薄膜コーティング

薄膜コーティングとは

薄膜コーティングとは、ベースとなる基材・基板の上に薄膜層を作り、様々な機能を付与する技術・サービスです。

一般的には、10μm以下の膜が薄膜と呼ばれますが、100μmでも薄膜と呼ぶ場合もあり、厳密な定義はありません。薄膜は、基材表面の保護、意匠性の付与、反射防止、絶縁など様々な機能性向上のために使用されます。CPU、HDDの記録面、液晶ディスプレイや、レンズ、電子部品の電極、工具の耐久性向上など、さまざまな製品に使用されているテクノロジーです。

薄膜コーティングの使用用途

薄膜コーティングは、主に下記のような用途で使用されています。

  • 物体の表面の強化や保護
  • 光学的性質の付与 (反射防止膜・反射膜・蛍光・光学フィルタ)
  • 低摩擦化
  • 導電性付与・絶縁性付与
  • 意匠性の付与
  • 撥水・撥油

薄膜コーティングによって付与されるこれらの表面効果は、様々な産業分野で活用されています。

1. 電子工業

電子工業産業において、薄膜コーティング技術は、電子機器・ディスプレイ機器の高性能化、小型・薄型化、耐久性向上などに貢献しています。成膜される薄膜の種類は、絶縁膜、保護膜、磁性膜などです。主な用途には下記のようなものがあります。

  • 集積回路・半導体素子の電極や配線
  • 表示素子の透明導電膜、絶縁膜、保護膜、蛍光体
  • 磁気素子の軟磁性膜、硬磁性膜、ギャップ材、絶縁膜
  • オプトエレクトロニクス素子

2. エネルギー関連分野

薄膜コーティングはエネルギー分野においても活用されている技術です。特に、太陽電池にアモルファスシリコン膜が使用されています。アモルファスシリコン膜とは、シランガスという物質をプラズマ化学蒸着して得られる薄膜です。エネルギー分野における主な用途には下記のようなものがあります。

  • 太陽電池用薄膜
  • 透明導電膜
  • 電極
  • 反射防止膜
  • 光熱変換素子用薄膜 (選択吸収膜、反射膜、選択透過膜など)

3. 工業

各種工業製品では、ガラス表面などの反射膜、反射防止膜、保護膜などに薄膜コーティングが施されます。これらの薄膜コーティングが施されたガラスは、

  • 電車・鉄道車両の窓
  • 鉄道の信号機・表示灯
  • 航空機の計器類・ディスプレイ
  • 車載ディスプレイ機器

などに使用されます。また、各種切削工具や金型の表面に施される薄膜コーティングは、耐摩耗、耐食、耐熱、潤滑などの機能を付与することなどが目的です。その他、レーザー加工機、医療機器、分析装置、プロジェクターなどにも薄膜コーティングは使用されます。

薄膜コーティングの原理

薄膜を形成する方法で一般的なものは、真空成膜です。
真空成膜では、真空中で膜の材料を基板の表面に堆積させます。真空成膜には、物理蒸着 (PVD) 、化学気相成長 (CVD) などがあります。

真空成膜以外には、メッキ、溶射、塗装、スプレー法なども薄膜コーティングの一種として含まれることがあります。ただし、これらは真空成膜よりも膜が厚くなることが多いので、塗膜や皮膜と呼ばれることのほうが一般的には多いです。

1. PVD (物理蒸着)

PVD (英: Physical Vapor Deposition) とは、真空容器内で発生させた原料の蒸気を工具や部品などの成膜対象物に付着させることで薄膜を形成する方法です。最も一般的な PVD法にはアーク放電とスパッタリングがあります。処理温度は 70 ~ 600℃程度で、原料や条件を変えることで様々な薄膜を作製することが可能です。

構造は単層膜、多層膜、グラデーションをつけたもの
など多種にわたり、TiN、AlTiN、TiAlN、CrNなどがあります。膜の種類や構造,組成などを変えることで、膜の硬さや弾性、密着性などの特性を変化させることが可能です。

2. CVD (化学気相成長)

CVD (英: Chemical Vapor Deposition) は、原料の蒸気を気相中もしくは成膜対象物の表面において分解及び化学反応させ,薄膜をコーティングする方法です。主には熱CVDとプラズマCVDがあります。

