磁気研磨機

磁気研磨機とは

磁気研磨機とは、磁気の力を用いて物体の表面を研磨する装置のことです。

磁力により研磨粒子を動かし、磁石を高速回転させることで、表面の凹凸部分に高速で粒子が当たり、均一に研磨できます。特に、手の届かない場所や一般的な研磨器では難しい微細な位置の研磨が可能です。

磁気研磨機の特長は、研磨粒子が液体の中で激しく運動させられることにより、複雑な水量が発生し、細かな面にも侵入できる点です。そのため、微細な研磨に適しており、幅広い用途で活躍します。

従来の研磨方法では難しかった高精度な研磨が実現可能です。そのため、磁気研磨機は様々な産業分野で重要な役割を果たしており、品質向上や効率化に大きく貢献しています。

磁気研磨機の使用用途

磁気研磨機は特性をいかして、複雑な物体の研磨に利用されています。形状に関わらず高い精度で研磨できるため、自動車、航空機、電子部品、医療機器など、使用用途は幅広いです。

研磨粒子を含んだ液体を磁力で高速運動させることにより、複雑な構造部分や微細な面も滑らかに研磨することができます。一般的な研磨器では難しい狭い部分の研磨も、磁気研磨機を使用することで可能となります。

中でもバリ取り加工、金属のさび取り、酸化膜の除去、表面のつや出しが代表的です。

1. バリ取り加工

金属や樹脂製品の加工後に発生するバリを除去し、安全性や品質向上に寄与します。

2. 金属のさび取り

錆びた金属表面を研磨し、新たな防錆処理の準備や金属の寿命延長に役立ちます。

3. 酸化膜の除去

アルミニウムやステンレス鋼の表面に発生する酸化膜を取り除き、見た目や機能性を向上させます。

4. 表面のつや出し

研磨によって表面を滑らかにし、美観や耐久性を高めます。

磁気研磨機の原理

磁気研磨機は、磁力を利用した運動によって物体を研磨することで成り立つ機械です。磁気研磨機の構造では、研磨材を入れる容器の下に回転運動させる磁石が設置されている点が特徴です。

まず、容器に磁性粒子 (研磨メディア) や溶液、研磨対象物を入れます。次に、下部の磁石を高速で回転させることで、N極とS極が交互に変わり、磁性粒子が運動します。高速で変化する磁場の中で、液体に複雑な流れが発生し、研磨対象の表面を削ることが可能です。研磨メディアは高速に運動するものの、動きは不規則であり、様々な方向から研磨対象にぶつかります。

数千回、数万回と繰り返されることで、滑らかな研磨を実現します。磁気研磨機の利点として、研磨メディアを含む溶液が狭い部分にも浸入できるため、直接接触させる研磨機が届かないような微細な場所でも均一に研磨可能です。

磁気研磨機は、磁力による運動を利用して研磨メディアを高速かつ不規則に動かし、研磨対象物の表面を削ることで滑らかに仕上げるという原理に基づきます。この原理により、従来の研磨方法では難しかった狭い部分や複雑な構造の研磨が可能となり、磁気研磨機は多くの産業分野で利用されています。

磁気研磨機の種類

磁気研磨機は主にバイブレーション式磁気研磨機、タンブル式磁気研磨機、トルネード式磁気研磨機の3種類が存在します。

1. バイブレーション式磁気研磨機

バイブレーション式磁気研磨機は、磁気研磨機の中でも最も一般的なタイプです。研磨容器を振動させることで磁性粒子が動く原理を利用しています。

研磨粒子が研磨対象物に対してランダムな動きを行い、均一な研磨が可能です。また、バイブレーション式磁気研磨機はコンパクトで操作が簡単なため、小規模な加工業者や研究室でも使用されています。

2. タンブル式磁気研磨機

タンブル式磁気研磨機は、研磨容器を回転させることで磁性粒子を動かす原理を利用しています。

容器内の磁性粒子が研磨対象物とともに回転し、一定の方向に研磨力がかかることで、研磨時間が短縮可能です。タンブル式磁気研磨機は、特にバリ取りや研磨後の仕上げ加工に適していると言えます。

3. トルネード式磁気研磨機

トルネード式磁気研磨機は、高速で回転する磁石によって磁性粒子を渦巻状に動かす原理を利用しています。

研磨粒子が強い遠心力で研磨対象物にぶつかり、より高速で均一な研磨が可能です。また、トルネード式磁気研磨機は、微細な研磨や難削材の研磨にも対応できる性能を持っています。

参考文献
https://www.polishing-qcd.net/polish_youshiki/magnetism.html
http://www.priority.co.jp/Product_info/ProINFO_WhatsPRI.html
http://www.priority.co.jp/Tech_info/Tech_sys.html

熱伝導率測定器

熱伝導率測定器とは

熱伝導率測定器とは、物質の熱伝導率を測定するための装置のことです。

熱板や熱線、レーザーを使うものなど様々な種類があります。熱伝導率とは物質の中での熱の伝わりやすさの値で、材質を特徴づける1つのポイントです。例として鍋やフライパンを挙げると、熱伝導率が高ければ早く加熱することが可能で、低ければ保温性が高いと言えます。

