キシロール

キシロールとは

キシロール (英: Xylol) とは、芳香のある無色透明の油状液体です。

化学式はC6H4(CH3)2、分子量は106.17です。キシレン (英: Xylene)、ジメチルベンゼンとも呼ばれ、英米ではザイリンと発音されます。

オルト・メタ・パラの3種の異性体があり、CAS登録番号はそれぞれ95-47-6、108-38-3、106-42-3です。

キシロールの使用用途

工業用キシロールは90%がオルト、パラ体への異性化への原料として使われ、そのほかは塗料、溶剤に用いられています。3種類の異性体ごとに明確に分離して使用します。

特にオルトおよびパラ体は需要があります。そのため、メタ体はオルトやパラに変化させて使用することが多いです。

一般的な混合キシロールは3種のキシロールとエチルベンゼンから製造され、塗料やシンナーで使用されています。エチルベンゼンは特定化学物質障害予防規則、女性労働規則にも該当するので使用時の注意が重要です。厚生労働省の室内濃度指針値は0.20ppm以下です。

キシロールの性質

キシロールの融点は、オルト、メタ、パラ体それぞれ-25℃、-48℃、13℃で、沸点はそれぞれ144℃、139℃、138℃です。キシロールの構造はベンゼンの水素二つをメチル基で置換したもので、有毒で引火性があります。

水にほとんど溶けず、エーテル、エチルアルコールなどに溶け、またキシロール自身も溶解力の大きい優れた溶媒です。有機溶剤・合成樹脂などの原料として使用します。

キシロールのその他情報

1. キシロールの製造法

キシロールは、トルエンとベンゼンのメチル化によって生成されます。製造された商用または実験室グレードのキシロールには、通常、約40〜65%のo-キシロールと、m-キシロール、p-キシロール、エチルベンゼンがそれぞれ最大20%含まれています。

異性体の比率は、キシロール自体またはトリメチルベンゼンとのトランスアルキル化によって、高価値のp-キシロールを優先するようにシフトすることが可能です。

2. キシロールの反応

キシロールでは、メチル基が関与する反応と環C-H結合を含む反応があります。ベンジル位でもあるメチル基のC–H結合は、対応するキシロールジクロリドへのハロゲン化を含むフリーラジカル反応が進行しやすく、モノ臭素化は催涙ガス剤である臭化キシリルを生成します。

酸化とアンモ酸化もメチル基を標的とし、ジカルボン酸とジニトリルを生成します。求電子剤はキシロールの芳香環を攻撃し、クロロキシロールとニトロキシロールを与えます。

3. 法規情報

キシロールは、労働安全衛生法において「名称等を表示・通知すべき危険有害物」「危険物・引火性の物」「第2種有機溶剤等」に該当し、労働基準法では「疾病化学物質」に指定されています。化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) では「第1種指定化学物質」、毒物及び劇物取締法では「劇物」に、消防法では「危険物第4類 引火性液体、第二石油類非水溶性液体」に指定されており、使用の際には注意が必要です。

4. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 容器を密閉し、涼しく乾燥し換気の良い場所に保管する。
  • 熱・火花・火炎など着火源から遠ざける。
  • 火災及び爆発の危険があるため、強酸化剤との接触を避ける。
  • 加熱分解により、一酸化炭素、二酸化炭素を発生するので注意する。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • ヒューム、蒸気、スプレーを吸入しない。
  • 使用時は保護手袋、保護眼鏡、保護衣、保護面を着用する。
  • 使用後は適切に手袋を脱ぎ、本製品の皮膚への付着を避ける。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。

参考文献
https://www.naitoh.co.jp/msds/msds-022101.html
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0016.html

ガリウム

ガリウムとは

ガリウム (英: Gallium) とは、銀白色をした無臭の柔らかい金属です。

ガリウムの元素記号は Gaで、原子番号は31番、CAS登録番号は7440-55-3です。1875年にフランスの化学者ポール・ボアボードランにより発見されました。ガリウムは自然界に広く分布しており、アルミニウム鉱石である、ボーキサイト、ゲルマナイトなどの鉱物に微量に含まれています。

ガリウムの使用用途

ガリウムは、ヒ素との化合物であるガリウムヒ素 (GaAs、通称ガリヒ素) として化合物半導体であるため、半導体材料として利用されます。ガリウムヒ素は、レーザープリンター、スーパーコンピューター、携帯電話などの電子製品に使われています。

