アクロレイン

アクロレインとは

アクロレインの構造

図1. アクロレインの構造

アクロレイン (Acrolein) とは、炭素-炭素二重結合を有する、不飽和アルデヒドの一種です。

IUPAC命名法では、 2-プロペナール (2-propenal) と表記されます。また、慣用名には、アクリルアルデヒド (acrylic aldehyde) 、プロペンアルデヒド (propenaldehyde) などの名称があります。示性式は、CH2=CHCHOです。

アクロレインは分子量56.06、融点-88℃、沸点53℃です。常温では無色若しくはやや黄色みがかった液体であり、強い刺激臭を持ちます。水に可溶で、溶解度は20g/100mL (20 ℃) です。

また、アクロレインは、油脂の熱分解の際に生成されます。強い刺激臭を持ち、有毒です。引火性も高く、熱や火花などで容易に発火します。

このため、各種法令では、以下のように指定されています。

  • 毒物及び劇物取締法: 劇物
  • 消防法: 第4類引火性液体、第一石油類非水溶性液体
  • 労働安全衛生法: 有害物表示対象物

多くの法規制が適用されているため、取り扱いの際は注意が必要です。

アクロレインの使用用途

アクロレインは、グリセリンアリルアルコールの合成原料として使用されます。また、繊維処理剤や架橋結合剤などのほか、メチオニンなどの医薬品合成時の原料にも使われています。コロイド状オスミウ ム、ロジウムルテニウムの製造、溶剤、抽出も用途の一つです。

アクロレインは、塗料に含まれる樹脂成分にも使用されていた歴史を持ちますが、現在はシリコン樹脂塗料が主流になったことから、ほとんど使用されていません。

また、人体においては脳梗塞の発症時に血液中にアクロレインが増加することが知られています。脳梗塞においては、脳の血管が詰まり、周囲の細胞が壊れます。この際に、細胞から漏出したポリアミンがポリアミンオキシダーゼにより分解され、その結果、代謝物としてアクロレインが血中に増加するのです。そのため、アクロレインは、脳梗塞のリスク (無症状性脳梗塞) の検出を行うバイオマーカーとして、注目されています。

アクロレインの原理

アクロレインの原理を性質や合成方法、化学反応の観点から解説します。

1. アクロレインの性質

アクロレインは、分子内に炭素-炭素二重結合とアルデヒド基を持つ、最も構造が簡単な鎖式不飽和アルデヒド化合物です。CH2=CHCHOと表され、分子量は56.07、常温では無色または淡黄色液体であり、密度は 0.8389 (20 ℃) です。また、刺激臭を呈します。

反応性が高く、容易に重合して樹脂状の固体となります。特に光、アルカリ、強酸の存在下において不安定です。空気中でも酸化や重合が進行するため、ヒドロキノンなどの重合禁止剤が安定剤としてしばしば用いられます。

2. アクロレインの合成方法

アクロレインの一般的な合成方法

図2. アクロレインの一般的な合成方法

アクロレインは、実験室的合成法では、グリセリンを硫酸水素カリウムなどの脱水剤を用いて脱水することで合成されます。一般的な工業的製法は、グリセリンの高温の蒸気を硫酸マグネシウムに通じる合成方法です。

3. アクロレインの化学反応

アクロレインの反応の例

図3. アクロレインの反応の例

アクロレインは、求核剤の1,4-付加を受ける、α,β-不飽和カルボニル化合物です。マイケル付加反応のアクセプターとして、多くの反応の例があります。一例として、メチオニンの合成過程における、3-メチルチオプロパナールの生成反応が挙げられます。

尚、還元するとプロピオンアルデヒドを経てプロパノールを生成します。これは、アルデヒド基より先にオレフィン部分が還元されるためです。

アクロレインの種類

アクロレインは、不安定な化合物のため、あまり製造販売されていません。ただし、研究用試薬としては若干の流通があります。

研究用試薬としては、以下のような形状で市販されています。

  • 100ug/mLまたは10mg/mL水溶液
  • 100ug/mLもしくは1,000ug/mLのメタノール:水=9:1溶液
  • 5.0mg/mLパラジオキサン溶液

非常に不安定な化合物のため、通常、冷蔵または冷凍試薬です。重合体や酸化体が生成して濁っている場合は、蒸留などによって精製した後、速やかに用いる必要があります。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/107-02-8.html

アクリロニトリル

アクリロニトリルとは

アクリロニトリル(Acrylonitrile)とは、ANと略される有機化合物で甘いにおいのする無色透明(光に反応し徐々に淡い黄色へ変わる)の液体で、ほとんどの有機溶剤に溶ける(特にエタノールアセトンには顕著)ことで知られています。アクリルニトリル、シアン化ビニル(vinyl cyanide)とも呼ばれるニトリルの1種です。

アクリロニトリルの構造式

アクリロニトリルの構造式

アクリロニトリルの性質表

化学式 C3H3N
英語名 acrylonitrile
示性式 CH2=CH-CN
毒劇法 劇物
消防法 危険物第4類第一石油類非水溶性液体

 

