浸漬試験

浸漬試験とは

浸漬試験とは、試験サンプルが水または他の液体に浸漬されたときにどの程度試験サンプルの機能が持続するかを評価する試験のことです。

浸漬試験では、試験サンプルの隙間から水分が侵入した際の耐水性だけでなく、圧力が急激に変化した際の耐圧性や、腐食性のある物質に対する耐性についても確認できます。

目的に応じて浸漬させる液体の種類や量、温度などが異なるため、精査して試験を実施する必要があります。

浸漬試験の使用用途

浸漬試験の中には大きく分けて2つの目的があります。

1. 耐水性の確認

自動車部品など水分がかかる場所で使用される部品について不具合が生じないかを確認するために浸漬試験を使用することが多いです。

2. 液体内の成分による耐食性の確認

酸・アルカリ・油分など様々な液体に接触した際、腐食する可能性がある金属やゴムなどの耐食性を確認する際に浸漬試験を使用することが多いです。

浸漬試験の原理

耐食性を確認する浸漬試験では、どの程度試験片が腐食したかを確認するため、試験の前後で試験片の重量を測定することで評価を行います。目視で確認できるレベルでの腐食についても確認することが多いです。

このような浸漬試験では、試験液の選定と浸漬の条件を決めることが最大のポイントです。日本産業規格 (JIS) でも試験温度や浸漬期間などは反映したいものに合わせて適切なものを選定できるようになっています。また、経時的に腐食度合いを確認することで腐食速度も確認が可能なので品質保証期間などの参考にもできる可能性もあります。

摩耗試験

摩耗試験とは

摩耗試験

摩耗試験とは、さまざまな工業製品で発生する摩耗現象を把握するために、試験片を使って焼付きの発生の有無、摩耗が進行していく様子や、摩耗量などを評価する試験です。

摩擦試験では、ピンやボールなどの試験片を一定の荷重かつ一定の速度で動かし続け、その際に発生する摩擦力や所定時間経過後の摩擦量を評価します。工業製品には、部品同士が擦れ合う部分が多く存在します。このような部分において焼付きが発生すると、部品同士が固着して摩耗量が大きくなり、部品が正しく機能しなくなるため、対策が必要です。

また、摩耗現象は同じ部品同士の組み合わせであっても、条件によって摩耗量も大きく異なります。そのため、様々な摩擦が起こる条件を再現できる摩耗試験を実施し、摩擦力や摩擦量を計測します。

摩耗試験の使用用途

摩擦試験は、さまざまな工業製品の開発過程で行われます。主に金属部品同士が接触して擦れ合う部分は、その製品がどのくらい使用できるのかという耐久性に関わります。開発する製品が目標とする使用期間において、求められる機能の維持力を確認する手段として、摩擦試験は大切な評価方法です。

また、摩擦試験は市場で不具合を起こした原因を調査する目的でも行われます。摩耗現象はとても複雑で、同じ材質同士であっても、使われる温度や接触する荷重の大きさ、荷重変動の有無、さらに潤滑油の存在によっても影響も考慮しなければなりません。

市場で予期せぬ摩耗が発生した際に、さまざまな条件で摩耗試験を行うことによって、摩耗が促進した要因を調査する場合もあります。

摩耗試験の原理

摩耗試験の多くは、2つの試験片同士に荷重を与えながら接触させ、相対運動させることによって、焼付きの有無を確認したり、時間の経過とともに摩耗量を測定したりします。また、JISなどの工業規格では、試験方法によって試験片の形状などが決められています。

前述した通り、摩耗現象は複雑であるため、温度や湿度、潤滑油の有無、潤滑油の種類、潤滑量なども影響も考慮しなければなりません。試験片以外の条件についても、製品に求められる環境で評価できるような試験条件を考える必要があります。

摩耗試験の種類

摩耗試験はJISなどの工業規格でも規定されています。代表的な試験方法は、以下の5つです。

1. ピンオンディスク式 / ボールオンディスク式

固定されたディスク状の試験片にピン (ホール) を押し付けた状態で、回転摺動または水平方向に往復摺動させ、摩擦係数や試験後の摩耗量を測定します。ボールオンディスク式は点接触から試験が始まるので、試験片同士の当たりが出やすい反面、ボールが摩耗すると接触面積が増え、試験中の荷重が同じでも接触面の面圧は低下してしまいます。

