快削黄銅

快削黄銅とは

快削黄銅とは、主に銅と亜鉛を主成分とする黄銅合金に鉛やリンなどの添加物を混ぜ合わせて作られる、切削性に優れた材料のことです。

快削黄銅は、削りやすく機械加工に適しており、切削時の熱や摩擦による変色や変形が少ないため美しい仕上がりになります。快削黄銅は、JIS (日本産業規格) でC3601からC3605までの5種類が規定されています。快削黄銅は自動車部品、建築金物、電気製品の部品などに使用されています。また、装飾品や楽器などにも広く用いられています。

快削黄銅の使用用途

快削黄銅の主な使用用途は下記の通りです。

1. 自動車部品

エンジン部品、ブレーキ部品、燃料噴射装置などが挙げられます。自動車のエンジン部品では,インジェクターコネクタ、シリンダーヘッドガスケットなどが使用例です。

インジェクターコネクタは燃料噴射装置の一部で、燃料をシリンダー内に噴射するための部品です。シリンダーヘッドガスケットはシリンダーヘッドとシリンダーブロックを密着させるための部品で、高温・高圧力に耐える必要があります。

2. 電気・電子機器

コネクタ、端子、スイッチなどが挙げられます。

3. 建築用部品

ハンドル、ドアノブ、錠前などが挙げられます。

4 . 食品加工機械の部品

ミキサー、シュレッダー、カッターなどが挙げられます。

5. 航空機部品

エンジン部品、軽量な構造部品などが挙げられます。航空機のエンジン部品では、燃料噴射器、ターボチャージャー などが使用例です。

燃料噴射器は、燃料をエンジンに送り込むために使用される部品です。ターボチャージャーとは、エンジンに空気を送り込むための部品で、黄銅製のブローオフバルブを含む場合があります。ブローオフバルブとは、エンジンの運転中に発生する過剰なブースト圧力 (ターボチャージャーなどよってエンジンに送り込まれる圧力) を排出するために使用されるバルブです。

快削黄銅の種類

快削黄銅は、JIS H 3250にて5種類が定められていて、製法により下表のように分類されています。

合金番号 製法 記号
C3601 引抜 C3601BD
C3602 押出 C3602BE
引抜 C3602BD
鍛造 C3602BF
C3603 引抜 C3603BD
C3604 押出 C3604BE
引抜 C3604BD
鍛造 C3604BF
C3605 押出 C3605BE
引抜 C3605BD

快削黄銅の性質

1. 切削性

快削黄銅は、銅合金の中でも最も切削性能が高い材料です。理由は適度な硬さがあることから、切削刃が容易に材料に食い込み、切削力を効率的に伝達できるためです。また、耐摩耗性が高く、切削時に発生する摩擦による刃先の劣化が少なく、切削性能を維持できます。さらに、切削時の熱変質が少ないため、加工物や切削刃を過度に加熱しないようにでき、美しい仕上がりになります。

2. 加工性

加工性とは、材料を機械加工する際に、どの程度加工しやすいかを示す指標です。快削黄銅は適度な硬さと柔軟性を持っているため、機械加工に適しています。特に切削加工においては、刃先が快削黄銅に容易に食い込み、切削力を効率的に伝達できます。また、快削黄銅は比較的軟らかいため、曲げ加工や穴あけ加工なども容易です。

加工後の表面仕上げに関しては、表面についた切削屑やバリを簡単に取り除けるため、非常に滑らかで美しい仕上がりになります。

3. 耐食性

快削黄銅は耐食性に優れた材料であり、腐食に強い特性を持っています。快削黄銅の耐食性が高い理由には、銅の特性が関与しています。

銅は、表面に酸化被膜を形成するため、通常の条件下で腐食に強い材料です。酸化被膜は、銅と空気中の酸素が反応して形成されるもので、表面を保護します。また、銅は自己修復性を持っているため、酸化被膜が割れた際には、銅が再び酸化して表面を覆い、再び保護します。

快削黄銅は、銅に亜鉛を加えた黄銅合金であり、亜鉛もまた酸化被膜を形成します。よって、快削黄銅は銅と亜鉛の特性を合わせ持ち、耐食性に優れた材料です。

4. 導電性

銅は電気の導電性に優れていることから快削黄銅を導電性を持つため、電気部品や電気回路によく使われています。

5. 耐磨耗性

快削黄銅は摩耗に対して非常に強い材料です。理由は快削黄銅が硬さや強度が高く、表面が滑らかであるためです。銅と亜鉛を主成分とする黄銅合金に、鉛やリンなどの添加物を混ぜ合わせて作られるため、硬さや強度が高く耐摩耗性に優れています。

快削黄銅が摩耗に強い理由の1つに、表面が滑らかであることが挙げられます。表面が滑らかであるため、接触面積が小さくなり、それに伴って摩耗が起こりにくくなります。また、快削黄銅は自己潤滑性が高く、潤滑剤を使用しなくても摩耗を軽減できる材料です。

6. 溶接性

快削黄銅は溶接性に優れている理由は、銅の特性によるものです。銅は加熱によって柔らかくなり、溶接に適した状態になります。また、快削黄銅は鉛やリンなどの添加物によって溶接時に生成する酸化物を減少させられるため、溶接面の酸化を防止し、より強力な接合が可能になります。