熱伝導率測定器の使用用途

熱伝導率測定器は、製品の製法評価や新たな材料や製品の開発に使用されます。

1. 保温性能の評価

例えば、保存容器の保温性能の評価があります。熱伝導率が低いほど断熱性が高く、長時間温かさを保つことができます。その性能の指標として熱伝導率を測定します。

2. 放熱素材の開発

最近では、放熱素材の開発に使用されることが増えました。CPUなどにおいては発熱による熱暴走を防ぐため、放熱が重要な要素です。

例えば、放熱性の向上のために使われる熱伝導性グリースは、熱伝導率が高いほど放熱性が高くなります。

熱伝導率測定器の原理

Fig1 定常法と非定常法

図1. 定常法と非定常法

熱伝導率測定器には、大きく分けて定常法と非定常法があります。

1. 定常法

定常法とは、定常的な熱勾配を発生させて熱伝導率を直接測定する方法です。試料の片面を高温、もう片面を低温にすることで定常的な熱の流れを発生させます。

熱流束計や既知の熱伝導率の材料と温度から熱流束を測定することで、試料で生じた温度差から熱伝導率を測定できます。単純な原理なので正確な測定が可能になりますが、試料表面の温度調節や周囲への放熱などが誤差の原因になります。また、定常状態に至るまでに多くの時間がかかるのもデメリットです。

2. 非定常法

非定常法とは、非定常的な熱を試料に与えて熱伝導率を測定する方法です。熱を加えてからの試料温度の時間変化を計測することで、計算によって熱伝導率を算出できます。熱を与える方法としては、レーザー光を用いたレーザーフラッシュ法やヒーター線などを用いた熱線法などがあります。

レーザーフラッシュ法では、レーザー光を用いて試料を加熱し赤外線センサで検出します。熱伝導率の小さすぎるものは、検出が難しいのが欠点です。また、熱線法では試料内部に熱線を通して加熱します。固体や液体の区別なく測定できる方法です。

熱伝導率測定器のその他情報

1. 熱拡散率測定装置との違い

Fig2 熱拡散率と熱伝導率

図2. 熱拡散率と熱伝導率

熱拡散率は一般的にレーザーフラッシュ法を利用した装置で測定されますが、熱伝導率を直接測定することはできません。熱伝導率は、レーザーフラッシュ法の測定装置で得た熱拡散率に、比熱と密度を掛けること求めることが可能です。

比熱は示差式熱分析装置 (DSC) で、密度はアルキメデス法で知られる水中置換法等で測定された値を利用します。レーザーフラッシュ法では、ゴムやプラスチックなどの高分子材料やセラミックス材料、また金属材料まで幅広く熱拡散率を測定可能です。一方で、試験条件に制約あり、測定する材料は多孔質でなく緻密です。

金属材料でよくある引け巣などの欠陥や割れなどないことが求められます。従って、繊維や粒状物質の複合材料や積層材料は測定することができません。

熱拡散率測定装置には、レーザーフラッシュ法とは別に周期加熱法もあります。この方法では、周期的に変化させた熱エネルギーを与えた際に、ある一定距離だけ離れた場所での温度の応答や位相差から求めます。しかし、こちらも熱伝導率を直接測定することはできません。 

2. 迅速熱伝導率計 (非定常法細線加熱法) 

Fig3 非定常法細線加熱法

図3. 非定常法細線加熱法

迅速に熱伝達率を測定したい場合は、非定常法細線加熱法という方法を利用した迅速熱伝達率計が有効です。センサー部分は、直線状に張られた加熱線と熱電対により構成されていて、一定電流を流し加熱温度を上昇させることができます。

例えば、セラミックスなどの熱伝導率が高い試験片であれば、試験片に熱が急速に拡散して加熱線の温度が低下します。逆に熱伝導率の低い試験片では加熱線の温度が上昇するので、この時の昇温グラフの傾きから熱伝導率を求めることが可能です。

均一な試験片であれば、熱伝導率が迅速かつ簡単に測定可能で、測定器自体も小型化で持ち運べます。そのため、現場ですぐに測定できる点も大きなメリットです。工業用の建築材料から食品や服飾品まで幅広く利用できます。

なお、測定可能な試験片例は以下の通りです。

  • 繊維系、発泡プラスチック系の断熱材
  • プラスチック、ガラス、木材等
  • シート、皮、うす板状サンプル等
  • パン生地、練り物、粉体等
  • 高温での耐火物断熱材、セラミックス等

参考文献
https://www.ibieng.co.jp/analysis-solution/g0014/
https://www.kyoto-kem.com/ja/learn/heat/heat05/
https://www.agne.co.jp/analysis/gijutsu_001.htm
https://www.cerij.or.jp/service/05_polymer/thermophysical_property_01.html

渦流探傷器

渦流探傷器とは

渦流探傷器とは、渦電流を用いて物体の傷を測定する装置のことです。

金属製品のひびや割れ、傷などの欠陥を非破壊で検査することができます。探傷器の種類はさまざまで、渦流探傷器の他にも磁粉探傷器、浸透探傷器、超音波探傷器などがあります。

その中でも渦流探傷器は操作が簡単で、非接触で測定できるのが特徴です。また、航空機や自動車の検査に利用されるのはもちろん、導電率や薄膜の厚みを検査するためにも利用されます。これは傷だけでなく、導電率や膜の厚さも渦電流の変化に関係しているからです。