2. リングオンディスク式 / スラストシリンダー式

中空円筒型の試験片を平板型試験片に押し付けて回転させ、摩耗量を測定します。前述のボールオンディスク式のような、試験の進行による面圧変化は起こりません。日本では鈴木式と呼ばれる試験方法で、プラスチック系材料の試験方法としてJIS K 7218で規定されています。

3. ブロックオンリング式

中空円筒の試験片の側面にブロック状の試験片を押し付けて回転させ、摩擦量や動摩擦係数を測定します。試験開始時に試験片同士は線接触していますが、摩耗が進行すると接触面積が大きくなり、接触面圧は低下していきます。

4. 四球式 / 曽根式 / シェル式

同じ大きさの球を4個ピラミッド型に積み上げ、一番上の球を回転球として押し付けながら回転させることで、摩耗痕径を測定します。主に潤滑条件での焼き付き特性評価に用いられます。曽根式試験では3/4インチの鋼球を使い、シェル式では1/2インチの鋼球を使います。

5. ピン・ブロック式

棒状の試験片の両側をブロックで挟み、棒を回転させることで摩耗状態を測定します。主に潤滑条件における焼付き特性評価に用いられます。

振動試験

振動試験とは

振動試験とは、製品や部品が振動に耐えるかどうかを確認するために行われる試験です。

製品や部品に振動を与え、その振動に対する応答を観察し、性能や耐久性を評価します。この試験は、電子機器の部品だけでなく、構造に関する部品に対しても行われます。確認する項目は、振動による動作の不具合やねじのゆるみ、共振の有無、折損が発生する可能性の有無などです。

自動車などの機械をはじめ、スマートフォンなどの電子機器に至るまで、さまざま業界で振動試験が適用されます。電子部品などの製品は、振動が加わる場所に使用されていることも多く、振動により内部部品ねじのゆるみや割れ、回路の折損などが生じる場合があります。

そのため、振動が起きる環境でも正しく作動させる製品を作る際に振動試験を行います。振動試験とは、製品の品質向上や信頼性の確保に不可欠な試験です。

振動試験の使用用途

図1. 振動試験を実施する製品や対象部品の例

振動試験は、自身が振動する機械 (自動車や航空宇宙産業) 、土木、電子機器に至るまで、幅広い業界で実施されます。自身が振動する機械やそれに装備される部品だけでなく、自身が振動しない製品に対してもこの試験が行われる背景には、輸送時や使用時に受ける振動を考慮しているためです。

1. 自動車

自動車では、構造部品の耐久性・信頼性が重要です。自動車が走っている時は、エンジンによって車体の各部が絶えず振動しています。

振動が激しく中の部品に不具合が出てしまうと車自体が故障し身の安全が守られなくなる可能性があります。

2. スマーフォン

スマートフォンなど、リチウムイオンバッテリを内蔵する電子機器で最も懸念されるものは火災です。これらの電子機器は、輸送時・携帯時に振動を受けます。

振動により、リチウムイオンバッテリの内部回路に不具合が発生した場合、火災発生の可能性につながります。

振動試験の原理

図2. 振動試験の実施

振動試験は、製品に対して垂直方向の振動と水平方向の振動の両方を評価します。加振台の上に試験サンプルを設置し、加振機によって振動を発生させます。

加振機とは、特定の振動パターンや周波数で物体を振動させるための機械です。振動の条件には、周波数、加速度、計測時間などさまざまなパラメータが存在します。振動の条件は、各製品によって受ける振動が異なるためさまざまです。

振動を受ける部品のうち主な製品 (鉄道や自動車に搭載される製品、輸送される製品など) は、それぞれの環境を想定した試験条件が記載されたJIS規格を参考にすることが推奨されます。振動の種類も数種類あるため、精査しながら試験を行います。

振動試験の種類

図3. 振動試験に用いる波形の例

1. スポット試験

スポット試験は、正弦波を用いた試験です。使用環境で発生する周波数が明確な場合に使用されます。

2. 掃引試験

掃引試験では、連続的に周波数を変化させていきます。あらかじめ変化させる周波数の上限と下限を決めておき、計測が開始されます。

ここで確認するものは、対象となる周波数域において、製品が内包する部品の閾値を超えていないか、または想定される使用環境下における共振の有無などです。

3. ランダム振動試験

ランダム振動試験では、周波数や振幅を指定しません。さまざまな振動をランダムに与えます。この試験では、新製品自身や、部品搭載時の実際の振動に近いとされ、信頼性評価に活用されます。

