炭酸カルシウムとは
炭酸カルシウムとは、化学式CaCO3で表されるアルカリ性の金属炭酸塩の一種です。
炭カルという略称も一般的に用いられています。炭酸カルシウムの毒性は高くはありませんが、粉体状の製品が多いため、取扱いの際に粉じんとして目に入りやすく、粘膜を傷める可能性があるため注意が必要です。
炭酸カルシウムの使用用途
炭酸カルシウムの用途は非常に多岐にわたり、建材やセメントの原料、製紙、プラスチック、ゴム、接着剤、シーラント、塗料分野での充填剤としての用途、食塩などの食品や化粧品などに使われる添加剤、炭酸ガスの製造原料、その他様々な用途に使用されています。
炭酸カルシウムは、純水にはほとんど溶解しませんが、酸性の水溶液に少し溶解します。このため、農業分野では酸性土壌を中和するため、土壌改良材として使用されることもあります。医療分野では胃酸過多に対する制酸剤として使われます。農業用としては、不純物が比較的多く含まれる炭酸カルシウムが用いられています。
植物や生物への影響が小さいため、植物が生えているエリアにも使用できる融雪剤としても利用されます。
また研磨作用を利用し消しゴムや歯みがき粉にも配合されています。
炭酸カルシウムの性質
炭酸カルシウムは分子量が100.09、比重2.6、屈折率が1.49~1.66の無臭の白色粉末です。
炭酸カルシウムは結晶学的には、六方晶系のカルサイト結晶 (方解石) と斜方晶系のアラゴナイト結晶、バテライト結晶が存在します。炭酸カルシウムの主な原料は石灰石であり、天然に産出する石灰石の多くはカルサイト結晶からなっています。
炭酸カルシウムは炭酸ガスを含む水にはわずかに溶解して炭酸水素カルシウム (重炭酸カルシウム) になります。また塩酸や硫酸といった酸には溶解します。
炭酸カルシウムの種類
炭酸カルシウムには、産業製品として重質炭酸カルシウムと軽質炭酸カルシウムの2種類があります。
重質炭酸カルシウムは、石灰石を微粉砕して分級したもので、天然炭酸カルシウムともいいます。
軽質炭酸カルシウムは、粉砕した石灰石を一度脱炭酸し酸化カルシウムにしてから、炭酸ガスと反応させて再び炭酸カルシウムを生成させて作るもので、合成炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウムとも呼ばれます。
炭酸カルシウムは他にも、貝類を湿式粉砕したものも使用されており、これを胡粉 (ごふん) といいます。
炭酸カルシウムのその他情報
1. 炭酸カルシウムの製造方法
炭酸カルシウムは、石灰石の粉砕と分級のみで製造される重質炭酸カルシウムと、合成により製造される軽質炭酸カルシウムの2種類あります。軽質炭酸カルシウムの製造方法を反応式とともに以下に説明します。
1. 焼成
粉砕した石灰石を高温で焼成することで、石灰石から炭酸を脱離させ酸化カルシウム (生石灰) を生成します。
CaCO3 → CaO + CO2
2. 水和
酸化カルシウムを十分量の水と反応させて、水酸化カルシウム (消石灰) にします。この工程で得られる、水に水酸化カルシウムが分散したスラリーは石灰乳と呼ばれます。
CaO + H2O → Ca(OH)2
3. 炭酸化
焼成時に発生した炭酸ガスを石灰乳に混合することで、炭酸カルシウムを生成させ、液中に析出させます。
Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O
4. 乾燥・製品化
炭酸カルシウムを含むスラリーをろ過により固液分離します。炭酸カルシウムのウェットケーキを乾燥炉で乾燥した後、粉砕して軽質炭酸カルシウムの製品が得られます。
2. 沈降炭酸カルシウム
沈降炭酸カルシウムは、軽量炭酸カルシウムと同じ合成炭酸カルシウムの1種で、膠質炭酸カルシウムとも呼ばれています。粒子が微細で脂肪酸系の界面活性剤により粒子表面を修飾されている点が特徴です。この微粒子化と表面処理による効果で、充填剤として使用された際、各種最終製品の性能が向上することから、用途に応じて使い分けられています。
参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/KAG_DET.aspx?joho_no=27123
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0739.html