渦流探傷器の使用用途

渦流探傷器は主に、金属製品の表面での傷や欠陥検査に利用されています。欠陥検査以外にも塗装やめっき膜厚などにも応用可能です。渦流探傷器は以下に示す5つの目的で使用されています。

1. 金属製品の表面の傷、表面付近の内部欠陥の検査

金属製品の加工方法である鍛造品の表面割れ、熱処理による割れの有無の確認、焼結部品の割れや欠けなどの欠陥の有無、線材、管、丸棒の表面欠陥の検査、ベアリングのボールやコロの表面検査に用いられます。

2. 金属製品の異材選別

合金の混合比の変化の識別、焼き入れ有無の判別などに用いられます。

3. 金属製品の品質保証

パイプ製品の減肉検査、塗装下の割れ、橋梁や鉄骨建築での溶接部の割れの有無を確認も、渦電流探傷器の用途の1つです。

4. 塗膜厚さの変化やめっき膜厚の変化の確認

塗装やめっき膜厚は厚さの均一性が求められます。渦電流探傷器は厚さの変化を検知することが可能です。

5. 樹脂などの金属混入

樹脂製品への金属混入を渦電流探傷器で検査することができます。

渦流探傷器の原理

渦流探傷器ではまず、コイルに電流を流して磁束を発生させます。磁束を生じたコイルを検査対象に近づけると、測定表面に渦のような形の電流を発生させます。これは磁気誘導によるものです。

検査対象に発生する渦電流は、傷や欠陥の有無によって変化します。表面に傷があると、均一であるはずの渦電流にひずみが発生するからです。そこで、渦流探傷器では検査対象物に発生する渦電流の変化によって、傷の有無や大きさを判定します。

渦流探傷器のような測定法は非接触、非破壊で対象を調べることが可能です。連続した製品の検品作業に適しており、航空機や自動車産業にて広く利用されている検査方法です。また、金属製品の傷や表面状態の確認のためにも利用されます。

しかし、電磁誘導を利用しているため、発生させた磁界が有効な範囲以外の検査はできません。非接触で検査できますが、検査範囲は製品の表面付近のみに限られます。

渦流探傷器の特徴

渦流探傷器には大きく6つの特徴があります。

1. 非鉄金属でも検査できる

渦流探傷器は導電体であれば検査できます。鉄系材料のような磁性材だけでなく、非鉄材料である非磁性材でも検査可能です。

2. 表面と表面近傍の検査ができる

渦流探傷器は表面はもちろん、表面近傍の欠陥まで検査することができます。磁性材料は表面から0.1mm程度まで、非磁性材料なら表面から2mm程度の深さの範囲が検査範囲です。

3. 棒材・線材・パイプなどの製品検査に向いている

長さのある製品なら、短時間での検査が可能です。製造ラインに組み込んで、オンラインでの検査にも向いています。

4. 非接触で検査できる

渦流探傷器は非破壊検査であるだけでなく、製品に触れない非接触検査です。検査対象物とは1mm以下程度のクリアランスを確保しながら検査します。

5. 製品が高温の場合や細線・穴内径の検査に向いている

渦流探傷器は磁気誘導による検査のため、製品の温度は問いません。引き抜かれた直後の棒材など、温度が高い製品の検査も可能です。渦流探傷器なら検出コイルの形状によって、細線や穴内径の検査にも向いています。

6. 検査の自動化に向いている

渦流探傷器の検査結果は、電気信号で出力されます。電気信号の変化を検出するなどのプログラムを設定しておくことによって、検査作業を自動化しやすい検査方法です。

参考文献
https://www.rohmann.co.jp/?page_id=1022
https://www.dia-elec.com/technique/sinuous_flow/ECT_Principle.html
https://www.ndtadvance.com/eddy-current/point/principle.html

摩擦計

摩擦計とは

摩擦計とは、様々な摩擦力を計測する装置です。

摩擦とは2つの物体が触れ合っているときに発生する抵抗力の一種で、静止摩擦 (静摩擦力) 力と動摩擦力があります。静止摩擦力は静止している物体に加わっている摩擦力で、動摩擦力は運動している物体に加わる摩擦力です。

そのため、静摩擦係数を計測すれば、その物体の静止時の動きにくさや滑りにくさを評価できます。一方、動摩擦係数は動いている物体間の摩擦力を表すことから、その物体の動作時の滑りやすさや摩耗のしやすさを評価できます。

摩擦計の使用用途

摩擦計は、様々な材料や製品の検査および性能評価のために使用されています。

1. 材質の評価

例えば、ゴムや樹脂の評価です。ゴムやプラスチックなどの樹脂は、衝撃の緩衝材や安全装置によく使用されています。そこで、摩擦計を用いて摩擦力を計測して素材の寿命や安全性をチェックしています。

2. 自動車分野での評価

摩擦計は塗装面の評価にも使用されます。自動車のボディなどを塗装する際には、ある程度の摩擦に耐えうる耐久性が必要です。また、表面をコーティングした場合は傷つきにくく、はがれにくい性能が求められます。これらの性能の評価も摩擦計が有用です。