4. 実機振動試験

あらかじめ計測した実際環境の波形をパターン化したものを使用した試験です。製品・部品の信頼性の評価や不具合が発生した場合の再現などに活用されます。

5. 衝撃試験

一般的には、瞬間的に大きな振幅・加速度が発生するような衝撃が対象です。パルス波形を供試品に加えます。耐衝撃性の評価に活用されます。

振動試験のその他情報

振動試験の主な目的

1. 製品耐久性の評価
例えば自動車部品、航空機部品、電子機器などの製品は、運用中に振動にさらされることがあります。振動試験によって、これらの製品が長期間にわたって正常に機能することが確認されます。

2. 製品の信頼性評価
製品の信頼性をテストし、設計上の欠陥や問題を特定するのに活用します。これにより、不具合の早期発見と修正が可能となり、製品の信頼性向上に寄与しています。

3. 品質管理
振動試験は品質管理の一環としても使用されます。製品の一部として提供される部品や材料の品質を確保するために、振動試験が行われます。これにより、不良品の供給を防ぎ、高品質の製品を提供できます。

慢性毒性試験

慢性毒性試験とは

慢性毒性試験とは、試験物質を試験動物に長期間繰り返し投与することで試験動物に起こる生態的な変化を確認し、生物に対して毒性の有無を確認するための試験のことです。

毒性は、与の量によって毒性の有無が分かれることが多いため、どの基準ラインからが毒性の影響があったかを確認するために投与量を分けて試験を行うことが多いです。試験生物の各器官から血液まで細部にわたり観察を行うため、信用性が高いです。

慢性毒性試験の使用用途

慢性毒性試験は試験動物の各器官や血液のような細部まで生態的変化が起こっていないか確認するため、医学的な面からみても信用度がかなり高いです。

医薬品や食品の安全性を確認する上で必要な試験項目となっています。食品添加物などに対しても安全性を確認するために実施されていることが多いです。

慢性毒性試験の原理

慢性毒性試験にはラットやマウスのような各器官の作りがヒトに類似している動物が使用されます。ラットやマウスは寿命も短いため短期間で一生かけての毒性を早く確認することも可能です。

確実に毒性が確認できる用量、全く毒性が確認されない用量、毒性を確認したい用量の少なくとも3種を投与群とし、さらに試験物質を投与しない群を用意し半年以上試験を実施します。

半年間以上の投与期間については、定期的に外見、体重、摂餌量、飲水量、血液検査、尿検査などを行い身体的な変化について観察していきます。また、投与期間終了後は各器官などに外的変化、生態的変化が起きていないかをそれぞれ確認してきます。

他にも途中で死亡が確認された場合などはどこに毒性が出たかや毒性の程度を測定しその後の用量変化の推測などに使用されます。

屈曲試験

屈曲試験とは

屈曲試験とは、ロボットケーブル光ファイバケーブルなど、曲げ回数が増えるごとに材質自体が劣化しそうな製品に対し、あえて繰り返し曲げを加えることで耐久性を確認する試験のことです。

ケーブルや電線など細長いものに関しては、ケーブル自体の重みで線が曲がったり、配線の過程で曲げを加えてしまったりすることがあります。曲げに対して耐久性が弱いと、断線を起こす危険があるため、屈曲試験が必要です。

屈曲試験は別名折り曲げ試験と呼ばれ、曲げ試験の一種です。曲げ試験には、支点が2つで作用点が1つの3点試験、支点が2つで作用点が2つの4点試験があります。ケーブルが配線で曲がる過程では、3点試験と同じ状況であるため、主に3点試験が使用されます。

しかし、ケーブルの耐久性を調べるにあたり、3点試験と4点試験を使い分けることもあるため、目的に応じた試験方法を選ぶことが大切です。

屈曲試験の使用用途

屈曲試験は、電源のケーブルや配線器具などを曲げてケーブルの耐久性を調べるために使用されます。屈曲試験では様々な方向に曲げた際の耐久性を確認し、ケーブルが所期の耐久性を有しているのかを調べるのが目的です。

ケーブルは、製品に応じて曲がる方向なども異なります。そのため、曲げる方向やねじりに応じて試験方法も異なり、それぞれの製品によって試験内容がカスタマイズされています。例えば、屈曲試験では3点試験や4点試験が使用されます。また、ねじりによる外力の耐久性を調べるために、ねじり試験を使用する場合もあります。

通常、電線やケーブルなどに使用することが多いですが、その他にも伸び縮みの激しいゴム製品や、薄い光学フィルムなどに割れやちぎれがないかを確認する目的で使用されることも多いです。