熱CVDとは減圧下において原料ガスを熱のエネルギーによって分解・反応させる方法です。700~1050℃の処理温度で、TiC、TiCN、TiN、Al2O3 (アルミナ) などの単層膜や多層膜を形成します。ガスが触れるすべての表面にコーティングが可能であるため、複雑な形状や内側への均一なコーティングも可能です。

プラズマ CVDとは、原料ガスをプラズマ放電のエネルギーによって分解・反応させる方法です。成膜温度は 200℃程度と、熱CVDに比べて低くなります。プラズマ CVD で形成される DLC 膜 (Diamond-Like Carbon) 膜はアモルファス構造をしており、これによって潤滑不足の条件でも硬さや耐摩耗
性、低摩擦特性に優れているという特徴があります。

薄膜コーティングの種類

薄膜コーティングの成膜材料には、金属 (Zn、Au、Al、In、Ag、Cr、Tiなど) 、誘電体 (Al2O3、Nb2O5、SiO2、TiO2) など様々な種類が使用されます。平面、曲面、ドーム、フィルムロール、円筒、ワイヤーや繊維、特殊立体物などの様々な形状に適用可能です。

機能別の種類では、主に下記のようなものがあります。

  • 反射防止膜: 光の反射を抑えて透過率を向上させる薄膜
  • フィルタ膜: 光を弱めたり、特定の波長範囲の光だけを透過させたりする目的で使われる光学薄膜
  • 透明導電膜: 導電性と可視光を透過する性質の両方を持った材料で作られた薄膜
  • 耐摩耗性膜: 耐摩耗性を向上させる機能を持ち、工作機械やドリルビットなど、さまざまな工具・金型の表面に施される薄膜
  • 固体潤滑膜: 潤滑油やグリースなどを使用できない部品や機械などに使用される薄膜

シャックル

シャックルとは

シャックルとは、重量物の吊り上げ・固定時にスリングと重量物の連結に使用する金具です。

クレーンなどで重量物を吊り上げ移動させる場合、ワイヤロープなどのスリングと重量物を安全確実に連結する用途でシャックルは広く使用されています。他にも、船舶の係留、アウトドアなど様々な場面でシャックルが使用されています。

近年、製造業、建設業の発展に伴い、耐荷重が大きく軽量の高強度シャックルが開発されています。同じ耐荷重のシャックルであっても、大きさや形状、シャックル単重、耐久性などが異なる多種多様なシャックルがあります。

シャックルは安全面に関わる重要な金具であるため、使用する際には耐荷重・形状を始め使用用途に適したシャックルを選択することが大切です。

シャックルの使用用途

シャックルは様々な場面で使用されています。以下はその使用用途の一例です。

1. 重量物の吊り上げ

シャックルは、製造業の現場や建設現場、資材置き場など様々な場所で使用されています。クレーンやホイストで重量物を吊り上げる際に、ワイヤロープやチェーンと重量物をシャックルで連結しています。

土木工事で矢板の引き抜きを行う際には、作業性の良さからロングタイプのシャックルが使用されることが多いです。

2. 重量物の固定

トラックでの輸送時に重量物をトラックに固定する場合にも、シャックルを使用しています。

3. 船舶などの係留

ボートや船舶などの係留時に、チェーンやロープとの連結にシャックルを使用しています。表面処理の施されたステンレス製のシャックルを使用すると、高価にはなりますが防錆性・耐久性をあげることが可能です。

4. 消波ブロックの連結

消波ブロック同士の連結には、強度のある鍛造タイプのシャックルがよく使用されています。

5. アウトドア

クライミングやスラックラインなどのアウトドアでも、ロープ、アンカーなどとの連結にシャックルを使用する場合があります。

シャックルの構造

シャックルは本体と、本体を閉じるためのボルト (ピン) で構成されています。

1. 本体

ワイヤロープなどのスリングを引っ掛ける部分をもつ本体は様々な形状がありますが、代表的なものとしてストレート型とバウ型があります。

・ストレート型

ストレート型はU字形状で、スリングを引っ掛ける部分であるふところが狭く、バウ型と比べ軽いのが特徴で主に一本吊りの時に使用されます。

・バウ型

バウ型はおたふくとも呼ばれる様にふところが広いので、複数のスリングを掛けても重なりにくくなっており、多重吊りの時に使用されることが多いです。

2. ボルト (ピン)

