酸化鉄

酸化鉄とは

酸化鉄とは、鉄と酸素が化学反応してできる化合物であり、自然界に広く存在する重要な物質です。

酸化数に応じて、酸化鉄(II) (FeO) や酸化鉄(III) (Fe2O3) など組成が異なるものが知られています。いずれも鉄の酸化物であり、水酸化鉄と並んで錆を構成する成分です。

酸化鉄の使用用途

酸化鉄は、その性質や特徴から、さまざまな分野で使用されています。

1. 鉄

酸化鉄は、主に赤鉄鉱や磁鉄鉱などの形で採掘されます。これらの酸化鉄を高温で還元して、金属の鉄を製造できます。金属の鉄は、建築や工業などに欠かせない素材です。

2. 磁性材料

酸化鉄は磁気を持つものがあります。これらの磁性のある酸化鉄は、磁性材料として利用されています。磁性材料は、コンパスやスピーカーやモーターなどに用いられています。特に、磁気テープや磁気ディスクなどの記録媒体としては、広く使用されてきたものです。

3. 顔料

酸化鉄は、赤や黒や黄色などの色を持っています。これらの色は顔料や染料として利用されています。顔料や染料は、絵画や印刷や染物などに用いられています。特に、赤色の顔料や染料としては、古くから使用されてきたものです。

4. 化粧品・医薬品

酸化鉄は、医薬品や化粧品としても利用されています。医薬品としては貧血の治療に用いられるものがあり、化粧品としては口紅やチークなどに用いられているものがあります。

5. 医療

医療分野では、核磁気共鳴画像法のコントラスト造影剤として使用されます。

酸化鉄の性質

酸化鉄はさまざまな性質を持つ物質で、その特徴的な性質を以下に示します。酸化数の違いによって、性質は少し異なります。例えば酸化鉄(II) は、酸化鉄(III) よりも比重が大きく、融点や沸点も高くなります。

1. 色

酸化鉄の異なる形態によって、赤色、黄色、黒色など、さまざまな色の物質が得られます。これは、酸化鉄が顔料として使用される主な理由の1つです。

2. 磁性

磁性酸化鉄は強い磁性を持ち、電子機器や磁石の材料として重要です。この磁性は、特定の磁場を生成するのに役立ちます。

3. 化学的安定性

酸化鉄 (III) と酸化鉄 (II、III) は化学的に安定しており、酸や塩基に対して比較的耐性があります。この特性は、さまざまな環境での使用に適しています。

酸化鉄の種類

酸化鉄は、酸化数によって以下の3種類に分けられます。

1. 酸化鉄(II) (FeO)

酸化第一鉄とも呼ばれます。鉄と酸素が1対1で結合した化合物です。空気中で容易に酸化されます。融点が1,370℃で、比重が 5.7です。

酸に溶けますが、水、アルカリには溶けません。エナメルの製造、触媒、熱線吸収ガラスなどに使用されます。

2. 酸化鉄(III) (Fe2O3)

酸化第二鉄とも呼ばれます。鉄と酸素が2対3で結合した化合物です。融点 が1,550℃で、比重が約 5.1です。赤鉄鉱として広く産出し、赤色土壌の色をしています。

工業的にはベンガラという名で、顔料やガラス、貴金属、ダイヤモンドの研磨材として用いられています。一般的には、磁気テープまたはマグネットの原料になります。また、高純度の物は半導体に使用される場合が多いです。

3. 酸化鉄(II,III) (Fe3O4)

磁鉄鉱とも呼ばれます。鉄と酸素が1対2.66で結合した化合物です。自発磁化をもっており、融点が 1,538℃で、比重が5.16です。顔料、インキなどに用いられます。

酸化鉄のその他情報

酸化鉄(III)の製造方法

鉄板の酸洗浄廃液や酸化チタンの製造副生物として得られる硫酸鉄 (FeSO4) から、酸化鉄 (III) は以下の反応式で生産されます。初めに400℃で結晶水6分子を除いた後、焼成炉に入れて800℃前後で加熱分解します。

未反応の硫酸鉄を水洗により除去し、残った酸化鉄の微粒子を沪別し、乾燥します。

   FeSO4・7H2O → FeSO4・H2O + 6H2O
   2FeSO4・H2O → Fe2O3 + SO2 + SO3 + 2H2O

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