アクリロニトリルは、分子式CH2=CHCN、分子量53.06、融点-83〜-84℃、沸点約78℃、中間体として化学工業界でも重要な物質ですが、毒性や引火性(引火点-1℃)でもあることから消防法の第4類第1石油類、毒物及び劇物取締法により劇物に含まれ、安全衛生法では有害物質表示対象物質などに指定されています。また、光や酸素、アルカリの作用により重合を起こすため、保存には注意が必要です。自然界には存在しない有機化合物で、工業地帯には数ppm程度観測されています。

アクリロニトリルの使用用途

アクリロニトリルは、強酸や強塩基などと活発に重合し、活性な二重結合をもち環状化合物を形成することから、医薬品はじめ染料や塗料などのほか、軽量かつ強度を求められる航空機などでお馴染みの炭素繊維の原料としても使われています。

アクリロニトリルの重合体であるポリアクリロニトリル(PAN)は、アクリル繊維の主成分としてセーターや靴下といったニット製品に使用されています。

また、プラスチック素材としてABS樹脂、AS樹脂などの合成樹脂の原料として使用されています。タイヤ・パッキン・コンベアベルトなどへの合成ゴムの主要原料としても使われています。

アクリロニトリルの反応

主にポリアクリロニトリルなどの重合体を生成するためのモノマーとして反応する。重合以外の反応性として、アクリロニトリルの構造的特徴から、マイケル付加(1,4付加)を受けやすい。そのためシアノエチル化剤として有用です。また、二量化させることでアジポニトリルが得られ、これはナイロンの原料として利用されています。

アジポニトリル.

アクリロニトリルの製造

工業的にはSOHIO Process (ソハイオ法)と呼ばれる、プロピレンを金属酸化物触媒存在下に、アンモニアと酸素を作用させ生産します。アセトニトリル、シアン化水素が副生され、これらも工業製品として利用されています。

ソハイオ法

アクリル酸エチル

アクリル酸エチルとは

アクリル酸エチルの構造

図1. アクリル酸エチルの構造

アクリル酸エチル (Ethyl Acrylate) とは、アクリル酸エステルの一種である有機化合物です。

EAと省略形で表記されることもあります。常温において、無色透明の液体であり、水への溶解度は1.5g/100mLです。揮発性を呈し、エステル臭と言われる果実などの香りに似た強い匂いを有します。

化学式はCH2=CHCOOC2H5であり、分子量は100.1、CAS No.は140-88-5です。引火性があるため、消防法では危険物第4類 第1石油類 非水溶性液体として指定されています。

アクリル酸エチルの使用用途

アクリル酸エチルは、反応性が高いことから、各種化学反応の反応剤として汎用性の高い化合物です。そのため、他のアクリル酸エステル一般と同様に、広範な産業分野において製品原料として活用されています。

具体的には、繊維処理剤、粘接着剤、塗料、合成樹脂、アクリルゴム、エマルジョン等の原料です。更に、皮革や紙などの加工剤や自動車部品、衣料、マスカラなどへも応用されています。また、種々の医薬品中間体の合成試薬として広く活用されています。

その他、香料としても使用が可能です。自然界では、パイナップルおよびボーフォールチーズの揮発性成分として検出されています。

アクリル酸エチルの原理

アクリル酸エチルは、融点-76.5℃、沸点80.5℃、引火点-3℃、密度0.953〜0.959g/mL (20℃) の物質です。アクリル酸エチルの原理を合成方法と反応の観点から解説します。

1. アクリル酸エチルの合成方法

アクリル酸エチルの合成方法

図2. アクリル酸エチルの合成方法

実験室などにおけるアクリル酸エチルの一般的な合成方法は、酸触媒存在下におけるアクリル酸エタノールのエステル化反応です。アクリル酸はもっとも簡単な不飽和カルボン酸であり、化学式はCH2=CHCOOHです (IUPAC命名法では2-プロペン酸 (2-propenoic acid)) 。アクリル酸の工業的合成法は、プロピレンの酸化が挙げられます。

工業的には、レッペ反応及びその改良反応を用いて合成されることもあります。アセチレン一酸化炭素、エタノールを原料とし、臭化ニッケル (II) 触媒によって合成を行う方法です。

そのままでは保管中に発生したラジカルによってポリマー化してしまうため、市販品には、通常ヒドロキノンやヒドロキノンモノメチルエーテルなどの重合禁止剤などが添加されています。

2. アクリル酸エチルの反応

アクリル酸エチルの各種反応

図3. アクリル酸エチルの各種反応

アクリル酸エチルの具体的な反応例は、以下の通りです。

  • 高級アルコールとのエステル交換反応  (酸性または塩基性触媒存在下) による同種のアクリル酸エステル合成反応
  • マイケル付加反応
  • 反応性モノマーとしてホモポリマー及びコポリマーの形成
    (コポリマーを形成する化合物: エチレン、アクリル酸とその塩、アミド、エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、マレイン酸エステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)
  • Diels-Alder反応 (ジエノフィルとして反応)

特に、ルイス酸触媒存在下では、マイケル付加でアミンと反応し、高収率でβ-アラニン誘導体が生成します。また、Diels-Alder反応の例として、シクロヘキセンカルボン酸エステルの合成反応が挙げられます。この反応は、アクリル酸エチルと1,3-ブタジエンとの[4+2]環状付加反応です。

