キシロールとは
キシロール (英: Xylol) とは、芳香のある無色透明の油状液体です。
化学式はC6H4(CH3)2、分子量は106.17です。キシレン (英: Xylene)、ジメチルベンゼンとも呼ばれ、英米ではザイリンと発音されます。
オルト・メタ・パラの3種の異性体があり、CAS登録番号はそれぞれ95-47-6、108-38-3、106-42-3です。
キシロールの使用用途
工業用キシロールは90%がオルト、パラ体への異性化への原料として使われ、そのほかは塗料、溶剤に用いられています。3種類の異性体ごとに明確に分離して使用します。
- オルト体
プラスチックの可塑剤や顔料 - メタ体
可塑剤やポリエステル樹脂の原料であるイソフタル酸の原料 (プラスチック材料) - パラ体
テレフタル酸、テレフタル酸ジメチルというプラスチックや衣服の繊維に利用される物質の原料 (テフロン等)
特にオルトおよびパラ体は需要があります。そのため、メタ体はオルトやパラに変化させて使用することが多いです。
一般的な混合キシロールは3種のキシロールとエチルベンゼンから製造され、塗料やシンナーで使用されています。エチルベンゼンは特定化学物質障害予防規則、女性労働規則にも該当するので使用時の注意が重要です。厚生労働省の室内濃度指針値は0.20ppm以下です。
キシロールの性質
キシロールの融点は、オルト、メタ、パラ体それぞれ-25℃、-48℃、13℃で、沸点はそれぞれ144℃、139℃、138℃です。キシロールの構造はベンゼンの水素二つをメチル基で置換したもので、有毒で引火性があります。
水にほとんど溶けず、エーテル、エチルアルコールなどに溶け、またキシロール自身も溶解力の大きい優れた溶媒です。有機溶剤・合成樹脂などの原料として使用します。
キシロールのその他情報
1. キシロールの製造法
キシロールは、トルエンとベンゼンのメチル化によって生成されます。製造された商用または実験室グレードのキシロールには、通常、約40〜65%のo-キシロールと、m-キシロール、p-キシロール、エチルベンゼンがそれぞれ最大20%含まれています。
異性体の比率は、キシロール自体またはトリメチルベンゼンとのトランスアルキル化によって、高価値のp-キシロールを優先するようにシフトすることが可能です。
2. キシロールの反応
キシロールでは、メチル基が関与する反応と環C-H結合を含む反応があります。ベンジル位でもあるメチル基のC–H結合は、対応するキシロールジクロリドへのハロゲン化を含むフリーラジカル反応が進行しやすく、モノ臭素化は催涙ガス剤である臭化キシリルを生成します。
酸化とアンモ酸化もメチル基を標的とし、ジカルボン酸とジニトリルを生成します。求電子剤はキシロールの芳香環を攻撃し、クロロキシロールとニトロキシロールを与えます。
3. 法規情報
キシロールは、労働安全衛生法において「名称等を表示・通知すべき危険有害物」「危険物・引火性の物」「第2種有機溶剤等」に該当し、労働基準法では「疾病化学物質」に指定されています。化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) では「第1種指定化学物質」、毒物及び劇物取締法では「劇物」に、消防法では「危険物第4類 引火性液体、第二石油類非水溶性液体」に指定されており、使用の際には注意が必要です。
4. 取扱いおよび保管上の注意
取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。
- 容器を密閉し、涼しく乾燥し換気の良い場所に保管する。
- 熱・火花・火炎など着火源から遠ざける。
- 火災及び爆発の危険があるため、強酸化剤との接触を避ける。
- 加熱分解により、一酸化炭素、二酸化炭素を発生するので注意する。
- 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
- ヒューム、蒸気、スプレーを吸入しない。
- 使用時は保護手袋、保護眼鏡、保護衣、保護面を着用する。
- 使用後は適切に手袋を脱ぎ、本製品の皮膚への付着を避ける。
- 取扱い後はよく手を洗浄する。
参考文献
https://www.naitoh.co.jp/msds/msds-022101.html
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0016.html