ボルト (ピン)部分は、ボルト・ナット型とねじ込み型があります。

・ボルト・ナット型

ボルトとナットで止めた後に割ピンを入れてナットの抜け落ちを防ぐため、振動が多い場所での使用に適しています。取り外しの作業性は下がるため、取り外しの頻度が少ない場合に使用されることが多いです。

・ねじ込み型

ボルトのつまみ部分の開いた穴に、棒を差し込んで増し締めや取り外しを容易に行うことができ、スリングの取り外しが多い場合に適したタイプです。

3. シャックルの取り付け

シャックルの取り付けの際は、ボルトの回転を防ぐため、シャックルの本体側にワイヤロープなどの振動する側を、シャックルのボルト側に固定されている側がくる様に取り付けます。

4. シャックルの素材

シャックルの素材は、強度や重さ、性質が異なる、鉄・アルミ・ステンレスなどの金属を使用しています。

シャックルの選び方

1. 耐荷重

シャックルを使用して安全に重量物を吊り上げるためには、耐荷重を満たすことが重要です。この耐荷重は、縦方向に荷重をかけることを前提とした値です。耐荷重を超えて使用すると、シャックルの破損、重量物の落下につながる可能性があり危険です。

2. 形状・サイズ

スリングが一本吊りの場合はストレート型、多重吊りの場合はバウ型のシャックルを選択するのが一般的です。ボルトのタイプは、取り外しの頻度や緩みにくさを考慮して選択します。

また、連結するスリングのサイズや作業性を考慮しながら、最適なサイズのシャックルを選択することが必要です。

3. 素材

シャックルの素材や表面処理により、強度や重さ、防錆性・耐久性など特性が異なります。

鉄は、強度が高く比較的安価で多くの場所で使用されていますが錆びやすい欠点があります。

ステンレスは、鉄より高価になりますが錆びにくく耐久性があります。

アルミは鉄やステンレスより強度は劣りますが、軽量で持ち運びに適しています。

素材にメッキや塗装を施し錆びにくくしたものや、熱処理を施し強度を上げたシャックルもあるので、使用環境やコストを考慮しながら選択します。

タープ取付金具

監修:浅野金属工業株式会社

タープ取付金具とは

タープ取付金具とは、各種タープ・シェード・オーニングなどの設置に使用される金具です。

タープ・シェード・オーニングとは、日差しを遮る目的で張られる布製のシートです。夏を中心に紫外線対策・熱中症対策で使用されることが多くなっています。これらの日除けは、専用の金具 (タープ取付金具) を用いて支柱や柵などに固定されます。幼稚園・保育園や、飲食店及び商業施設などのテラス、屋上スペース、個人住宅の庭など、幅広く使用されている製品です。

また近年のアウトドアブームで、車やテントにタープを金具で連結して使用する人が多くなってきました。

タープ取付金具の使用用途

1. 取り付け場所

タープ取付金具は、日除けのためのタープ・シェード・オーニングを設置することに使用されます。金具の種類にもよりますが、取り付ける場所は主に下記のような場所です。

  • 柵・フェンス・支柱
  • 物干しざお・手すり
  • サッシ枠
  • 窓 (ガラス面)
  • シャッター・雨戸
  • 建物外壁 (木・金属・コンクリート)

また、キャンプなどのアウトドアシーンでは、テントや車にタープを連結する用途もあります。車に取り付けるタープは、カーサイドタープと呼ばれ、そのタープを連結する金具はカージョイントと呼ばれることがああります。

2. 使用シーン

タープ取付金具は、個人使用・業務利用を問わず様々な分野での用途があります。

  • 個人住宅の庭・ベランダ
  • 幼稚園・保育園の園庭・プール・砂場など、教育施設の屋外
  • オフィスビルやマンションなどの屋上施設
  • 飲食店・商業施設・ホテルなどのテラス・屋上施設
  • キャンプなどのアウトドア

