フロッキー加工とは
フロッキー加工とは、予め接着剤を塗布した基材の上に、静電気の帯電を利用して短い長さ (0.5~2mm程度) の繊維を接着させる技術です。
フロッキー加工を施すことで、ベルベットやスエードのような質感を表面に与えることができ、立体感を演出できます。手触りのほかに、保温効果、断熱効果、遮光効果などの機能面もあります。
別名では、フロック加工、静電植毛、電着加工、電気植毛などと呼ばれる場合もあります。一般的に、フロッキー加工と呼ばれる場合は、服飾製品、人形、インテリアなどに用いられている場合が多く、静電植毛と呼ばれる場合は、機能面を目的とした工業製品への加工が行われる場合が多いです。
例えば、吸光・反射防止を目的としたカメラ部品への加工や、火傷防止を目的とした金属部品への加工、結露防止を目的としたエアコンルーバーへの加工などがあります。
フロッキー加工の使用用途
フロッキー加工は、短繊維を垂直に接着し、毛羽を植毛する表面加工の方法です。毛が生えた見た目や、ふわふわとしたベルベットやスエードのような手触りを与えることが可能です。
加飾用途では、フォーマルアイテムやエレガントなデザインの製品に用いられたり、服飾用布地などに対して部分的に植毛をして柄を作ったりなどの用途があります。
その他、機能面では遮熱・断熱効果、反射防止効果、迷光抑制効果、結露防止効果、消音効果、防滴効果などの効果があり、こちらは同じ加工方法で呼び方が違う「静電植毛加工」として扱われることが多いです。
それぞれの呼び名と主流となる業界や、主な使用用途はそれぞれ下記の通りです。
1. フロッキー加工が主流となる業界
- 玩具業界:ぬいぐるみ、人形、ジオラマ用の芝生、ペーパークラフトなど、柔らかい質感や見た目が必要な製品に多く用いられます。
- 雑貨業界: 宝石箱、贈答用の箱、DVDボックス、ご祝儀袋などの加飾、文具、スマートフォンなどの滑り止めシールや、ハンガーなどの滑り止め、ポーチ、スマホケースなど、日常的に使用する製品に幅広く採用されています。
- ファッション業界: 服飾品、アクセサリーなど、デザイン性の高い製品に用いられることがあります。
2. 静電植毛加工が主流となる業界
- 自動車業界: 内装部品、ダッシュボードなど、耐久性と耐摩耗性が求められる部品に用いられます。
- 電子機器業界: スピーカー、マイクなど、音響機器や精密機器の表面処理に利用されます。また、カメラの内部や、自動車のヘッドアップディスプレイ(HUD)の内部などの吸光・反射防止や、コピー機内部の金属部品、こたつの金属部分などの火傷防止など幅広く利用されます。
- 医療機器業界: 内視鏡、カテーテルなど、生体適合性と耐久性が求められる医療機器の表面処理に用いられます。
3. 両方の呼び方が混在する業界
- 印刷業界: 卒業証書ホルダー、ブックカバーの表装など、印刷物の表面に特殊な効果を出すために、両方の呼び方が混在して使用されることがあります。
- 産業用部品業界: 製品の種類や用途によって、どちらの呼び方が使われるかが異なります。
フロッキー加工の原理
1. 材料
フロッキー加工は、接着剤を塗布した基材の上に、静電気を帯電した短繊維を植毛する加工です。
基材にはフィルム、樹脂 (ポリエチレン、ポリプロピレン、
塩化ビニルなど) 、紙類、布地、不織布、ゴム、鉄・SUS・アルミなどの金属、木材、コンクリートなどを用いることが可能です。
植毛する短繊維 (フロック) にはナイロン、レーヨンが主に使用され、その他ではアクリルやポリエステルなどの合成繊維、シルクやコットンなどの天然繊維などが用いられます。標準的なフロックは、直径11~90μm、長さは0.3~5mm程度です。
接着剤には、アクリルエマルジョン接着剤、酢酸ビニルエマルジョン接着剤などの水溶性接着剤が主に使用されます。また、水を使うことができない製品や金属製品への腐食を避ける目的でポリウレタン接着剤、エポキシ樹脂接着剤などの溶剤系接着剤が使用される場合もあります。
2. 加工プロセス
フロッキー加工の大まかな流れは下記の通りです。
- 接着剤塗布
- 静電植毛
- 乾燥
- 余剰フロック除去
- 検品・梱包・納品
接着剤を塗布した被植毛基材は、電極板と高電圧電源によって生じる電界の中にセットされます。フロックは電極板に載せられて高電圧によって電荷を帯び、電界中の静電気力によって基材に向かって飛翔し、直立して接着されます。この際使用される直流高電圧は約20~60kVです。
乾燥工程では、温風やヒーターにより接着剤の加熱硬化を行い、その後、表面に付着した余剰フロックを加振やブラシ掛けにより除去します。
フロッキー加工の種類
フロッキー加工、または静電植毛加工は、その手法や目的によって様々な種類に分類できます。ここでは、代表的なものをいくつかご紹介します。
1. アップ法
パイルを下方から上方へ飛翔させて植毛する方法で、パイル密度や立毛性に優れます。基材全体に均一な植毛が可能。
パイルの密度を高くできるため、ふっくらとした質感が出やすいのが特徴です。
2. ダウン法
パイルを上方より下方へ飛翔させて植毛する方法で、植毛効率が高いのが特徴です。パイルが基材に深く食い込むため、耐久性も高く、毛足が長く、柔らかい風合いが出しやすいです。
3. サイド法
パイルを横方向に飛翔させて植毛する方法。基材を吊り下げて、連続で植毛することができます。特殊なパターンや模様や、立体的な効果を出すことができます。
4. アップダウン法
アップ法とダウン法を組み合わせた方法で、の両方のメリットを活かせます。より自然な風合いを出すことができるのも特徴です。