屈曲試験の原理

屈曲試験は、ケーブル状のようなものを治具を使って強制的に曲げることで成り立ちます。通常、Rがついたマンドレルと呼ばれる治具の間にケーブルを挟み込み屈曲させます。治具による試験は、曲げ試験の3点試験の原理と同じです。

Rの数値が異なる治具を使用することによって、曲げたい角度などを設定することが可能です。曲げ操作を繰り返し、耐久性を確認することが目的です。屈曲試験は、治具のRの曲面に沿って試験サンプルを曲げるような試験方法になるので、正しい耐久性を評価するためには治具選びも重要になってきます。

また、屈曲試験と併用してケーブル状のものの耐久性を評価する試験が捻回試験やU字折り返し試験です。屈曲試験同様、試験サンプルに対し強制的にねじりや折り返しをすることで耐久性を確認していきます。捻回試験やU字折り返し試験などを総称して耐久試験と呼ばれ、試験サンプルの使用用途や加工工程によって必要な項目が変わってきます。

屈曲試験のその他情報

その他試験方法

屈曲試験では、曲げ試験とは別に捻回試験やU字折り返し試験が必要です。また、曲げ試験の3点試験と同様の原理による試験機もあります。

試験方法ごとによって評価する現象も変わります。例えば、捻回試験はねじりの現象を評価し、U字折り返し試験は曲げの現象を評価します。

1. 捻回試験
捻回試験は、ケーブルがねじれた場合の耐久性を調べる試験です。耐久試験機にケーブルをセットし、治具でケーブルの両端を支えた後に、ケーブルに曲げを加えます。

2. U字折り返し試験
U字折り返し試験は、曲げたケーブルの上部に治具を添えて、外力を加える試験です。並列にケーブルを並べて、多くのケーブルを一度に試験できる試験機もあります。

3. 3点試験
3点試験は、試験片である材料の両端を支えて中央に外力を加える試験です。両端で2点、中央で1点の計3点に外力が加わることから、3点試験と呼ばれています。

3点試験は、材料の曲げ加工に似た外力を加えるため、曲げ加工を行うのに適した材料かを調べるのが目的です。ケーブルの耐久性を調べる屈曲試験では、試験機の両端を治具で支え、中央に外力を加えることで成り立つのです。

塩水噴霧試験

塩水噴霧試験とは

塩水噴霧試験とは、金属材料またはめっき皮膜・塗装皮膜を施した部品などを、塩分を多く含んだ雰囲気中に放置し加速腐食させることによって、製品の耐食性を評価する試験です。

自然環境下で年単位の長期間にわたって維持されるべき機能を、時間単位で評価します。沿岸部の地域では、潮風にのって飛んでくる海塩粒子によって、また雪が降る地域では、道路の凍結を防ぐために撒かれる塩化カルシウムによって、錆が発生しやすくなります。このような条件下でも、製品が錆によって使用できなくなることがないよう、耐食性を確認するために行われるのが塩水噴霧試験です。

この塩水噴霧試験は、JISと呼ばれる日本産業規格や、ISOや海外各国の規格、自動車製造会社の規格などによって、その試験法や試験装置、判定の基準などが定められています。また、塩水噴霧試験は、SST (Salt Spray Test) と呼ばれることもあります。

塩水噴霧試験の使用用途

塩水噴霧試験は、自然環境下での金属材料の腐食に対する耐久性を評価するために行われます。屋外で長期にわたって使用される金属製品において、錆の発生に関する品質を確認することが目的です。

具体的には、自動車や建築資材、またはこれら部品に施されるめっきや塗装を耐食性評価する際に採用されています。自動車部品の場合、特にメンテナンスで緩めたり締め付けたりする部分に使われているねじや鋼板でできたオイルパンなどは、高い耐食性が必要です。製品だけでなく、めっきや塗料の腐食に対する耐久性評価にも、塩水噴霧試験が行われます。

塩水噴霧試験の原理

塩水噴霧試験は、専用の塩水噴霧試験機を用います。塩水噴霧試験装置は、一定の温度を保ちながら、塩分を含んだ溶液を決められた量で噴霧し続け、試験室内を腐食が進行しやすい環境に保ち続けます。

この試験室内に試験片や試験対象の部品などを放置して、腐食が進行していく様子を観察します。試験開始から、あらかじめ決めておいた時間で試験対象を取り出し、腐食によって減量した質量を測定したり、目視での物理的破壊の確認をしたりすることで、試験対象物の耐食性を確認します。

