過酸化水素

過酸化水素とは

過酸化水素とは、化学式 H2O2で表される無色で弱い特有の臭気 (オゾン臭) のある化合物です。

1818年フランス人化学者のテナールにより初めて作られました。過酸化水素は分解産物が水と酸素であり、環境汚染の心配がないことから環境にやさしいクリーンな化学品として注目されています。

過酸化水素の使用用途

過酸化水素は、活性化酸素を含み、漂白、化学反応、殺菌、脱臭等に使用されます。

1. 漂白

特に、紙・パルプなど製紙業界での漂白用途では、環境意識の高まりから塩素ガスを使用しない漂白法として需要が増えています。過酸化水素を用いることで、漂白工程を短縮できたり、品質を維持できたりといった効果もあります。繊維の漂白については、特にセルロース系繊維の漂白に適しています。亜塩素酸ソーダ連続漂白法に代わって過酸化水素を用いる方法が採用されています。

2. 脱臭・腐食防止

下水処理場などで発生する硫化水素を酸化することで脱臭・無害化できます。

3. 土壌改良

土壌の有機汚染物を酸化することで、土壌浄化期間を短縮できます。

4. 表面処理

プリント配線基板のソフトエッチングなどに利用されています。

5. 殺菌

従来、消毒や殺菌にはホルムアルデヒドが用いられていましたが、安全性の観点から過酸化水素に代替されました。食品製造機器や容器の洗浄・殺菌に用いられます。擦り傷などの消毒に使う「オキシドール」の主成分は、希釈した過酸化水素です。

6. 精錬

鉄の不純物を含む銅亜鉛、ニッケルなどの金属塩水溶液に過酸化水素を添加することで、鉄を沈殿として回収でき、金属の精錬に用いることができます。

7. 酸化剤

中性で環境に優しいことから、塩素系酸化剤に代わる酸化剤として利用されています。主な需要としては、エポキシ可塑剤、有機過酸化物、過ホウ酸ソーダ、過炭酸ソーダ、ゴム、亜塩素酸ソーダの製造用薬品が挙げられます。その他には、有機化合物の合成にも用いられます。例えば、以下のようなものがあります。

過酸化水素の性質

分子量は34.02で、常温で無色透明の液体です。90 %水溶液で比重は1.4、融点は-11 ℃、沸点は141 ℃です。70 %水溶液で比重は1.3、融点は-39 ℃、沸点は125 ℃です。アルコール、エーテルにも溶けます。濃度66 %以上では爆発性があるため、取り扱いに注意が必要です。過酸化水素は分解して、水と酸素を生じます。二酸化マンガンを用いることで、分解速度を大きくすることができます。

過酸化水素は、酸性溶液中では非常に強力な酸化剤として振る舞います。また、塩基性溶液中では還元剤としても作用します。過酸化水素の誘導体としては、過酢酸、カロ酸、過硫酸カリウムなどが知られています。

過酸化水素の構造

過酸化水素は分子中に酸素2原子による結合をもちます。酸素2原子の結合では、各酸素原子の非共有電子対が反発しあって、共有電子対の重なりが小さく、結合エネルギーが小さいため、不安定で、分解して酸素を放出しやすいです。このような酸素2原子の結合をもつ化合物を過酸化物と呼びます。

過酸化水素のその他情報

過酸化水素の製造方法

1. 自動酸化法
ケミラ社(フィンランド)が開発したアンスラキノン自動酸化法というものが、現在世界的に主流となっているプロセスです。

2. 直接合成法
触媒の存在下で、水素、酸素を圧力をかけて反応させることで、過酸化水素を得ます。

3. 酸素還元法
水酸化ナトリウムを電気分解し、陰極で酸素ガスを吹き込み、過酸化水素を得ます。

4. 電解法
硫酸水素アンモニウムを電解し、得られた過硫酸アンモニウムから過酸化水素を得ます。

5. アルコール酸化法
イソプロパノールを酸化して、過酸化水素を得ます。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7722-84-1.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jtappij1955/52/5/52_5_608/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/33/12/33_12_987/_pdf

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