒冷紗の使用用途

寒冷紗は保温や防風、遮光効果などを目的として、園芸や農作物を育てる際に使用されています。具体的な役割は季節によって異なり、初春は育苗、夏場は遮光、冬場は保温や霜防止などです。

寒冷紗の特徴

寒冷紗とよく似ている資材で不織布と防虫ネットがありますが、その違いを長所・短所に分けて解説します。

長所

寒冷紗の長所は使用できる期間が長く経済的です。不織布・防虫ネットと比べても価格も手頃で購入しやすく、使用する色によって遮光性も選べます。不織布同様、通気性に優れているので、上からでも水やりが可能で、耐久性も高く破れにくいです。

また、防虫・保温を目的としても使用できるので、寒冷紗・不織布・防虫ネットのどれか1枚を選ぶというのなら寒冷紗が多くの用途に使えます。

短所

寒冷紗の短所としては多用途に使用できるがゆえに、十分にその効果を得られないことがあります。たとえば、保温効果は不織布の方が高いです。黒い寒冷紗は遮光率が高く、保温にあまり適していません。

また、防虫効果に関しても目が細かいものや、虫が嫌う光を反射する色が使われている製品もありますが、防虫ネットの方が防虫効果を期待できます。そのため、不織布や防虫ネットも併用し、何層にも使用すると寒冷紗の短所を改善できます。

寒冷紗の種類

寒冷紗は以下の観点から、分類することができます。

1. 素材による分類

寒冷紗の素材のほとんどが、ポリエチレンなどの化学繊維・綿・麻が使われています。ポリエチレンは低価格で製造できるため、大量に消費される寒冷紗の素材には最適です。

綿や麻は荒さがさまざまで、化学繊維ほど遮光・防霜・防風などの保護効果はありません。しかし、天然素材で優れた通気性を有するため、覆ったままでも、そのまま水やりを行うことが可能といった利点があります。

2. サイズによる分類

家庭菜園用の商品は、長さ5mもしくは10m、幅1.35mもしくは1.8mで販売されている場合が多いです。寒冷紗はトンネル掛けで使用しますが、畝の長さに対して1.5から2倍くらいの寒冷紗を用意します。少しでもすき間が空いてしまうと虫が入ってしまい、食害の原因になってしまうためです。

3. 色による分類

寒冷紗は白色や黒・透明といったさまざまな色があり、目的に応じた色を選択する必要があります。たとえば、白色は遮光率が20%と低めで、保温効果と凍霜害の防止が求められるような冬場に使用されることが多いです。

一方で、黒色タイプは遮光率が50%と高く、夏場の遮光・遮熱・乾燥防止を目的として使用されています。遮光率が高いものを使用すると水の蒸発や日光から防いでくれますが、湿度が高くなり根腐れの原因にもなります。そのため、使用する時期や目的によって色を選ぶことが大切です。

寒冷紗のその他情報

1. 寒冷紗の使い方

誤った方法で寒冷紗を使うと、期待通りの効果を得られません。特にすき間は虫の侵入を許してしまい、食害の原因になります。そのため、正しい方法で使用することが重要で。

  1. 寒冷紗をかける畝にアーチ支柱を40~50㎝の間隔で設置する。
  2. 寒冷紗をアーチ支柱の上にかける。
  3. 風で飛ばされないようにアーチ支柱にクリップ・土にアンカーピンで固定する。

2. 寒冷紗と不織布の違い

寒冷紗は前述した通り、日よけ・防寒・防風・防虫などを目的にしています。それに対し、不織布は保温を目的として使う場合がほとんどで、使用時期は冬越し時や夏野菜の苗植え時です。

そのため、使い方によっては寒冷紗の代用になる場合もあります。そのほか、防虫ネットは防虫のみを目的にしており、それぞれの用途によって使用時期や使用方法が異なります。