7. 加熱性

快削黄銅は加熱によって形状を変えられるため、冷間加工後に加熱して形状を修正できます。

8. 熱伝導性

快削黄銅は熱伝導性に優れてるため、加熱された箇所から熱が均等に伝わり、素早く冷却されるため、変形や歪みが少ないです。

9. 美しい色合い

快削黄銅は黄色い色合いが美しく高級感があることから装飾品やインテリア用品にも使用されます。

10. 錆びにくい

快削黄銅は、銅の特性により錆びにくいです。銅は空気中の酸素と反応して酸化しますが、酸化物が形成されるとその表面が酸化物で覆われ、次の酸化を防止するために、錆びにくくなります。また、酸化物は通常緑青色の酸化銅と呼ばれる物質で、これは銅の特徴的な緑色の色合いを与えることがあります。

快削黄銅に含まれている鉛やリンは、快削黄銅の加工性や切削性を向上させるために用いられる元素です。しかし、鉛やリンは、錆びにくい性質を与えるという効果も持っています。さらに、快削黄銅は、塩分や酸性物質に対しても耐性があり、湿気の多い環境でも錆びにくく、屋外での使用にも適しています。

快削黄銅のその他情報

1. 鍛造加工

快削黄銅は、鍛造加工にも適した材料です。鍛造加工によって、快削黄銅の耐久性や強度を高められます。

2. 熱処理

快削黄銅は、熱処理によって硬さや強度を変えられるため、熱処理によって、快削黄銅の加工性や耐久性を改善できます。

展伸材

展伸材とは

展伸材

展伸材とは、金属を圧延・鍛造・引抜き・押出し等によって形状を作り出した材料のことです。

形状としては板・条・棒・線・管・形材などがあり、金属の物理的性質によって特徴があります。一般的に金属の展伸材は硬くて強度が高く耐久性があります。

展伸材は、建築、自動車部品、家具やインテリアの分野などで幅広く使用されます。建築分野では鉄骨構造に使用されたり、自動車分野ではエンジン部品やサスペンションやホイールなどに使用されます。また家具やインテリアの分野でも金属製の展伸材を使用することがあります。

展伸材の使用用途

展伸材の使用用途は以下の通りです。

1. 建築

ビルや高層マンションの鉄骨構造、ショッピングモールの鋼製屋根材、大型スポーツ施設の鉄骨構造などが挙げられます。

2. 自動車

自動車のエンジンブロック、サスペンションのスプリング、ホイールリムなどが挙げられます。

3. 家具やインテリア

スチール製の椅子の脚、金属製の壁掛け時計などが挙げられます。

4. 機械部品

ギア、軸受け、スプリング、ばね、車輪などが挙げられます。

5. 電子機器

パソコンのケース、電源ユニットの筐体、オーディオ機器のフレームなどが挙げられます。

展伸材の原理

展伸材は下記のような原理 (製造方法) で成り立っています。

1. 圧延

原料となる金属板や棒を圧力をかけて延ばし、必要な形状に加工する方法です。冷間圧延と熱間圧延の2つの方法があり、熱間圧延では金属を加熱して延ばすため柔軟性が高く、複雑な形状の加工が可能です。

2. 鍛造

金属材料を熱した状態で圧力をかけて形状を加工する方法です。均一な組織を持てるため強度や耐久性が高くなります。

3. 引き抜き

金属材料を金型に通して必要な形状に引き抜く方法です。精密な加工が可能で鋼線やパイプなどの細い部品の製造に適しています。

4. 押し出し

金属材料を金型に通して必要な形状に押し出す方法です。管状の製品や角材や棒状の製品などを製造できます。

5. ドローワーク (引き伸ばし加工)

金属板を金型に通して引き抜き加工する方法です。軟鋼やアルミニウムなどの薄い板材の加工に適しています。

6. 熱間引抜き

金属材料を加熱して金型に通して必要な形状に引き抜く方法です。鉄線や軟鋼などの細い部品の製造に適しています。

展伸材の種類

1. 材質

鉄鋼材、アルミニウム材、銅材、ステンレス鋼材、チタン材、ニッケル合金材、その他の合金材などがあります。

2. 形状

板材 (薄く広い面を持つ材料) 、棒材 (円形や四角形など断面が一定で長さがある材料) 、線材 (径が細い棒材) 、管材 (中空の管状の材料) 、形材 (角材・H形鋼・I形鋼など、断面形状によって分類される材料) などがあります。

3. 用途

建築材料用展伸材、自動車部品用展伸材などがあります。

4. 製造方法

圧延展伸材、鍛造展伸材、引抜き展伸材、押出し展伸材などがあります。

展伸材のその他情報

展伸材の表面処理

展伸材は用途に応じて様々な表面処理が施されます。表面処理には、防錆処理、塗装、被覆、めっき、焼入れなどがあり、材質の特性を引き出したり外観を美しくしたり、また耐久性を高めたりするために行われます。また展伸材には耐疲労性が求められる場合があり、そのためには金属内部の組織を制御する熱処理が施されることもあります。

1. 酸洗処理
展伸材の表面に付着した油脂や酸化物を取り除いて表面をきれいにする処理です。酸を使った処理方法が一般的です。

2. めっき処理
展伸材の表面に金属をめっきすることで、外観の改善や耐食性の向上などを目的とした処理です。めっきには、亜鉛めっき、クロメートめっき、ニッケルめっき、クロムめっき、銀めっき、金めっき、錫めっきなどがあります。

3. 塗装処理
展伸材の表面に塗装を施すことで、色や外観の改善、耐食性の向上、防錆・防蝕効果の付与などを目的とした処理です。塗料には、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂などがあります。

