酸化鉄

酸化鉄とは

酸化鉄とは、鉄と酸素が化学反応してできる化合物であり、自然界に広く存在する重要な物質です。

酸化数に応じて、酸化鉄(II) (FeO) や酸化鉄(III) (Fe2O3) など組成が異なるものが知られています。いずれも鉄の酸化物であり、水酸化鉄と並んで錆を構成する成分です。

酸化鉄の使用用途

酸化鉄は、その性質や特徴から、さまざまな分野で使用されています。

1. 鉄

酸化鉄は、主に赤鉄鉱や磁鉄鉱などの形で採掘されます。これらの酸化鉄を高温で還元して、金属の鉄を製造できます。金属の鉄は、建築や工業などに欠かせない素材です。

2. 磁性材料

酸化鉄は磁気を持つものがあります。これらの磁性のある酸化鉄は、磁性材料として利用されています。磁性材料は、コンパスやスピーカーやモーターなどに用いられています。特に、磁気テープや磁気ディスクなどの記録媒体としては、広く使用されてきたものです。

3. 顔料

酸化鉄は、赤や黒や黄色などの色を持っています。これらの色は顔料や染料として利用されています。顔料や染料は、絵画や印刷や染物などに用いられています。特に、赤色の顔料や染料としては、古くから使用されてきたものです。

4. 化粧品・医薬品

酸化鉄は、医薬品や化粧品としても利用されています。医薬品としては貧血の治療に用いられるものがあり、化粧品としては口紅やチークなどに用いられているものがあります。

5. 医療

医療分野では、核磁気共鳴画像法のコントラスト造影剤として使用されます。

酸化鉄の性質

酸化鉄はさまざまな性質を持つ物質で、その特徴的な性質を以下に示します。酸化数の違いによって、性質は少し異なります。例えば酸化鉄(II) は、酸化鉄(III) よりも比重が大きく、融点や沸点も高くなります。

1. 色

酸化鉄の異なる形態によって、赤色、黄色、黒色など、さまざまな色の物質が得られます。これは、酸化鉄が顔料として使用される主な理由の1つです。

2. 磁性

磁性酸化鉄は強い磁性を持ち、電子機器や磁石の材料として重要です。この磁性は、特定の磁場を生成するのに役立ちます。

3. 化学的安定性

酸化鉄 (III) と酸化鉄 (II、III) は化学的に安定しており、酸や塩基に対して比較的耐性があります。この特性は、さまざまな環境での使用に適しています。

酸化鉄の種類

酸化鉄は、酸化数によって以下の3種類に分けられます。

1. 酸化鉄(II) (FeO)

酸化第一鉄とも呼ばれます。鉄と酸素が1対1で結合した化合物です。空気中で容易に酸化されます。融点が1,370℃で、比重が 5.7です。

酸に溶けますが、水、アルカリには溶けません。エナメルの製造、触媒、熱線吸収ガラスなどに使用されます。

2. 酸化鉄(III) (Fe2O3)

酸化第二鉄とも呼ばれます。鉄と酸素が2対3で結合した化合物です。融点 が1,550℃で、比重が約 5.1です。赤鉄鉱として広く産出し、赤色土壌の色をしています。

工業的にはベンガラという名で、顔料やガラス、貴金属、ダイヤモンドの研磨材として用いられています。一般的には、磁気テープまたはマグネットの原料になります。また、高純度の物は半導体に使用される場合が多いです。

3. 酸化鉄(II,III) (Fe3O4)

磁鉄鉱とも呼ばれます。鉄と酸素が1対2.66で結合した化合物です。自発磁化をもっており、融点が 1,538℃で、比重が5.16です。顔料、インキなどに用いられます。

酸化鉄のその他情報

酸化鉄(III)の製造方法

鉄板の酸洗浄廃液や酸化チタンの製造副生物として得られる硫酸鉄 (FeSO4) から、酸化鉄 (III) は以下の反応式で生産されます。初めに400℃で結晶水6分子を除いた後、焼成炉に入れて800℃前後で加熱分解します。

未反応の硫酸鉄を水洗により除去し、残った酸化鉄の微粒子を沪別し、乾燥します。

   FeSO4・7H2O → FeSO4・H2O + 6H2O
   2FeSO4・H2O → Fe2O3 + SO2 + SO3 + 2H2O

酸化マグネシウム

酸化マグネシウムとは

酸化マグネシウム (英: magnesium oxide) とは、典型的なアルカリ土類金属の酸化物です。

化学式はMgOで表されます。モル質量は40.3g/mol、密度は3.65g/cm3、CAS番号は1309-48-4です。

酸化マグネシウムの使用用途

1. 薬品

酸化マグネシウムは伝統的に、胃腸薬および便秘薬として利用されてきました。酸化マグネシウムは酸性の液体に溶けて中和させるという性質を持つので、胃酸の過剰分泌が引き起こす胃炎や胃潰瘍に対して、制酸剤として働いて症状を抑えます。