また、ガリウムと窒素の化合物である、窒化ガリウム (GaN) は青色発光ダイオード (LED) に使用されています。青色LEDはブルーレイディスク、LED電球、新型の信号機などに使用されております。

ガリウムの性質

ガリウムは、融点が29.8℃、沸点が2,403℃であり、常温では固体または液体として存在し、固体状態での密度は5.91g/cm3です。金属のなかでは、融点が低いというのがガリウムの最も知られている特徴です。固体状態では反磁性ですが、液体状態では常磁性となり、40℃における磁化率は2.4×10−6です。

ガリウムの構造

ガリウムは他の金属と異なり、単純な結晶構造のいずれにおいても結晶化しません。常圧状態での安定相としては異なる条件下で形成されるα、β、γ、δ-ガリウムがあり、高圧状態において形成されるものとしては、 Ga-II、Ga-III、Ga-IV が存在します。

1. α-ガリウムの構造

α-ガリウムは、通常の状態下で存在するガリウムの多形で、単位格子に8つの原子が存在する斜方晶系の構造です。最も近い原子同士の距離は244pmで、6つの隣接する原子とはさらに39pm離れています。この不安定な対称性の低い構造が、ガリウムの融点の低さの原因となっていると考えられています。

2. その他の多形

他の結晶形のガリウムは、過冷却状態の液体ガリウムからの結晶化によって得ることができます。−16.3℃以上でガリウム原子がジグザグに並列した構造の単斜晶系β-ガリウムが形成され、−19.4℃以上では12個のガリウム原子が歪んだ形で配列した、α-ホウ素と同様の結晶構造の三方晶系δ-ガリウムが形成されます。−35.6℃では、7個のガリウム原子が環状に配列し、その中央に直鎖型に配列した原子が相互に接続したような構造の斜方晶系γ-ガリウムが形成されます。

ガリウムのその他情報

1. ガリウムの製法

ガリウムは、他の金属の鉱石の処理中の副産物としてのみ生産され、その主な原料は、アルミニウムの主要な鉱石であるボーキサイトですが、硫化亜鉛鉱石からも抽出できます。バイヤー法ではボーキサイトからアルミナへの処理中に、ガリウムは水酸化ナトリウム液に蓄積するため、イオン交換樹脂の使用後、電気分解によりガリウム金属が得ることができます。半導体用には、ゾーンメルト法や溶融物からの単結晶抽出によりさらに精製され、99.9999%といった非常に高い純度が日常的に達成され、市販されています。

2. 法規情報

ガリウムは、毒物及び劇物取締法、消防法、化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) など、主要な法規制のいずれにも該当していません。

3. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 容器を密栓し、乾燥した冷暗所に保管する。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • 酸、アルカリ、酸化剤、ハロゲンとの混合は避ける。
  • 金属、特にアルミニウムを腐食するため、接触の恐れのある部材に使用しない。
  • 使用時は保護手袋、保護眼鏡を着用する。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。
  • 皮膚に付着した場合は、速やかに水で洗い流す。
  • 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗う。

参考文献
http://www.furuchi.co.jp/info/MSDS_pdf/Ga_5A.pdf

カプロラクタム

カプロラクタムとは

カプロラクタムの基本情報

図1. カプロラクタムの基本情報

カプロラクタムとは、ε-カプロラクタム (英: ε-カプロラクタム) の略称であり、ラクタムの一つです。

ラクタムとは環状アミドのことです。化学物質審査規制法 (化審法) でカプロラクタムは、優先評価化学物質に分類され、労働安全衛生法法、食品衛生法でも規制されています。そのほか、化学物質排出把握管理促進法 (化管法) で第1種指定化学物質、大気汚染防止法で有害大気汚染物質、海洋汚染防止法で有害液体物質Z類に分類されています。

カプロラクタムの使用用途

カプロラクタムの開環重合

図2. カプロラクタムの開環重合

カプロラクタムを開環重合させて、繊維としたものがナイロン6です。そのため、合成樹脂・合成繊維の一つであるナイロン6の原料として、非常に大きな需要があります。

ナイロン6は、世界需要の約6割が繊維用途、約4割が樹脂用途です。繊維としての主な用途は、衣料、タイヤコード、カーペットがあります。樹脂用途としては、エンジニアリングプラスチック、フィルムがあります。