それぞれの利用シーンにおいて、用途にあったタープ・シェード・オーニングを設置することに使用されています。

タープ取付金具の原理

タープ取付金具は、用途に合わせて、フック・吊り滑車・カラビナなどのうち一種類もしくは複数の種類を組み合わせて使用されます。

1. 個人用

個人住宅で使用する場合は比較的タープも小型で簡易的な使用であるため、サッシ・外壁用のフックが使用されることが多いです。製品によりますが、ねじ留めもしくはマグネットや粘着テープで取り付けることが可能です。

アウトドアなどで車に取り付けるカーサイドタープでは、吸盤式のフックが用いられます。また、窓などのガラス面に取り付ける場合も吸盤式のフックを使用することが可能です。

2. 業務用

業務用の使用では、タープの使用期間も長く大型になる傾向があります。安全に設置するために、カラビナなどが使用されることが多いです。更に吊り滑車などを併用することで昇降式として利用される場合もあります。フェンスなどに設置したり、専用の支柱などに取り付けたりします。

使用の都度外す必要のない商業施設の屋上などでは、ステンレスワイヤー・滑車・カラビナなどを使用し、タープにパイプを通して吊り上げている場合もあります。ワイヤーを使用することで大規模まで広く対応することが可能です。また、滑車を組み合わせて用いることで、開閉式として使用することができ、利便性が向上します。

タープ取付金具の種類

タープ取付金具は、前述の通り様々な種類があり、用途に合わせて一種類もしくは複数種類を組み合わせて使用されます。

材質では、ステンレス製の金具は特に耐食性、耐久性に優れており、腐食しやすい屋外での使用に適しています。雨や雪の多いエリア、沿岸地域などでも劣化しにくく使用することが可能です。

1. 家庭用

家庭用では、サッシ枠取り付け用・外壁用 (木・コンクリート・金属) などの種類があり、ねじ留め・マグネット・粘着テープ・接着剤・吸盤などの設置方法があります。タープ側はフック形状になっていることが一般的です。耐荷重等は大きくないことが多いですが、取り付けが比較的容易であるものが多いです。

2. 業務用

業務用では、カラビナ、滑車、シャックル、リングキャッチなど、家庭用よりも丈夫な金具が使用されることが多く、必要に応じてステンレスワイヤーやタープ用のパイプなども併用されます。滑車などの可動式の金具を組み合わせることで、開閉式や昇降式のタープとして使用することが可能です。

本記事はタープ取付金具を製造・販売する浅野金属工業株式会社様に監修を頂きました。

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六価クロム処理

六価クロム処理とは

六価クロム処理とは、六価クロムを使用して金属表面に表面処理を施す技術です。

清浄された金属表面に六価クロムの溶液を浸漬またはめっきすることで表面処理を施します。これにより、金属表面の耐食性が大幅に向上させることが可能です。外部環境からの腐食を防止し、強化金属部品や構造物の寿命が延ばすことができます。

また、六価クロム処理によって、金属表面の耐摩耗性を向上させることも可能です。特に機械部品や工業用装置などで重宝されます。耐摩耗性が向上することで、長期間使用することができます。

ただし、六価クロム処理には環境への影響や作業者の健康リスクが指摘されています。特に六価クロム自体が有害物質であるため、処理工程や廃液の処理には特別な注意が必要です。そのため、近年ではより環境に優しい代替処理法の開発や使用が進められています。

六価クロム処理の使用用途

六価クロム処理は様々な産業で使用されます。以下はその一例です。

1. 自動車産業

自動車のバンパーやホイールなどは、耐食性や耐摩耗性が求められるため六価クロム処理が広く利用されます。特に外気や潮風などから保護するために重要です。また、エンジン部品に六価クロムめっきを施し、耐摩耗性を向上させて長寿命化を促進することもあります。

2. 航空宇宙産業

航空機の主翼やエンジン部品などは非常に高い性能が求められます。六価クロム処理により、部品の耐食性を向上させることが可能です。部品に軽い主材を使用することができるため、軽量化にも寄与します。

また、空港の地上設備や地上支援機器などは、海岸沿いに設置されることも多いです。これらの部品に六価クロム処理を施し、メンテナンス頻度を減らすことができます。

3. 電子機器産業

電子機器の配線やコネクタの端子部分に六価クロム処理が施されることがあります。めっきすることにより、耐食性を確保して信頼性を高めます。また、ハードディスクの外部ケースなどにも使用され、装飾的な効果とともに耐久性を向上させます。