4. アルマイト処理
アルマイト処理は、アルミニウムをはじめとする軽金属の表面を酸化皮膜で覆う表面処理の一種です。アルマイト処理によって作られた酸化皮膜は、表面を硬化して耐食性や耐摩耗性や電気絶縁性を向上させます。

アルマイト処理は、アルミニウムやその合金、マグネシウム合金、チタン合金などの軽金属に用いられることが一般的です。

5. パッシベーション処理
パッシベーション処理は、金属材料の強度や耐食性を向上させるために行われる表面処理の一種であり、主にステンレス鋼やチタンなどの金属材料に対して行われます。この処理では金属材料を酸化剤の溶液に浸して表面に酸化被膜を形成させます。酸化被膜は非常に薄く、透明であり、金属表面を保護し、耐食性を向上させます。酸化被膜は非常に頑丈であり、金属表面の傷や劣化を防止し、耐久性を向上させます。

6. 熱処理
展伸材を高温で保持することで、組織改良や硬化、強度・耐熱性の向上、脆性の軽減などを目的とした処理です。熱処理には、焼入れ、焼戻しなどがあります。

導電材料

導電材料とは金属テープ

導電材料とは、自由電子を持つ電気が通せる材料のことです。

一般的な導電材料には、金属・半導体・導電性高分子材料などがあります。金属は自由電子が存在するため導電性が高い特性を持ちます。一方、半導体は導電性が低いもののドーピングなどの技術によって導電性を制御できることが特徴です。導電性高分子材料は、電荷を帯びた部分が分子内に存在するため、柔軟性が高く軽量であり導電性能を調整できます。

導電材料は、電子デバイス、回路、センサー、照明、電気自動車、太陽電池などの分野で幅広く使用されています。

導電材料の使用用途

導電材料の使用用途は主に下記の通りです。

1. 電子デバイス

トランジスタ、ダイオード、集積回路 (英: Integrated Circuit, IC) などが挙げられます。トランジスタは、電気信号を増幅したり、スイッチングしたりするために使用される電子デバイスの一つです。トランジスタは、半導体材料 (主にシリコン) を用いて作られます。ダイオードは、半導体材料 (主にシリコン) を用いて作られる、電流を一方向に通せる電子デバイスの一つです。

2. 電気回路・電子回路

配線、プリント基板などが挙げられます。プリント基板 (英: Printed Circuit Board, PCB) は、電子回路を実装するための基板であり、トレースを形成することで部品を接続して回路を構成できます。トレース (英: Trace) とは、プリント基板上で部品同士を接続するための「銅箔や導電性インク」で形成された導体のことです。

3. センサー

加速度センサー、圧力センサー、温度センサーなどが挙げられます。

4. 照明

LED、蛍光灯などが挙げられます。LED (英: Light Emitting Diode) は、電気が流れることで発光する半導体素子の一種で、発光ダイオードとも呼ばれます。

5. 電子機器

コンピューター、スマートフォン、タブレット、家電製品などが挙げられます。

6. 輸送機器

電車、電気自動車、エレベーター、自動ドアなどが挙げられます。

導電材料の種類

導電材料には、以下のような種類があります。

1. 金属

アルミニウム、鉄、銀、金などの金属が導電材料としてよく知られています。金属は電子が自由に移動できるため、電気伝導性が非常に高い特性があります。

2. 半導体

シリコン、ガリウムアーセニド、窒化ガリウムなどの半導体が導電材料として利用されます。半導体は、純粋な状態では電気伝導性が低い材料ですが、不純物を添加することで電気伝導性を制御できます。

3. 電解質

イオン性化合物や液体 (イオン化合物が解けて液体状態になったもの) が導電材料として利用されます。電解質は、イオンが移動することによって電気伝導性を示します。電解質は、バッテリーや燃料電池などのエネルギー変換装置や電気化学センサーなどに利用されます。

イオン性化合物とは、陽イオンと陰イオンから構成される化合物のことです。イオン性化合物は、水に溶かすと電離して陽イオンと陰イオンに分解されるため電気を通せます。

4. 導電性高分子

ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリンなどの高分子が導電材料として利用されます。導電性高分子は、有機電子材料として有機ELディスプレイなどに利用されます。

5. その他

炭素ナノチューブ、グラフェン、金属酸化物など、新しい材料の開発によって、様々な種類の導電材料が開発されています。

炭素ナノチューブは、炭素原子が六角形の網目状に結合して作られたチューブ状のナノスケール材料です。グラフェンとは、一層の炭素原子から成る二次元の物質で、非常に高い強度と導電性を持ち透明であることが特徴です。グラフェンは、グラファイトを単層に剥がしたものであり、炭素原子が六角形の格子状に配列しています。

導電材料の性質

1. 電気を通す

導電材料が電気を通せる理由は、その内部に存在する自由電子の存在によります。自由電子は、原子や分子の結合に関係なく材料内部で自由に移動できます。導電材料は、外部から印加された電場により自由電子が移動して電荷を伝導できる材料です。

2. 電気抵抗が低い

導電材料内部では、自由電子が外部から印加された電場によって移動して電流を伝導します。この際に自由電子が材料内部の原子や分子と衝突することで抵抗が生じます。

導電材料の電気抵抗が低い理由は、材料内部の結晶構造が整然としているためです。結晶構造が整然としていると、自由電子が材料内部で移動する際に衝突する原子や分子の数が少なくなるため抵抗が小さくなります。また導電材料内部の不純物や欠陥が少ないほど抵抗が小さくなります。

3. 熱伝導性が高い

導電材料内部では、自由電子が外部から印加された熱によってエネルギーを吸収して熱エネルギーを伝導します。この際に自由電子が材料内部の原子や分子と衝突することで熱が伝わります。