他の制酸剤として炭酸水素ナトリウムなどが挙げられますが、酸化マグネシウムは水に溶けないため遅効性の薬品です。腸内で二酸化炭素を放出しないため、刺激性が低い薬品です。

酸化マグネシウムは少量でも非常に有効な薬品であり、臨床試験でも非常に良い結果を残しています。また、胃酸と反応した後には、難吸収性の重炭酸塩もしくは炭酸塩となり、浸透圧維持のため腸壁から水分が内に移動します。その結果、腸管の内容物が水分によって軟化し、便秘薬として働きます。

副作用としては、薬物の多量の摂取による高マグネシウム血症などが見られます。具体的な症状は悪心や嘔吐、口渇、血圧低下、徐脈、筋力低下などです。症状がみられた場合には、すぐに摂取を止める必要があります。また、下痢、腎障害、心機能障害を持つ患者に投与する場合には、慎重に投与しなければなりません。

2. 工業

酸化マグネシウムは、放熱性、絶縁性、耐酸性、高温耐熱性を兼ね備えることから汎用性に優れ、さまざまな製品の原料・材料として使用されている、多種の産業分野で不可欠な物質の1つです。さらに、熱伝導性をもち、軽くて加工がしやすい性質もあるため、さまざまな加工が施されて利用されています。

工業用として、排煙脱硫剤、塗料添加物、セラミック、合成ゴムの加硫助剤や接着剤への配合剤などに利用されてきました。近年では、酸性溶液を中和する性質を利用して排水の浄化剤や土壌改良材としても注目されています。また、耐火性を利用して、火災報知機のケーブルなど緊急時の情報伝達など重要な役割を担っています。湿度にも強いことから、カビが発生しにくいことも利点の1つです。

酸化マグネシウムの性質

酸化マグネシウムはほかのアルカリ土類金属酸化物と同様、水にはほとんど溶けませんが酸に溶けます。塩酸やアンモニウム塩水溶液には溶けて、塩を形成することが特徴の1つです。ただし、1,000℃以上に加熱すると密度が高くなり、酸にも溶けなくなってしまいます。有機溶媒にもほとんど溶けません。

また、空気中に放置すると酸素や水などを吸って反応してしまうという性質があります。そのため、空気中に長時間放置することは好ましくありません。

酸化マグネシウムの構造

常温常圧では吸湿性の白色粉末で、立方体型の結晶構造を取っています。つまり、塩化ナトリウムなどと同じく、1つの原子が6つの原子と接している8面体6配位の構造です。また、特に匂いなどは発しません。

酸化マグネシウムの結晶形は光反射特性をもつため、光学用途でよく使用されます。 その基本的な特性は皮革の処理にも利用されています。

酸化マグネシウムのその他情報

酸化マグネシウムの製造法

酸化マグネシウムの製造方法の1つとして、海水中のマグネシウムイオンを水酸化物として沈殿させ、これを高温下で脱水するという方法があります。他には、金属マグネシウムを燃焼させたり、水酸化マグネシウムを加熱分解させたり、高温でホウ酸塩と酸化マグネシウムを融解したものを徐冷する方法が存在します。

酸化マグネシウムは、加工環境や温度によってそれぞれ異なるマグネシウムが作られるという点が特徴です。具体的には、高温条件では相対的に反応性の低い酸化マグネシウムが作られ、低温条件では硬質の酸化マグネシウムが作られます。

酸化アルミニウム

酸化アルミニウムとは

酸化アルミニウムとは、アルミニウムの酸化物です。

工業的矢鉱物学的には、アルミナと呼ばれています。アルミナにはγ-アルミナや最も安定なα-アルミナなどがあり、これら以外にも数種の中間アルミナがあります。

コランダム (鋼玉) は、天然の酸化アルミニウム鉱石です。ボーキサイトには、酸化アルミニウムが水和物の形で多く含まれています。工業的には主にボーキサイトを原料として、アルミナやアルミニウムが製造されています。

酸化アルミニウムの使用用途

酸化アルミニウムは物理的および化学的に優れ、酸化系のセラミックス素材として幅広い分野で利用されています。融点が高く、耐熱性に優れているのが特徴です。

そのため、耐火れんがや骨材を代表として、さまざまな耐火物の材料に使用可能です。耐食性が高く、化学的に安定しており、耐薬磁器、腐食性液体の配管材などにも利用できます。

ほかにも、機械的強度、精密性、耐摩耗性などが高く、強度と精度が要求される精密機器の部品に広く使われています。さらに、生体への親和性が優れ、医療の分野では人工関節、インプラントの素材として役立ちます。

酸化アルミニウムの性質

酸化アルミニウムの融点は2,072°C、沸点は2,977°Cです。白色の粉末で、水、ジエチルエーテル、エタノールに溶けません。酸やアルカリにも溶けにくく、化学的に安定しています。

