摩耗試験とは
摩耗試験とは、さまざまな工業製品で発生する摩耗現象を把握するために、試験片を使って焼付きの発生の有無、摩耗が進行していく様子や、摩耗量などを評価する試験です。
摩擦試験では、ピンやボールなどの試験片を一定の荷重かつ一定の速度で動かし続け、その際に発生する摩擦力や所定時間経過後の摩擦量を評価します。工業製品には、部品同士が擦れ合う部分が多く存在します。このような部分において焼付きが発生すると、部品同士が固着して摩耗量が大きくなり、部品が正しく機能しなくなるため、対策が必要です。
また、摩耗現象は同じ部品同士の組み合わせであっても、条件によって摩耗量も大きく異なります。そのため、様々な摩擦が起こる条件を再現できる摩耗試験を実施し、摩擦力や摩擦量を計測します。
摩耗試験の使用用途
摩擦試験は、さまざまな工業製品の開発過程で行われます。主に金属部品同士が接触して擦れ合う部分は、その製品がどのくらい使用できるのかという耐久性に関わります。開発する製品が目標とする使用期間において、求められる機能の維持力を確認する手段として、摩擦試験は大切な評価方法です。
また、摩擦試験は市場で不具合を起こした原因を調査する目的でも行われます。摩耗現象はとても複雑で、同じ材質同士であっても、使われる温度や接触する荷重の大きさ、荷重変動の有無、さらに潤滑油の存在によっても影響も考慮しなければなりません。
市場で予期せぬ摩耗が発生した際に、さまざまな条件で摩耗試験を行うことによって、摩耗が促進した要因を調査する場合もあります。
摩耗試験の原理
摩耗試験の多くは、2つの試験片同士に荷重を与えながら接触させ、相対運動させることによって、焼付きの有無を確認したり、時間の経過とともに摩耗量を測定したりします。また、JISなどの工業規格では、試験方法によって試験片の形状などが決められています。
前述した通り、摩耗現象は複雑であるため、温度や湿度、潤滑油の有無、潤滑油の種類、潤滑量なども影響も考慮しなければなりません。試験片以外の条件についても、製品に求められる環境で評価できるような試験条件を考える必要があります。
摩耗試験の種類
摩耗試験はJISなどの工業規格でも規定されています。代表的な試験方法は、以下の5つです。
1. ピンオンディスク式 / ボールオンディスク式
固定されたディスク状の試験片にピン (ホール) を押し付けた状態で、回転摺動または水平方向に往復摺動させ、摩擦係数や試験後の摩耗量を測定します。ボールオンディスク式は点接触から試験が始まるので、試験片同士の当たりが出やすい反面、ボールが摩耗すると接触面積が増え、試験中の荷重が同じでも接触面の面圧は低下してしまいます。
2. リングオンディスク式 / スラストシリンダー式
中空円筒型の試験片を平板型試験片に押し付けて回転させ、摩耗量を測定します。前述のボールオンディスク式のような、試験の進行による面圧変化は起こりません。日本では鈴木式と呼ばれる試験方法で、プラスチック系材料の試験方法としてJIS K 7218で規定されています。
3. ブロックオンリング式
中空円筒の試験片の側面にブロック状の試験片を押し付けて回転させ、摩擦量や動摩擦係数を測定します。試験開始時に試験片同士は線接触していますが、摩耗が進行すると接触面積が大きくなり、接触面圧は低下していきます。
4. 四球式 / 曽根式 / シェル式
同じ大きさの球を4個ピラミッド型に積み上げ、一番上の球を回転球として押し付けながら回転させることで、摩耗痕径を測定します。主に潤滑条件での焼き付き特性評価に用いられます。曽根式試験では3/4インチの鋼球を使い、シェル式では1/2インチの鋼球を使います。
5. ピン・ブロック式
棒状の試験片の両側をブロックで挟み、棒を回転させることで摩耗状態を測定します。主に潤滑条件における焼付き特性評価に用いられます。