渦流探傷器とは
渦流探傷器とは、渦電流を用いて物体の傷を測定する装置のことです。
金属製品のひびや割れ、傷などの欠陥を非破壊で検査することができます。探傷器の種類はさまざまで、渦流探傷器の他にも磁粉探傷器、浸透探傷器、超音波探傷器などがあります。
その中でも渦流探傷器は操作が簡単で、非接触で測定できるのが特徴です。また、航空機や自動車の検査に利用されるのはもちろん、導電率や薄膜の厚みを検査するためにも利用されます。これは傷だけでなく、導電率や膜の厚さも渦電流の変化に関係しているからです。
渦流探傷器の使用用途
渦流探傷器は主に、金属製品の表面での傷や欠陥検査に利用されています。欠陥検査以外にも塗装やめっき膜厚などにも応用可能です。渦流探傷器は以下に示す5つの目的で使用されています。
1. 金属製品の表面の傷、表面付近の内部欠陥の検査
金属製品の加工方法である鍛造品の表面割れ、熱処理による割れの有無の確認、焼結部品の割れや欠けなどの欠陥の有無、線材、管、丸棒の表面欠陥の検査、ベアリングのボールやコロの表面検査に用いられます。
2. 金属製品の異材選別
合金の混合比の変化の識別、焼き入れ有無の判別などに用いられます。
3. 金属製品の品質保証
パイプ製品の減肉検査、塗装下の割れ、橋梁や鉄骨建築での溶接部の割れの有無を確認も、渦電流探傷器の用途の1つです。
4. 塗膜厚さの変化やめっき膜厚の変化の確認
塗装やめっき膜厚は厚さの均一性が求められます。渦電流探傷器は厚さの変化を検知することが可能です。
5. 樹脂などの金属混入
樹脂製品への金属混入を渦電流探傷器で検査することができます。
渦流探傷器の原理
渦流探傷器ではまず、コイルに電流を流して磁束を発生させます。磁束を生じたコイルを検査対象に近づけると、測定表面に渦のような形の電流を発生させます。これは磁気誘導によるものです。
検査対象に発生する渦電流は、傷や欠陥の有無によって変化します。表面に傷があると、均一であるはずの渦電流にひずみが発生するからです。そこで、渦流探傷器では検査対象物に発生する渦電流の変化によって、傷の有無や大きさを判定します。
渦流探傷器のような測定法は非接触、非破壊で対象を調べることが可能です。連続した製品の検品作業に適しており、航空機や自動車産業にて広く利用されている検査方法です。また、金属製品の傷や表面状態の確認のためにも利用されます。
しかし、電磁誘導を利用しているため、発生させた磁界が有効な範囲以外の検査はできません。非接触で検査できますが、検査範囲は製品の表面付近のみに限られます。
渦流探傷器の特徴
渦流探傷器には大きく6つの特徴があります。
1. 非鉄金属でも検査できる
渦流探傷器は導電体であれば検査できます。鉄系材料のような磁性材だけでなく、非鉄材料である非磁性材でも検査可能です。
2. 表面と表面近傍の検査ができる
渦流探傷器は表面はもちろん、表面近傍の欠陥まで検査することができます。磁性材料は表面から0.1mm程度まで、非磁性材料なら表面から2mm程度の深さの範囲が検査範囲です。
3. 棒材・線材・パイプなどの製品検査に向いている
長さのある製品なら、短時間での検査が可能です。製造ラインに組み込んで、オンラインでの検査にも向いています。
4. 非接触で検査できる
渦流探傷器は非破壊検査であるだけでなく、製品に触れない非接触検査です。検査対象物とは1mm以下程度のクリアランスを確保しながら検査します。
5. 製品が高温の場合や細線・穴内径の検査に向いている
渦流探傷器は磁気誘導による検査のため、製品の温度は問いません。引き抜かれた直後の棒材など、温度が高い製品の検査も可能です。渦流探傷器なら検出コイルの形状によって、細線や穴内径の検査にも向いています。
6. 検査の自動化に向いている
渦流探傷器の検査結果は、電気信号で出力されます。電気信号の変化を検出するなどのプログラムを設定しておくことによって、検査作業を自動化しやすい検査方法です。
参考文献
https://www.rohmann.co.jp/?page_id=1022
https://www.dia-elec.com/technique/sinuous_flow/ECT_Principle.html
https://www.ndtadvance.com/eddy-current/point/principle.html