導電材料の熱伝導性が高い理由は、材料内部の結晶構造が整然としているためです。結晶構造が整然としていると、自由電子が材料内部で移動する際に衝突する原子や分子の数が少なくなり、熱が均等に伝わりやすくなります。また導電材料内部の不純物や欠陥が少ないほど熱伝導性が高くなります。

4. 電気によって磁場を発生する

磁場は、電流が流れる導線の周りに発生する現象です。導電材料内部では、外部から印加された電場により自由電子が移動して電流が流れ、この電流により導電材料内部の磁気モーメントが発生して磁場が発生します。

導電材料が磁気性を持つためには、材料内部に十分な自由電子が必要です。自由電子の存在により電流が流れやすくなって磁場の発生に必要な電荷の移動が起こりやすくなります。また導電材料の磁気性は、電流が流れる方向に対して垂直な方向に磁場が発生する傾向があります。

導電材料のその他情報

1. 半導体材料への不純物の添加

導電材料には、意図的に不純物を添加することで導電性や特定の物性を制御できます。例えば銅に酸化物を添加すると、電気抵抗が上がります。またシリコンにホウ素などの不純物を添加することで、p型半導体やn型半導体を作れます。

p型半導体とn型半導体は、半導体材料に特定の不純物を添加することにより電気的性質を制御したものです。p型半導体とn型半導体を組み合わせることでp-n接合が形成され、電気的に特異な性質を持った素子や回路を構成できます。

2. 柔軟性がある導体材料

一部の導電材料には、柔軟性があるものがあります。導電性高分子材料や炭素ナノチューブなどは、柔軟性が高くて軽量でありながら導電性能を維持できます。これらの材料は、曲がったり伸びたりするような形状の電子機器やセンサーなどに利用されます。

3. 高温耐性がある導体材料

一部の導電材料には、高温に耐える性質があります。例えば炭素ナノチューブは、高温環境下での電気伝導性が高いことが知られています。これは炭素ナノチューブが非常に強靭であって高温においてもその構造が変化しないためです。

4. 金属導電材料の耐食性

金属導電材料は、一般的に耐食性が高い傾向があります。例えば銅は空気中で酸化するために表面が変色しますが、銅酸化物が表面を覆ってそれ以上の酸化を防止します。

双晶

双晶とは

双晶

双晶とは、同じような構造をもつ結晶が、面あるいは線で対称となっている結晶構造のことです。

対称となる面は双晶面、線は双晶軸と呼ばれています。原子レベルでも配列が双晶面あるいは双晶軸で規則的に変化しているとも言い換えられ、確認にはクロスニコル (偏向顕微鏡) が必要とされています。

双晶が顕著にみられる鉱物は斜長石が良く知られていますが、アルカリ長石や普通角閃石といった鉱物にも観察されます。

双晶の使用用途

自然界に存在する双晶構造が、顕著な鉱物として斜長石が知られており、そのほかにもアルカリ長石、普通角閃石、普通輝石などがあります。

斜長石は、薄膜干渉による青色、黄色、オレンジ色などの閃光を放つことから「ラブラドライト」という名称、アルカリ長石は、カリ長石と曹長石の固溶体で、カリ長石はムーンストーンという名称の宝石として知られています。

一方で、外力が加わることにより、双晶構造を呈し、振動などを吸収する効果がもたらされ、除かれると双晶が消えるといった制振合金もある意味では双晶の利用といえるでしょう。

双晶のその他情報

双晶の特徴

双晶は、結晶形態が明瞭な「自形」のほか「他形」といわれる結晶形態が全く見られない結晶の鉱物にも散見されます。結晶形態とは、鉱物の原子配列が外形に表れているものを指します。

自形のような鉱物では隣り合う結晶面のなす角度は、鉱物ごとに決まったものである「面角一定の法則」と呼ばれるものがあり、石英は120°です。石英で見られる双晶には、結晶が成長する過程で原子配列が変化してできた「日本式双晶」のほか、「ブラジル式双晶 (右水晶と左水晶が結合して結晶) 」と「ドフィーネ式双晶 (右水晶同志か左水晶同志が結合した結晶) 」が知られています。日本式双晶と異なり、そのほかの自形の双晶は腐食試験を実施しないと認められません。

さらに、他形の鉱物のなかにも双晶が多く存在することは知られていますが、これら双晶は、肉眼で確認できないことが多く、偏光顕微鏡が必要とされています。

この種のなかには、アルバイト式双晶 (格子面を境にして原子配列が変化した双晶) と呼ばれるものが存在し、その縞模様から反復双晶とも呼ばれており、例外的に肉眼でも双晶が確認できることで知られています。同様に、他形でも肉眼で双晶が確認できるものに、アルカリ長石のカルルスパッド式双晶と呼ばれるものも確認されています。

前駆体

前駆体とは

前駆体

前駆体 (英: precursor) とは、ある化学物質が形成される前段階の物質のことです。

化学分野 (とりわけ有機合成や生化学) で使用されることが多い言葉です。

前駆体の使用用途

前駆体を経て作られる化学物質は、薬品をはじめエレクトロニクス分野、たとえば半導体素子関連のDRAM電荷保存および回路パターンを形成する電子部品といった、非常に広い分野にわたり使われています。

最近の開発競争でしのぎが削られている「ペロブスカイト太陽電池」は、その変換効率の高いことや溶液塗布で製作できるという容易性で有名ですが、その前駆体として知られるヨウ化鉛もまさに再生エネルギーの先駆けとなる出発物質といっていいでしょう。