SWH10R

SWCH10Rとは

SWCH10Rとは、JIS (日本産業規格) で規定される炭素鋼材料の一種です。

冷間圧造用炭素鋼線に分類されるリムド鋼を使用した鋼材です。SWCH10Rは冷間圧造用途に適した特性を持ち、脱スケール処理、皮膜処理、伸線などの二次加工が施されて製造されます。主にボルトやナット、ねじ、リベット、タッピングねじなどに使用され、特に小ねじや組み込み小ねじに使用されることが多いのが特徴です。ボルトやナットに関しても一般的な六角ボルト、六角ナットに使用されます。

SWCH10Rの使用用途

1. 小ねじ

小ねじとは直径が細く、長さが短いねじのことです。主に電子機器や精密機器、小型家電製品、玩具、時計や眼鏡などに使用されます。

2. リベット

リベットとは、2つの材料を接合するために使用される固定具の一種で、鋲とも呼ばれます。2つの材料の穴にリベットを通し、先端を打ち抜いて端になった部分を打ち広げることで2つの材料を固定します。

3. タッピングねじ

タッピングねじとはねじ山を切削することなく、既存の穴に直接ねじを切り込むことで固定するねじのことです。タッピングねじは被接合材料にねじ穴を開ける必要がなく、被接合材料に直接ねじ山を形成することができるため、接合が容易になります。

4. 一般的な六角ボルト

一般的な六角ボルトとは六角形の頭部を持つボルトのことを指します。六角形の頭部は六角レンチなどの工具を使って締め付けることができ、手で締め付けるよりも力を入れることができるため、強力な締め付けが可能です。

5. 一般的な六角ナット

一般的な六角ナットは、六角形の頭部を持つボルトと組み合わせて使用され、様々な分野で使用されます。SWCH10Rは、特に小ねじに使用されることが多く、小さなねじに適した鋼材です。また、リムド鋼を使用しているため、キルド鋼のものに比べて品質はやや劣るものの、価格が安いため、一般的なボルトやナットに適しています。

リムド鋼とは鋼の一種で、鋼中の酸素を規定量以下に抑えた鋼のことです。鋼中に含まれる酸素は鋼材を製造する際に不純物として混入するため、材質にばらつきが出ます。また、鋼中の酸素が増えると鋼材が脆くなってしまうため、酸素を規定量以下に抑えることが重要です。

キルド鋼とは鋼の一種で、鋼の製造過程において酸素を除去するために鉄鉱石や石炭、酸化鉄などの原料に加え、脱酸素剤としてアルミニウムやシリコンなどを加えて作られた鋼のことです。酸素や不純物を除去し、均一な鋼を製造できることが特徴です。

SWCH10Rの性質

1. 化学組成

  • 炭素 (C) : 0.08%以下
  • マンガン (Mn) : 0.30%~0.60%
  • リン (P) : 0.040%以下
  • 硫黄 (S) : 0.040%以下

2. 柔軟性が高く、曲げやすい

SWCH10Rは比較的柔軟性が高い材料で、リムド鋼から作られている材料です。リムとは鋼材の周辺部分に形成される炭素含有量の高い部分のことです。リムド鋼ではリムが形成されることで鋼材全体の硬度が低下し、柔軟性が高くなります。SWCH10Rは冷間圧造用炭素鋼線に分類される材料で加工時にも曲げやすい特性があります。

3. 金属部品の締結に適している

SWCH10Rが金属部品の締結に適している理由は、高い引張強さと曲げ強さがあるためです。SWCH10Rは一般的なボルトやナット、小ねじ、リベット、タッピングねじなどに使用されることが多く、これらの部品の締結に適した材料です。

4. 焼き入れ性が優れている

SWCH10Rは焼き入れ性に優れているため、硬度を調整できます。焼き入れは鋼材を加熱して急冷することで鋼材の組織を変化させ、硬度を高める加工法です。

5. 溶接性が低い

SWCH10Rは炭素含有量が少なく、溶接に必要な炭素量が不足しているため溶接性が低く溶接には適していません。また、他の金属と比べて熱伝導率が低く、加工時に発生する熱が局所的に蓄積されて溶接不良や歪みの原因となることがあります。

