硫酸鉄

硫酸鉄とは

硫酸鉄とは、化学式がFeSO4で表される無機化合物です。

硫酸鉄 (II) や硫酸第一鉄とも呼ばれます。不燃性ですが、加熱によって腐食性を示し、有毒な煙霧や蒸気が発生する恐れがあります。

硫酸鉄はべんがら、黒色インキ、顔料の製造に用いられ、磁性材料、還元剤、浄水剤、媒染剤、消毒剤、防腐剤として使用可能です。食品添加物に認められており、硫酸鉄 (II) を食品に用いた際には、「硫酸鉄」や「硫酸第一鉄」と記載されます。

硫酸鉄の使用用途

硫酸鉄は食品添加物の1つとして、果物や野菜の発色や変色の防止に使用可能です。さらに、鉄分を補給する栄養強化剤として、サプリメントや栄養ドリンクなどにも含まれています。

また、鉄分は植物の生育に必要な微量元素の1つです。植物の生育時に鉄分を補給する目的で肥料に添加され、葉面散布用の溶液の原料に利用されます。ほかにも、化学酸化法 (フェントン法) を用いた排水処理施設用の薬品として、凝集処理時に使用可能です。

硫酸鉄は一酸化窒素と反応し、不安定な褐色の化合物を作ります。そのため、亜硝酸イオンや硝酸イオンの検出に利用可能です。

硫酸鉄の性質

硫酸鉄の見た目は薄い青緑色で、結晶状または結晶性粉末の固体です。水には溶けやすく、無水和物は20°Cの水100gに26.6g溶解します。ただし、エタノールにはほとんど溶けません。水溶液は緑色で、徐々に酸化します。アルカリ性溶液やエタノール溶液中では、酸化が加速されます。

硫酸鉄は被酸化性を有する物質です。被酸化性とは、酸化性の物質によって酸化される可能性がある性質のことです。

硫酸鉄の構造

無水和物の硫酸鉄の式量は151.92であり、1、4、5、7水和物もあります。天然には1、5、7水和物が存在します。特に7水和物は緑礬 (英: melanterite) と呼ばれ、化学式はFeSO4・7H2Oです。無水和物が湿った空気に触れると、7水和物に変わります。

硫酸鉄のその他情報

1. 硫酸鉄 (II) の合成法

硫酸と鉄の反応によって水素が生じ、硫酸鉄が得られます。水で湿った黄鉄鉱 (FeS2) を空気酸化して得た水溶液を、56°C以下で結晶化すると7水和物を生成可能です。

56°C以上の場合には4水和物が晶出し、64°C以上では1水和物が生じます。過剰の硫酸を加えてこの水溶液を真空中で蒸発濃縮すると、5水和物が得られます。

2. 硫酸鉄 (III) の合成法

硫酸鉄には硫酸鉄 (II) 以外にも、硫酸鉄 (III) が存在します。硫酸第二鉄とも呼ばれ、無水和物の硫酸鉄 (III) の化学式はFe2(SO4)3で、式量は399.9です。硫酸鉄 (III) には3、6、7、7.5、9、10、12水和物があり、7、7.5、9、10、12水和物は自然界にも存在します。

硫酸鉄 (II) 水溶液を酸化して、蒸発濃縮すると、硫酸鉄 (III) の水和物の結晶を生成可能です。ただし、結晶化の条件によって、結晶水の数が違います。水和物の加熱と脱水では、白色または淡黄色の粉末である硫酸鉄 (III) 無水和物が得られます。

3. 硫酸鉄 (III) の性質

硫酸鉄 (III) の無水和物は潮解性を有し、熱するとおよそ480°Cで分解して、酸化鉄が生じます。水に少し溶解して、加水分解によって褐色を呈し、温めるとすぐに塩基性硫酸鉄 (III) または酸化水酸化鉄 (III) の赤褐色沈殿が生じます。

硫酸鉄 (III) は鉄ミョウバンやプルシアンブルーの製造に利用可能です。媒染剤や医薬にも用いられます。

4. 硫酸鉄 (III) 鉄 (II) の特徴

硫酸鉄 (III) 鉄 (II) は硫酸第二鉄第一鉄とも呼ばれ、化学式はFeIIFeIII2(SO4)4と表されます。式量は551.81です。

硫酸鉄 (II) と酸性硫酸鉄 (III) の混合物が空気に触れると赤褐色の粉末として得られ、天然には水和物として存在します。水に溶けると分解して、硫酸鉄 (II) が析出します。

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