またカプロラクタムは、他のモノマーとの共重合によって共ポリアミド (アミドコポリマー) を合成する原料としても用いることが可能です。

カプロラクタムの性質

カプロラクタムは、白色の葉状結晶です。吸湿性・潮解性があります。水、エーテル、エタノールベンゼンクロロホルム、ジメチルホルムアミドのような各種溶剤に可溶です。

加熱や燃焼によって分解し、窒素酸化物やアンモニアを生じます。強酸化剤と激しく反応し、加水分解によりε-アミノカプロン酸になります。融点は69℃、沸点は267℃であり、引火点は125°Cです。

カプロラクタムの構造

カプロラクタムの別称として、6-ヘキサンラクタム、6-ヘキサノラクタム、ε-アミノカプロン酸ラクタム、6-アミノカプロン酸ラクタム、6-アミノヘキサン酸ラクタム、シクロヘキサノンイソオキシム、2-オキソヘキサメチレンイミン、2-ケトヘキサメチレンイミンがあります。

カプロラクタムは、ε-アミノカプロン酸が閉環した構造を取っています。分子式はC6H11NO、分子量は113.16g/molで、密度は1.01g/cm3です。

カプロラクタムのその他情報

1. カプロラクタムの合成法

カプロラクタムの合成

図3. カプロラクタムの合成

カプロラクタムの種々の合成法が開発されています。一般的な製法は、ベンゼン、フェノールトルエンのいずれかからシクロヘキサノンオキシムを生成し、濃硫酸と加熱する方法です。シクロヘキサノンオキシムからカプロラクタムが生成する反応は、ベックマン転位と呼ばれています。

発煙硫酸を使用したベックマン転位では、反応に用いた硫酸をアンモニアで中和します。1トンのカプロラクタムに対して、副生される硫酸アンモニウムの量はおよそ1.7トンです。

2. ベックマン転位によるカプロラクタムの合成

発煙硫酸を使わないベックマン転位 (英: Beckmann rearrangement) として、ハイシリカMFIゼオライト触媒による気相ベックマン転位が開発されています。硫酸アンモニウムを副生しない触媒的な合成法です。ちなみにハイシリカゼオライトは、アルミナをほとんど含んでおらず、酸点を持っていません。その一方で、アルミナを多く含んだゼオライトは、あまり気相ベックマン転位には有効ではありません。

塩化シアヌル触媒を使用したベックマン転移も、発煙硫酸を用いない合成方法です。以前は有害な塩化ニトロシルを使用する必要があったため、生成したシクロヘキサノンオキシムが塩酸塩になり、効率が悪いとされていました。

塩化シアヌル触媒によるベックマン転移では、硫酸アンモニウムのような廃棄物がほぼ発生しません。シクロヘキサンからシクロヘキサノンオキシムを経由して、ベックマン転移によるカプロラクタムまで、ワンポットで合成できます。全収率は75%です。

参考文献
http://www.chemicoco.env.go.jp/detail.html
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0102.html

カナリン

カナリンとは

カナリンとは、天然のタンパク質を構成しないα-アミノ酸のひとつです。
化学式はNH2-O-CH2CH2-CH(NH2)-COOHで表されます。
別称としては、L-カナリン、O-アミノ-L-ホモセリン、2-アミノ-4-(アミノオキシ)酪酸があります。

ナタマメをはじめとする豆果に含まれるカナバニンから、アルギナーゼまたはカナバナーゼの作用によって生じます。

カナリンはオルニチンのアナログ(構造類似体)であり、強力な殺虫剤として知られています。これは、体内のケト酸やアルデヒド、とりわけ酵素の補因子として知られるピリドキサールリン酸と結びつくことによるものです。

カナリンの使用用途

上述のとおり、カナリンは強力な殺虫剤として使用されています。体内のケト酸やアルデヒド、特に酵素の補因子であるピリドキサールリン酸と結びつくことにより、アミノ基転移、一部の脱炭酸および脱アミノ反応といった重要な生体反応が機能しなくなるという仕組みです。