前駆体の原理

ヨウ化鉛を前駆体として作られるペロブスカイト化合物 (MeNH3PbI3) は、ペロブスカイト太陽電池の光吸収層として使われています。

ペロブスカイト太陽電池は、積層構造で作られており、基材のうえに透明電膜で構成されたマイナス極が形成され、その上には順次「金属酸化物層」「ペロブスカイト」「正孔輸送膜」を介してプラス電極となります。この積層構造は、金属酸化物にペロブスカイト結晶薄膜を塗布することで形成されるという製作容易性が好まれ、一気に太陽電池への使用研究が拡大していったといわれています。

ペロブスカイト結晶が日本人の発明によるものであり、太陽電池の普及を後押ししているきっかけとなったとされています。800nmで赤外線領域の吸収性能に優れ、この結晶で作られた太陽電池の変換効率がmax20%を超える値という驚異的な結果が示されています。

まだまだペロブスカイト太陽電池は、開発途上といわれていますが、前駆体が出発物質であることに変わりはありません。

制振合金

制振合金とは

制振合金とは、機械や構造物の振動を減衰するために使用される合金です。

振動は機械の寿命を短くし、音や不快感を引き起こすことがあります。制振合金は、このような問題を解決するために開発された材料です。制振合金は機械的なエネルギーを熱エネルギーに変換することによって振動を減衰させます。この特性は、建築物や橋などの大型構造物の地震に対する耐震性を高めるために使用されています。また、精密機器や音響機器などの振動に敏感な製品にも使用されます。

制振合金の使用用途

1. 建設

地震時の振動吸収や減衰を目的として、鉄骨やコンクリート構造物に組み込まれることがあります。高速道路橋の設計にも用いられ、大規模な地震や台風などの災害に対する安全性を向上させます。具体的には建築物や橋梁、高速道路などが挙げられます。

2. 地震対策

建物に組み込まれた制振装置によって、地震時に発生する揺れを吸収・減衰させることで、建物の被害を軽減します。特に高層ビルに用いられます。

3. 振動対策

車両のサスペンションや振動減衰装置、船舶の船体やエンジン周りの制振用途に使用されることがあります。高速走行時に生じる振動を吸収し、乗り心地の向上させたり、機器を保護したりします。車両や船舶などの交通機関以外にも工場や建設現場の大型機械や装置の振動対策に使用されることがあります。振動による機械の故障や劣化を防ぎ、生産性の向上や設備の寿命化を延ばします。

4. 医療機器の振動対策

MRIや超音波診断装置など、高精度な医療機器の振動対策に使用されることがあります。機器内部の精密機械部品やセンサーの振動を減らし、診断結果の精度を向上させたり機器の寿命を延ばしたりします。

5. 家具や家電製品の振動対策

家庭用洗濯機や冷蔵庫、空気清浄機などの家電製品の振動対策に使用されることがあり、家具ではテーブルや机の脚部や、ソファーのフレームなどに使用されることがあります。
家電製品においては、振動による騒音の低減や長期間の使用における故障の防止を目的として使用されます。

制振合金の種類

1. 複合型制振合金

複合型制振合金は複数の金属や合金を組み合わせたものです。一般的に、この種類の合金には高強度鋼、ステンレス鋼、チタン合金、アルミニウム合金、銅合金などが含まれます。これらの金属や合金の特性を組み合わせることによって高い制振性能と優れた耐久性を実現できます。成分や製造方法によって異なる性質を持ちますが、一般的には高い制振性能、耐久性、耐摩耗性、耐熱性、耐腐食性、低密度などが特徴です。

2. 強磁性型制振合金

強磁性型制振合金は磁場を利用して振動を制御することができるため、高い制振性能を発揮できるのが特徴です。この種類の合金には、一般的にフェライト鋼やパーマロイなどが含まれます。磁気エネルギーを蓄えることができ、振動が発生した場合に磁気エネルギーを放出して、振動を減衰できます。

3. 転移型制振合金

転移型制振合金は、相転移によって振動を制御できるため、広い温度範囲で高い制振性能を発揮できるのが特徴です。この種類の合金には、一般的にニトニル鋼やマルテンサイト鋼などが含まれます。特定の温度範囲で結晶構造が変化することによって、弾性率が大幅に変化する特性を持つため、温度変化が大きい環境下での制振に使用されています。

4. 双晶型制振合金

双晶型制振合金は、結晶粒界に特別な構造を持つことで、高い制振性能を発揮できるのが特徴です。双晶型制振合金には、一般的に銅合金やアルミニウム合金が含まれます。結晶粒界にある「双晶」と呼ばれる微小な結晶構造が、振動エネルギーを吸収して消散することによって、振動を減衰する特性を持ちます。

双晶型制振合金は結晶構造が特殊であるため、高温環境下でも安定して制振性能を発揮できる点が特徴です。また、耐食性に優れているため、海洋環境下での使用にも適しています。

制振合金の原理

制振合金は、一般的な金属と比べて振動を吸収する能力が高い材料です。制振合金が振動を吸収する仕組みは、材料内部の微小な組織構造にあります。一般的に2つ以上の異なる金属から構成されている材料です。よって異なる金属は微細な層状に積み重ねられ、相互に結合して一体化しています。

振動が制振合金に伝わると異なる金属層同士の摩擦によって振動が吸収され、エネルギーが内部で散逸し、制振合金は振動を効果的に吸収できます。また、振動数によって材料内部の振動モードが変化するため、幅広い振動数帯域に対して効果的に振動を吸収できます。