4. その他

工場に使用される機械部品やベアリング及び歯車などは、耐摩耗性が求められます。したがって、六価クロム処理を施して耐摩耗性を向上させることも多いです。建設機械や農業機械などの耐久性を高めるためにも、六価クロム処理が採用されています。

六価クロム処理の原理

六価クロム処理は、金属表面に六価クロムイオンをめっきすることで表面特性を改良する表面処理技術です。一般的に電気めっき法または浸漬めっき法が使用されます。

電気めっき法は金属部品を陰極として電気めっき槽に浸して電気を流す方法です。陽極に六価クロムの塩化物などがある場合、電流が流れてクロムイオンが金属表面に還元され、めっき膜として析出します。電流密度やめっき時間を調整することで、めっき膜の厚さや性質を精密に制御できる点が特徴です。

浸漬めっき法は六価クロムが溶液に金属を浸す方法です。金属表面に六価クロムイオンが吸着し、化学的反応によって金属表面に六価クロムの膜が形成されます。操作が簡便であるため、全体的なコストが低く抑えられる利点があります。

六価クロム処理はその特性から広範な産業で使用されていますが、同時に六価クロム自体が環境に悪影響を与える可能性があるため、管理と廃液処理には特別な注意が必要です。

六価クロム処理の選び方

六価クロム処理のサービスプロバイダーを選ぶ際は、以下を考慮することが重要です。

1. 技術・経験

サービス業者がどれだけの経験と専門知識を持っているかを確認します。長年の実績や顧客の信頼性を調査することが重要です。口コミなどを確認することで検討します。

2. 品質

サービス業者がどのように品質管理を行っているかを確認します。ISO認証などの品質管理システムの有無や、めっき膜の品質に関する証明書の提供可否を確認します。

3. 環境配慮・法令順守

六価クロム処理は環境への影響が懸念されます。そのため、サービス業者が環境配慮をどのように考慮しているかを確認することが需要です。排出基準などの法規制を遵守していることを確認します。

マイクロバンプ

マイクロバンプとは

マイクロバンプとは、半導体デバイスと回路基板側の電極を接合するために形成する微細なはんだの突起です。

一般的に、ピッチが50μm未満であるバンプがマイクロバンプと呼ばれています。近年高性能化が求められるIC製品において、TSVとマイクロバンプ でICチップを接合する積層型三次元IC (3D-IC) 技術などの開発が進められています。ICチップを貫通電極とマイクロバンプで接続することに より、チップ間の配線長を劇的に短くすることが可能です。これにより、配線遅延時間の低減、省電力化を実現することができます。

マイクロバンプの使用用途

1. 概要

半導体チップの小型化、高性能化に伴って、接続ピン数は増加し、接続ピッチや電極サイズは微細化する傾向にあります。マイクロバンプとは、このような微細化、狭ピッチ化に対応することを目的とした接合プロセスです。

マイクロバンプによって接合部の機械的ストレスが分散され、特性の変動を防ぐことができます。また、一対の電極をたくさんのマイクロバンプで接続することにより、歩留まりをあげることが可能です。

2. 具体的な用途

マイクロバンプの具体的な用途例には下記のようなものがあります。

  • 半導体パッケージ一般
  • 3次元集積回路
  • 非破壊検査用X線センサ
  • 医療用X線センサ
  • 遠赤外線イメージセンサ
  • 高エネルギー物理学研究用の素粒子検出器

マイクロバンプは、X線センサの解像度を従来の100倍以上に上げる効果があり、医療用などのセンサの性能向上に貢献しています。これにより、X線の照射量が少なくて済むため、人体への影響を軽減することができます。また、マイクロバンプは、従来のデザインで作った積層チップにも適用可能です。

マイクロバンプの原理

1. 半導体はんだバンプ

半導体デバイスの実装方式には、ワイヤーボンディング実装方式と、フリップチップ実装方式があります。

ワイヤーボンディング実装方式は、半導体デバイスの電極と回路基板側の電極を金などのワイヤーで接続します。

一方、フリップチップ実装方式は、半導体デバイスと回路基板側の電極同士を直接接続する実装方法です。 反転 (フリップ) させた半導体デバイスと回路基板を熱や超音波で圧着します。圧着のためには、あらかじめ半導体ウエハの電極部に突起を形成する必要があり、この突起がはんだバンプです。また、この作業工程を半導体はんだバンプ加工工程と呼びます。