アクリル酸エチルの種類

アクリル酸エチルには、産業用の大型容量製品や、試薬用途の小型製品があります。化学分野における試薬用の小型製品の主な容量規格は、1g, 5g, 25g, 50g, 100g, 100mL, 500mL, 1L等です。産業用製品では、15kg缶、180kgドラム缶、ローリーなどの荷姿で流通しています。

アクリル酸エチルのその他情報

アクリル酸エチルの安全性情報

アクリル酸エチルは、下記の危険性が指摘されているため、正しく取り扱うことが重要です。

  • 眠気又はめまいのおそれ
  • 長期又は反復ばく露による神経系、呼吸器の障害
  • 水生生物に毒性
  • 長期的影響により水生生物に毒性

ラットとマウスでの実験により発がん性も示唆されていますが、ヒトで発がん性があるかどうかはまだ結論が出ていません。

尚、各種法令では、下記の通り定められています。

  • 労働安全衛生法 通知対象物 政令番号 3表示対象物 政令番号 3
  • 化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) 1-3 (98%)

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/140-88-5.html

ハンマー柄

ハンマー柄とは

ハンマー柄とは、ハンマーの手に持つ柄の部分を指し、頭部と分離独立して流通しているものです。

使用目的に合わせ金属や木材、プラスチックなど各種の材質でつくられています。ハンマー頭部に合わせて適切なものを選ぶ必要があります。不適切なハンマー柄の使用は、十分な打ち込みができないだけでなく、折損などで事故の原因になることがあります。

ハンマー柄の使い方

ハンマー柄は、ハンマー頭部にくさびなどで適切に取り付けたうえで使う必要があります。使用前のハンマー柄の取り付け具合確認は、事故を防ぐ大事なポイントとなります。

持つ位置は頭部の重量とのバランスを考え決めるようにします。重量のあるハンマー頭部が取り付けられている場合は、汗などで滑りにくい材質のハンマー柄を選択したり、滑り止め用のテープをまくなどの工夫が事故防止にはかかせません。

ハンマー柄の長さは、狭い空間での作業では短いもの、打力を必要とする作業では長いものといった使い分けが作業効率につながります。

ハンマー柄の選び方

ハンマー柄は、使用するハンマーの用途に合わせ次の点に留意して選ぶ必要があります。

1. 用途

金属製頭部をもつハンマーでは、重量に十分耐えるハンマー柄を選び、木材などに使用するハンマーには頭部がプラスチック製のものも使用されることが多く、それぞれ用途に合ったハンマー柄を選びます。

2. 全長

ハンマー柄の全長は、よく使われる片手ハンマー用などの26mm程度から、長いものでは砕石用などの1,400mm近いものまであり、使用目的に合わせ適切に選ぶ必要があります。

3. 頭径

ハンマー柄の頭部側の直径は、小ぶりな片手ハンマー向けなどの細い8mmから、太いものでは30mmと種類は豊富で、取付けるハンマー頭部に合ったものを選びます。また、頭部への固定用くさびなどもあわせて準備します。

4. 材質

ハンマー柄の材質は、頭部と使用目的にあわせ選びます。木製のハンマー柄でも強度のある木材を使用しているものもあります。

雨水浸透槽

雨水浸透槽とは

雨水浸透槽

雨水浸透槽は、雨水貯留槽とともに使用されることが多いです。一般に雨水浸透槽は、地下に設置することで地中に雨水を浸透させる目的で使用します。これにより雨水が地表にあふれることがなくなり、地下水や湧き水が豊富になります。そして、大量の雨水が下水管に流れ込まなくなるため、下水管の負担が減り、設備の延命化にもつながります。

近代化した現代では、地表がアスファルトやコンクリートに覆われていることから雨水の逃げ道がなくなっています。その結果、雨水は、行き場を失い、地表にあふれてしまいます。少量の降水ならば問題にはなりませんが、都市集中型のゲリラ豪雨の影響を受けてしまうと地下施設に大量の雨水が流れ込んでしまいます。また、晴れた日が続くと地中の保水率が低いため、河川の水量が減少したり、ため池が枯れてしまうことにもつながります。

雨水浸透槽の構造

雨水浸透槽は、雨水浸透ますや道路浸透ます、浸透トレンチ、トラフ・トレンチ、砕石空隙貯留浸透施設などと組み合わせて使用したり、それぞれを単独で用いることにより、雨水を貯留し、地中へと浸透させます。

雨水浸透ます

雨水浸透ますは、設計水頭がふたを超えないように地中へ設置して使用します。ますの周囲には砕石を充填し、最底面に砂を敷き詰めることで、雨水の貯留と地中への浸透を効率的に行えるように設計されています。ます内部にゴミなどが堆積しやすい環境では、底面から雨水を浸透させずに、側面から雨水を浸透させることで目詰まりを抑制できます。

道路浸透ます

道路浸透ますは、浸透させる水の種類や設置する道路の種類によって構造や組み合わせが変わります。一般的には、ますの周りに充填材を敷き詰めて、最底面に透水性シートと砂を敷き詰めます。

