ガータースプリングとは
ガータースプリング (Garter Spring) とは、鋼線などを用いて作られた小型の引張コイルばねを輪 (ループ) 状に連結した特殊なばね製品です。
主にオイルシールや回転機構のシール部などで使われます。ばねの両端をフック、カシメ、または溶接によって接続することで、連続した環状の形状を保つのが最大の特徴です。
「Garter (ガーター) 」という言葉はストッキングがずり落ちるのを防ぐためのガーターリングに由来するものです。ガータースプリングは小型ながら、精密で均一な張力を維持することができるため、摩擦・密封・保持などの用途で非常に高い効果を発揮します。
ガータースプリングは通常、ピアノ線、ステンレス鋼線、炭素鋼線などのばね用鋼線で製造されています。
ガータースプリングの使用用途
1. オイルシールの補助ばね
ガータースプリングの最も一般的な用途は、オイルシール (リップシール) に組み込まれてシール力を補助することです。オイルシールは、軸とハウジングのすき間から潤滑油が漏れたり、異物が侵入したりするのを防ぐ役割を担っていますが、ガータースプリングを内蔵することで、リップ部が回転軸に一定の押し付け力をかけ続けることが可能になります。このばねの力が均一であることにより、軸との間に適度な接触圧を保ち、密封性を向上させながらも摩耗や発熱を抑えるという重要なバランスを保つことができます。
2. ダストシール・グリースシール
オイルシールだけでなく、ダストシール (防塵) やグリースシール (潤滑保持) にもガータースプリングは使用されます。これらのシールは環境粉塵や水分の侵入を防ぐ役割を持ち、ばねの均等な引張力がシール性能の安定性を確保します。
3. モーターやポンプ類の軸封装置
回転体を持つ電動モーター、油圧ポンプ、コンプレッサーなどの回転軸部分でも、ガータースプリング入りのシールが不可欠です。特に長時間の高回転や温度変化の大きい環境では、シール材の変形を補う柔軟なばねの働きが重要になります。