そのほか、工業的な用途はかなり限定的です。例えば、毛髪補修効果のあるアミノ酸系シャンプーやトリートメントといったアミノ酸系の化粧品に使用されることがあります。

カダベリン

カダベリンとは

カダベリン (英: Cadaverine) とは、タンパク質の腐敗によって生じるプトマインと呼ばれる有毒性物質を構成する成分の1つであり、ジアミンの1種です。

IUPAC名は、ペンタン-1,5-ジアミン (英: Pentane-1,5-diamine) です。別名として、1,5-ジアミノペンタン (英: 1,5-Diaminopentane) や1,5-ペンタジアミン (英: 1,5-Diaminopentane) 、ペンタメチレンジアミン (英: Pentamethylenediamine) とも呼ばれます。

カダベリンという名称は、「死体のような (英: cadaverous) 」という英単語に由来します。カダベリンは腐敗臭の元となる化合物ですが、腐敗そのものには関与していません。また、精液の特有のにおいをなす成分の1つであり、口臭の原因物質としても知られています。

カダベリンの使用用途

1. 生体内物質

カダベリンは、生体内で様々な働きをします。生理作用は他のポリアミンに類似していると考えられており、カダベリンは細胞分裂に必須な増殖因子です。また、RNAを含む核酸やタンパク質の合成を促進する作用があるとされ、新陳代謝を活発にする効果や老化を防ぐ効果、動脈硬化を予防する効果があります。

また、腐敗によって生じるカダベリンやヒスタミンを含む不揮発性アミン類は、ヒスタミン食中毒の原因物質です。体内でヒスタミンの解毒酵素の働きを阻害したり、ヒスタミンの腸管吸収を促進したりする作用があるため、ヒスタミンの作用を増強させます。

リジン代謝異常のある患者の尿からは、カダベリン濃度が上昇していることが確認されています。さらに、カダベリンは細菌性膣炎における悪臭の原因物質の1つです。

2. 高分子材料原料

工業用途として、ナイロンなどのポリアミド合成におけるモノマーに使用されます。

カダベリンの性質

化学式はC5H14N2で表され、分子量は102.18です。CAS番号は462-94-2で登録されています。カダベリンは融点9°C、沸点は179°C、引火点は62℃で、常温で密度0.873 g/ml (25℃) の特異臭を持つ無色透明の液体です。

水やエタノールに溶け、ジエチルエーテルにも若干溶けます。水溶液は強塩基性で、酸解離定数 (pKa) は10.25と9.15です。酸解離定数とは、酸の強さを定量的に表すための指標の1つです。pKa が小さいほど強い酸であることを示します。

カダベリンの塩酸塩 (カダベリン二塩酸塩) を乾留すると容易に閉環し、ピペリジン (ヘキサヒドロピリジン) を生じます。

カダベリンのその他情報

1. カダベリンの製造法

カダベリンは、リシンの脱炭酸によって生成できます。また、1,5-ジクロロペンタンやグルタルジニトリル、またはグルタルアルデヒドを出発原料として用いても合成可能です。

天然では、リシンデカルボキシラーゼの作用によりアミノ酸の1つであるリシンが脱炭酸することによって生じます。また、リシンの乾留やリシンデカルボキシラーゼによる発酵でも得られます。

2. 法規情報

カダベリンは、以下の国内法令に指定されています。

  • 消防法
    危険物第四類 第二石油類 危険等級Ⅲ
  • 労働安全衛生法
    危険物・引火性の物 (施行令別表第1第4号)
  • 危険物船舶運送及び貯蔵規則
    腐食性物質 (危規則第3条危険物告示別表第1)
  • 航空法
    腐食性物質 (施行規則第194条危険物告示別表第1)

3. 取り扱い及び保管上の注意

取り扱い時の対策
強酸化剤は、カダベリンの混触危険物質です。取り扱い時および保管時に接触させないよう気を付けます。また、カダベリンは可燃性液体なので、高温や直射日光、熱、炎、火花、静電気、スパークを避けてください。

取り扱う際は、適切な保護具を着用し、飛沫などが皮膚に付着しないよう気を付けます。局所排気装置内で取り扱い、使用後は手や顔などを洗います。

火災の場合
燃焼による分解で、窒素酸化物や一酸化炭素、二酸化炭素が生成する可能性があります。消火には、水スプレー (水噴霧) や二酸化炭素 (CO2) 、泡、粉末消火剤、砂を用いてください。消火活動を行う際は、個人用保護具を着用します。