例えば車道に道路浸透ますを設置した場合は、道路からの排水に土や落ち葉などが混入するおそれがあるため、泥溜めますを併設してフィルターを通過させることで目詰まりを防止しています。

そして、ますの下部から浸透管を通して地中に雨水を浸透します。ますと浸透管のあいだには、管口フィルターを取り付け、管内での目詰まりを防止しています。

一般敷地内からの排水は、別の管からます内部に流入させ、上部のきれいな水だけを下水本管に排水します。

浸透トレンチ

浸透トレンチは、浸透管とも呼ばれており、単体で使用したり、浸透ますと併用して使用する場合があります。主に建築物の周辺や公園、緑地、学校、道路などに設置します。

透水トレンチの周囲には、砕石を充填し、最底面には砂を敷き詰めます。雨水は、上部に敷いた透水シートから砕石部に浸透し、透水トレンチに集水されるか、併用している雨水浸透ますから流入します。流入部には管口フィルターが設置されています。

トラフ・トレンチ

トラフ・トレンチは、窪地に浸透トレンチを設置することで集水する仕組みです。浸透トレンチの周りに砕石を敷き詰め、上部には透水シートを敷きます。透水シートの上には、透水性を有した埋戻し土を敷くため、植栽を行うことが可能です。

主に住宅の庭や公園、歩行者用道路に設置されており、池やせせらぎとしても応用されています。

砕石空隙貯留浸透施設

砕石空隙貯留浸透施設は、貯留と浸透の機能を有しているため、設置する地質にあわせて適切な条件を設定しなければなりません。

主に道路や駐車場、緑地などで使用されており、沈澱ろ過槽でゴミなどを選別し、ネットをかぶせた有孔管を通して貯留槽内に雨水を流入させます。

有孔管は、槽内の上部(流入用)と下部(排出用)に配置され、槽内には砕石が敷き詰められています。排出された雨水は、オリフィス付きの特殊な人孔を通して放流されます。

雨水浸透槽の使用用途

雨水浸透槽は、1平方メートルの土地において雨どいが接続可能であれば設置できます。

一般的には雨水浸透槽の周りに砕石を敷き詰めることで地中にゆっくりと浸透させます。また、浸透効率を向上させる目的で砕石と地中の境目には透水シートを挟みます。

雨水浸透槽は、浸透施設としても扱われるため、のり面崩壊を引き起こす恐れのある「切土面および第三紀砂泥岩」や「法令指定地」「ハザードマップ」の区域では設置が禁止されています。これらの不適地以外でも「人工改変地」「切土斜面」「盛土地盤」では十分に注意して設置を検討しなければなりません。

2006年における雨水貯留浸透技術協会を事務局とした技術照査委員会と技術検討委員会の調べによると、雨水浸透施設が設置された昭島つつじが丘団地の浸透工区の流出量は、20年間の観測の結果、従来型の雨水排水区域に比べて小さくなっており、雨水流出抑制効果が発揮されていることが分かりました。

このように雨水浸透槽は、効果が実証されており、禁止区域以外であれば、一般住宅および公共事業などにおいても気軽に使用することができます。

雨水浸透槽の選び方

雨水浸透槽は、主にコンクリート製や樹脂製の種類が販売されています。

コンクリート製雨水浸透槽

コンクリート製は、有孔タイプとポーラスタイプの2種類に細別することができます。

1. 有孔タイプ

有孔タイプは、孔の大きさや数により目詰まりによる機能低下を防ぐことから長期にわたって一定の浸透能力が確保できます。繊維コンクリートなどを組み合わせることで強度を保ちつつ重量を通常の1/3程度に抑えることが可能です。おおよそ中規模(φ400)から大規模(φ1000)の範囲を取り扱う製品が多いです。

2. ポーラスタイプ

ポーラスタイプは、ます全体に空隙があり、安定した浸透効果を発揮します。有孔コンクリート製に比べて軽量で施工性に優れており、中規模(φ400)の範囲を取り扱う製品が多いです。しかし、有孔コンクリートに比べると金額が高めに設定されています。

 

樹脂製雨水浸透槽

樹脂製は、有孔タイプがよく使用されており、コンクリート製に比べて軽量で施工性に優れています。多孔構造なので目詰まりがしづらく、長期にわたって一定の浸透能力を確保できます。樹脂製とはいえ、強度が高く損壊の心配が少ないです。

また、径が約20cmの小型製品も存在しており、狭いスペースにも設置できます。小規模(φ200)から中規模(φ400)の範囲を取り扱っている製品が多いです。さらに穴のあいた板状の材料とパイプを組み合わせた工法も存在しています。

このようにさまざまな製品が販売されており、土壌や工法、降雨量など、判断することが多いため、メーカーや官公庁に相談することも検討してみてはいかかでしょうか?