塩水噴霧試験は、ISOやJISといった工業規格などに基づいて実施されます。代表的な試験規格は、以下の通りです。

  • ISO 9227:2017 Corrosion tests in artificial atmospheres – Salt spray tests
  • JIS Z 2371:2015 塩水噴霧試験方法
  • JIS H 8502:1999 めっきの耐食性試験方法
  • JIS K 5600-7:2014 塗料一般試験方法-第7部:塗膜の長期耐久性

塩水噴霧試験のその他情報

1. 塩水噴霧試験の相当時間

塩水噴霧試験は、めっきや塗装、工業製品などが製品として使われる日常環境において、錆の発生を抑えるための品質を確認する際に行われます。年単位で求められる耐食性を、時間単位で評価するための加速試験の一つです。しかし、各種工業規格では、自然環境と試験環境との相関については規定していません。

塩水噴霧試験の試験時間が、自然環境のどのくらいの経過時間に相当するのかという相関については、各製品の製造メーカーが、独自に基準を定めて運用しています。試験の方法や条件は各種工業規格に則り、規定された条件下での評価時間は、それぞれの会社や業界が定めています。

2. 塩水噴霧試験以外の試験

塩水噴霧試験装置では、製品使用時の「塩分を含む環境」や「塩水を含む環境における温湿度変化」についても、再現が可能です。これによって、実使用で起こりうる腐食について確認したり、部品故障時の再現したりする際に役立ちます。

また、塩水噴霧試験と似た試験も、いくつか存在します。具体的には、塩水噴霧試験とサイクル試験を組み合わせた塩水複合サイクル試験や、塩水の代わりに塩水に塩化銅を添加した溶液を噴霧するキャス試験などです。確認したい事象や試験対象の素材に応じて、いくつか組み合わせて試験する方法もあります。

プレッシャークッカー試験

プレッシャークッカー試験とは

プレッシャークッカー試験とは、100℃以上かつ高湿な条件下に電子製品などを設置し耐湿性を評価するための試験のことです。

電子製品が置かれる通常の環境よりもさらに高温かつ高湿な条件で試験を実施するため、試験槽内の水蒸気圧力が試験サンプルの内部の水蒸気分圧よりかなり高い状態になります。

そのため試験サンプルである電子製品の中により短期的に水分の侵入を可能にし、耐湿性を確認する上でも加速試験として使用できます。

プレッシャークッカー試験の使用用途

プレッシャークッカー試験では高温高湿な条件下での電子製品内への水分の侵入が確認できます。

電子製品などは基板部分が樹脂などで覆われていることが多いですが、高湿環境下で電子製品内に水分が侵入すると、中の絶縁抵抗特性やアルミの腐食へ影響を与えかねません。そのため電子製品においては、湿度に関しての耐久性が求められます。湿度ストレスに関する加速試験が可能なため、電子部品などを出荷する際の試験項目に入っていることが多いです。

プレッシャークッカー試験の原理

プレッシャークッカー試験では100℃以上かつ高湿度の条件に設定する必要があるため専用の装置が必要です。

まず、試験槽で温度や湿度、圧力を設定することで行いたい試験条件を作ります。決められた時間試験サンプルを設置し、その後プリント配線板の絶縁劣化などいくつかの項目を確認していきます。

プレッシャークッカー試験の種類

1. 不飽和プレッシャークッカー試験

不飽和プレッシャークッカー試験は、湿度85%の環境下で行われます。電子機器関連の製品において環境試験の1つとして定められており、国際規格でもその基準などが規定されているものです。

2. 飽和プレッシャークッカー試験

飽和プレッシャークッカー試験は、湿度100%の環境下で行われます。不飽和プレッシャークッカー試験に対して湿度がより高いため、極端に試験サンプル内の水蒸気圧を高めることができ、水分の侵入を加速できるので加速試験として使用されています。

ヒートサイクル試験

ヒートサイクル試験とは

ヒートサイクル試験とは、試験したい製品を高温・低温環境下に繰り返してさらし続けることにより、製品が物理的または機械的に、どのように変化するかを確認する試験です。

製品の熱ストレスによる、耐久性評価実験の一つです。一般的にヒートサイクル試験では、実際の製品の使用環境よりも早い時間で温度変化を与えます。

早い時間での温度変化を与えることによって、温度変化に対する製品の劣化速度を早め、製品の耐久性を短期間に実験評価する、加速試験として行われます。

ヒートサイクル試験の使用用途

ヒートサイクル試験は、樹脂製品など熱膨張係数が大きい製品の耐久性評価として行われる場合が多いです。また、単一の材料ではなく、複数の材料が組み合わさったり、接合されたりしている製品に対しても行われます。接合にはフィルムのような、他の部品の表面に貼り付けられた製品も含まれます。

