インモールド転写箔とは
インモールド転写箔とは、プラスチック製品の射出成形工程と同時に加飾を行うための特殊なフィルムです。
プラスチック製品の製造工程において、金型内部にこの転写箔を挟み込んで溶けた樹脂を射出することで成形品の表面に絵柄を写します。一般的にプラスチック部品への着色や模様付けは、成形後に塗装や印刷といった別工程が必要です。インモールド転写箔を用いると成形と同時に装飾が完了します。これにより、製造プロセスの短縮やコスト削減が可能です。
インモールド転写箔による装飾は、複雑な立体形状であっても継ぎ目のない美しい仕上がりを実現できます。また一般的な印刷よりも耐摩耗性や耐薬品性に優れた表面保護機能を付与できます。塗装では表現が難しい繊細な装飾も再現できるため、意匠性を重視する工業製品で不可欠な材料です。
インモールド転写箔の使用用途
インモールド転写箔は以下のような用途で使用します。
1. 自動車部品
自動車産業では高い耐久性が必須となるため、多くの部品でインモールド転写技術が活用されます。特にバンパーやエンブレムといった外装部品での採用が顕著です。本物の金属を使用せずに金属特有の光沢感を再現できるため、衝突防止センサーなどの電波を阻害することなく高級感を演出できます。
2. 家電製品
炊飯器や洗濯機といった家電製品の操作パネルや外装筐体も主要な用途の一つです。生活家電は日常的に人の手が触れるため、美観の維持と共に表面強度が重要です。インモールド転写箔であればハードコート機能を付与できるため、爪による引っかき傷や洗剤による表面劣化を防止できます。またユニットバスの壁面パネルやトイレのリモコンなど、防水性や防塵性が必要な部品にも有用です。
3. 情報通信機器
ノートパソコンやスマートフォンの筐体などでも広く採用されます。携帯して持ち運ぶ端末は軽量化と薄型化が常に求められますが、一般的な塗装工程では、塗膜の厚みが設計上の課題になる場合があります。転写箔であれば薄い層で装飾ができるため、製品のサイズ感や重量に影響を与えずに自由な色彩表現が可能です。