雨水貯留槽

雨水貯留槽とは

雨水貯留槽

雨水貯留槽 (別名: 雨水タンク) は、雨水を一時的に貯めるための設備です。

雨水が下水道などを経由して河川に流れ込むことによる水害を防いだり、屋根に降った雨水を雨どいからタンクに貯めることで、植物の水やりや玄関の打ち水として有効活用することができます。

近年は、市街化の進展により地表がコンクリートやアスファルトで覆われています。その結果、雨水は、地中に浸透する土地の面積を失っており、短期的に雨量が集中すると浸水被害を引き起こします。

土地の開発が進む前は、降雨が地表に浸透したり、蒸発することで河川への雨水の流入が抑えられていました。しかし、森林の伐採やため池の減少に伴って都市型水害が深刻化しています。

市街地は、雨水が浸透しにくいため、屋根や道路などの表面流出量が増加します。あふれた雨水は、下水道などを経由して河川に流れ込み、水害の原因になります。また、地中への浸透量が減ることで、晴天が続くと河川の流量が減少したり、湧き水が枯れたりすることが増えてしまいます。

こうした理由から雨水貯留槽を利用して雨水を一時的に貯めることで表面流出量を調整することが必要になります。

雨水貯留槽の分類

一般に雨水貯留槽は、地上型と地下型に分類されます。

地上型雨水貯留槽

地上型は、地表面貯留と呼ばれており、比較的小型で集合住宅や駐車場、小学校などの教育機関、公園などにおいて使用されます。貯留可能容量は、貯留場所と近隣の安全を考慮したうえで目安が設定されています。例えば集合住宅では、貯留場所が棟間緑地で貯留限界水深が約0.3m、貯留可能容量が1,110立方メートル毎秒に設定されています。

地下型雨水貯留槽

地下型は、地下貯留と呼ばれており、一般に施設規模の大きさで設置し、公共事業などにおいて活用します。また、地下貯留方式は、地下空間貯留施設と地下空隙貯留施設に分類されます。

1. 地下空間貯留施設

地下空間貯留施設は、建物と一体の構造で地下に設置するか、公園などの公共用地の地下に設置します。施設の壁材には、コンクリートやプレキャストコンクリートが使用されます。雨水の流入方式としては、建物の周辺から集水し、貯留する方法と河川などから集水する方法があり、排水時にはポンプを使用するのが一般的です。  

2. 地下空隙貯留施設

地下空隙貯留施設は、建物と一体の構造ではなく、建物周辺の駐車場やグラウンドなどの地下に設置します。そのため、地表部は、従来の機能を有したまま活用できます。施設には、砕石やプラスチック、樹脂、鋼などが使用されており、雨水を貯留する機能と雨水を地中に浸透する機能を併せて付加することが可能です。    

雨水貯留槽の使用用途

雨水貯留槽は、私たちの生活で見える場所と見えない場所において活用されています。見える場所では、戸建て住宅の軒下に設置される雨水タンクなどが挙げられます。見えない場所では、公園や校庭、駐車場などの地下が挙げられます。

昨今、都市部では、都市集中型のゲリラ豪雨が頻発するようになりました。その対策として、プレキャスト式と呼ばれる大型の雨水貯留槽を都市の地下に整備する方法が試みられています。

しかし、都市部は、動的で制御が難しいことや財政上の問題も挙げられるため、開発と発展が難航しています。

よって、一般住宅に小型の雨水貯留槽や浸透設備を設けることで都市部の保水力を補い、都市部では、複数の貯水槽に雨水を分散し、河川への流出を抑制する活動も行われています。

雨水貯留槽の選び方

雨水貯留槽は、土地や建物、周辺の安全性によって、その形態が変化するため、設置環境にあわせて選定する必要があります。

例えば雨水貯留槽は、捨てれば産業廃棄物になる浄化槽を雨水貯留槽として再利用することができます。

この場合の雨水貯留槽は、プラスチック製の容器が一般的ですが、再利用しない場合には、プラスチック型のブロック材も候補になります。ブロック材は、空隙率や貯水量も高く設計されており、強度、耐震率も優れています。

その他の雨水貯留槽の情報

1. 雨水貯留槽の補助金制度について

雨水や再生水に関する助成制度は、タンクや浄化槽、浸透施設などの区分によって各市区町村が条件を設定しています。

例えば雨水貯留槽は、個人や事業利用に問わず、市区町村の補助金制度を利用することができます。補助金の交付には、おおむねタンク容量が100リットル以上必要となります。

また、雨水をトイレ洗浄水として利用する場合には、500リットル以上の大型タンクを設置する必要があります。

そのほかにも雨水貯留槽として、再利用した浄化槽を利用する場合には、市区町村が設定した補助金の条件を満たせば、給付対象となり、地域によっては、天水桶などの伝統的な防火水槽が認められる場合もあります。

2. 雨水貯留槽の設置義務について

雨水貯留槽には一般的に設置義務がありません。ただし、集中豪雨などの影響が著しい地域などにおいては、条例によって雨水の流出を抑制する施設の設置等が義務付けられます。

例としては「埼玉県の雨水流出抑制施設の設置等に関する条例」が挙げられます。この条例では、1ヘクタール以上の開発等を行う場合には、雨水の流出を抑制する施設等の設置を義務付けています。