異なった材料であれば熱膨張係数も異なり、温度変化によって両者の接合部分には負荷が発生します。熱膨張差による接合部の負荷が繰り返されると、製品の寸法変化、亀裂の発生、接合されているものであれば剥がれなどの不具合が予想されます。また、ヒートサイクル試験は、電子部品や半導体の品質確認としても必要な試験です。

電子部品や半導体には、さまざまな物質が使われており、それぞれ熱膨張係数は異なります。それぞれが異なった熱膨張を繰り返すことによる品質への影響について確認、評価を行うために、ヒートサイクル試験は実施されます。

その他、製品の開発途中ではなく、市場で発生してしまった不具合の解析のために行われる場合もあります。不具合の原因が温度変化の繰り返しであると想定された場合に、ヒートサイクル試験を行うことによって、原因調査から推定した仮説を検証することが可能です。

ヒートサイクル試験の原理

ヒートサイクル試験は、温度を管理できる恒温層を用いて行います。試験条件として定めた高温側の温度、低温側の温度、それぞれの保持時間、温度変化させる速度 (温度が変化していく時間) 、繰り返しの回数などを恒温層に設定します。

また、試験が正常に行われたことを確認するためにも、温度変化は試験履歴として記録しておくべきです。試験中は、定期的に試験品を確認する場合もあります。

例えば、樹脂製品であれば「亀裂などの異常が発生していないか?」「加飾のために製品表面に貼られたフィルムなどにシワが発生していたり、剥がれが生じていないか?」など、外観の異常の有無を確認することが大切です。

ヒートサイクル試験のその他情報

1. ヒートサイクル試験の規格

ヒートサイクル試験に関する規格としては、JIS C 60068-2-30 温湿度サイクル試験などが挙げられます。この試験は主に高湿度環境下において、温度変化が繰り返された場合の製品への影響について確認する試験です。

高湿度下におけるヒートサイクルによって、製品の熱膨張、熱収縮の繰り返しに加えて、結露の繰り返しの発生による影響も確認することになります。また、JIS C 60068-2-38 温湿度組み合わせ (サイクル) 試験も、ヒートサイクルを含んだ試験です。

こちらの試験はJIS C 60082-2-38よりも、以下の点が厳しくなっています。

  • 評価時間における温度の上昇下降の回数が多い
  • 温度変化の幅が大きい
  • 温度変化の速度が速い
  • 温度条件に0度以下の温度も含まれる

比較的サイズが小さく、体積も少ない試験品に対して多く実施される試験です。

2. ヒートサイクル試験に類似した試験

ヒートサイクル試験は、環境に対する加速試験の一つです。ヒートサイクル試験以外にも、温度環境に関する試験があります。それぞれの試験の特徴を理解し、適切な試験を選択することが大切です。

例えば、熱衝撃試験 (ヒートショック試験) はヒートサイクル試験よりも、急激な温度変化による品質への影響を確認する試験です。高温から低温、低温から高温への温度変化を、非常に短時間で与えます。

急激な温度環境の変化で使われる電子部品、熱膨張係数が異なる材料が接合された部品におけるクラックの発生評価、はんだの接合強度の経時変化などを評価します。

スクリーニング試験

スクリーニング試験とは

スクリーニング試験とは、製品や薬品などのふるい分けを実施し、優先的に詳細な試験をするべきサンプルを選り分けることです。

スクリーニング試験は、新生児の潜在的な病気のリスクや医薬品開発、物質の毒性、半導体の初期不良品や欠陥品の選別などに使われています。

スクリーニング試験の使用用途

スクリーニング試験は半導体や部品、医薬品の開発、物質の有害性試験など幅広く使用されています。

1. 半導体の初期不良排除

特に半導体など精密性の高い電子部品では、構造が複雑で、故障の原因が複数あるためスクリーニング試験の項目も多岐にわたります。

封止前外観、赤外線、X線、高温放置、温度サイクル、熱衝撃、定加速度、など15項目以上のスクリーニング試験を経て合格した商品のみが製品として出荷されています。実施方法ごとにスクリーニング試験は、以下のように3つの方法に分類されます。

