展伸材とは

展伸材とは、金属を圧延、鍛造、引抜き、押出しなどの加工方法によって形状を作り出した材料です。
形状には、板、条、棒、線、管、形材などが含まれます。一般的に金属の展伸材は、硬くて強度が高く、耐久性があるため、建築、自動車部品、家具やインテリアなどの分野で幅広く使用されています。展伸材を使用する環境に応じて適切な材料を選ぶことや、選んだ材料の特製を損なわない加工方法を選ぶことが大切です。
展伸材の使用用途
展伸材は建築、自動車、家具やインテリア、機械部品、電子機器など、さまざまな分野で使われています。以下に主な使用用途をご紹介します。
- 建築:ビルや高層マンションの鉄骨構造、ショッピングモールの鋼製屋根材、大型スポーツ施設の鉄骨構造など
- 自動車:自動車のエンジンブロック、サスペンションのスプリング、ホイールリムなど
- 家具やインテリア:スチール製の椅子の脚、金属製の壁掛け時計など
- 機械部品:ギア、軸受け、スプリング、ばね、車輪など
- 電子機器:パソコンのケース、電源ユニットの筐体、オーディオ機器のフレームなど
展伸材の原理
展伸材は下記のような圧延、鍛造、引抜き、押出し、ドローワークを原理 (製造方法) として成り立っています。以下にそれぞれの原理を説明します。
1. 圧延
原料となる金属板や棒を圧力をかけて延ばし、必要な形状に加工する方法です。冷間圧延と熱間圧延の2つの方法があり、熱間圧延では金属を加熱して延ばすため柔軟性が高く、複雑な形状の加工が可能です。
2. 鍛造
金属材料を熱した状態で圧力をかけて形状を加工する方法です。均一な組織を持てるため強度や耐久性が高くなります。
3. 引き抜き
金属材料を金型に通して必要な形状に引き抜く方法です。精密な加工が可能で鋼線やパイプなどの細い部品の製造に適しています。
4. 押し出し
金属材料を金型に通して必要な形状に押し出す方法です。管状の製品や角材や棒状の製品などを製造できます。
5. ドローワーク (引き伸ばし加工)
金属板を金型に通して引き抜き加工する方法です。軟鋼やアルミニウムなどの薄い板材の加工に適しています。
展伸材の種類
展伸材は、材質、形状、用途、製造方法の違いでさまざまな種類があります。以下に、主な展伸材の種類を説明します。
- 材質による分類
鉄鋼材、アルミニウム材、銅材、ステンレス鋼材、チタン材、ニッケル合金材、その他の合金材など
- 形状による分類
板材 (薄く広い面を持つ材料) 、棒材 (円形や四角形など断面が一定で長さがある材料) 、線材 (径が細い棒材) 、管材 (中空の管状の材料) 、形材 (角材・H形鋼・I形鋼など、断面形状によって分類される材料) など
- 用途による分類
建築材料用展伸材、自動車部品用展伸材など
- 製造方法による分類
圧延展伸材、鍛造展伸材、引抜き展伸材、押出し展伸材など
展伸材は用途に応じて表面処理が施されます。防錆処理、塗装、被覆、めっき、焼入れなどさまざまです。材質の特性を引き出したり外観を美しくしたり、また耐久性を高めたりするのが目的です。耐疲労性が求められる場合には、金属内部の組織を制御する熱処理が施されることもあります。以下に、主な表面処理を解説します。
1. 酸洗処理
展伸材の表面に付着した油脂や酸化物を取り除いて表面をきれいにする処理で、酸を使った処理方法が一般的です。
2. めっき処理
展伸材の表面に金属をめっきし、外観の改善や耐食性の向上などを目的とした処理です。亜鉛めっき、クロメートめっき、ニッケルめっき、クロムめっき、銀めっき、金めっき、錫めっきなどがあります。
3. 塗装処理
展伸材の表面に塗装を施すことで、色や外観の改善、耐食性の向上、防錆・防蝕効果の付与などを目的とした処理です。塗料には、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂などがあります。
4. アルマイト処理
一般的に、アルミニウムをはじめとする軽金属の表面を酸化皮膜で覆う表面処理の一種です。この酸化皮膜が、表面を硬化して耐食性や耐摩耗性や電気絶縁性を向上させます。
5. パッシベーション処理
金属材料の強度や耐食性を向上させるために行われる表面処理です。主にステンレス鋼やチタンなどの金属材料に対して行われます。酸化剤の溶液に浸して表面に非常に薄く透明な酸化被膜を形成させ、金属表面を保護して耐食性を向上させます。
6. 熱処理
展伸材を高温で保持し、組織改良や硬化、強度・耐熱性の向上、脆性軽減のために行われる処理です。焼入れ、焼戻しなどの方法があります。