保管する場合
カダベリンは、光によって変質する恐れがあります。遮光性のガラス容器に密閉し、よく換気された冷所に保管してください。保管場所は施錠します。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0235-4496JGHEJP.pdf
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Cadaverine

オリビン

オリビンとは

オリビンとは、玄武岩などの塩基性岩や超塩基性岩をなす重要な造岩鉱物のひとつであるカンラン石(橄欖石)をさします。透明でガラス光沢をもつ、黄緑~暗緑色のケイ酸塩鉱物です。

カンラン石には、マグネシウム、鉄、マンガン、ニッケルを主成分とする4種の端成分が知られています。それぞれ、苦土(くど)カンラン石、鉄カンラン石、テフロ石またはマンガンカンラン石、リーベンベルグ石またはニッケルカンラン石とよびます。単にオリビン、カンラン石と呼ぶ場合、一般に苦土カンラン石と鉄カンラン石の固溶体をさします。天然にはマグネシウムに富む苦土カンラン石が圧倒的に多く、大部分のカンラン石の化学組成は、苦土カンラン石成分が約70~90%といわれています。

化学式は、一般にM2SiO4(M = Mg, Fe, Mn, Ni, Ca, Ti, …)で表されます。カンラン石の結晶構造は斜方晶系であり、ケイ素Siイオンを中心として4酸素原子がつくる四面体を基本とし、マグネシウムや鉄といった、6酸素原子の正八面体に近い原子団をなす金属元素からなります。

この鉱物は、オリーブのような独特の緑色であることから「オリビン」と名付けられました。しかし、オリーブは別種の植物である「橄欖」と誤訳されたため、それにしたがい鉱物名も「橄欖石」と誤訳が引き継がれたという経緯があります。
とくに透明で美しい結晶は、ペリドットと呼ばれ、古来宝石として珍重されました。

オリビンの使用用途

先述の通り、オリビンは地殻における造岩鉱物のひとつとして、重要な役割を担っています。また、外観の優れたものは宝石としての用途があります。

工業的な用途としては、カンラン岩を粉砕・篩分したオリビンサンドが、鉄鋼や肥料といった工業資材として活用されています。さらに、重量コンクリート骨材として、湾岸工事用石材としても使用されています。これらの用途は、安定かつ硬質で耐火性に富み、比重が他の岩石に比べて非常に重いというカンラン石の特性を活かしたものとなっています。

オクチルアミン

オクチルアミンとは

オクチルアミン (英: Octylamine) とは、リンゴに含まれる炭素数8の飽和脂肪族アミンです。

IUPAC名は、オクタン-1-アミン (英: Octan-1-amine) です。別名として、1-オクタンアミン (英: 1-Octanamine) や1-アミノオクタン (英: 1-Aminooctan) 、カプリルアミン (英: Caprylamin) 、N-オクチルアミン (英: N-Octylamin) 、カプリリルアミン (英: Caprylylamine) 、アルミーン8 (英: Armeen 8) 、アルミーン8D (英: Armeen 8D) などがあります。

オクチルアミンの使用用途

1-オクチルアミンの使用用途は、以下の通りです。

  • 道路用アスファルト乳化剤
  • ゴム離型剤
  • グリース用増稠剤
  • 浮遊選鉱剤
  • 衣料柔軟剤 (陽イオン性界面活性剤)
  • 両性界面活性剤原料
  • 防錆・防食剤
  • 肥料固結防止剤
  • 加硫促進剤
  • 印刷インキ
  • トナー

また、抗菌・殺生物剤であるオクテニジンや、N-オクチルピロリドンなどの中間体としても使用されます。広義のオクチルアミンとして、ジオクチルアミンは帯電防止剤、トリオクチルアミンは溶剤抽出剤や水処理剤、溶剤抽出剤、金属元素に対する陰イオン交換体などに使われています。

オクチルアミンの性質

オクチルアミンの化学式はC8H19Nで表され、分子量は129,25です。CAS番号は111-86-4で登録されています。

融点・凝固点は-0.1℃、沸点は180℃で、常温で密度0.783g/cm3、無色〜薄黄色のアンモニア様の特異臭を持つ液体です。エタノールジエチルエーテルアセトンへは極めて溶けやすく、四塩化炭素にも可溶です。水へは200mg/Lとあまり溶けません。