酸化アルミニウムの酸素とアルミニウムの結合は強いため、アルミニウムの単体を分離することは難しいです。ただし、ホール・エルー法 (英: Hall–Héroult process) によって、電気分解でアルミニウムを製錬する方法が実用化されています。

酸化アルミニウムの構造

酸化アルミニウムはアルミニウムの両性酸化物であり、化学式がAl2O3と表されます。モル質量は101.96g/molであり、密度は3.95〜4.1g/cm3です。

純粋な酸化アルミニウムはα‐アルミナと呼び、水分を少量含んだものをγ‐アルミナと呼びます。γ‐アルミナの化学式はAl2O3・nH2O (0<n<0.6) です。γ‐アルミナを強熱すると、脱水してα‐アルミナに変わります。

α‐アルミナは三方晶系の結晶構造で、γ-アルミナは立方晶系の結晶構造を持っています。γ-アルミナは高比表面積を有し、触媒として有用です。β‐アルミナの化学式はNa2O・11Al2O3で表されます。

酸化アルミニウムのその他情報

1. 酸化アルミニウム (III) の産出

天然で酸化アルミニウム (III) は、コランダムだけでなく、サファイアやルビーとして産出します。サファイアやルビーは、コランダムの変種です。

金属イオンが微量に混入すると呈色して、宝石として珍重されます。ルビーは、クロムが混入して深赤色を呈します。サファイアは、微量のチタンや鉄などが混入して、赤以外の色になったコランダムです。

2. 酸化アルミニウム (III) の合成法

硫酸アルミニウムなどの塩を、直接1,200〜1,300°Cで熱分解すると、酸化アルミニウム (III) が得られます。

塩化アルミニウムの蒸気に、酸素や水蒸気を1,000°C以上で反応させても、粉末状のアルミナが生じます。

3. 酸化アルミニウム (II) と酸化アルミニウム (I) の特徴

酸化アルミニウムには酸化アルミニウム (III)  (Al2O3) 以外にも、酸化アルミニウム (II) や酸化アルミニウム (I) が存在します。酸化アルミニウム (II) の化学式はAlOで、酸化アルミニウム (I) の化学式はAl2Oで表されます。

アルミニウム処理された手榴弾が高層大気中で爆発したときに、酸化アルミニウム (II) が検出されました。星の吸収スペクトルにも見られます。

真空中で金属ケイ素と酸化アルミニウム (III) を1,800℃に熱すると、酸化アルミニウム (I) を生成可能です。安定に存在できる温度領域は、1,050°C〜1,600°Cです。そのため、通常は気体として存在しています。

酢酸ビニル

酢酸ビニルとは

酢酸ビニルの基本情報

図1. 酢酸ビニルの基本情報

酢酸ビニルとは、ビニルアルコールと酢酸のエステルです。

ビニルアセタート (英: vinyl acetate) とも呼ばれています。無色透明の可燃性液体です。甘い香りやかすかな刺激臭があります。有機合成原料、PVA (ポバール、ポリビニルアルコール) 、塗料などに利用可能です。

酢酸ビニルの製法は1912年に発見されたアセチレン法から始まり、エチレン法、エチリデンジアセタート法と推移しています。なお、酢酸ビニルモノマーの生産拠点は、米国、中国、日本、台湾に集中しています。

酢酸ビニルの使用用途

酢酸ビニルは、主にポリ酢酸ビニルとポリビニルアルコールを製造するために使用されます。これらのポリマーは、さまざまな工業製品やコンシューマー製品で使用可能です。

ポリ酢酸ビニルは、塗料、接着剤、人工芝、義歯安定剤、ガムペースト、ワイヤー、自動車用プラスチック燃料タンク、食品包装容器等に幅広く利用されています。

その一方で、ポリビニルアルコールは、液晶ディスプレイの偏光板原料、繊維加工、紙加工剤、乳化分散剤、セラミックバインダー等に利用可能です。

酢酸ビニルの性質

酢酸ビニルの融点は−100.2°Cで、沸点は72〜73°Cです。光や熱によって容易に重合して、ポリ酢酸ビニルが生成します。そのため、ヒドロキノン (英: hydroquinone) のような重合禁止剤が微量に含まれています。

実験で用いる場合には、重合禁止剤を除去するため、精製が必要です。酢酸ビニルを希酸やアルカリで加水分解すると、酢酸とアセトアルデヒドが生じます。酢酸ビニルは紫外線で分解して、ケトン、アルデヒド、アルコールなどが生成します。

酢酸ビニルは、酢酸とビニルアルコールから構成されるエステルです。分子式はC4H6O2と表されます。分子量は86.09で、比重は0.9312です。

なお、国際がん研究機関によると、酢酸ビニルは「ヒトへの発がん性が疑われる物質」に分類されています。10,000ppmでマウスに食道がんが見られたと報告例があります。ただし、ヒトに対して発がん性が現れる証拠は得られていません。