6. 耐食性が低い

SWCH10Rは錆びやすく耐食性が低いです。理由としてSWCH10Rが鉄の単純な合金であり、錆びにくいクロムなどの耐食性の高い元素が含まれていないため、耐食性が低くなっていることが挙げられます。適切な表面処理や塗装、防錆処理を施すことで、耐食性を向上できますが、基本的にはSWCH10R自体の耐食性は低いため、適切な環境下での使用や定期的なメンテナンスが必要です。また、高温や湿度の高い環境下で使用するとさらに錆びやすくなるため、適切な条件下での使用が必要です。

7. 価格が安い

SWCH10Rは、価格が安く、一般的なボルトやナットに適した鋼材です。理由は、製造過程が比較的簡単で、原材料であるリムド鋼の生産量が多いためです。

SWCH10Rのその他情報

加工性について

SWCH10Rは、焼き入れ前の硬度が比較的低いため、加工や曲げが容易であることが特徴です。焼き入れによって硬度を高めることができますが、一般的には、他の高強度鋼材に比べると硬度が低く、強度面では劣ります。

一般的には精度が高く、寸法や形状に対する誤差が少ないことが特徴です。特に小ねじや細いワイヤー状の部品に使用されることが多く、高い精度が求められる分野に適した材料です。

また、SWCH10Rは銅めっきに適しています。部品表面に銅をめっきすることで、部品の電気伝導性や耐摩耗性を向上できます。銅めっきによって表面の加工や改質ができるため、電気電子部品や自動車部品などに広く使用されています。

関連する金属材料

sum41

sum41とは

炭素鋼に硫黄や鉛、リンなどを添加すると加工しやすくなります。そのようにして被削性、加工性の改善が図られた鋼材は、快削鋼と呼ばれ、JIS規格においては「硫黄および硫黄複合快削鋼鋼材」として規定されています。

sumとは「硫黄および硫黄複合快削鋼鋼材」を示す種類記号で、「Steel Use Machinability」を表しています。

sumは、鋼材に含まれる化学成分量によって13種類に分けられ、sumの後に数字やアルファベットを付すことで区別されています。sum41は、被削性が高く、かつ強度も比較的高くなるように成分調整された快削鋼です。

sum41の使用用途

快削鋼は、特に被削性を高めた鋼材なので、切削面がきれいに仕上がります。したがって、加工品質を高く保ったまま、連続加工するのに適しており、生産性の向上には欠かせない鋼材です。また、被削性が優れていると、切削時において、切削工具が受ける抵抗は小さくなりますので、刃の摩耗が抑えられます。つまり、切れ味が持続しますので、ランニングコストを下げることができます。

sum41は、中炭素快削鋼とも呼ばれるように、炭素の含有量が比較的多く、また、硫黄による強度低下を防ぐために、マンガンを多く添加していますので、s35cと同程度の強度を持っています。したがって、sum41は、強度が求められる部品などを効率良く加工するのに適しています。

SUJ2

SUJ2とは

SUJ2とは、JIS規格における高炭素クロム軸受鋼鋼材の一種です。

主に軸受けとして使用されることを想定した鋼材です。高い強度、硬度、疲労強度、焼入性、および耐磨耗性を有しています。ただし、ケイ素含有量が低くマンガンモリブデンが添加されていないため、焼き入れ性が低く硬度が十分に上がらないのが特徴です。SUJ2は、高速回転する機械の軸受け部分や、自動車や船舶などの重要部品の材料として広く使用されています。

SUJ2の使用用途

1. ベアリング類全般

下記のようなベアリング類全般に使用されます。

  • 自動車部品
    車輪、トランスミッション、サスペンション、ステアリング、ブレーキなどです。
  • 工作機械
    旋盤、フライス盤、プレス機、研削盤などです。
  • 産業機械
    モーター、ポンプ、コンプレッサー、減速機、エアコンなどがあります。
  • 家電製品
    洗濯機、掃除機、扇風機、電気ドライバーなどです。
  • 医療機器
    超音波診断装置、歯科治療機器、CTスキャン装置などです。
  • 鉄道車両
    主に台車部品、車両枕ばね、機器部品があります。
  • 重機械
    クレーン、建設機械、掘削機、農業機械などがあります。
  • 電力機器
    発電機、トランス、モーターなどです。