3. 建材分野での評価

建材の塗装に関する評価も摩擦計の使用用途です。体育館や住宅にある木製の床の滑りやすさや、ペンキなどの塗膜の引っ掻き強度の測定などに使用されています。

4. 医療分野での評価

医療分野では、人工関節の摩擦測定や注射針の摩擦測定にも使用されています。

摩擦計の原理

前述の通り、摩擦力は「静止摩擦力」と「動摩擦力」の2種類です。摩擦計には「静止摩擦係数」を測定するものと「動摩擦係数」を測定するものがあります。

1. 静止摩擦係数測定タイプ

静止摩擦係数を求めるための摩擦計です。紙やプラスチックフィルムなどの静止摩擦係数を計測するのによく使用されます。測定の方法は傾斜法と水平法の2種類です。傾斜法では試料の上に重りを載せ、これらを傾斜させていきます。

そして、重りが傾斜面を滑り始めた時の傾斜角から静止摩擦係数が算出可能です。なお、この重りが滑り落ち始める直前の静止摩擦係数を最大静止摩擦係数と呼び、物体の滑りやすさおよび滑りにくさの指標になります。水平法は、試料の上に重りを載せ、これに面方向に引っ張る荷重を掛け、動き出した時の摩擦抵抗を検出して静止摩擦係数 (最大静止摩擦係数) を計測します。

なお、この方法では、その後動いている状態の動摩擦係数の測定も可能です。水平法は紙やプラスチックフィルムの他、皮革の評価などにも使用されています。

2. 動摩擦係数測定タイプ

水平法の摩擦計でも動摩擦係数を測定できますが、ほかに動摩擦係数の測定に特化した摩擦計が多くあります。動摩擦係数を測定する摩擦計では、基本的に試料に所定の相手材を摺動させて動摩擦係数を測定しています。

さらに、これら動摩擦係数を測定する摩擦計は大きく分けて、移動方向が回転方向である回転型と直線方向の往復である往復型の2種類です。上記のような摺動を行ったときに生じる動摩擦係数を測定する方法としては、以下のような方法があります。

  • 摩擦力を歪ゲージやロードセルを用いる、回転トルク計を用いて直接計測して算出する方法
  • 駆動モーターの負荷電力を計測し、これを変換して算出する方法
  • 摩擦による振動減衰挙動から求める方法

摩擦計の種類

摩擦計のうち、動摩擦係数の測定に特化した摩擦計は、大きく分けて回転型と往復型の2タイプです。どちらも、点接触型と線接触型、面接触型があります。

1. 点接触型

点接触型は、ボールオンプレート方式とボールオンディスク方式の2種類です。これら試験方式でのボールは球状の所定の相手材です。一方、ディスクはディスク状の試料、プレートは試料よりなる板を指します。したがって、試料がディスクであるときは回転させながら摩擦係数を測定し、プレートであるときは往復摺動で摩擦係数を測定しています。

この方式は、点接触となるため当たりが出やすいのがメリットです。しかし、摩耗によって使用するボールやピンが削れてしまうと接触面積が変化し、摩擦力を正しく計測できなくなるデメリットがあります。

2. 線接触型

線接触型は、ブロックオンリング方式とピンブロック方式の2種類です。ブロックオンリング方式の摩擦係数測定は、円筒状の相手材の側面にブロック状の試料を押しあて測定して行われます。

ピンブロック方式の摩擦係数測定方式は、ピン状の被試験物を一対のブロック状の相手材で挟み込んで、その中でピンを回転させて測定する方式です。つまり、ブロックオンリング方式とピンブロック方式の両方とも回転型になります。

なお、ピンブロック方式は、油などの潤滑物質の摩擦力計測によく利用されます。

3. 面接触型

面接触型は、ブロックオンプレート方式とピンオンディスク方式、スラストシリンダー方式の3種類です。なお、この方式でのピンは円柱状の相手材です。スラストシリンダー方式では、平板上の試料に円筒状の相手材の端面を押し当てて摩擦係数を測定しています。

ブロックオンプレート方式は往復型、ピンオンディスク方式とスラストシリンダー方式は回転型に当たります。面接触型では、面で接触しており摩擦にかかわる部分が大きくなって耐久性が高いのがメリットです。

参考文献
https://www.juntsu.co.jp/masatsu/masatsu01.php
https://www.face-kyowa.co.jp/science/theory/what_tribology.html
https://www.face-kyowa.co.jp/science/theory/what_tribology/what_tribology-1.html

応力測定器

応力測定器とは

応力測定器とは、素材にどのような応力がかかっているかを調べる機器のことです。

応力を測定する機械には目的に応じて、いくつかの種類がありますが、ここでは応力を測定する機械全般について説明します。応力には圧縮応力と引張応力とがありますが、どちらの応力でも高すぎると、部品の損傷に繋がりかねません。応力は機械的な外力によって発生するもの以外にも、熱処理や成膜形成などによって、1つの部品自体に生じている残留応力もあります。

ガラスの強化や鉄鋼材料の強化は、製品の表面に意図的に残留圧縮応力を生じさせることによって、製品の強度を高めています。

応力測定器の使用用途

応力測定器は製品開発の分野から、熱処理、成膜やガラス強化の分野などでも用いられています。研究開発領域においては、部品に発生する応力を知ることによって部品の強度を確認したり、逆に無駄な形状を減らすことによって軽量化やコスト低減を実現したりします。

半導体産業ではシリコンウェハ上に各種薄膜の成膜が行われますが、成膜によって製品には応力が発生します。過度な応力は膜剥がれを起こしてしまうため、応力測定による品質管理が大変重要です。