酢酸ビニルのその他情報

1. 酢酸ビニルの合成法

酢酸ビニルの合成

図2. 酢酸ビニルの合成

工業的に酢酸ビニルは、パラジウム触媒の存在下で、エチレンと酢酸の酸素との反応によって合成されます。この反応はワッカー酸化 (英: Wacker oxidation) と呼ばれています。

酢酸ビニルは金属触媒の存在下で、アセチレン (英: acetylene) に酢酸を付加して製造可能です。1912年に水銀 (II) 触媒を使用して、フリッツ・クラッテ (英: Fritz Klatte) によって合成されました。現在では、触媒に酢酸亜鉛が選択されています。

それ以外にも、エチリデンジアセテート (英: ethylidene diacetate) の熱分解によって、酢酸ビニルが生成します。

2. ポリ酢酸ビニルの合成

ポリ酢酸ビニルの合成

図3. ポリ酢酸ビニルの合成

酢酸ビニルのラジカル重合によって、ポリ酢酸ビニルが得られます。ポリ酢酸ビニルは、無色透明の熱可塑性樹脂です。エチレンと酢酸ビニルをモノマーとして用いることで、エチレン酢酸ビニルコポリマーが合成できます。

エチレンと酢酸ビニルの共重合体であり、酢酸ビニルユニットの接着性と柔軟さを有する合成樹脂です。紙容器類のコーティング材や布・紙ラベルの接着剤を代表として、多種多様な用途があります。それに加えて、ポリ酢酸ビニルの酢酸エステル結合を加水分解して、ポリビニルアルコールが生成します。

ポリビニルアルコールは、親水性が高い合成樹脂です。ビニルアルコール (英: vinyl alcohol) は分子構造が不安定であり、モノマーとして重合ができません。したがって、酢酸ビニルを経由して、ポリビニルアルコールは製造されます。

過酸化水素

過酸化水素とは

過酸化水素とは、化学式 H2O2で表される無色で弱い特有の臭気 (オゾン臭) のある化合物です。

1818年フランス人化学者のテナールにより初めて作られました。過酸化水素は分解産物が水と酸素であり、環境汚染の心配がないことから環境にやさしいクリーンな化学品として注目されています。

過酸化水素の使用用途

過酸化水素は、活性化酸素を含み、漂白、化学反応、殺菌、脱臭等に使用されます。

1. 漂白

特に、紙・パルプなど製紙業界での漂白用途では、環境意識の高まりから塩素ガスを使用しない漂白法として需要が増えています。過酸化水素を用いることで、漂白工程を短縮できたり、品質を維持できたりといった効果もあります。繊維の漂白については、特にセルロース系繊維の漂白に適しています。亜塩素酸ソーダ連続漂白法に代わって過酸化水素を用いる方法が採用されています。

2. 脱臭・腐食防止

下水処理場などで発生する硫化水素を酸化することで脱臭・無害化できます。

3. 土壌改良

土壌の有機汚染物を酸化することで、土壌浄化期間を短縮できます。

4. 表面処理

プリント配線基板のソフトエッチングなどに利用されています。

5. 殺菌

従来、消毒や殺菌にはホルムアルデヒドが用いられていましたが、安全性の観点から過酸化水素に代替されました。食品製造機器や容器の洗浄・殺菌に用いられます。擦り傷などの消毒に使う「オキシドール」の主成分は、希釈した過酸化水素です。

6. 精錬

鉄の不純物を含む銅亜鉛、ニッケルなどの金属塩水溶液に過酸化水素を添加することで、鉄を沈殿として回収でき、金属の精錬に用いることができます。

7. 酸化剤

中性で環境に優しいことから、塩素系酸化剤に代わる酸化剤として利用されています。主な需要としては、エポキシ可塑剤、有機過酸化物、過ホウ酸ソーダ、過炭酸ソーダ、ゴム、亜塩素酸ソーダの製造用薬品が挙げられます。その他には、有機化合物の合成にも用いられます。例えば、以下のようなものがあります。

過酸化水素の性質

分子量は34.02で、常温で無色透明の液体です。90 %水溶液で比重は1.4、融点は-11 ℃、沸点は141 ℃です。70 %水溶液で比重は1.3、融点は-39 ℃、沸点は125 ℃です。アルコール、エーテルにも溶けます。濃度66 %以上では爆発性があるため、取り扱いに注意が必要です。過酸化水素は分解して、水と酸素を生じます。二酸化マンガンを用いることで、分解速度を大きくすることができます。

過酸化水素は、酸性溶液中では非常に強力な酸化剤として振る舞います。また、塩基性溶液中では還元剤としても作用します。過酸化水素の誘導体としては、過酢酸、カロ酸、過硫酸カリウムなどが知られています。