2. 金型

主に下記の金型において使用されます。

  • プレス金型
    車両部品、家電製品、電子部品などの各種製品などです。
  • 射出成形金型
    プラスチック部品やゴム製品などの成形に用いられます。
  • 圧延ロール
    鉄鋼板の加工などがあります。
  • ブランキング金型
    金属板を切断するための金型です。
  • 曲げ金型
    金属板を曲げるための金型です。

ブランキング金型とは、板金加工の一つであるブランキングを行うための金型です。ブランキングとは材料の平板やシート状の素材から、不要な部分を切り抜くことで必要な形状を作り出す加工方法です。

3. シャフト

主に下記のようなシャフトに使用されます。

  • 自動車やオートバイのシャフト 
  • 旋盤やフライス盤などの加工機械のシャフト
  • 機械加工用切削工具のシャフト
  • ベルトコンベア、ファン、ポンプ、タービンなどのシャフト

4. 位置決めピン

主に下記のような位置決めピンに使用されます。

  • 金型の位置決めピン
  • 自動車の車体部品やエンジン部品の位置決めピン
  • 冷蔵庫や洗濯機などの家電製品の部品の位置決めピン

5. 自動車や船舶、建築物などの重要部品の材料

  • 自動車部品
    エンジン部品、トランスミッション、ステアリング軸、ブレーキディスクなどです。
  • 船舶部品
    舵、プロペラ軸、スクリュー、推進軸、クランクシャフトなどです。
  • 建築物部品
    構造用鋼材、螺旋階段、ドアヒンジ、オイルレスベアリング などです。

オイルレスベアリングは、従来のベアリングに比べて潤滑油を必要としないベアリングです。潤滑油の代わりに特殊な樹脂や金属を使用し、自己潤滑性を持たせることで回転部分と軸受部分の摩擦を低減できます。

SUJ2の性質

1. 化学組成

化学組成は下記の通りです。

  • 炭素 (C) : 0.95%~1.10%
  • シリコン (Si) : 0.15%~0.35%
  • マンガン (Mn) : 0.50%以下
  • リン (P) : 0.025%以下
  • 硫黄 (S) : 0.025%以下
  • クロム (Cr) : 1.30%~1.60%
  • モリブデン (Mo) : 0.08%以下
  • ニッケル (Ni) : 0.25%以下
  • 銅 (Cu) : 0.25%以下 (線材は0.20%以下)

2. 耐久性

SUJ2は高炭素鋼材のため硬度が高く、耐摩耗性や耐疲労性に優れています。そのため高負荷や高速回転などの過酷な環境下でも長期間にわたって使用でき、また耐熱性にも優れており、高温環境下での使用にも適しています。

3. 焼き入れ性

SUJ2は高炭素鋼であり、焼き入れによって硬度を上げられます。焼き入れとは、鋼材を加熱して適切な温度に保持し、急冷却することによって、鋼の組織を変化させ、硬度を向上させる熱処理の一種です。

SUJ2の場合、焼き入れによって鋼の組織が細かく均一になり、炭素が固溶体化するため硬度が向上します。また、焼き入れによって鋼の組織が脆くなるため、焼き入れ後に焼き戻しを行い安定化させることが必要です。

4. 耐食性

SUJ2はクロムを含有しており、酸化や腐食に対して比較的耐性があり、また摩耗によって生じる粉じんや異物混入に対しても耐性があります。SUJ2が本来持つ優れた特性を十分に発揮するためには、可能な限り汚染の少ない環境下で使用する必要があります。

5. 汎用性

SUJ2は軸受鋼としての特性が高いことから、ベアリングや軸などの自動車部品、工作機械、建設機械、航空機部品、医療機器部品など、様々な分野で使用されています。また金型加工や精密部品の製造にも用いられます。

6. 加工性

SUJ2は高炭素鋼材ですが加工性が高く、切削や研削加工が容易です。複雑な形状の部品も加工でき、熱処理によって硬度を調整できるため部品の強度や硬度を柔軟に調整できます。加工性が高いことから高精度の部品の製造にも適しています。