  1. 顕微鏡での検査や外観検査といった目視スクリーニング
  2. 電気特性やバーンインなどの検査を行う電気的スクリーニング
  3. 温度サイクル試験などを行う環境ストレススクリーニング

2. 医薬品の初期開発

医薬品の開発では、膨大な数の化合物の中から医薬品として使用できる物質を選び出す際にスクリーニング試験を実施します。この場合のスクリーニングは、複数の分析方法で医薬品の候補としてあげられた化合物の性質を評価し、新規医薬品として有効な化合物を選択する作業です。

これまでに開発されてきた医薬品の多くは、生体の以下の場所に対して、増強させるか抑えるかの働きをしています。

  • 伝達に関わる受容体
  • 酵素に働きかける
  • イオンチャネル
  • 特定の蛋白質

スクリーニング試験では、受容体や酵素、イオンチャネル、トランスポーターなどに対しての作用を確認し、医薬品として有効な物質を抽出します。

3. 化学物質のリスク判断

化審法 (化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律) では、有害性のある物質を抽出するために、スクリーニング試験が実施されます。化審法は、「人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息・生育に支障を及ぼすおそれがある化学物質による環境の汚染を防止することを目的とする」法律です。これにしたがって、一般の化学物質は、以下のリスクを調べるためにスクリーニング試験を行います。

  • 環境汚染へのリスクがないか
  • 人や動物、植物に対して毒性がないか
  • 残留のおそれはないか
  • 爆発や発火のおそれはないか

スクリーニング試験で、リスクがないとはいえない化学物質を絞り込みます。その結果によっては、厚生労働大臣、経済産業大臣、環境大臣によって、化審法第2条第5項の優先評価化学物質に指定されます。

優先評価化学物質とは

  • 第二種特定化学物質の有害性要件 (人又は生活環境動植物への長期毒性) に該当しないと、いままでの知見から明らかにできない化学物質
  • 得られている知見及び製造、輸入等の状況から、環境汚染による人又は生活環境動植物へのリスクがないと、判断できない化学物質
  • 環境の汚染により人の健康に係る被害又は生活環境動植物の生息もしくは生育に係る被害を生ずるおそれがあるかどうかについての評価 (リスク評価) を優先的に行う必要がある化学物質

4. アレルギー表示の初期判断

アレルギー物質の食品表示の判断にもスクリーニング試験が必要です。厚生労働省によると、食物アレルギー体質をもつ方の正確な人数は把握できていません。

しかし、全人口の1~2% (が何らかの食物アレルギーを持っていると考えられています。食物アレルギーの表示は、食品表示法に基づく食品表示基準に規定されている制度です。食物アレルギー患者が、不適切な表示がおこなわれた食品を食べた場合、重篤であれば命の危険さえあります。そのため消費者庁により、加工食品の食物アレルギー表示が義務付けられています。

この表示が妥当かどうかの検証にスクリーニング試験が用いられています。具体的には食品に対して、2種類検査特性の異なるスクリーニング試験を実施し、食品アレルギー表示の有無によって表示の検証を実施します。

5. 衛星やロケットなどの部品

衛星やロケット、国際宇宙ステーションに使用する部品は、失敗を防ぐため各種の信頼性試験やスクリーニングが必要とされています。そのために、JAXA部品認定制度やアメリカ軍が独自に作成した軍仕様書の「MIL規格」など、スクリーニング試験の方法が定められています。

スクリーニング試験の原理

スクリーニングとは、日本語で「ふるい分け」を意味する言葉です。医学的・化学的な検査・実験による選別やその選別検査そのものを指します。

欠陥や病気などの検査には、負担が大きく費用がかかる場合があります。この際、全数にスクリーニング試験を実施して、リスクの可能性があるものを抽出する方法をとります。

前述したとおり、スクリーニング試験には目視スクリーニング、電気的スクリーニング、環境ストレススクリーニングの3があるため、対象や環境などを考慮した上で使い分けることが大切です。

スクリーニング試験の特徴

スクリーニング試験の目的は、比較的簡易な方法を使って、リスクの可能性を見極めることです。金銭的、肉体的負担の少ない方法で、対応の必要な検体を100%取りこぼさないために、問題がなくてもふるい分けされてしまう検体も発生します。