過酸化水素の構造

過酸化水素は分子中に酸素2原子による結合をもちます。酸素2原子の結合では、各酸素原子の非共有電子対が反発しあって、共有電子対の重なりが小さく、結合エネルギーが小さいため、不安定で、分解して酸素を放出しやすいです。このような酸素2原子の結合をもつ化合物を過酸化物と呼びます。

過酸化水素のその他情報

過酸化水素の製造方法

1. 自動酸化法
ケミラ社(フィンランド)が開発したアンスラキノン自動酸化法というものが、現在世界的に主流となっているプロセスです。

2. 直接合成法
触媒の存在下で、水素、酸素を圧力をかけて反応させることで、過酸化水素を得ます。

3. 酸素還元法
水酸化ナトリウムを電気分解し、陰極で酸素ガスを吹き込み、過酸化水素を得ます。

4. 電解法
硫酸水素アンモニウムを電解し、得られた過硫酸アンモニウムから過酸化水素を得ます。

5. アルコール酸化法
イソプロパノールを酸化して、過酸化水素を得ます。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7722-84-1.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jtappij1955/52/5/52_5_608/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/33/12/33_12_987/_pdf

硫酸銀

硫酸銀とは

硫酸銀 (英: Silver(I) sulfate) とは、組成式Ag2SO4で表される1価の銀の硫酸塩です。

CAS登録番号は、10294-26-5です。しばしば、価数を明示して硫酸銀(I)と表記されます。硫酸銀は、毒物及び劇物取締法にて、劇物に指定されています。

不燃性ではありますが、強熱されることによって刺激性または毒性のガスが発生する恐れがあります。理論的には、硫酸銀(II)も存在しますが、現実にはほぼ存在しておらず、基本的には硫酸銀とは硫酸銀(I)のことを指します。

硫酸銀の使用用途

硫酸銀の主な使用用途は、銀メッキ材料、合成試薬 (銀の供給源) や触媒、写真、抗菌材料、染毛剤、着色剤などです。銀メッキは通常シアン化銀を用いて行われますが、毒性の強いシアン化物を使わない銀メッキ法として、硫酸銀が注目されています。また、金属の中で最もアレルギーを起こしにくい物質とされていることもあり、生活用品や医療用品などにも用いられています。

1. 創傷被覆材・染料

抗菌性があることから傷口に貼るための創傷被覆材や抗菌製品に使用されたり、光によって黒変する性質を利用してヘアカラーリング剤に使用されたりしています。

2. 化学分析

硫酸銀の反応触媒としての代表的な使用方法は、ポリスチレンをスルホン化する反応です。また、化学分析において、硫酸銀は化学的酸素要求量 (COD) の分析に用いられる物質です。

硫酸銀は塩素と反応して塩化銀を生成する性質があるため、COD分析時に硫酸銀を添加することによって、測定の妨害要素となる塩素イオンが除去されます。これにより、反応を促進させる触媒効果を得ることが可能です。

硫酸銀の性質

硫酸銀の基本情報

図1. 硫酸銀の基本情報

硫酸銀は、分子量311.799、融点652℃、沸点1,085℃ (分解) であり、常温での外観は白色または無色の、結晶状もしくは結晶性粉末です。密度は5.45g/mLです。硝酸硫酸、アンモニア水には溶けますが、水には溶けにくい性質です (水への溶解度: 0.796g/100mL) 。

結晶は、斜方晶の無色結晶であり、面心立方格子構造となっています。

硫酸銀の種類

硫酸銀は貴金属化成品・工業用化成品や、研究開発用試薬製品として一般的に販売されています。

1. 貴金属化成品

貴金属化成品としては、500g瓶や、5kg袋またはポリエチレン瓶などの単位で販売されています。想定されている主な用途は、試薬、触媒、着色剤、銀めっき用材料です。

2. 研究開発用試薬製品

研究開発用試薬製品は、25g、100g、500gなどの容量の種類が有ります。また、純物質以外に、硫酸溶液として販売されている場合もあります。通常、室温で保管可能な試薬製品です。

硫酸銀のその他情報

1. 硫酸銀の合成

硫酸銀の合成

図2. 硫酸銀の合成

硫酸銀は、銀を熱濃硫酸に溶解させて、水で希釈することにより、結晶沈殿として得られます。この反応における副生成物は二酸化硫黄と水です。

それ以外の方法では、硝酸銀(I)水溶液に、希硫酸もしくは硫酸塩水溶液を加えることによって、結晶が沈殿として生成します。この方法は、水性沈殿法と呼ばれており、商業的製造にも用いられる方法です。硫化銀(I)を空気中、1085℃以下で焼成する方法でも合成が可能です。

2. 硫酸銀の反応性

硫酸銀の溶解

図3. 硫酸銀の溶解

硫酸銀は、光によって分解されると黒色に変化します。ただし、普通に保管したり取り扱う分には安定な物質として位置づけられています。

硫酸あるいは硝酸では硫酸水素塩を生じ、アンモニア水にはアンミン錯体を形成して溶解します。尚、この硫酸との反応は可逆的であり、加水分解によって硫酸水素銀は硫酸銀に戻ります。