振動モードとは、物体が振動する際に取りうる振動の形態のことです。具体的には、物体が振動する場合、その振動は様々な周波数の波を含んでいますが、それぞれの周波数成分が物体内部でどのように振動しているかによって、振動モードが異なります。制振合金は微細な層状構造によって振動を吸収し、エネルギーを内部で散逸させることで、振動を減衰させる材料です。

制振合金の性質

1. 振動の減衰

制振合金は振動を吸収する能力が高いため、建物や構造物などの地震による振動を減衰させるために利用されます。異なる金属層同士の摩擦や材料内部の構造変化によって振動を吸収するため、幅広い周波数帯域の振動に対して効果的に振動を吸収できます。例えば、建物の地震対策に利用される制振装置は、地震の周波数帯域に合わせて設計されています。

2. 耐久性

制振合金は、金属層同士が密着しているため、耐久性が高く長期間にわたって性能を維持できるのが特徴です。例えば、高速道路や新幹線などの鉄道車両にも利用されています。複数の異なる金属から構成されるため、金属材料としての優れた特性を持ちます。

制振合金のその他情報

1. 幅広い用途

制振合金は、その振動吸収能力や耐久性などの特性から、防震や音響制振などの様々な用途に応用されます。例えば、地震対策や高層ビルの揺れ制御、音響スタジオの防音、船舶や飛行機の振動対策、精密機械の振動軽減などに利用されています

2. 制振合金以外の制振材料

制振合金以外にも、ゴム、ウレタンフォーム、シリコンゴム、樹脂、セラミックスなど、さまざまな制振材料が存在します。これらの材料は、制振合金と比べて軽量で、振動数によって制振性能が変化します。

円板

円板とは

円板とは、産業分野で活用されている各種素材によって作られた円形の中間素材や製品のことです。

主にアルミニウム黄銅といった金属をはじめセラミックスやアクリル樹脂といった、いろいろな素材が使われ、用途により素材や大きさが使い分けられています。銅製品なら優れた電気伝導性を活かして電気部品の一部となり、逆にセラミックス製品では、絶縁性を応用した絶縁板などが広い分野で活用されています。

円板の使用用途

円板は、使わる材質によって用途が異なります。

樹脂製の円板は、耐薬品性の材質で作られたものは化学工場や半導体工場、水産工場、食品工場といったところでの配管の板フランジとして使われています。

同じ樹脂製でもクッション性のある材質であれば、緩衝材といった使い方も可能です。銅で作られた円板は、導電率の良さから電極といった電気接点が代表例となります。ステンレス製の薄い円板であれば、蓋や料理のトレイの部材にも使用可能です。

円板のその他情報

円板の特徴

円という形状は、民生用をはじめ産業分野で回転を前提とする用途に多く使われています。例えば電力といった分野での円板にするメリットは、回転運動により電力を発生する発電機にはじまり、受電したエネルギーを回転という運動エネルギーにかえるのも円形の電動機です。これらの機器は、いずれも心臓部をはじめ筐体の一部としても円板が必要です。

電気分野の円形部品は電気接点があります。土木や建築といった分野では、流体を流す配管のほとんどが円柱となる管が使われています。天体観測はじめ望遠鏡などにも円柱が使用されていますが、こちらも光学上の有利性があります。

伸銅品

伸銅品とは

伸銅品

伸銅品とは、銅合金を熱間や冷間などの塑性加工によって伸ばして製造された製品のことです。

一般的に銅管、銅線、銅棒、銅フィルム、銅箔、銅板などが含まれます。伸銅品は高い導電性、加工性、耐食性、耐熱性などの特性を持ち、さまざまな産業で広く利用されています。銅や銅合金を熱間圧延、冷間圧延、引き抜き、圧延引き抜きなどの方法で製造され、製造工程や素材の純度、加工方法などによって伸銅品の特性や品質は異なります。

伸銅品の使用用途

伸銅品の使用用途は主に下記の通りです。

  1. 電気配線や電気機器に使用される導体材料
    家庭用電化製品、自動車、船舶、航空機、鉄道車両、通信機器、コンピューターなどが挙げられます。
  2. モーターや発電機などの回路に使用される電気導体
    発電機、変圧器、トランス、モーター、スイッチなどが挙げられます。
  3. 金属加工に使用される材料
    管、プレート、シート、フランジ、ビス、ボルトなどが挙げられます。
  4. 電磁シールド材料
    電気機器、通信機器、医療機器、航空機、自動車などが挙げられます。
  5. 電気溶接やろう付けに使用される溶接材料
    銅管、銅パイプ、銅配管、銅線などが挙げられます。
  6. 家具や建築用の装飾品として使用される装飾材料
    インテリアデザイン、建築装飾、家具などが挙げられます。

伸銅品の性質

1. 優れた電気伝導性能

銅は優れた電気伝導性能を持ち、伸銅品はその特性を生かして電気配線や電気機器の導体材料として使用されます。伸銅品が優れた電気伝導性を持つ理由は、1個の電子を自由に移動させられる銅の原子構造にあります。

銅の電子構造により、銅原子は外部から加えられた電子が銅原子に吸収され自由に移動できるため、銅は電子を自由に伝導し、電気の通り道として機能できます。また、銅は結晶構造が密であるため、電子が移動する経路が多数あります。非常に柔らかく変形しやすいため、電子がより自由に移動できるため、伸銅品は非常に高い電気伝導性を持っています。

