SUJ2とは
SUJ2とは、JIS規格における高炭素クロム軸受鋼鋼材の一種です。
主に軸受けとして使用されることを想定した鋼材です。高い強度、硬度、疲労強度、焼入性、および耐磨耗性を有しています。ただし、ケイ素含有量が低くマンガンやモリブデンが添加されていないため、焼き入れ性が低く硬度が十分に上がらないのが特徴です。SUJ2は、高速回転する機械の軸受け部分や、自動車や船舶などの重要部品の材料として広く使用されています。
SUJ2の使用用途
1. ベアリング類全般
下記のようなベアリング類全般に使用されます。
- 自動車部品
車輪、トランスミッション、サスペンション、ステアリング、ブレーキなどです。 - 工作機械
旋盤、フライス盤、プレス機、研削盤などです。 - 産業機械
モーター、ポンプ、コンプレッサー、減速機、エアコンなどがあります。 - 家電製品
洗濯機、掃除機、扇風機、電気ドライバーなどです。 - 医療機器
超音波診断装置、歯科治療機器、CTスキャン装置などです。 - 鉄道車両
主に台車部品、車両枕ばね、機器部品があります。 - 重機械
クレーン、建設機械、掘削機、農業機械などがあります。 - 電力機器
発電機、トランス、モーターなどです。
2. 金型
主に下記の金型において使用されます。
- プレス金型
車両部品、家電製品、電子部品などの各種製品などです。 - 射出成形金型
プラスチック部品やゴム製品などの成形に用いられます。 - 圧延ロール
鉄鋼板の加工などがあります。 - ブランキング金型
金属板を切断するための金型です。 - 曲げ金型
金属板を曲げるための金型です。
ブランキング金型とは、板金加工の一つであるブランキングを行うための金型です。ブランキングとは材料の平板やシート状の素材から、不要な部分を切り抜くことで必要な形状を作り出す加工方法です。
3. シャフト
主に下記のようなシャフトに使用されます。
- 自動車やオートバイのシャフト
- 旋盤やフライス盤などの加工機械のシャフト
- 機械加工用切削工具のシャフト
- ベルトコンベア、ファン、ポンプ、タービンなどのシャフト
4. 位置決めピン
主に下記のような位置決めピンに使用されます。
- 金型の位置決めピン
- 自動車の車体部品やエンジン部品の位置決めピン
- 冷蔵庫や洗濯機などの家電製品の部品の位置決めピン
5. 自動車や船舶、建築物などの重要部品の材料
- 自動車部品
エンジン部品、トランスミッション、ステアリング軸、ブレーキディスクなどです。 - 船舶部品
舵、プロペラ軸、スクリュー、推進軸、クランクシャフトなどです。 - 建築物部品
構造用鋼材、螺旋階段、ドアヒンジ、オイルレスベアリング などです。
オイルレスベアリングは、従来のベアリングに比べて潤滑油を必要としないベアリングです。潤滑油の代わりに特殊な樹脂や金属を使用し、自己潤滑性を持たせることで回転部分と軸受部分の摩擦を低減できます。
SUJ2の性質
1. 化学組成
化学組成は下記の通りです。
- 炭素 (C) : 0.95%~1.10%
- シリコン (Si) : 0.15%~0.35%
- マンガン (Mn) : 0.50%以下
- リン (P) : 0.025%以下
- 硫黄 (S) : 0.025%以下
- クロム (Cr) : 1.30%~1.60%
- モリブデン (Mo) : 0.08%以下
- ニッケル (Ni) : 0.25%以下
- 銅 (Cu) : 0.25%以下 (線材は0.20%以下)
2. 耐久性
SUJ2は高炭素鋼材のため硬度が高く、耐摩耗性や耐疲労性に優れています。そのため高負荷や高速回転などの過酷な環境下でも長期間にわたって使用でき、また耐熱性にも優れており、高温環境下での使用にも適しています。
3. 焼き入れ性
SUJ2は高炭素鋼であり、焼き入れによって硬度を上げられます。焼き入れとは、鋼材を加熱して適切な温度に保持し、急冷却することによって、鋼の組織を変化させ、硬度を向上させる熱処理の一種です。
SUJ2の場合、焼き入れによって鋼の組織が細かく均一になり、炭素が固溶体化するため硬度が向上します。また、焼き入れによって鋼の組織が脆くなるため、焼き入れ後に焼き戻しを行い安定化させることが必要です。
4. 耐食性
SUJ2はクロムを含有しており、酸化や腐食に対して比較的耐性があり、また摩耗によって生じる粉じんや異物混入に対しても耐性があります。SUJ2が本来持つ優れた特性を十分に発揮するためには、可能な限り汚染の少ない環境下で使用する必要があります。
5. 汎用性
SUJ2は軸受鋼としての特性が高いことから、ベアリングや軸などの自動車部品、工作機械、建設機械、航空機部品、医療機器部品など、様々な分野で使用されています。また金型加工や精密部品の製造にも用いられます。
6. 加工性
SUJ2は高炭素鋼材ですが加工性が高く、切削や研削加工が容易です。複雑な形状の部品も加工でき、熱処理によって硬度を調整できるため部品の強度や硬度を柔軟に調整できます。加工性が高いことから高精度の部品の製造にも適しています。
SUJ2のその他情報
使用上の注意点
SUJ2の硬度が高いため、切削加工や研削加工などの加工性が悪く、工具や刃物の寿命も短くなることには注意が必要です。また、溶接も加工と同様に注意が必要で、溶接部に応力がかかることで熱影響による脆化や歪みが生じることがあります。
また、SUJ2は汚染に弱く、環境中に含まれる微粒子や異物が混入すると、疲労破壊や軟化などの問題が生じる場合があります。そのため、汚染の少ない環境下で使用した方が安全です。
さらに、SUJ2は高級鋼材であり、価格が比較的高いため、低価格な材料と比較してコストがかかります。コストを抑えたい場合には他の材料を検討する必要があります。