3. 雨水貯留槽の設置基準について

雨水貯留槽の設置基準は、各市区町村により設置に関する指針などが公開されています。

一般的には、建築物を建設する場合は、雨水の流出を抑制する施設を設置することが望ましいとされています。

例えば東京都千代田区では、適用区域や対象施設、指導内容、計画書の提出などが必要になります。また、各関係機関と協議する必要もあるため、事前相談窓口などが設置されています。

千代田区雨水流出抑制施設設置に関する指導要綱

4. 雨水貯留槽の今後の需要

雨水貯留槽は、地球温暖化の影響により、異常気象が頻発していることから、今後も需要が増加していくと考えられています。特に小規模から中規模までの雨水貯留槽は、低価格で設置も簡単なため、需要の増加が予想されます。

しかし、雨水貯留槽に付随する安価な周辺機器の開発が追い付いておらず、利便性の向上のためにも開発が求められています。その中でも特に需要が高い周辺機器として水位計が挙げられます。

これらの理由から福井工業大学が2019年に「小規模雨水貯留槽に適した水位計の開発」として、IoT技術を導入した水位計の開発に必要不可欠な水位センサーの評価をおこなっています。

カテゴリー
絶対に触らないでください(日本会社ニュース)

年末年始休業のお知らせ (2021年12月30日-2022年1月3日)

平素よりメトリーをご利用頂き、誠にありがとうございます。

2021年12月30日-2022年1月3日の間は、年末年始休業とさせて頂きます。

上記期間内にお問い合わせ頂いた内容に関しては、順次2022年1月4日以降に対応させて頂きます。

2022年も、研究者・エンジニアの方々のサポートを行うことで、世界の発展に少しでも貢献できるよう、メトリーの開発に邁進します。

炭酸カルシウム

炭酸カルシウムとは

炭酸カルシウムとは、化学式CaCO3で表されるアルカリ性の金属炭酸塩の一種です。

炭カルという略称も一般的に用いられています。炭酸カルシウムの毒性は高くはありませんが、粉体状の製品が多いため、取扱いの際に粉じんとして目に入りやすく、粘膜を傷める可能性があるため注意が必要です。

炭酸カルシウムの使用用途

炭酸カルシウムの用途は非常に多岐にわたり、建材やセメントの原料、製紙、プラスチック、ゴム、接着剤、シーラント、塗料分野での充填剤としての用途、食塩などの食品や化粧品などに使われる添加剤、炭酸ガスの製造原料、その他様々な用途に使用されています。

炭酸カルシウムは、純水にはほとんど溶解しませんが、酸性の水溶液に少し溶解します。このため、農業分野では酸性土壌を中和するため、土壌改良材として使用されることもあります。医療分野では胃酸過多に対する制酸剤として使われます。農業用としては、不純物が比較的多く含まれる炭酸カルシウムが用いられています。

植物や生物への影響が小さいため、植物が生えているエリアにも使用できる融雪剤としても利用されます。

また研磨作用を利用し消しゴムや歯みがき粉にも配合されています。

炭酸カルシウムの性質

炭酸カルシウムは分子量が100.09、比重2.6、屈折率が1.49~1.66の無臭の白色粉末です。

炭酸カルシウムは結晶学的には、六方晶系のカルサイト結晶 (方解石) と斜方晶系のアラゴナイト結晶、バテライト結晶が存在します。炭酸カルシウムの主な原料は石灰石であり、天然に産出する石灰石の多くはカルサイト結晶からなっています。

炭酸カルシウムは炭酸ガスを含む水にはわずかに溶解して炭酸水素カルシウム (重炭酸カルシウム) になります。また塩酸硫酸といった酸には溶解します。

炭酸カルシウムの種類

炭酸カルシウムには、産業製品として重質炭酸カルシウムと軽質炭酸カルシウムの2種類があります。

重質炭酸カルシウムは、石灰石を微粉砕して分級したもので、天然炭酸カルシウムともいいます。

軽質炭酸カルシウムは、粉砕した石灰石を一度脱炭酸し酸化カルシウムにしてから、炭酸ガスと反応させて再び炭酸カルシウムを生成させて作るもので、合成炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウムとも呼ばれます。

炭酸カルシウムは他にも、貝類を湿式粉砕したものも使用されており、これを胡粉 (ごふん) といいます。

炭酸カルシウムのその他情報

1. 炭酸カルシウムの製造方法

炭酸カルシウムは、石灰石の粉砕と分級のみで製造される重質炭酸カルシウムと、合成により製造される軽質炭酸カルシウムの2種類あります。軽質炭酸カルシウムの製造方法を反応式とともに以下に説明します。

1. 焼成
粉砕した石灰石を高温で焼成することで、石灰石から炭酸を脱離させ酸化カルシウム (生石灰) を生成します。

  CaCO3 → CaO + CO2

2. 水和
酸化カルシウムを十分量の水と反応させて、水酸化カルシウム (消石灰) にします。この工程で得られる、水に水酸化カルシウムが分散したスラリーは石灰乳と呼ばれます。