SUJ2のその他情報

使用上の注意点

SUJ2の硬度が高いため、切削加工や研削加工などの加工性が悪く、工具や刃物の寿命も短くなることには注意が必要です。また、溶接も加工と同様に注意が必要で、溶接部に応力がかかることで熱影響による脆化や歪みが生じることがあります。

また、SUJ2は汚染に弱く、環境中に含まれる微粒子や異物が混入すると、疲労破壊や軟化などの問題が生じる場合があります。そのため、汚染の少ない環境下で使用した方が安全です。

さらに、SUJ2は高級鋼材であり、価格が比較的高いため、低価格な材料と比較してコストがかかります。コストを抑えたい場合には他の材料を検討する必要があります。

関連する金属材料

stkm13a

stkm13aとは

stkm13aとはSTKM材と呼ばれる機械構造用炭素鋼の一種であり、STKMはSteel Tube Kouzou Machineの略称です。また末尾の13aは種類記号と呼ばれる識別記号であり、より詳細な分類として製管方法(S,B,E)と仕上げ方法(H,C,G)が付随することがあります。

stkm13aはその規格において炭素量0.5%以下と定められた鋼種であり、STKM材の中では中炭素鋼に位置づけられる鋼管です。性質の特徴としては13種の中で最も伸びが良く、加工性に優れる反面、引張強度が低い鋼種とされています。

stkm13aの使用用途

stkm13aの使用用途としては、その加工性と強度のバランスを活かした、スタビライザーやドライブシャフトなどが挙げられ、特に自動車用部品に広く用いられている鋼管材料です。本来のSTKM材は機械部品としての使用を想定して開発されてきましたが、鋼管の中空構造を活かすことで躯体の軽量化が可能なことから、現在では構造材料としても用いられている鋼種です。

またSTKM材全般に言える特徴ですが、配管用鋼材とは異なり内部からの圧力がかかることを想定して製造されないことから、水圧試験などによる内圧の規定がなく、使用箇所には注意が必要です。

stkm11a

stkm11aとは

stkm11aとはSTKM材と呼ばれる機械構造用炭素鋼の一種であり、STKMはSteel Tube Kouzou Machineの略称です。また末尾の11aは種類記号と呼ばれる識別記号であり、より詳細な分類として製管方法(S,B,E)と仕上げ方法(H,C,G)が付随することがあります。

stkm11aはその規格において炭素量0.12%以下と定められた鋼種であり、STKM材の中でも最も炭素含有量の少ない低炭素鋼です。性質の特徴としては引張強度が低い反面、伸びや曲げなどの加工性には優れた鋼種です。

stkm11aの使用用途

stkm11aの使用用途としては、その高い加工性を活かして、エンジンクレードル、サスペンションバンパー、トーションビーム、プロペラシャフトなどの、比較的複雑な構造を有する、パイプ構造用途に用いられています。本来のSTKM材は機械部品としての使用を想定して開発されてきましたが、鋼管の中空構造を活かすことで躯体の軽量化が可能なことから、現在では構造材料としても用いられている鋼種です。

またSTKM材全般に言える特徴ですが、配管用鋼材とは異なり内部からの圧力がかかることを想定して製造されないことから、水圧試験などによる内圧の規定がなく、使用箇所には注意が必要です。

STK400

STK400とは

STK400とは、JIS (日本産業規格) によって規定されている一般構造用炭素鋼鋼管の一種です。

STKは、Steel (鋼) 、Tube (管) 、Kozo (構造) の頭文字を取ったものであり、400は最小引張強さ (MPa) を表しています。STK400は最低限引張強さが400 MPa以上の炭素鋼鋼管のことです。一般構造用炭素鋼鋼管には、STK290、STK400、STK490、STK500、STK540の5種類があり、JISによって規定された引張強さや許容応力などに基づいて分類されます。