また、ガラスを強化する際には、表面付近の圧縮応力が増大することで強度が上げており、強化処理後の応力測定も行われます。

応力測定器の原理

応力測定器の原理は、測定方法によって異なりますが、いずれも測定する対象物に生じている歪みを検出しています。歪みとは物体が外力を受けて、伸びたり縮んだり、捻れたり、変形することです。

また、応力は単位面積あたりに生じている力ですが、外力によって生じた歪みと、その物質のヤング率との積によって算出されます。よって応力測定器は応力を直接測定するのではなく、外力によって物質に生じた歪みの大きさを捉え、ヤング率と掛け合わせることによって応力値に換算するのが一般的です。

歪みの検知方法には複数の種類があり、それぞれの原理を利用した応力測定器が開発されています。

応力測定器の種類

応力測定器には測定する製品や応力の大きさによって、複数のタイプがあります。代表的な種類は以下の4つです。

1. 歪みゲージ

歪みゲージは、構造用部品などの応力測定に用いられます。貼り付けた部分の歪みを、電気抵抗の変化から検出する装置です。歪みゲージによる応力測定は、歪みゲージを貼り付けた部位しか測定できません。

また、歪みゲージは貼り付ける位置だけでなく、貼り付ける方向も重要です。CAEによる構造解析の検証として用いられることもあります。

2. 赤外線検出

赤外線応力測定も、歪みゲージと同様に構造用部品の応力測定に用いられる方法です。物質は、外力によって変形すると熱弾性効果によって表面の温度が変化します。

赤外線応力測定は歪みによって物体表面に生じた温度の変化から、応力を検知する装置です。歪みゲージは貼り付けたポイントだけの応力しかわかりませんが、赤外線応力測定なら広範囲の測定が可能です。

3. レーザー光反射

薄膜の成膜などの応力測定に用いられるのは、レーザー光の反射を利用した応力測定です。レーザー光の反射を成膜前後で比較することによって、基板の反りによる曲率半径の変化を求め、成膜によって生じた膜応力に換算する方法です。半導体のシリコンウェハや強化ガラスの評価にも、レーザー光による応力測定が使われます。

4. X線回折

X線回折による応力測定は、鉄鋼材料の熱処理や表面処理によって生じる残留圧縮応力の測定などに用いられます。X線回折は原子が規則正しく並んでいる物質に、原子同士の間隔と同じ程度の波長を持つX線を照射し、散乱するX線の回折を利用する測定方法です。

X線回折は応力測定だけでなく、物質の定性分析や定量分析、結晶サイズや格子歪みの算出など、さまざまな分析に用いられます。

参考文献
https://www.toho-tec.co.jp/products/inspection/inspection/flx/
https://www.jpu.or.jp/products-index/bi-ref-index/

循環ろ過装置

循環ろ過装置とは

循環ろ過装置

循環ろ過装置とは、温泉や水道水などをろ過し、ろ水を循環させる装置のことを指します。

循環ろ過装置は、機能によって物理ろ過装置と生物浄化装置の2つに分けられます。物理ろ過装置は、細かい粒子や毛髪、繊維など、水に溶けていない異物を取り除くために用いられます。生物浄化装置は活性炭などのろ材を支持体として、微生物を繁殖させているものです。こちらは物理的なろ過の機能をほとんど持ちませんが、微生物によって水中の汚濁物質を分解できます。 

循環ろ過装置の使用用途

循環ろ過装置は物理ろ過または生物浄化により、水質を維持および浄化することが可能です。そのため、水質を常に一定に保つ必要がある場所や、水の使用量を抑えたい場所で使われています。

循環ろ過装置の使用例としては、公衆浴場が代表的です。公衆浴場の浴槽水は、濁度、過マンガン酸カリウム消費量、大腸菌群、レジオネラ属菌の4つについて水質基準値が定められています。これらの基準を満たすため、毛髪などの大きい異物を除去する集毛器、消毒装置を追加した循環ろ過装置が用いられているのです。 

循環ろ過装置の原理

ろ過したい水を多孔質であるろ材に通すと、ろ材の穴より大きい物質は捕集され、穴より小さい物質だけが通過します。ろ過装置ではこのようにして、異物を水から取り除いているのです。ろ過装置には大きく分けて砂ろ過、珪藻土ろ過、カートリッジ式ろ過の3つの方式があります。

砂ろ過は、ろ材に砂や砂利を採用したろ過方式です。天然砂やアンスラサイトなどが用いられ、数十µm程度までの物質を除去できます。ある程度の水質変動に対応可能、処理水の水質が安定しているなどさまざまな利点があり、広く普及しています。

珪藻土ろ過は、珪藻土をろ過助剤に用いるろ過方式です。合成繊維に珪藻土を付着させたろ過膜により、5µmほどの小さな物質まで除去可能です。3つの中では除去能力が一番高い方式ですが、維持管理が難しいとされています。

カートリッジ式ろ過は、カートリッジ形式のろ材を用いるろ過方式です。合成繊維やポリエステルをカートリッジの素材に採用し、10-15µm程度の物質を取り除くことができます。カートリッジは基本的に消耗品であるため、ランニングコストは割高です。 

参考文献
https://www.mhlw.go.jp/topics/2001/0109/tp0911-1.html#no3
http://www.shasej.org/oshirase/1204/kuminaoshiban.pdf 

