アクリロニトリルとは
アクリロニトリル(Acrylonitrile)とは、ANと略される有機化合物で甘いにおいのする無色透明(光に反応し徐々に淡い黄色へ変わる)の液体で、ほとんどの有機溶剤に溶ける(特にエタノールやアセトンには顕著)ことで知られています。アクリルニトリル、シアン化ビニル(vinyl cyanide)とも呼ばれるニトリルの1種です。
アクリロニトリルの構造式
アクリロニトリルの性質表
化学式 | C3H3N |
英語名 | acrylonitrile |
示性式 | CH2=CH-CN |
毒劇法 | 劇物 |
消防法 | 危険物第4類第一石油類非水溶性液体 |
アクリロニトリルは、分子式CH2=CHCN、分子量53.06、融点-83〜-84℃、沸点約78℃、中間体として化学工業界でも重要な物質ですが、毒性や引火性(引火点-1℃)でもあることから消防法の第4類第1石油類、毒物及び劇物取締法により劇物に含まれ、安全衛生法では有害物質表示対象物質などに指定されています。また、光や酸素、アルカリの作用により重合を起こすため、保存には注意が必要です。自然界には存在しない有機化合物で、工業地帯には数ppm程度観測されています。
アクリロニトリルの使用用途
アクリロニトリルは、強酸や強塩基などと活発に重合し、活性な二重結合をもち環状化合物を形成することから、医薬品はじめ染料や塗料などのほか、軽量かつ強度を求められる航空機などでお馴染みの炭素繊維の原料としても使われています。
アクリロニトリルの重合体であるポリアクリロニトリル(PAN)は、アクリル繊維の主成分としてセーターや靴下といったニット製品に使用されています。
また、プラスチック素材としてABS樹脂、AS樹脂などの合成樹脂の原料として使用されています。タイヤ・パッキン・コンベアベルトなどへの合成ゴムの主要原料としても使われています。
アクリロニトリルの反応
主にポリアクリロニトリルなどの重合体を生成するためのモノマーとして反応する。重合以外の反応性として、アクリロニトリルの構造的特徴から、マイケル付加(1,4付加)を受けやすい。そのためシアノエチル化剤として有用です。また、二量化させることでアジポニトリルが得られ、これはナイロンの原料として利用されています。
アクリロニトリルの製造
工業的にはSOHIO Process (ソハイオ法)と呼ばれる、プロピレンを金属酸化物触媒存在下に、アンモニアと酸素を作用させ生産します。アセトニトリル、シアン化水素が副生され、これらも工業製品として利用されています。