2. 優れた加工性能

伸銅品は、ロール加工や引抜加工などの加工によって容易に形状を変更できることがメリットです。伸銅品が良好な加工性を持つ理由は、銅の結晶構造にあります。銅は、原子が密に詰まっているため、外部からの力によって形が変形しやすいのが特徴です。銅の延性による塑性変形によって、結晶格子内に欠陥が生じて、欠陥が増えると、銅の結晶構造は弾力的になり、再結晶が容易に起こるようになります。再結晶によって欠陥のある領域が取り除かれ、結晶構造が回復し再び強くなります。

上記の性質により、伸銅品は、薄い板、棒、線、チューブなどの形状に加工できます。例えば、銅線は、延性を利用して細く引き延ばされ、銅板は、圧延によって薄くされます。

3. 良好な耐腐食性

銅は空気中や水中での腐食に強く、耐久性に優れている材料です。銅が空気中や水中での腐食に強く、耐久性に優れる理由は、銅が薄い酸化皮膜を形成するためです。形成された酸化皮膜は、銅の表面を保護し、腐食から守る役割を果たします。

また、銅は一定の水質であれば腐食しない性質があり、水質に含まれる酸素量や塩分濃度などが適切である場合、腐食が進まなくなります。さらに、銅は貴金属としての特性を持ち、酸化しにくく高温や酸にも強いため、耐久性に優れている材料です。よって、銅は建築材料や水道管、船舶などの産業用途に広く使用されています。

4. 優れた熱伝導性能

銅は優れた熱伝導性能を持っています。電子の自由度が高く、熱エネルギーを受け取ると電子が自由に動き回れるため効率的に伝えられます。また、銅は結晶構造が密で均一な構造を持っているため、原子同士の間に距離が近く、熱エネルギーを効率的に伝えらえるのが特徴です。不純物が含まれると原子同士の間に距離が離れ、熱伝導性能が低下するため銅の熱伝導性能は不純物の含有量にも影響を受けます。

5. 良好な加工精度

伸銅品は高い加工精度を持っています。銅は非常に柔らかく加工に適しているため、伸銅品の成形や加工に必要なプレス、曲げ、切削などの作業を容易にし、加工精度を高められます。また、熱伝導性能に優れており加工時に発生する熱を素早く伝えて冷却するため、伸銅品の加工において熱変形や歪みなどの問題を最小限に抑えられます。

さらに、伸銅品は細かい結晶構造を持ち、均一で微細な加工においても組織の均一性を保ち、高い加工精度を実現できます。純度が高いため加工後の品質が安定しており、加工中に生じる欠陥を防ぎ、高い加工精度を実現できます。

6. 美しい外観

伸銅品は、純度が高い場合、美しい金属光沢を持ち、家具や装飾品などの用途にも使用されます。

伸銅品のその他情報

元素の添加

伸銅品は、銅を主成分とする材料であり、銅以外の元素を添加することで特性を変化させられるのが特徴です。代表的なものは以下の通りです。

1. 黄銅
黄銅は、銅と亜鉛を主成分とする合金で、黄色い色をしています。加工性が良く、熱伝導性や耐食性にも優れているのが特徴です。建築資材や装飾品、楽器などに使用されます。

2. リン青銅
銅とリンを主成分とする合金で、赤みがかった色をしています。耐摩耗性、耐蝕性、切削性、強度が高く、加工性にも優れているのが特徴です。バネや電気接点、機械部品などに使用されます。

3. 洋白
洋白は、銅とニッケルを主成分とする合金で銀色の色合いがあります。耐食性や耐摩耗性、切削性、熱伝導性に優れ、美観も良い点が特徴です。食器や調理器具、インテリアなどに使用されます。

4. ベリリウム銅
ベリリウム銅は、銅とベリリウムを主成分とする合金で、黄色がかった色をしています。高い強度、硬度、弾性率、耐疲労性に優れており、高温にも強いのが特徴です。航空機や自動車のバネ、スプリング、電気接点などに使用されます。

5. アルミニウム青銅
アルミニウム青銅は、銅を主成分とし、アルミニウムを添加して作られる銅合金です。アルミニウムの添加により、銅単体に比べて強度が向上し、さらに軽量化された材料になります。そのため、航空機や自動車などの軽量化が求められる分野で広く使用されています。

また、アルミニウム青銅は耐腐食性に優れており、海水中や薬品に対しても耐性があるのが特徴です。優れた加工性を持ち、鋳造や鍛造、加工加熱などで様々な形状に加工できます。

二重管

二重管とは

二重管

二重管 (英: double tube) とは、径の異なる管 (外管と内管) を同心として組み合わせた管です。

内管の損傷にともなう流失防止や内管に流す液体、気体の熱交換として使用されます。内管と外管の固定方法を工夫することで、外気等による変動を吸収できる製品もあります。

二重管の使用用途

1. 環境保全用途

環境省は水質汚濁防止法の改訂し、「地下水汚染の未然防止のための構造と点検・管理に関するマニュアル (第1版) 」を出しています。平成24年に施行が始まっています。

このマニュアルに伴う設備改善として、内管の流体が管の破損などで外部へ流失し、環境を汚染させないために外管が保護となり、さらに外管を透明とすることで、定期的検査において内管の異常を発見しやすくしています。

参考: 地下水汚染の未然防止のための構造と点検・ 管理に関するマニュアル

2. 熱交換器用途

二重管は、内管を流れる気体や液体と外管の流体とで熱交換を行うために多く使用されます。流体の詰まりが少なく、チューブをコイル状に曲げれば、所要スペースを小さくできます。

