伸銅品

伸銅品とは

伸銅品

伸銅品とは、銅合金を熱間や冷間などの塑性加工によって伸ばして製造された製品のことです。

一般的に銅管、銅線、銅棒、銅フィルム、銅箔、銅板などが含まれます。伸銅品は高い導電性、加工性、耐食性、耐熱性などの特性を持ち、さまざまな産業で広く利用されています。銅や銅合金を熱間圧延、冷間圧延、引き抜き、圧延引き抜きなどの方法で製造され、製造工程や素材の純度、加工方法などによって伸銅品の特性や品質は異なります。

伸銅品の使用用途

伸銅品の使用用途は主に下記の通りです。

  1. 電気配線や電気機器に使用される導体材料
    家庭用電化製品、自動車、船舶、航空機、鉄道車両、通信機器、コンピューターなどが挙げられます。
  2. モーターや発電機などの回路に使用される電気導体
    発電機、変圧器、トランス、モーター、スイッチなどが挙げられます。
  3. 金属加工に使用される材料
    管、プレート、シート、フランジ、ビス、ボルトなどが挙げられます。
  4. 電磁シールド材料
    電気機器、通信機器、医療機器、航空機、自動車などが挙げられます。
  5. 電気溶接やろう付けに使用される溶接材料
    銅管、銅パイプ、銅配管、銅線などが挙げられます。
  6. 家具や建築用の装飾品として使用される装飾材料
    インテリアデザイン、建築装飾、家具などが挙げられます。

伸銅品の性質

1. 優れた電気伝導性能

銅は優れた電気伝導性能を持ち、伸銅品はその特性を生かして電気配線や電気機器の導体材料として使用されます。伸銅品が優れた電気伝導性を持つ理由は、1個の電子を自由に移動させられる銅の原子構造にあります。

銅の電子構造により、銅原子は外部から加えられた電子が銅原子に吸収され自由に移動できるため、銅は電子を自由に伝導し、電気の通り道として機能できます。また、銅は結晶構造が密であるため、電子が移動する経路が多数あります。非常に柔らかく変形しやすいため、電子がより自由に移動できるため、伸銅品は非常に高い電気伝導性を持っています。

2. 優れた加工性能

伸銅品は、ロール加工や引抜加工などの加工によって容易に形状を変更できることがメリットです。伸銅品が良好な加工性を持つ理由は、銅の結晶構造にあります。銅は、原子が密に詰まっているため、外部からの力によって形が変形しやすいのが特徴です。銅の延性による塑性変形によって、結晶格子内に欠陥が生じて、欠陥が増えると、銅の結晶構造は弾力的になり、再結晶が容易に起こるようになります。再結晶によって欠陥のある領域が取り除かれ、結晶構造が回復し再び強くなります。

上記の性質により、伸銅品は、薄い板、棒、線、チューブなどの形状に加工できます。例えば、銅線は、延性を利用して細く引き延ばされ、銅板は、圧延によって薄くされます。

3. 良好な耐腐食性

銅は空気中や水中での腐食に強く、耐久性に優れている材料です。銅が空気中や水中での腐食に強く、耐久性に優れる理由は、銅が薄い酸化皮膜を形成するためです。形成された酸化皮膜は、銅の表面を保護し、腐食から守る役割を果たします。

また、銅は一定の水質であれば腐食しない性質があり、水質に含まれる酸素量や塩分濃度などが適切である場合、腐食が進まなくなります。さらに、銅は貴金属としての特性を持ち、酸化しにくく高温や酸にも強いため、耐久性に優れている材料です。よって、銅は建築材料や水道管、船舶などの産業用途に広く使用されています。

4. 優れた熱伝導性能

銅は優れた熱伝導性能を持っています。電子の自由度が高く、熱エネルギーを受け取ると電子が自由に動き回れるため効率的に伝えられます。また、銅は結晶構造が密で均一な構造を持っているため、原子同士の間に距離が近く、熱エネルギーを効率的に伝えらえるのが特徴です。不純物が含まれると原子同士の間に距離が離れ、熱伝導性能が低下するため銅の熱伝導性能は不純物の含有量にも影響を受けます。

5. 良好な加工精度

伸銅品は高い加工精度を持っています。銅は非常に柔らかく加工に適しているため、伸銅品の成形や加工に必要なプレス、曲げ、切削などの作業を容易にし、加工精度を高められます。また、熱伝導性能に優れており加工時に発生する熱を素早く伝えて冷却するため、伸銅品の加工において熱変形や歪みなどの問題を最小限に抑えられます。

さらに、伸銅品は細かい結晶構造を持ち、均一で微細な加工においても組織の均一性を保ち、高い加工精度を実現できます。純度が高いため加工後の品質が安定しており、加工中に生じる欠陥を防ぎ、高い加工精度を実現できます。

6. 美しい外観

伸銅品は、純度が高い場合、美しい金属光沢を持ち、家具や装飾品などの用途にも使用されます。

伸銅品のその他情報

元素の添加

伸銅品は、銅を主成分とする材料であり、銅以外の元素を添加することで特性を変化させられるのが特徴です。代表的なものは以下の通りです。

1. 黄銅
黄銅は、銅と亜鉛を主成分とする合金で、黄色い色をしています。加工性が良く、熱伝導性や耐食性にも優れているのが特徴です。建築資材や装飾品、楽器などに使用されます。

2. リン青銅
銅とリンを主成分とする合金で、赤みがかった色をしています。耐摩耗性、耐蝕性、切削性、強度が高く、加工性にも優れているのが特徴です。バネや電気接点、機械部品などに使用されます。

3. 洋白
洋白は、銅とニッケルを主成分とする合金で銀色の色合いがあります。耐食性や耐摩耗性、切削性、熱伝導性に優れ、美観も良い点が特徴です。食器や調理器具、インテリアなどに使用されます。

4. ベリリウム銅
ベリリウム銅は、銅とベリリウムを主成分とする合金で、黄色がかった色をしています。高い強度、硬度、弾性率、耐疲労性に優れており、高温にも強いのが特徴です。航空機や自動車のバネ、スプリング、電気接点などに使用されます。

5. アルミニウム青銅
アルミニウム青銅は、銅を主成分とし、アルミニウムを添加して作られる銅合金です。アルミニウムの添加により、銅単体に比べて強度が向上し、さらに軽量化された材料になります。そのため、航空機や自動車などの軽量化が求められる分野で広く使用されています。

また、アルミニウム青銅は耐腐食性に優れており、海水中や薬品に対しても耐性があるのが特徴です。優れた加工性を持ち、鋳造や鍛造、加工加熱などで様々な形状に加工できます。

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