酸性・アルカリ性の程度を表すpHは25℃の100g/L水溶液において11.8、酸解離定数 (pKa) は10.65 (25°C) です。酸解離定数とは、酸の強さを定量的に表すための指標の1つです。pKa が小さいほど強い酸であることを示します。

オクチルアミンの種類

オクチルアミンは、狭義には1-オクチルアミンを指し、広義にはジオクチルアミンおよびトリオクチルアミンを含みます。

1. ジオクチルアミン

ジオクチルアミンの化学式はC16H35Nで表され、分子量は241.46です。CAS番号は1120-48-5で登録されています。融点は13〜16℃、沸点は297〜298℃で、常温で密度0.799g/cm3、無色透明〜薄黄色の液体です。

2. トリオクチルアミン

トリオクチルアミンの化学式はC24H51Nで表され、分子量は353.67です。CAS番号は1116-76-3で登録されています。融点は34℃、沸点は365〜367℃で、常温で密度0.809g/cm3、白色の低融点結晶です。

オクチルアミンのその他情報

1. オクチルアミンの製造法

1,3-ブタジエンアンモニアを反応させてオクタンジエニルアミンを得た後、水素化することで得られます。

2. 法規情報

オクチルアミンは、以下の国内法令に指定されています。

  • 消防法
    危険物第四類 第二石油類 危険等級Ⅲ
  • 労働安全衛生法
    危険物・引火性の物 (施行令別表第1第4号)
  • 労働安全衛生法 (令和6年の施行)
    名称等を表示すべき危険物及び有害物 (法57条、施行令第18条) 、名称等を通知すべき危険物及び有害物 (法第57条の2、施行令第18条の2別表第9)
  • 化審法
    優先評価化学物質 (法第2条第5項)
  • 危険物船舶運送及び貯蔵規則
    毒物類・毒物 (危規則第3条危険物告示別表第1)
  • 航空法
    毒物類・毒物 (施行規則第194条危険物告示別表第1)
  • 化学物質排出把握管理促進法
    第1種指定化学物質 (法第2条第2項、施行令第1条別表第1)、第1種-管理番号:576

3. 取り扱い及び保管上の注意

取り扱い時の対策
強酸化剤は混触危険物質です。取り扱い時や保管時には、接触させないでください。液体および蒸気は引火性があります。引火点は58℃です。高温と直射日光、熱、炎、火花、静電気、スパークなどの着火源からは、遠ざけて取り扱い、および保存してください。

取り扱う際は、保護手袋と保護眼鏡、保護衣、必要に応じて、粉塵マスクや保護面を着用します。使用後は、皮膚が露出していた個所をよく洗ってください。

火災の場合
熱分解で、一酸化炭素 (CO) 、二酸化炭素 (CO2) 、窒素酸化物 (NOx) など刺激性で有毒なガスと蒸気を放出するおそれがあります。二酸化炭素 (CO2) 、泡、粉末消火剤、砂を使用して消火してください。棒状放水は行わないでください。消火にあたる場合は、手袋や眼鏡、マスクなど適切な保護具を着用します。

保管する場合
オクチルアミンは、光によって変質する可能性があります。遮光したガラス製の容器に密閉し、換気が良く、なるべく涼しい場所に保管してください。保管場所は必ず施錠します。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/111-86-4.html
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0115-0017JGHEJP.pdf
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Octylamine

オクタノール

オクタノールとは

1-オクタノールの基本情報

図1. 1-オクタノールの基本情報

オクタノールとは、化学式がC8H17OHで表される、炭素数8の脂肪族飽和アルコールの総称です。

89種類の異性体が存在しますが、狭義には直鎖上の1-オクタノール (n-オクタノール) を指します。

1-オクタノールは、化学物質審査規制法(化審法)で優先評価化学物質に分類されています。化学物質排出把握管理促進法(化管法)で第1種指定化学物質に、大気汚染防止法で有害大気汚染物質に、環境基本法で水質要調査項目に、海洋汚染防止法で有害液体物質Y類に分類されているほか、食品衛生法や消防法でも規制対象です。

オクタノールの使用用途

1-オクタノールは、香料原料、界面活性剤原料、合成樹脂可塑剤原料、化粧品溶剤、食品添加物などに使用されます。ローズ系香料、 潤滑油、安定剤、印刷インキ溶剤、酢酸オクチルのようなエステル原料にも利用可能です。