STK400の使用用途

1. 建築物や橋の骨組み部材

STK400は、建築物や橋などの骨組み部材として広く使用されています。具体的には、柱や梁などの主要な構造材料として使用されます。

2. 配管

STK400は、建築物のエアコンの室外機や排水管などの配管にも使用されます。またSTK400は、建築物の駐車場や倉庫などの天井裏などに配管される空調や電気設備の配管にも使用されます。

3. 信号機などの支柱

道路構造物の信号機や街灯のポールなどの支柱には、剛性が必要であるため、STK400の強度特性が有利に働きます。

4. 建築物や構造物の部品

建築物や構造物の手すりや階段の手摺などの部品には、美観性や耐久性が必要であるため、STK400が使用されることがあります。

5. 海洋構造物の建設

STK400は、例えば海上風力発電所の支柱や、漁港の船着き場の基礎部分などに使用されます。海洋構造物の場合、塩水に対する耐食性が重要であるためSTK400は有利です。

6. 鉄道橋の橋脚部分の鉄骨構造

鉄道橋は、軌道上の列車の重量に加え、自然災害などの外部要因によって負荷がかかるため、強度が求められます。

7. コンベアーの構造材料

大型物流施設の荷役用コンベアーの構造材料として、STK400が使用されることがあります。この用途では、剛性と耐久性が重要です。

STK400の性質

1. 化学組成

  • 炭素 (C) : 0.25%以下
  • リン (P) : 0.040%以下
  • 硫黄 (S) : 0.035%以下

2. 強度

STK400は一般構造用炭素鋼鋼管の中でも比較的強度が高く、引張強さが400MPa以上です。よって建築物や橋の柱や梁、道路構造物の信号機や街灯のポールなどの支柱など、耐荷重性が求められる部分に使用されます。

3. 焼き入れ性

STK400は、焼き入れ性に優れています。焼き入れ性とは、鋼材を加熱して急冷却することで硬さを向上させることができる性質のことです。

STK400の炭素含有量は比較的低いため、焼き入れ時に生じる歪みや変形が少なく高い加工性を持っています。また、硬度を調整できるため使用目的に応じて硬度を変化させることも可能です。

4. 耐久性

STK400は耐久性に優れていて、塗装やコーティング処理を施すことで耐食性も高められる鋼管です。そのため建築物や構造物の配管、エアコンの室外機など、耐久性が求められる部分に使用されます。

5. コスト

STK400はコスト面での優位性があります。一般的な構造用鋼材に比べて価格が安く使用用途が幅広いため、建築分野や土木工学分野などで広く使用されています。

6. 溶接性

STK400は溶接性に優れています。構造用鋼材として使用される場合、接合部を溶接できることが重要です。溶接性とは、金属同士を加熱して溶かし、互いに接合することができる性質のことです。

7. 軽量化

STK400は軽量でかつ靭性があります。そのため建築物や構造物を軽量化でき、地震などの自然災害に対する耐震性にも優れています。

8. 加工性

STK400は加工性が良いため、様々な形状に加工できます。よって建築物や構造物の部品や機械部品など多くの用途で使用されています。

9. 製造が容易

STK400は製造が比較的容易であるため、大量生産が可能です。建築物や構造物の大量生産に適していて、コスト面でも優位性があります。

STK400のその他情報

表面処理について

STK400は、鋼鉄の一種であるため、表面が空気中の酸素や湿気と反応して錆びる性質があります。特に、外部環境に長期間さらされる場合は、錆びやすくなります。よってSTK400を使用する場合には、表面に塗装や防錆処理が必要です。

塗装には、塗料を塗布する方法が一般的です。塗料には、耐候性や耐腐食性に優れたものがあり、長期間にわたって錆びや腐食から鋼材を守れるのが特徴です。また防錆処理には、表面にコーティングを施す方法があります。コーティングには、亜鉛めっきや有機皮膜コーティングなどがあり、STK400の表面にコーティングを施すことで、錆びや腐食から鋼材を保護できます。

表面の錆びは、鋼材の強度や耐久性に影響を与えることには注意が必要です。特に、構造用鋼材を使用する場合には、錆びによる強度低下が懸念されるため、適切な塗装や防錆処理が重要になります。また、錆びた表面を塗装する場合は、錆びを除去するための下処理が必要になる場合があります。