3. 硫酸銀の法規制情報

硫酸銀は毒物及び劇物取締法において、劇物として指定されています。取り扱いの際は、法令を遵守して正しく取り扱うことが必要です。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0119-0092JGHEJP.pdf

硫酸鉛

硫酸鉛とは

硫酸鉛とは、化学式PbSO4で表される硫酸イオンと鉛イオンが結合した無機物です。

物質量は303.26g/mol、密度は6.29 g/cm3、密度は1170℃です。常温常圧では、白色の固体の外見をしています。

硫酸鉛の使用用途

1. 鉛蓄電池

硫酸鉛は、鉛蓄電池の電極材料となる正極および負極活物質として用いられています。電極材料となる鉛が比較的安価であることから、コストパフォーマンスの高い蓄電池を製造することができます。正極では二酸化鉛が、負極では鉛が電極として用いられており、どちらでも硫酸が電解液として使用されてきました。

希硫酸は水によりSO₄²⁻とH⁺に電離しており、負極では鉛が酸化されて生じた鉛イオンと硫酸イオンが反応して硫酸鉛PbSO₄を生成します。この硫酸鉛は負極表面に固体になって付着していくため、負極の質量はどんどん増加していきます。また、鉛が酸化されることで発生した電子は、導線を通って正極に送られます。

さらに、電解液中には水素イオンも放出され、水素イオンは自由電子が集まった正極に向かい、電解液中を移動することが電池の原理です。一方、正極板では負極からやって来た自由電子および水素イオンを受け入れて、二酸化鉛と希硫酸とで化学反応を起こします。その結果硫酸鉛と水が生成し、負極板と同じように硫酸鉛は正極板に付着していきます。

また、放電によって両極板の表面に付着した硫酸鉛などを利用して充電反応を起こすことで、放電する前の状態に戻して電池を繰り返し使用できるようにします。充電により正極は酸化され酸化鉛(IV)に、負極は還元され単体の鉛となることが鉛蓄電池の性質です。

2. 顔料

硫酸鉛は、白色を示すことから古代より白色の顔料としてさまざまな場面で用いられてきました。奈良にある正倉院の宝物からも硫酸鉛が用いられている物品が発見されています。

また、硫酸鉛は、黄鉛やモリブデートオレンジのような着色顔料の原材料の1つとしても使用されることが特徴です。ただし、近年では鉛含有塗料の人体への悪影響が懸念されていることから、鉛含有塗料廃絶に向けての動きが高まっています。

3. その他

その他の用途として、釉薬、触媒、樹脂安定剤などが挙げられます。

硫酸鉛の性質

1. 物理的性質

見た目は白色または無色で、結晶状もしくは結晶性粉末の固体です。過剰の水酸化アルカリには水酸化鉛イオンとなって溶けますが、水への溶解度は25℃において0.0425g/1Lとほとんど溶けません。また、エタノールやアセトンなどの有機溶媒にも難溶です。

結晶構造は、硫酸バリウム型構造のものが安定であり直方晶系の構造をしています。融点は1,170℃ですが、およそ1,000℃付近から分解が始まり、二酸化硫黄および三酸化硫黄を発生しながら酸化鉛(II)あるいは四酸化三鉛に分解されます。

2. 硫酸鉛の製法

硫酸鉛は、加熱を伴いながら硫酸と硝酸鉛、または硫酸と酢酸鉛など、強酸と水溶性の鉛化物を反応させて生成されます。このとき、白色の沈殿として硫酸鉛が得られます。

また、鉛蓄電池の活物質としては酸化鉛(II)に希硫酸を加えて作ったペースト状のものが用いられますが、これはPbSO4·PbO、PbSO4·2PbO、PbSO4·3PbO、PbSO4·4PbOのような組成の各種塩基性塩が含まれています。さらに、この反応において水が副生成物です。

硫酸と鉛を反応させると硫酸鉛と水素が生成されますが、反応物の表面に難溶性塩の被膜がつくられることから、加熱して反応を進みやすくする必要があります。

硫酸鉛のその他情報

硫酸鉛の危険性

硫酸鉛は毒性が高く、発がんの恐れや妊婦の場合には胎児への悪影響、臓器の障害 (腎臓、神経系、消化器系、血液系) を持っています。そのため、取り扱う際には手をよく洗ったりゴム手袋や白衣、マスク、保護メガネの着用を行う必要があります。

さらに、水中の生物にも多大な悪影響を与えるため、水中への放出は厳しく制限がされています。

硫酸鉄

硫酸鉄とは

硫酸鉄とは、化学式がFeSO4で表される無機化合物です。

硫酸鉄 (II) や硫酸第一鉄とも呼ばれます。不燃性ですが、加熱によって腐食性を示し、有毒な煙霧や蒸気が発生する恐れがあります。

硫酸鉄はべんがら、黒色インキ、顔料の製造に用いられ、磁性材料、還元剤、浄水剤、媒染剤、消毒剤、防腐剤として使用可能です。食品添加物に認められており、硫酸鉄 (II) を食品に用いた際には、「硫酸鉄」や「硫酸第一鉄」と記載されます。