液体クロマトグラフィーや薬学などの分野では、疎水性と親水性の指標として、水-オクタノール系の分配係数 (Log P) が使われます。

オクタノールの性質

1-オクタノールの示性式はCH3(CH2)6CH2OHで表されます。融点は-16°Cで、沸点は195°Cです。バラのような香りを有し、粘性の高い無色の液体で、水には溶けません。

オクタノールの構造

1-オクタノールのモル質量は130.23g/molで、密度は0.824g/cm3です。別称として、n-オクタノール、オクタン-1-オール、n-カプリルアルコール、n-オクチルアルコール、オクチリン、シポールL8、アルホール8などがあります。

オクタノールのその他情報

1. 1-オクタノールの合成法

工業的に1-オクタノールは、トリエチルアルミニウムを使用してエチレンをオリゴマー化し、アルキルアルミニウム生成物の酸化によって合成可能です。チーグラー法 (英: Ziegler process) と呼ばれ、さまざまなアルコールが生成します。

パラジウム錯体を触媒に用いると、1,3-ブタジエンに1分子の水が付加して二量化します。得られた二重不飽和アルコールを水素化すると、1-オクタノールを生成可能です。

2. 2-オクタノールの特徴

2-オクタノールの基本情報

図2. 2-オクタノールの基本情報

1-オクタノールの構造異性体である2-オクタノールは、光学異性体を有します。化学式はCH3(CH2)5CH(OH)CH3で表されます。20°Cでの密度は0.8207g/cm3であり、融点は−38°Cで、沸点は178.5°Cです。

2-オクタノールは水に難溶で、エタノールジエチルエーテルには可溶です。別称には、オクタン‐2‐オール、sec‐カプリルアルコール、sec-オクチルアルコール、イソオクタノール、イソオクチルアルコール、ヘキシルメチルカルビノールなどがあります。

2-オクタノールは、消泡剤、溶剤、香料、可塑剤原料、ブレーキ油基油などに用いられます。

3. イソオクタノールの特徴

2-エチル-1-ヘキサノールの基本情報

図3. 2-エチル-1-ヘキサノールの基本情報

化学式がRCH2OHで表される分枝脂肪族アルコールの混合物のことを、イソオクタノールやイソオクチルアルコールと呼びます。Rは分枝ヘプチル基 (C7H15) です。

工業的用途では2-エチル-1-ヘキサノールを、単にオクタノールと呼ぶ場合もあります。2-エチル-1-ヘキサノールは無色の液体です。密度は0.833g/cm3であり、融点は-76°Cで、沸点は183〜185°Cです。プロピレンのヒドロホルミル化によってブチルアルデヒドが生成し、ブチルアルデヒドのアルドール反応後に水素化すると、2-エチル-1-ヘキサノールを合成可能です。

2-エチル-1-ヘキサノールとフタル酸のエステルは、ポリ塩化ビニルなどの高分子物質の可塑剤として知られています。そのほか、工業用可塑剤、塗料、合成潤滑油などの原料に使用可能です。 

参考文献
http://www.chemicoco.env.go.jp/detail.html
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/111-87-5.html
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/957

オクタナール

オクタナールとは

オクタナール (英: Octanal) とは、鎖状の有機化合物であり、アルデヒドの1種です。

化学式は、CH3(CH2)6CHOまたはC7H15CHOで表されます。モル質量は128.21204g/mol、密度は0.821g/ml、融点は-23℃、沸点は171℃、CAS登録番号は124-13-0です。

分岐鎖をもつ異性体と区別するために、直鎖のオクタナールをn-オクタナール (ノルマル-オクタナール) と表記することもあります。 別称は、オクタルデヒド、オクトアルデヒド、オクタンアルデヒド、オクチルアルデヒド、カプリルアルデヒド、1-オクタノンなどです。

オクタナールの使用用途

1. 香料

オクタナールは、レモン油・オレンジ油などの香料の調合などが主な使用用途です。そのほかにも、ジャスミン・バラといった調合香料、塗料やワニスの原料としても使用用途があります。さらに、一部のアルコール飲料などに含まれている場合もあります。