  CaO + H2O → Ca(OH)2

3. 炭酸化
焼成時に発生した炭酸ガスを石灰乳に混合することで、炭酸カルシウムを生成させ、液中に析出させます。

  Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O

4. 乾燥・製品化
炭酸カルシウムを含むスラリーをろ過により固液分離します。炭酸カルシウムのウェットケーキを乾燥炉で乾燥した後、粉砕して軽質炭酸カルシウムの製品が得られます。

2. 沈降炭酸カルシウム

沈降炭酸カルシウムは、軽量炭酸カルシウムと同じ合成炭酸カルシウムの1種で、膠質炭酸カルシウムとも呼ばれています。粒子が微細で脂肪酸系の界面活性剤により粒子表面を修飾されている点が特徴です。この微粒子化と表面処理による効果で、充填剤として使用された際、各種最終製品の性能が向上することから、用途に応じて使い分けられています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/KAG_DET.aspx?joho_no=27123
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0739.html

塩酸

塩酸とは

塩酸 (英: Hydrochloric acid) とは、化学式HClで表される塩化水素の水溶液で、強酸性の無色の液体です。

CAS登録番号は7647-01-0です。塩酸は、塩化水素を水に溶解することで得られます。工業的製法として、食塩水の電解により発生する水素と塩素を反応させ、その際に生じた塩素水素を水に吸収させて塩酸を得るという方法が一般的です。

塩酸は、ヒトを含めたほとんどの動物の胃液の主成分として自然界に存在しています。胃内部を酸性にすることで微生物による感染症を防いだり、タンパク質を消化しやすいように変性したりする役割を担っています。

塩酸の使用用途

塩酸の主な使用用途として、pH調整剤や実験用試薬、食品添加物が挙げられます。また、鋼や鉄の酸洗浄剤としての利用も重要な用途の1つです。

1. pH調整剤

塩酸は強酸であるため、溶液に添加することでその溶液のpHを調整することができます。医薬品や食品の製造工程、排水やプールなどさまざまな分野でpH調整剤として用いられています。

2. 実験用試薬

塩酸は強酸の中では比較的安全で、化学的な安定性も高く、かつ安価であるため実験室で多く使用されている酸性試薬です。

実験室では、pH調整以外にも塩基量を決定するための滴定試薬として使用されています。

3. 食品添加物

食品添加物としてデンプンの糖化やアルカリ性の中和、さらに清酒のもろみの雑菌増殖の防止などに使用されています。厚生労働大臣から「指定添加物」として指定されており、食品添加物として安全性と有効性が確認されています。

4. 鋼や鉄の酸洗浄剤

金属加工に欠かせない酸洗い (酸洗処理) で使用されています。熱処理された金属の表面にはスケール (酸化被膜) や汚れが存在しているので、メッキ加工など表面処理の前には表面を洗浄する必要があります。塩酸以外の酸として、硫酸が用いられることがあります。

5. その他

その他、家庭用クリーニング液やれんがのモルタルの洗浄、イオン交換樹脂の再生、医薬品の製造など、幅広い用途に用いられています。身近な一般生活用品では、トイレ用洗剤に配合されており、黄ばみの原因となる尿石 (カルシウム塩) を除去することができます。

KClO + 2HCl → KCl + H2O + Cl2

塩酸 (HCl水溶液) を含むトイレ用洗剤と、次亜塩素酸カリウム (KClO) 漂白剤などを混合すると人体に有毒な塩素ガス (Cl2) が発生するので注意が必要です。

塩酸の性質

1. 塩酸の濃度

塩酸は強い刺激臭があり、濃塩酸は白煙を発生させます。濃塩酸として市販されているものは35?37 %が一般的であり、10 %を超える塩酸は劇物に指定されています。

塩酸の濃度と密度の関係は次の通りです。(塩化水素の分子量:36.46)

濃度 (質量分率%)

モル濃度 (mol/L)

密度 (20℃) (g/mL)

1

0.28

1.00

5

1.4

1.02

10

2.9

1.05

15

4.4

1.07

20

6.0

1.10

25

7.7

1.12

30

9.5

1.15

35

11.3

1.17

37

12.0

1.18

 

上記表より、1規定塩酸 (1mol/L塩酸) を調製したい場合、濃塩酸を約12倍に希釈することで得られます。(例: 濃塩酸約8.3mLを100mLにする)

2. 塩酸の金属腐食性

塩酸には金属腐食性があり、イオン化傾向が水素よりも高い金属は塩酸によって腐食されます。イオン化傾向が水素よりも高い主な金属は、鉄・亜鉛・アルミニウムなどです。

鉄とニッケルの合金であるステンレスは、組成や使用条件によっては塩酸によって腐食される可能性があります。塩酸の保管の際に推奨される容器の素材には、ガラスやポリエチレンなどがあります。

また、濃塩酸と濃硝酸を体積比3 : 1で混合した溶液は王水と呼ばれ、金や白金など通常では腐食しにくい貴金属を溶解可能です。王水は、化学分析での容器洗浄などに用いられます。

