酸化マグネシウム

酸化マグネシウムとは

酸化マグネシウム (英: magnesium oxide) とは、典型的なアルカリ土類金属の酸化物です。

化学式はMgOで表されます。モル質量は40.3g/mol、密度は3.65g/cm3、CAS番号は1309-48-4です。

酸化マグネシウムの使用用途

1. 薬品

酸化マグネシウムは伝統的に、胃腸薬および便秘薬として利用されてきました。酸化マグネシウムは酸性の液体に溶けて中和させるという性質を持つので、胃酸の過剰分泌が引き起こす胃炎や胃潰瘍に対して、制酸剤として働いて症状を抑えます。

他の制酸剤として炭酸水素ナトリウムなどが挙げられますが、酸化マグネシウムは水に溶けないため遅効性の薬品です。腸内で二酸化炭素を放出しないため、刺激性が低い薬品です。

酸化マグネシウムは少量でも非常に有効な薬品であり、臨床試験でも非常に良い結果を残しています。また、胃酸と反応した後には、難吸収性の重炭酸塩もしくは炭酸塩となり、浸透圧維持のため腸壁から水分が内に移動します。その結果、腸管の内容物が水分によって軟化し、便秘薬として働きます。

副作用としては、薬物の多量の摂取による高マグネシウム血症などが見られます。具体的な症状は悪心や嘔吐、口渇、血圧低下、徐脈、筋力低下などです。症状がみられた場合には、すぐに摂取を止める必要があります。また、下痢、腎障害、心機能障害を持つ患者に投与する場合には、慎重に投与しなければなりません。

2. 工業

酸化マグネシウムは、放熱性、絶縁性、耐酸性、高温耐熱性を兼ね備えることから汎用性に優れ、さまざまな製品の原料・材料として使用されている、多種の産業分野で不可欠な物質の1つです。さらに、熱伝導性をもち、軽くて加工がしやすい性質もあるため、さまざまな加工が施されて利用されています。

工業用として、排煙脱硫剤、塗料添加物、セラミック、合成ゴムの加硫助剤や接着剤への配合剤などに利用されてきました。近年では、酸性溶液を中和する性質を利用して排水の浄化剤や土壌改良材としても注目されています。また、耐火性を利用して、火災報知機のケーブルなど緊急時の情報伝達など重要な役割を担っています。湿度にも強いことから、カビが発生しにくいことも利点の1つです。

酸化マグネシウムの性質

酸化マグネシウムはほかのアルカリ土類金属酸化物と同様、水にはほとんど溶けませんが酸に溶けます。塩酸やアンモニウム塩水溶液には溶けて、塩を形成することが特徴の1つです。ただし、1,000℃以上に加熱すると密度が高くなり、酸にも溶けなくなってしまいます。有機溶媒にもほとんど溶けません。

また、空気中に放置すると酸素や水などを吸って反応してしまうという性質があります。そのため、空気中に長時間放置することは好ましくありません。

酸化マグネシウムの構造

常温常圧では吸湿性の白色粉末で、立方体型の結晶構造を取っています。つまり、塩化ナトリウムなどと同じく、1つの原子が6つの原子と接している8面体6配位の構造です。また、特に匂いなどは発しません。

酸化マグネシウムの結晶形は光反射特性をもつため、光学用途でよく使用されます。 その基本的な特性は皮革の処理にも利用されています。

酸化マグネシウムのその他情報

酸化マグネシウムの製造法

酸化マグネシウムの製造方法の1つとして、海水中のマグネシウムイオンを水酸化物として沈殿させ、これを高温下で脱水するという方法があります。他には、金属マグネシウムを燃焼させたり、水酸化マグネシウムを加熱分解させたり、高温でホウ酸塩と酸化マグネシウムを融解したものを徐冷する方法が存在します。

酸化マグネシウムは、加工環境や温度によってそれぞれ異なるマグネシウムが作られるという点が特徴です。具体的には、高温条件では相対的に反応性の低い酸化マグネシウムが作られ、低温条件では硬質の酸化マグネシウムが作られます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です