廃液処理装置

廃液処理装置とは

廃液処理装置とは、油や酸、アルカリなどの有害成分を含む廃液を処理するための装置です。

有害な物質汚染物質が含まれる場合が多く、適切に処理しないければ環境や健康へ悪影響が発生する可能性があります。廃液処理装置は、有害汚染物質を除去または不活性化するための技術を活用したものです。

ただし、廃液の組成や有害物質は廃液によって異なるため、廃液の種類と目的に応じて適切な装置を選択することが重要です。

廃液処理装置の使用用途

廃液処理装置は、さまざまな産業や施設で使用されます。特に工業・化学プロセスにおいて広く使用される装置です。

1. 工場・製造施設

工場や製造施設では、生産プロセスによって廃液が発生することが多いです。廃水や廃液などの形態で排出されます。廃液処理装置によって有害な物質や汚染物質を除去して廃液を浄化し、環境影響を最小限に抑えることが可能です。

2. 化学工業・研究所

化学工業や研究所では、化学反応や実験によって廃液が生成されることが多いです。これらの廃液には、有害な化学物質や有機溶剤が含まれている場合があります。廃液処理装置によって有害化学物質を除去することが必要です。

3. 食品加工工業

食品加工業においても、製造ラインや洗浄プロセスから廃液が発生します。廃液処理装置によってこれらの廃液を浄化し、環境基準に適合させる必要があります。

廃液処理装置の原理

廃液処理装置は、廃液中の有害物質や汚染物質を除去または不活性化するためにさまざまな原理や技術を利用しています。代表的な方式の1つが燃焼処理です。発生する廃液を燃焼させることで無害化する方法です。石油化学分野や製紙分野など、幅広い分野に普及しています。

また、物理的に汚染物質を除去する方法も広く使用されます。廃液中の固体や浮遊物を分離することによって廃液を浄化します。ろ過装置や遠心分離機がその一例であり、微小な固体粒子や不溶性物質を取り除くことが可能です。

化学的な反応を使用して、廃液中の有害物質を分解する方法もあります。沈降槽や沈降処理では、重い固体や不溶性物質を沈殿させることで廃液を浄化します。蒸留装置は、蒸気化・凝縮のプロセスを通じて廃液を分離し、純粋な成分を回収することが可能です。

廃液処理装置の種類

廃液処理装置にはさまざまな種類が存在します。以下は廃液処理装置の種類一例です。

1. フィルタープレス

フィルタープレスは、フィルターに加圧した廃液を押し付けることで固形物を分離する廃液処理装置です。廃液はフィルタープレートによって濾過され、固形物は圧力をかけて固体状に圧縮されます。廃液を固体と液体に分離することが可能です。

2. 遠心分離機

高速回転によって廃液中の固体物を遠心力で分離する装置です。廃液は遠心力によって回転ドラムの壁面に押し付けられ、重い固体はドラムの内側に集まります。清浄な液体はドラムの外側に排出されます。

3. シックナー

廃液中の固形物や不溶性物質を沈降させるために使用される装置です。重力によって固体が底に沈殿し、浄化された上澄み液が排出されます。沈殿した固体物は槽の底部で収集され、処理または廃棄されることが多いです。

4. 蒸留装置

廃液を蒸発させ、その蒸気を再凝縮することによって成分ごとに分離・精製する装置です。廃液が加熱されることで揮発性成分が蒸発し、再凝縮されて純粋な成分が得られます。このプロセスにより、廃液中の溶質や汚染物質が除去されます。

廃液処理装置のその他情報

1. 廃液の種類

廃液は、主に有機物系廃液と無機物系廃液に分類されます。

有機物系廃液
有機物系廃液は「特定有害等有機溶媒」「写真現像廃液」「写真定着廃液」「可燃性廃液」「難燃性廃液」の順に、5種類に細分類されます。写真廃液は家庭のカメラ撮影だけではなく、映画のフィルムやレントゲンなどから発生します。有機系廃液の主な処理方法は燃焼処理や生物処理などです。

無機物系廃液
無機物系廃液は「シアン系廃液」「水銀系廃液」「フッ素、リン酸系廃液」「重金属系廃液」「酸、アルカリ性廃液」の順に、5種類に細分化されます。無機物系廃液の主な処理方法は中和処理や活性汚泥処理、凝集沈殿処理などです。

2. 廃液処理装置の規定

廃液処理装置の設置・管理は厚生労働省が定めた規定を守らなければなりません。廃液処理装置を設置する基準は、無機物系廃液を扱う場合は必ず必要です。

廃液処理装置では、排水溝やピットが塩酸硝酸または硫酸を含む廃液と、シアン化カリウムシアン化ナトリウムまたは硫化ナトリウムを含む廃液とで混ざらないことが重要です。混ざり合うことで、有毒なシアン化水素または硫化水素が発生します。廃液処理装置は年に1度の定期自主検査を実施する必要があり、その記録は3年間の保管義務が定められています。

参考文献
https://www.tske.co.jp/search/haieki.html
https://www.sumitomo-toolnet.co.jp/product/environment/jyohatsu-haieki.html
https://kokugoryokuup.com/haisui-difference/
http://irc1.lab.u-ryukyu.ac.jp/?action=common_download_main&upload_id=4792
https://www.chemical-substance.com/roudouanzen/kanri.html
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-29-3-0.htm
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-29-5-0.htm

