スクリーニング試験

スクリーニング試験とは

スクリーニング試験とは、製品や薬品などのふるい分けを実施し、優先的に詳細な試験をするべきサンプルを選り分けることです。

スクリーニング試験は、新生児の潜在的な病気のリスクや医薬品開発、物質の毒性、半導体の初期不良品や欠陥品の選別などに使われています。

スクリーニング試験の使用用途

スクリーニング試験は半導体や部品、医薬品の開発、物質の有害性試験など幅広く使用されています。

1. 半導体の初期不良排除

特に半導体など精密性の高い電子部品では、構造が複雑で、故障の原因が複数あるためスクリーニング試験の項目も多岐にわたります。

封止前外観、赤外線、X線、高温放置、温度サイクル、熱衝撃、定加速度、など15項目以上のスクリーニング試験を経て合格した商品のみが製品として出荷されています。実施方法ごとにスクリーニング試験は、以下のように3つの方法に分類されます。

  1. 顕微鏡での検査や外観検査といった目視スクリーニング
  2. 電気特性やバーンインなどの検査を行う電気的スクリーニング
  3. 温度サイクル試験などを行う環境ストレススクリーニング

2. 医薬品の初期開発

医薬品の開発では、膨大な数の化合物の中から医薬品として使用できる物質を選び出す際にスクリーニング試験を実施します。この場合のスクリーニングは、複数の分析方法で医薬品の候補としてあげられた化合物の性質を評価し、新規医薬品として有効な化合物を選択する作業です。

これまでに開発されてきた医薬品の多くは、生体の以下の場所に対して、増強させるか抑えるかの働きをしています。

  • 伝達に関わる受容体
  • 酵素に働きかける
  • イオンチャネル
  • 特定の蛋白質

スクリーニング試験では、受容体や酵素、イオンチャネル、トランスポーターなどに対しての作用を確認し、医薬品として有効な物質を抽出します。

3. 化学物質のリスク判断

化審法 (化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律) では、有害性のある物質を抽出するために、スクリーニング試験が実施されます。化審法は、「人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息・生育に支障を及ぼすおそれがある化学物質による環境の汚染を防止することを目的とする」法律です。これにしたがって、一般の化学物質は、以下のリスクを調べるためにスクリーニング試験を行います。

  • 環境汚染へのリスクがないか
  • 人や動物、植物に対して毒性がないか
  • 残留のおそれはないか
  • 爆発や発火のおそれはないか

スクリーニング試験で、リスクがないとはいえない化学物質を絞り込みます。その結果によっては、厚生労働大臣、経済産業大臣、環境大臣によって、化審法第2条第5項の優先評価化学物質に指定されます。

優先評価化学物質とは

  • 第二種特定化学物質の有害性要件 (人又は生活環境動植物への長期毒性) に該当しないと、いままでの知見から明らかにできない化学物質
  • 得られている知見及び製造、輸入等の状況から、環境汚染による人又は生活環境動植物へのリスクがないと、判断できない化学物質
  • 環境の汚染により人の健康に係る被害又は生活環境動植物の生息もしくは生育に係る被害を生ずるおそれがあるかどうかについての評価 (リスク評価) を優先的に行う必要がある化学物質

4. アレルギー表示の初期判断

アレルギー物質の食品表示の判断にもスクリーニング試験が必要です。厚生労働省によると、食物アレルギー体質をもつ方の正確な人数は把握できていません。

しかし、全人口の1~2% (が何らかの食物アレルギーを持っていると考えられています。食物アレルギーの表示は、食品表示法に基づく食品表示基準に規定されている制度です。食物アレルギー患者が、不適切な表示がおこなわれた食品を食べた場合、重篤であれば命の危険さえあります。そのため消費者庁により、加工食品の食物アレルギー表示が義務付けられています。

この表示が妥当かどうかの検証にスクリーニング試験が用いられています。具体的には食品に対して、2種類検査特性の異なるスクリーニング試験を実施し、食品アレルギー表示の有無によって表示の検証を実施します。

5. 衛星やロケットなどの部品

衛星やロケット、国際宇宙ステーションに使用する部品は、失敗を防ぐため各種の信頼性試験やスクリーニングが必要とされています。そのために、JAXA部品認定制度やアメリカ軍が独自に作成した軍仕様書の「MIL規格」など、スクリーニング試験の方法が定められています。

スクリーニング試験の原理

スクリーニングとは、日本語で「ふるい分け」を意味する言葉です。医学的・化学的な検査・実験による選別やその選別検査そのものを指します。

欠陥や病気などの検査には、負担が大きく費用がかかる場合があります。この際、全数にスクリーニング試験を実施して、リスクの可能性があるものを抽出する方法をとります。

前述したとおり、スクリーニング試験には目視スクリーニング、電気的スクリーニング、環境ストレススクリーニングの3があるため、対象や環境などを考慮した上で使い分けることが大切です。

スクリーニング試験の特徴

スクリーニング試験の目的は、比較的簡易な方法を使って、リスクの可能性を見極めることです。金銭的、肉体的負担の少ない方法で、対応の必要な検体を100%取りこぼさないために、問題がなくてもふるい分けされてしまう検体も発生します。

そのため、スクリーニング検査の結果が陽性や不適であっても、詳細な検査を実施すると問題がない場合もあります。

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