また、アルデヒド基の部分がアセタール化された物質も独特のにおいをもっており、香料として市販されているように、オクタナールの誘導体も使用されていることが特徴です。

基本的には、本物質が有する独特の果実臭を利用した用途であるといえます。

2. 合成原料

オクタナールは比較長いアルキル鎖を持つアルデヒドであるため、さまざまな天然物の合成原料です。長鎖アルデヒドの構造を持つ天然物は海藻類などの生体内に含まれています。

特にオクタナールは、(−)-ジヒドロスポロトリオリド、(+)-テトラヒドロピレノホロール、および(+)-アワジャノマイシンの全合成に不可欠な前駆物質です。エリスリトールおよびペンタエリスリトールに基づくヒドロトロープの合成にも使用できます。

オクタナールの性質

常温常圧では無色~単黄色の可燃性の液体であり、少量では柑橘系を連想させる果実臭がしますが、多量の場合はカメムシを連想させるような悪臭に変化します。また、この物質はレモングラス油中に存在しています。

メタノールやジエチルエーテル、アセトンなど各種有機溶媒に溶けやすいですが、水には非常に溶けにくいです。1-ヘプテンの二重結合に水素および一酸化炭素を作用させる方法 (ヒドロホルミル化) 、または1-オクタノールのヒドロキシル基の酸化によって得られます。

オクタナールのその他情報

1. 危険性

注意点としては、人体に対する刺激性があり、眼や皮膚、呼吸器への刺激があります。また、沸点が171℃であるのに対して、引火点は51℃とかなり低いため、引火性は非常に高いです。

消防法に定める第4類危険物 第2石油類にも該当し、取扱いに注意が必要です。具体的な指定は、以下のようになっています。

労働安全衛生法 危険物・引火性の物 (施行令別表第1第4号)
消防法 第4類引火性液体、第三石油類非水溶性液体 (法第2条第7項危険物別表第1)
船舶安全法 引火性液体類 (危規則第3条危険物告示別表第1)
航空法 引火性液体 (施行規則第194条危険物告示別表第1)

2. 安全対策

オクタナールを扱う際には、安全対策に注意する必要があります。まず、「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の局所排気、全体換気を行うことが必要です。

さらに、熱、火花、裸火、高温のもののような着火源から遠ざけ、禁煙を行わなければなりません。また、容器を密閉しておき、容器を接地してアースをとることが重要です。

火花を発生させない工具を使用し、静電気放電に対する予防措置を講ずることも不可欠となります。そのほか、取り扱う際にはゴム手袋および保護メガネ、白衣を適切に着用することで皮膚や目への刺激を防ぐことができます。

参考文献

https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/124-13-0.html

オキセチン

オキセチンとは

日本語でオキセチンと表記するものには、以下の2種類があります。

  1. ①オキセチン(oxetin)とは、分子式でC4H7NO3で表される、四員環化合物のひとつです。体系名は、3β-アミノ-2β-キセタンカルボン酸、(2R,3S)-3-アミノ-2-オキセタンカルボン酸です。

    本物質は、細菌から単離されたβ-アミノ酸であり、四員環であるオキセタン環に、アミノ基とカルボキシル基を付加した構造を持ちます。

  2. オキセチン(Oxetine)とは、ファーマランド社の抗うつ薬のひとつです。イーライリリー・アンド・カンパニー社が開発した選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であるプロザックの、ジェネリック医薬品(後発医薬品)です。本製品は、塩酸フルオキセチン(フルオキセチン塩酸塩)を主成分としています。

オキセチンの使用用途

  1. オキセチン (oxetin) は、ストレプトマイセス属の細菌から単離された β-アミノ酸であり、抗生物質としての作用を持つことで知られています。そのほか、オキセタン環を有する化合物には、抗ウイルス剤や血小板凝集に関わる物質、抗がん剤といった、生化学的に特徴のあるものが多くみられます。
  2. オキセチン(Oxetine)は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)という、新しい世代の抗うつ薬です。セロトニンの再取り込みを阻害し、脳内のセロトニン濃度を高めます。

従来のうつ病治療薬よりも副作用が少なく、メリットが多いのが特徴です。
効き目が穏やかなので、軽度から中程度のうつ症状の方にも高い効果を発揮し、気分の落ち込み改善や意欲を高めます。

また、従来の抗うつ剤によくある、眠気、不整脈、口の乾き、便秘などの副作用が軽減しています。時間を掛けて効果が現れるので、依存性が出にくく長期間服用でも安全な抗うつ薬です。