固液分離機

固液分離機とは

固液分離機とは、液中の固形物を液体と分離し、取り除くための装置のことです。主に汚水処理の分野で用いられます。

汚水処理には、汚水から固形物を分離する過程と、水に溶けている汚濁物質を処理する過程の2段階があります。前者は、固液分離機で物理的に行うのがコスト面で有利です。後者は固液分離機では難しく、活性汚泥などの生物処理が一般的に行われます。汚濁物資が液中に残ったままだと、生物処理後の余剰汚泥が増えたり、処理効率が悪くなったりします。 

固液分離機の使用用途

固液分離機には汚水処理の前処理を行う装置と、汚泥の脱水や濃縮を目的とした装置があります。脱水を行うためのプレス方式や、凝集剤添加の有無といった点が異なります。

スクリーンなどにより固形分を取り除くものは、汚水の処理に用いられる装置です。スクリュープレス、ローラープレスや、ベルトスクリーンなどが該当します。汚水処理に用いる装置では、凝集剤を添加しないで運用する場合もあります。

真空脱水機、加圧脱水機、ベルトプレス、スクリュープレス、遠心脱水機などは汚泥処理に用いられる装置です。これらの汚泥処理装置では、基本的に凝集剤を使用します。 

固液分離機の原理

固液分離機は、ろ過によって脱水を行うものと、遠心力によって脱水を行うものが主流です。これらは処理後のケーキの含水率などが異なるため、処理したい汚泥の性質によって使い分けられています。

ろ過式の脱水装置の代表例は、加圧脱水機、ベルトプレスなどです。加圧脱水機では、加圧ポンプによって汚泥をろ室に押し込み脱水します。一回の脱水ごとにケーキの排出や組み立てが必要であるといったデメリットはありますが、ろ過の圧力を大きくとれるメリットがあります。

ベルトプレスは高分子凝集剤により汚泥を凝集させたのち、ベルト状のろ布で脱水する方式です。液状の汚泥をそのままベルトで挟んでもベルトの間から漏れてしまうため、重力による予備濃縮をかけた後にロールで圧搾します。ろ過式では従来加圧脱水機が主流でしたが、このベルトプレスも徐々に普及してきています。

遠心力で脱水を行うのが遠心脱水機です。高速回転による遠心力を利用した方式で、回転体の形状によって円筒型と円錐型に分けられます。液の清澄度が重要な場合は円筒型、ケーキの含水率を下げたい場合は円錐型が適しています。 

参考文献
https://kcr.kurita.co.jp/wtschool/047.html 

周波数変換器

周波数変換器とは

周波数変換器とは、受け取った周波数を任意の周波数に変換する機械のことです。

周波数とは振動数とも呼ばれ、電流や電波などが一秒間に何回波を繰り返すかという値を指します。電流には直流電流と交流電流がありますが、家庭や工場の電源は基本的に交流電源で、決まった周波数の電流を供給します。

しかし、機械によっては電源より高い周波数や低い周波数が必要になることもあります。そのようなときに、任意の周波数に変換するのが周波数変換器です。

周波数変換器の使用用途

周波数変換器は、周波数を変えたいときに使用されます。例えば、家電製品や海外の工場などです。

地域ごとの周波数は異なり、コンセントから供給される電流は東日本なら50Hz西日本なら60Hzと決まっています。異なる地域でも同じように使用できるように、周波数変換器を搭載している場合が多いです。

さらに、工作機械には低周波数や高周波数の電源が必要なものがあります。50Hzや60Hzの電源から、必要な周波数まで変換します。

周波数変換器の原理

周波数変換器は電流を流すことによって、任意の周波数に変換できます。周波数変換器では、インバータやコンバータが用いられます。

インバータとは直流電流を交流電流に変換する装置で、コンバータとは交流電流を直流電流に変換する装置です。

1. コンバータ回路

コンバータ回路に電流を流すことで、元の交流電流を直流電流へと変換させます。交流電流は正弦波なので正負が存在しますが、コンバータ回路に含まれたダイオードによって全波整流を引き起こすことで、どちらも正の値で取り出すことが可能です。

次に取り出した電流をコンデンサに通します。何度も充電と放電を繰り返すことで平滑化し、なめらかな直流電流を作ります。

2. インバータ回路

最後にインバータ回路に電流を流すことで任意の周波数に変えた交流電流を流します。インバータ回路にはトランジスタが含まれており、オンオフのスイッチング間隔を調節することで周波数を変化させた波を作り出すことができるのです。

インバータ回路では、一般的にパルス幅変調が用いられています。略称ではPWM (英: Pulse Width Modulation) と呼ばれ、スイッチのON/OFF比率をコントロールすることで所定の出力を制御します。

本制御を用いることにより、低消費電力と小型化をすることが可能です。インバータ回路ではスイッチのON/OFFで負荷を流れる電流の向きが逆向きになります。このスイッチング技術と呼ばれる技術で、交流の生成を実現しています。

3. PWM

PWM制御方式の1つに、三角波比較方式と呼ばれるものがあります。三角波比較方式では、実現したい周波数の正弦波 (交流) とキャリアと呼ばれる三角形の形をした波の高低をオペアンプに入力して比較します。