硫酸鉄の使用用途

硫酸鉄は食品添加物の1つとして、果物や野菜の発色や変色の防止に使用可能です。さらに、鉄分を補給する栄養強化剤として、サプリメントや栄養ドリンクなどにも含まれています。

また、鉄分は植物の生育に必要な微量元素の1つです。植物の生育時に鉄分を補給する目的で肥料に添加され、葉面散布用の溶液の原料に利用されます。ほかにも、化学酸化法 (フェントン法) を用いた排水処理施設用の薬品として、凝集処理時に使用可能です。

硫酸鉄は一酸化窒素と反応し、不安定な褐色の化合物を作ります。そのため、亜硝酸イオンや硝酸イオンの検出に利用可能です。

硫酸鉄の性質

硫酸鉄の見た目は薄い青緑色で、結晶状または結晶性粉末の固体です。水には溶けやすく、無水和物は20°Cの水100gに26.6g溶解します。ただし、エタノールにはほとんど溶けません。水溶液は緑色で、徐々に酸化します。アルカリ性溶液やエタノール溶液中では、酸化が加速されます。

硫酸鉄は被酸化性を有する物質です。被酸化性とは、酸化性の物質によって酸化される可能性がある性質のことです。

硫酸鉄の構造

無水和物の硫酸鉄の式量は151.92であり、1、4、5、7水和物もあります。天然には1、5、7水和物が存在します。特に7水和物は緑礬 (英: melanterite) と呼ばれ、化学式はFeSO4・7H2Oです。無水和物が湿った空気に触れると、7水和物に変わります。

硫酸鉄のその他情報

1. 硫酸鉄 (II) の合成法

硫酸と鉄の反応によって水素が生じ、硫酸鉄が得られます。水で湿った黄鉄鉱 (FeS2) を空気酸化して得た水溶液を、56°C以下で結晶化すると7水和物を生成可能です。

56°C以上の場合には4水和物が晶出し、64°C以上では1水和物が生じます。過剰の硫酸を加えてこの水溶液を真空中で蒸発濃縮すると、5水和物が得られます。

2. 硫酸鉄 (III) の合成法

硫酸鉄には硫酸鉄 (II) 以外にも、硫酸鉄 (III) が存在します。硫酸第二鉄とも呼ばれ、無水和物の硫酸鉄 (III) の化学式はFe2(SO4)3で、式量は399.9です。硫酸鉄 (III) には3、6、7、7.5、9、10、12水和物があり、7、7.5、9、10、12水和物は自然界にも存在します。

硫酸鉄 (II) 水溶液を酸化して、蒸発濃縮すると、硫酸鉄 (III) の水和物の結晶を生成可能です。ただし、結晶化の条件によって、結晶水の数が違います。水和物の加熱と脱水では、白色または淡黄色の粉末である硫酸鉄 (III) 無水和物が得られます。

3. 硫酸鉄 (III) の性質

硫酸鉄 (III) の無水和物は潮解性を有し、熱するとおよそ480°Cで分解して、酸化鉄が生じます。水に少し溶解して、加水分解によって褐色を呈し、温めるとすぐに塩基性硫酸鉄 (III) または酸化水酸化鉄 (III) の赤褐色沈殿が生じます。

硫酸鉄 (III) は鉄ミョウバンやプルシアンブルーの製造に利用可能です。媒染剤や医薬にも用いられます。

4. 硫酸鉄 (III) 鉄 (II) の特徴

硫酸鉄 (III) 鉄 (II) は硫酸第二鉄第一鉄とも呼ばれ、化学式はFeIIFeIII2(SO4)4と表されます。式量は551.81です。

硫酸鉄 (II) と酸性硫酸鉄 (III) の混合物が空気に触れると赤褐色の粉末として得られ、天然には水和物として存在します。水に溶けると分解して、硫酸鉄 (II) が析出します。

硫酸亜鉛

硫酸亜鉛とは

硫酸亜鉛の構造

図1. 硫酸亜鉛の構造

硫酸亜鉛とは、硫酸亜鉛を反応させて生成する無機化合物です。

化学式はZnSO4で表されます。水溶液を結晶化させると、温度により1、6、7水和物を生成可能です。

硫酸亜鉛の粉末は眼に対して刺激性があり、「毒物及び劇物取締法」で劇物に指定されており、加熱によって有毒な煙霧や蒸気が発生する恐れがあります。硫酸亜鉛溶液の場合には、アルカリ性物質との混合や接触を避ける必要があります。