塩酸のその他情報

1. 塩酸の危険性

塩酸の危険性は下記のとおりです。

  • 急性毒性 (経口)
    区分3: 飲み込むと有毒
  • 急性毒性 (吸入)
    区分2: 吸入すると生命に危険
  • 皮膚腐食性/刺激性
    区分1: 重篤な皮膚の薬傷・眼の損傷
  • 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性
    区分1: 重篤な皮膚の薬傷・眼の損傷
  • 呼吸器感作性
    区分1:アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
  • 特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
    区分1 (呼吸器系): 臓器の障害
  • 特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
    区分1 (歯、呼吸器系): 長期にわたる反復ばく露による臓器の障害

塩酸は皮膚や眼に触れると重篤な損傷を与える恐れがあります。使用の際には必ず保護手袋や保護めがねなど、適切な保護具の着用が必要です。塩酸から発生する塩化水素の蒸気は気道に損傷を与える恐れがあるので、局所排気設備の元で使用します。

また、塩酸は歯を腐食します。労働安全衛生法において、「事業者は歯に影響を与える有害物質を取り扱う業務に常時従事する労働者に対し、その業務開始前と6ヶ月に1回、歯科医師による健康診断を行う必要がある」と定められています。

2. 塩酸のグレード

塩酸は食品や医薬品の原料や化学分析など、様々な分野で利用されているため、多様なグレードが販売されている試薬です。

  • 1級
  • 特級、精密分析用
  • ICP分析用、有害金属測定用
  • 電子工業用
  • 医薬品試験用
  • 食品添加物

使用用途によって、求められる純度などが異なってくるので、適切なグレードを選択する必要があります。

塩素

塩素とは

塩素とは、元素記号がClで表されるハロゲン元素です。

一般的に塩素と呼ぶ場合には、塩素の単体である塩素分子 (Cl2) を指すことが多いです。塩素原子は、NaClやMgCl2のような金属の塩として主に存在しています。自然界だけでも1,500種類以上の塩素化合物があります。

工業的には、食塩水や融解塩化物の電気分解によって製造可能です。電気分解によって発生した塩素ガスは、高圧によって液体となり、ボンベやタンクに充填されます。 

塩素の使用用途

塩素は水にかなり溶けやすく、水溶液には漂白作用と殺菌作用があります。この性質を利用して、水道水やプールの消毒、漂白剤などに使われています。ただし、塩素系の漂白剤を酸性の洗剤などと混ぜると有毒な塩素ガスを生じるため、取り扱いには注意が必要です。

塩素化合物は、プラスチック製品、工業部品、医薬品など、幅広い分野で利用されています。化学工業製品の基礎的な原料として、塩素は欠かせない物質です。

主に塩化ナトリウムの形で人体に摂取され、血液や体液の成分として存在します。特に、塩酸は胃酸の構成要素として、消化を促進する役割を担っています。 

塩素の性質

塩素原子は電子親和力が大きいため、イオン化する場合には通常1価の陰イオンになります。常温で塩素分子は刺激臭のある、黄緑色の有毒な気体です。塩素分子の融点は−101°C、沸点は−34.1°Cです。化学的に非常に活発で、多くの物質と反応します。

なお、塩素の原子量は35.45、電子配置は[Ne] 3s2 3p5です。7から−1までの酸化数を取ります。塩素分子の分子量は70.90で、比重は2.49です。塩素分子の結晶構造は斜方晶系です。

塩素のその他情報

1. 地球上に存在する塩素

地球上には天然元素の中で、塩素は18番目に多く存在する元素です。気体、鉱物、イオンのような状態でマントル中に99.6%、地殻中に0.3%、海水中に0.1%含まれています。

地球の質量のおよそ6×1027gに対して、マントルには22×1024g、地殻におよそ60×1021gの塩素が存在すると考えられています。海水の平均塩素濃度は19.354g/kgです。そのため、およそ1.36×108km3の海水のうち、主に塩化ナトリウムの状態で、26×1021gの塩素が存在すると予想されています。

それ以外にも、河川水、湖水、地下水だけでなく、雪氷圏、対流圏、成層圏などにも、あらゆる形で塩素が含まれています。

2. 塩素の化合物

塩化物イオンまたは置換基として塩素を含んでいる化合物は、塩化物や塩素化合物と呼ばれています。塩素を含んだ有機化合物も多く知られており、ほぼすべての元素と塩素は安定な化合物を作ります。

しかし、塩素を含む多くの物質は毒性があり、環境中に放出されても分解されにくいです。焼却時にダイオキシンを生じるため、法令で規制されている化合物も多いです。

3. 塩素の同位体

塩素には、32〜40g/molの同位体が存在します。安定同位体は75.77%含む35Clと24.23%含む37Clの2つです。

環境中には放射性同位体である36Clが、わずかに存在しています。安定同位体に対する36Clの存在比は、およそ7×10-13です。宇宙線中の陽子と36Arの衝突で破砕して36Clが生成しているほか、地表では35Clの中性子捕獲や40Caのミュー粒子捕獲でも36Clが生成します。

36Clの半減期は30万8,000年であり、36Sや36Arに崩壊します。36Clは親水性で、不活性な同位体です。よって36Clは、6万年〜100万年の放射年代測定に役立ちます。その上、1952年〜1958年に実施された大気中核実験で、大量の36Clが海水から生じました。大気中の36Clの残留時間は1週間であり、過去50年間の地下水の年代を知ることも可能です。