正弦波がキャリアよりも大きい値を持つときは、スイッチング制御信号はONを出力します。一方、正弦波がキャリアよりも小さい値を持つときはOFFを出力します。この比較を繰り返すことで、スイッチング制御信号であるパルス波を出力することが可能です。

サイリスタなどの半導体スイッチング素子を用いて直流をスイッチングして、交流電圧を供給します。

周波数変換器のその他情報

1. サイリスタ

周波数変換器でも、使用されるサイリスタはダイオードにゲート端子がついた構成です。ダイオードを使用することで電気が一方向にしか流れなくなる働きを得ます。

ゲート端子の役割は電路の開閉を制御することで、ダイオードと組み合わせることにより電流の方向と出力が制御可能です。

2. サイリスタバルブ

複数個のサイリスタ素子を直列あるいは並列に接続することで十分な高電圧に耐えて、必要量の電気容量を持つ装置のことをバルブ (整流器) と呼びます。

以前のサイリスタバルブは空気絶縁風冷方式、油絶縁油冷方式を採用していましたが、近年は光直接点弧大容量サイリスタ素子を使用した空気絶縁水冷方式が主流です。

参考文献
http://www.mohno-pump.co.jp/learning/manabiya/b3a.html
https://www.yasnaga.co.jp/product/2018/08/post-29.php
https://www.matsusada.co.jp/column/inverter.html
https://www.fujielectric.co.jp/products/column/inverter/inverter_02.html

レーザー溶着機

レーザー溶着機とは

レーザー溶着機とは、レーザー光を使用して2つの物体を結合させる装置のことです。

主に樹脂の接着に適用され、レーザー光によって生じる熱を利用しています。他の溶着方法として、熱板や超音波を用いたものも存在しますが、いずれも熱を発生させて対象物を溶かし、冷却時に結合させる原理は同じです。

レーザー溶着機は、溶けた部分が冷却される際に境界部分をつなげ、固まることで結合が成立します。微細な部分の接合も可能であり、粉じんなどの発生が少ないクリーンな装置として評価されています。さまざまな産業で利用され、品質や効率の向上に貢献している装置です。

レーザー溶着機の使用用途

レーザー溶着機は、美しい外観や高い防水性が要求される製品において幅広く活用されています。例として、車のテールランプが挙げられます。

テールランプは、鮮やかな色で美しい光を放つことが求められますが、ネジや接着剤を用いてプラスチック部品を結合すると、見栄えが悪くなることが難点です。そこで、レーザー溶着機が活躍します。接着剤を使わず、綺麗な仕上がりが実現可能です。

さらに、医療用タンクのような高い防水性が必要な製品でも、レーザー溶着機は有用です。ネジや接着剤を使用せず、レーザー溶着機によって接合された製品は、防水性が向上し、経年劣化も起こりにくくなります。

レーザー溶着機の原理

レーザー溶着機は、レーザー光を用いて樹脂を溶かし、2つの物体を結合させています。まず、透過性樹脂と吸収性樹脂を用意し、透過性樹脂を上に、吸収性樹脂を下に配置します。上からレーザー光を当てると、透過性樹脂を通過した光が吸収性樹脂に連続して照射され、両者の境界面で発熱が生じます。

この熱で樹脂が溶けて溶着が発生し、レーザーを止めると、溶けた樹脂が冷え固まり、2つの樹脂が結合可能です。ただし、全ての樹脂に対応できるわけではありません。透過性樹脂と吸収性樹脂が必要になります。

透過率が高い樹脂は白や透明で、吸収率が高い樹脂は黒色に近いです。白や透明同士の樹脂を溶着する場合、下の樹脂にレーザー吸収剤を塗布し、通常の方法と同様に溶着を行います。また、黒同士の樹脂の場合は、上側の樹脂に透過性のある黒色に近い樹脂を使用して溶着を実施します。

レーザー溶着機は、多様な分野で活用され、高い効率と品質向上に貢献している装置です。特に、外観や防水性が重要な製品において、レーザー溶着機は非常に有益な技術となっています。

レーザー溶着機の種類

レーザー溶着機は、産業界で広く利用されている技術です。適切なレーザー溶着機を選択し、各分野での効率的な製品開発に役立てられます。

1. CO2レーザー溶着機

CO2レーザー溶着機は、一般的に高い出力が得られることで知られています。樹脂や金属などの素材に対して、高速で綺麗な接合が可能であり、広い分野で活用されています。

2. ファイバーレーザー溶着機

ファイバーレーザー溶着機は、波長が短いため、精密な加工が可能です。主に金属加工や電子部品の接合に使用されており、高い品質が求められる分野で活躍しています。

3. ダイオードレーザー溶着機

ダイオードレーザー溶着機は、コンパクトで効率的な機械です。消費電力が少なく、熱の影響が小さいため、樹脂や薄い金属の溶着に適しています。省エネルギーで低コストな加工が可能なため、幅広い産業で利用されています。

4. YAGレーザー溶着機

YAGレーザー溶着機は、中赤外領域の波長を持つレーザーで、金属やセラミックスの接合に適しています。高いエネルギー密度と熱影響の少なさから、医療機器や宇宙機器などの精密加工に使用されています。

参考文献
https://www3.panasonic.biz/ac/j/fasys/processing/tech_welding_plastic/laser/index.jsp
http://www.finedevice.co.jp/laser-resin
https://jp.lpkf.com/products/laserwelding/laser-welding.htm