SWCH10Rとは
SWCH10Rとは、JIS (日本産業規格) で規定される炭素鋼材料の一種です。
冷間圧造用炭素鋼線に分類されるリムド鋼を使用した鋼材です。SWCH10Rは冷間圧造用途に適した特性を持ち、脱スケール処理、皮膜処理、伸線などの二次加工が施されて製造されます。主にボルトやナット、ねじ、リベット、タッピングねじなどに使用され、特に小ねじや組み込み小ねじに使用されることが多いのが特徴です。ボルトやナットに関しても一般的な六角ボルト、六角ナットに使用されます。
SWCH10Rの使用用途
1. 小ねじ
小ねじとは直径が細く、長さが短いねじのことです。主に電子機器や精密機器、小型家電製品、玩具、時計や眼鏡などに使用されます。
2. リベット
リベットとは、2つの材料を接合するために使用される固定具の一種で、鋲とも呼ばれます。2つの材料の穴にリベットを通し、先端を打ち抜いて端になった部分を打ち広げることで2つの材料を固定します。
3. タッピングねじ
タッピングねじとはねじ山を切削することなく、既存の穴に直接ねじを切り込むことで固定するねじのことです。タッピングねじは被接合材料にねじ穴を開ける必要がなく、被接合材料に直接ねじ山を形成することができるため、接合が容易になります。
4. 一般的な六角ボルト
一般的な六角ボルトとは六角形の頭部を持つボルトのことを指します。六角形の頭部は六角レンチなどの工具を使って締め付けることができ、手で締め付けるよりも力を入れることができるため、強力な締め付けが可能です。
5. 一般的な六角ナット
一般的な六角ナットは、六角形の頭部を持つボルトと組み合わせて使用され、様々な分野で使用されます。SWCH10Rは、特に小ねじに使用されることが多く、小さなねじに適した鋼材です。また、リムド鋼を使用しているため、キルド鋼のものに比べて品質はやや劣るものの、価格が安いため、一般的なボルトやナットに適しています。
リムド鋼とは鋼の一種で、鋼中の酸素を規定量以下に抑えた鋼のことです。鋼中に含まれる酸素は鋼材を製造する際に不純物として混入するため、材質にばらつきが出ます。また、鋼中の酸素が増えると鋼材が脆くなってしまうため、酸素を規定量以下に抑えることが重要です。
キルド鋼とは鋼の一種で、鋼の製造過程において酸素を除去するために鉄鉱石や石炭、酸化鉄などの原料に加え、脱酸素剤としてアルミニウムやシリコンなどを加えて作られた鋼のことです。酸素や不純物を除去し、均一な鋼を製造できることが特徴です。
SWCH10Rの性質
1. 化学組成
- 炭素 (C) : 0.08%以下
- マンガン (Mn) : 0.30%~0.60%
- リン (P) : 0.040%以下
- 硫黄 (S) : 0.040%以下
2. 柔軟性が高く、曲げやすい
SWCH10Rは比較的柔軟性が高い材料で、リムド鋼から作られている材料です。リムとは鋼材の周辺部分に形成される炭素含有量の高い部分のことです。リムド鋼ではリムが形成されることで鋼材全体の硬度が低下し、柔軟性が高くなります。SWCH10Rは冷間圧造用炭素鋼線に分類される材料で加工時にも曲げやすい特性があります。
3. 金属部品の締結に適している
SWCH10Rが金属部品の締結に適している理由は、高い引張強さと曲げ強さがあるためです。SWCH10Rは一般的なボルトやナット、小ねじ、リベット、タッピングねじなどに使用されることが多く、これらの部品の締結に適した材料です。
4. 焼き入れ性が優れている
SWCH10Rは焼き入れ性に優れているため、硬度を調整できます。焼き入れは鋼材を加熱して急冷することで鋼材の組織を変化させ、硬度を高める加工法です。
5. 溶接性が低い
SWCH10Rは炭素含有量が少なく、溶接に必要な炭素量が不足しているため溶接性が低く溶接には適していません。また、他の金属と比べて熱伝導率が低く、加工時に発生する熱が局所的に蓄積されて溶接不良や歪みの原因となることがあります。
6. 耐食性が低い
SWCH10Rは錆びやすく耐食性が低いです。理由としてSWCH10Rが鉄の単純な合金であり、錆びにくいクロムなどの耐食性の高い元素が含まれていないため、耐食性が低くなっていることが挙げられます。適切な表面処理や塗装、防錆処理を施すことで、耐食性を向上できますが、基本的にはSWCH10R自体の耐食性は低いため、適切な環境下での使用や定期的なメンテナンスが必要です。また、高温や湿度の高い環境下で使用するとさらに錆びやすくなるため、適切な条件下での使用が必要です。
7. 価格が安い
SWCH10Rは、価格が安く、一般的なボルトやナットに適した鋼材です。理由は、製造過程が比較的簡単で、原材料であるリムド鋼の生産量が多いためです。
SWCH10Rのその他情報
加工性について
SWCH10Rは、焼き入れ前の硬度が比較的低いため、加工や曲げが容易であることが特徴です。焼き入れによって硬度を高めることができますが、一般的には、他の高強度鋼材に比べると硬度が低く、強度面では劣ります。
一般的には精度が高く、寸法や形状に対する誤差が少ないことが特徴です。特に小ねじや細いワイヤー状の部品に使用されることが多く、高い精度が求められる分野に適した材料です。
また、SWCH10Rは銅めっきに適しています。部品表面に銅をめっきすることで、部品の電気伝導性や耐摩耗性を向上できます。銅めっきによって表面の加工や改質ができるため、電気電子部品や自動車部品などに広く使用されています。