流れは並行流と対向流の二種類があります。内管の内面にフィンを付けたり、内管の外面にフィンを付けたりして、高性能化を図ることも行われます。

冷凍サイクルに使用される冷媒用二重管式熱交換器は、水冷凝縮器の場合、冷媒側の熱伝達率が非常に大きいので、水側の内管の内面にフィンを付けて、全体の伝熱効率を上げます。

3. 二重配管用途

身近な例は、浴槽の追炊き給湯管です。外管と内管の隙間を浴槽の湯が給湯器の方へ流れ、内管を追い焚きされた湯が浴槽の方へ流れます

また、FF式暖房機の給排気管に使用します。外管から外気を取り入れ、内管から排気します。壁の貫通部の用途です。空調ダクトにも吸気と排気用で二重管が使われています。

4. 二重壁構造用途

内管と外管との間の空間が無く、密着した二重壁構造です。冷間引抜きで製造され、管の内外で腐食条件が異なる場合に用いられます。火力発電設備の復水器や石油精製プラント、石油化学プラントの各種熱交換器用です。

外管が炭素鋼、内管が黄銅の組み合わせ、及び外管がステンレス鋼、内管が炭素鋼又はライフルチューブの組み合わせなどがあります。また、腐食条件への対応以外に、コストダウン策として活用される場合もあります。

5. 医療用途

気管切開用に使用されます。二重管を使って、吸気と呼気を行います。

6. 土木用途

二重管を使用して、2種類の薬剤を送り、先端で合流させて、対象地盤の特定の範囲を地盤改良します。

二重管の原理

二重管は内管と外管の材質の組み合わせによって、種々の特徴・特性があります。二重管の内管・外管とも熱伝導のよい材質を使用すると、熱交換器として使用可能です。外管に透明な樹脂などを使えば、内管の異常を素早く発見可能で、外管に強度がある透明な材質を使えば、内管に亀裂が生じても中を流れている物質の流出を防ぐことができます。

同じような材質の組み合わせでも、二重管の外管を内管の保護管とすれば、自動車用の配管のような高信頼性が要求される分野で利用可能です。内管・外管ともに透明性があり、外気によって変形しない材質を使うと、内管の水位を常時監視できます。

その他、二重管の内管と外管の先端をノズル形状にすれば、噴霧器にも使える管材となります。

二重管のその他情報

1. 水質汚濁防止法の指定有害物質

有害物質は28品目が指定されています。量に関係なく、微量でも対象になります。例えば、カドミウムとその化合物、シアン化合物、パラチオンと呼ばれる有機燐化合物、鉛及びその化合物、六価クロム化合物、砒素及びその化合物、水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物、ポリ塩化ビフェニル、トリクロロエチレンなどが該当します。

また、適用を受ける「施設」の範囲は、配管等、排水等の表現であり、特定施設に接続されているすべてです。

2. 二重管の活用

法規制に対する措置は、種々の方法がありますが、簡単で低コストの措置は、二重管を使用することです。有害物質を流す配管等は、漏れた場合に目視で確認できることが必要です。

配管等には、有害物質が流れる配管本体、継手類、フランジ類、バルブ類、ポンプ設備を含みます。二重管を使用した場合、外管を透明にすれば、目視で漏れが分かります。

丹銅

丹銅とは

丹銅とは黄銅と同様に亜鉛の合金ですが、黄銅と比較して亜鉛含有量が低いものをさします。具体的には亜鉛の含有量が3~20%の範囲内のものを意味することが多く、総じて赤みがかり、柔らかいという特徴があります。亜鉛が10%程度含有されたものをレッドブラス、15%程度含有されたものをゴールドブラスと呼びます。

JIS規格では銅合金に分類され、代表的なものではC2100、C2200、C2300、C2400が丹銅に該当します。亜鉛含有量が低いほど赤銅色と呼ばれる赤みがかった色合いとなり、亜鉛が10%程度含有されると黄色がかった赤、20%程度含有されると薄いオレンジ色となります。

丹銅の使用用途

丹銅は同様の金属からなる合金である黄銅と比較して、柔らかく加工性に優れるという特徴があります。また亜鉛の含有量によっても色は変化しますが、一般に赤みを帯びた見栄えの良い外観であることから、建材や装飾品・装身具といった用途に多く使われています。

またレッドブラスという別名にもある通り、丹銅はブラスバンドなどに用いられる金管楽器の代表的な材料としても知られています。これは丹銅の有する色調の美しさはもちろんのことですが、耐食性、加工性が良いという性質や、音が減衰しがたい性質を持っているためとも言われています。

丹銅の特徴

丹銅は黄銅と同様に亜鉛と銅の合金であることから、基本的な特徴は黄銅と類似しており、すなわち、良好な引っ張り強さ、延展性、導電性を有しており、鉄鋼材と比較して錆づらいという特徴があります。一方で丹銅は亜鉛の含有量が低いことから、柔らかい素材であり、硬度が必要な用途には用いられません。また、黄銅と比較して延展性、絞り加工性には優れるといわれています。

また丹銅の大きな特徴はその色にもあり、赤みを帯びた淡紅色の色調を呈します。これは黄銅と比較して銅の含有量が多いため、より銅に近い色調となったためであり、装飾品などに用いる際に利用されています。装飾品として用いられることも多い丹銅ですが、一定の耐腐食性を有するものの純銅と同様に空気中の酸素と反応して酸化し、緑青とよばれる青緑色の錆を発生することがあります。ステンレスなどの高い耐腐食性を有する合金と比較すると、腐食や酸化の可能性は高く、メンテナンスが必要です。