硫酸亜鉛の使用用途

硫酸亜鉛は、医薬用、農業用、工業用製品の原料の一つとして幅広く利用されています。

医薬用では、硫酸亜鉛の収斂性や防腐性などを活かして、結膜炎や眼瞼炎の治療用点眼薬の原料に使用されます。工業用では、レーヨンの製造過程で液体のレーヨンの凝固に使用されたり、木材の防腐剤や紙の漂白剤に利用可能です。農業用では、ミネラル分を強化する目的で飼料に添加したり、農作物への薬害を防止する目的で農業用殺菌剤の一つであるボルドー液へ混合されています。

条件付きで硫酸亜鉛は、食品添加物にも使用可能です。必須亜鉛源として動物飼料に添加されており、飼料1kgあたり最大数百mg含まれています。微量の摂取では安全だと考えられています。ただし、体重1kgあたり2~8mgの過剰摂取では、吐き気や嘔吐を伴った胃の不快感を引き起こすため、注意が必要です。

硫酸亜鉛の性質

硫酸亜鉛の1水和物は無色の粉末で、15°Cでの比重は3.28です。6水和物は無色の単斜晶系結晶で、15°Cでの比重は2.072です。2水和物や4水和物も知られています。

7水和物は無色無臭で、収斂性がある結晶です。空気中で風解し、急に加熱するとおよそ50°Cで結晶水に溶けます。穏やかに加熱すると39°Cで6水和物に、70°Cで一水和物になり、240~280°Cで無水和物に変わります。7水和物は水には溶けやすく、エタノールにはほとんど溶けません。水溶液は加水分解によって弱酸性を示します。

硫酸亜鉛の無水和物は、600°CでZn3O(SO4)2になり、930°Cで酸化亜鉛  (ZnO) に分解します。

硫酸亜鉛の構造

水溶液中の硫酸亜鉛

図2. 水溶液中の硫酸亜鉛

硫酸亜鉛は亜鉛含有物質を硫酸で処理すると生成します。医薬品グレードの硫酸亜鉛は、高純度の酸化亜鉛を硫酸で処理して合成可能です。

水溶液中で硫酸亜鉛の水和物は、すべて[Zn(H2O)6]2+とSO42-で構成されています。配位子として水のみを持ち、亜鉛イオンを含む配位化合物です。この溶液をバリウムイオンを含む溶液で処理すると、硫酸バリウムが生成します。

硫酸亜鉛のその他情報

1. 天然の硫酸亜鉛

ZnSO4・7H2Oは鉱物であるゴスラライト (英: goslarite) として存在します。(Zn, Cu, Fe)SO4・7H2Oなどは、微量鉱物として亜鉛緑礬に含まれています。(Zn, Fe)SO4・6H2O (ビアンキ石) 、(Zn, Mg)SO4・4H2O (ボイル石) 、(Zn, Mn)SO4・H2O (ガニング石) などの硫酸亜鉛の低水和物は、自然界ではあまり見られません。

2. 硫酸亜鉛の関連化合物

硫酸亜鉛の関連化合物

図3. 硫酸亜鉛の関連化合物

硫酸亜鉛の7水和物は斜方晶系で、硫酸第一鉄7水和物や硫酸マグネシウム7水和物と同じ構造です。a = 11.779Å,b = 12.050Å,c = 6.822Åです。6個のH2O分子が亜鉛に配位し、1個のH2O分子が硫酸イオンの酸素に配位しています。

ほとんどの金属アクア錯体は単核です。一般式は[M(H2O)6]n+ (n = 2、3) と表され、八面体構造を形成しています。具体例は、[Cu(H2O)6]2+、[Ni(H2O)6]2+、[Co(H2O)6]2+、[Mn(H2O)6]2+などです。水分子はルイス塩基として機能し、電子対を金属イオンに供与しています。 

硫酸リチウム

硫酸リチウムとは

硫酸リチウムは、硫酸リチウムを反応させて生成される無機化合物です。このとき、水素も生成されます。硫酸と水酸化リチウムまたは、硫酸と酸化リチウムを反応させると、硫酸リチウムと水が生成されます。化学式は、Li2SO4で表されます。

見た目は白色で、結晶状もしくは結晶性粉末の固体です。水には溶けやすく、エタノールにはほとんど溶けません。吸湿性があるため、湿気を避けて保管します。

不燃性ではありますが、加熱されることによって腐食性または有毒な煙霧もしくは蒸気が発生する恐れがあります。

硫酸リチウムの使用用途

硫酸リチウムは、水に溶けやすい特徴を活かし、水系リチウムイオン電池(電解質として水溶液を用いているリチウムイオン電池)電極材料として用いられるようになりました。水系リチウムイオン電池は引火、爆発などの危険がない安全なリチウムイオン電池として研究・開発が進められている電池です。

また、セメントの硬化促進剤として硫酸リチウムを添加することで、セメントの水和を促進して硬化速度を速める効果があるといわれています。