そのため、スクリーニング検査の結果が陽性や不適であっても、詳細な検査を実施すると問題がない場合もあります。

ローダウンジャッキ

ローダウンジャッキとは

ローダウンジャッキ

ローダウンジャッキとは、主に自動車のメンテナンスに使用する「フロアジャッキ」の一種です。

車高を低くするように改造したローダウン車やスポーツカー、社外エアロパーツを取り付けている車など、地面と車体の隙間が少なく、ジャッキアップポイントへアクセスしにくい車に対して使用します。車体を持ち上げるためのアーム部分が全体的に平たく作られており、車高が低く地面と車体の隙間が少ない場合でも、ジャッキが隙間へ入りやすいです。

また、一般的なフロアジャッキよりも奥まった場所にジャッキアップしやすくなっている反面、アーム部分が平たくなっている影響でジャッキアップ時の最大高さが低いという特徴があります。

ローダウンジャッキの使用用途

ローダウンジャッキは、主に自動車のタイヤ交換やオイル交換をする際、車体を持ち上げるために使用されます。

車体を持ち上げるために油圧の力を利用しており、ローダウンジャッキは一般的なフロアジャッキよりも車体を持ち上げるためのアーム部分が平たく低床設計になっているのが特徴です。ローダウンを施した車高の低い車やスポーツカー、社外エアロパーツを取り付けたことにより車体と地面の隙間が少なくなってしまった車のメンテナンスに使用することができます。

また、持ち運びがしやすいように簡単に分解できるものや専用のキャリーバッグなどが付属しているものもあり、サーキット場や出張など出先でメンテナンスをする際にも使用されます。

ローダウンジャッキの特徴

ローダウンジャッキは、通常のフロアジャッキと比べて、ジャッキアップ時に車体を持ち上げるためのアーム部分が平たく薄い形状になっています。そのため、地面と車体の隙間が少ない車に対しても、ジャッキアップポイントへアクセス可能です。

  • 通常のフロアジャッキ必要隙:最低位135mm程度〜
  • ローダウンジャッキ必要隙:最低位80mm程度〜

製品によって多少差異はありますが、通常のフロアジャッキの場合は地面と車体の隙間は最低でも135mm以上必要です。それに対して、ローダウンジャッキは80mm程度の隙間から対応できます。

そのため、車両のサスペンション部分を改造して意図的に車高を低くしたローダウン車や、社外エアロパーツを取り付けたことで地面と車体の隙間が少なくなってしまっている車でも干渉すること無く、ジャッキアップによるメンテナンスが可能です。

ジャッキの選び方

ジャッキを選ぶ際は、「最大耐荷重」「最低位高さ」「最高位高さ」「ジャッキの駆動方式」を確認する必要があります。

1. 最大耐荷重

ジャッキで持ち上げることができる最大の重量です。この重量以上を持ち上げようとすると、最悪の場合ジャッキが破損しジャッキアップ中の車が突然落ちてきたりする可能性があります。

特にミニバンやSUVの場合は、大型の車両や重量の重い車両が多いため注意が必要です。車検証に車両重量が記載されているため、最大耐荷重は余裕を持って選ぶことをおすすめします。

2. 最低位高さ・最高位高さ

ジャッキで対応が可能な地面と車体の低さ (最低位高さ) とジャッキで最大まで車体を持ち上げたときの高さ (最高位高さ) を確認する必要があります。最低位高さである地面と車体の低さはジャッキを使うための隙間があるかどうかということになりますが、最大まで車体を持ち上げたときの最高位高さにも注意しましょう。

ジャッキを使ってジャッキアップしたところ、車体がほとんど持ち上がっていないのにジャッキの最高位高さに達してしまい作業ができないケースが起こってしまう場合があります。特に標準車高が高いSUVで起きるケースが多いです。

3. ジャッキの駆動方式

ジャッキの駆動方式は、大きくわけて4種類があります。

  • 手動式
  • 油圧式
  • 電動式
  • エアー式

ジャッキの性能的な差はほとんどありませんが、それぞれジャッキを上げ下げする際の使い勝手が違うため、予算や使用頻度と照らし合わせてどの駆動方式にするのか検討するようにして下さい。

ローダウンジャッキのその他情報

ジャッキ使用時の注意点

ジャッキ使用する際は、必ず平らで安定した場所で使用する必要があります。傾斜のある場所や砂利などで使用すると安定せず、ジャッキアップ中の車両がジャッキから外れて落下する危険があるためです。

駆動方式が手動の場合以外は、リリースバルブを緩めるとジャッキが降下しますが、急激に緩めると車両も急激に落下するため、バルブを緩める際は注意が必要です。