塗装とは、一般的に有機溶剤を基材とした塗料を用いて表面に膜を形成する方法です。コーティングとは、金属、セラミックス、樹脂、ガラスなどの素材を使用して、表面にコーティング膜を形成する方法です。

関連する金属材料

ss400

ss400とは

ss400は、一般構造用圧延鋼材に分類される炭素鋼材です。ssとは「Steel」と「structure」を意味するJIS記号で、それに続く数字は引張り強さの下限値を表しています。つまりss400は、最低限400MPaの引っ張り強さが保証されているということです。

JIS規格の鋼材は、熱処理に関する規定の有無により普通鋼と特殊鋼に分けられ、ss400を含むss材は熱処理の規定がない普通鋼に属しています。

ss400は、硫黄とリンに関してのみ成分量規定が設けられており、主成分である炭素に関しては定められていません。

ss400の使用用途

ss材の中でも最も流通量の多いss400は、強度が高く、加工性にも優れ、さらに価格も安いので、非常に多くの分野で利用されています。

一般構造用圧延鋼材という名前にあるとおり、ss400は、工場などの大型建築物や橋などの土木構造物の構造部材として使用されています。さらに、構造部材の他にも船舶や産業機械などの構成部品としても利用されています。

ss400は炭素含有量がおおよそ1.5%~2.0%と低く、焼きが入りにくいため、熱処理を施さずにそのまま利用することが一般的です。そのため、高い硬度が要求される工具類、機械の摺動部品には適していません。

関連する金属材料

sphc

sphcとは

sphcとはSteel Plate Hot Commercialの略称であり、熱間圧延鋼板の一種で、別名HOTとも呼ばれます。熱間圧延鋼板はスラブを加熱し、圧延機で圧延することで製造され、sphcはこの中でも一般用に分類される鋼材です。

特徴として加工硬化が起こりにくく、柔らかいことから、主に曲げや絞りが必要な用途に用いられる一方で、強度の規定や保証がないことから、使用箇所には注意が必要です。通常のsphcは非常にさびやすい鋼材ですが、熱間圧延の際に黒皮と呼ばれる酸化被膜でおおわれることから、一定の防錆効果を持ちます。

sphcの使用用途

sphcは熱間圧延鋼板の中でも一般用途に分類される鋼材であり、強度保証がありません。一方で安価かつ大量に製造・使用することが可能であり、曲げ加工性にも優れていることから、車のボディや電気機器の筐体などといった、外装・カバー目的の大きな部品を製造する際によく用いられています。また通常のsphcは熱間圧延した際に黒皮と呼ばれる酸化被膜におおわれており見た目が悪いことから、外観から直接見えない箇所を選んで使用されることが多い鋼材でもあります。外装などに使用される際には、酸洗い処理を実施し、さらにメッキや塗装などの表面処理を行って使用されることが一般的です。

spce

spceとは

spceとはSteel Plate Cold deep drawn Extraの略称であり、冷間圧延鋼材の一種です。冷間圧延鋼材は熱間圧延鋼材(SPHC)をさらに酸洗いし、冷間圧延(600℃以下に熱した金属を常温下で圧延する手法)して製造された鋼材であり、通常はSPCC(Steel Plate Cold Commercial)と呼ばれます。spceは通常のSPCCと比較して伸びが良く、深絞り加工用鋼材といわれます。特に成形性、加工性に優れた鋼板であり、他の鋼板では困難な複雑な加工にも耐えることができます。

spceの使用用途

spceの使用用途としては、その良好な加工性を活かした深絞り加工用途が特に知られており、具体的には自動車の外装やフェンダー、クォーターパネルなどが挙げられます。一方で通常の冷間圧延鋼材と比較しても強度は弱いことから、構造材などの用途には不向きな鋼材であり、使用する箇所には注意が必要です。

また酸洗いを行っている鋼材であることから、表面には皮膜がなく、非常にさびやすい一方で、表面が滑らかで美麗であることから表面加工性がよく、加工後にはメッキや塗装などの表面処理を行って用いられることが一般的です。