2. Cuピラーバンプ形成

マイクロバンプの接合は、一般的なバンプよりもピッチが狭いため電解めっき法によるCuピラーが主流です。

はんだボールではリフロー時に横方向に大きく広がるため、端子間ピッチを確保する必要があり、マイクロバンプにはあまり適しません。Cuピラーは、はんだボールよりも少量のはんだで接合することが可能です。

Cuピラーバンプ形成工程では、下記の順に工程が進められます。

  1. スパッタリングによるTi/Cuシード層 (導電層) 形成
  2. フォトリソグラフィによるレジストパターンの形成
  3. 電極形成部におけるCuめっきによる柱状の電極形成
  4. バリア層としてのニッケル層の形成及び、スズ-銀 (Sn-Ag)などの鉛フリーはんだの連続的な積層めっき形成

3種類の積層めっきは1台のめっき装置で連続処理が行われます。Cuピラーの高さのバラツキが大きいと実装する際の接続性に直接影響するため、めっき工程においては膜厚均一性を確保することが非常に重要です。

マイクロバンプの種類

マイクロバンプには、Cuピラーバンプ形成の他、無電解スズめっきによる形成などの方法があります。無電解スズめっきには還元型と置換型の2種類が有り、置換型の無電解スズめっきは原理的にスズの膜厚を厚くすること ができません。一方、塩化チタン (Ⅲ) を還元剤とする無電解スズめっきは自己触媒反応により連続析出することが可能であり、バンプ形成に適しています。

被加工物は、通常のSiウェハをはじめとして、SiC、GaAs、 InP、サファイアなどです。ウェハ以外の四角形状基板や、FPCなども加工される場合があります。ウェハサイズは2〜12インチ程度様々なものがあります。バンプ径は最小φ3μm程度から有り、バンプピッチは最小6μm前後から幅広くあります。

コンベアーアイドラー

コンベアアイドラーとは、ベルトコンベアやコンベアラインにおいて、ベルトを支える装置です。

ベルトの重量や搬送物による負荷によってアイドラーが回転し、ベルトが支えられる仕組みです。コンベアアイドラーは回転式と非回転式の2つの基本的なタイプに分かれます。回転式はアイドラーが回転し、ベルトを支え、非回転式はアイドラーが回転せず、ベルトの重量や負荷によって支えられます。

コンベアアイドラーは工場や製造現場、物流倉庫、空港、駅などで幅広く活用されています。構成要素としては、アイドラー本体、軸受け、駆動装置があり、アイドラー本体が通常金属製でベルトを支え、軸受けが回転を可能にし、駆動装置がアイドラーを回転をさせる動力源となります。

ステンレスロッカー

監修:株式会社クラフトワーク

ステンレスロッカーとは

ステンレスロッカー

ステンレスロッカーとは、ステンレス鋼製のロッカーです。

ステンレス鋼は非常に耐久性があり、錆びにくいため、長期間の使用に耐えます。特に湿気の多い環境や屋外での使用に適しています。過酷な環境にロッカーを設置する必要がある場合、ステンレスロッカーが活用されることも多いです。

また、ステンレス鋼は表面が滑らかなため、消毒や清掃が容易です。したがって、清潔に保ちやすく、衛生管理が求められる場所での利用に適しています。食品加工場や医療施設及びプールサイドなどで活用することも可能です。

ステンレスロッカーの使用用途

ステンレスロッカーは様々な場面で活用されます。以下はその一例です。

1. 食品加工業

食品加工業界では、食品の安全性を確保するために厳格な衛生管理が求められます。ステンレスロッカーは表面が滑らかで汚れがつきにくく、洗浄が容易です。したがって、従業員が清潔な状態で作業するための衣類や衛生用具の保管に利用することが可能です。

特に濡れたままの長靴を収納するステンレス長靴ロッカーを使用する施設が増えています。

2. 医療

医療施設では感染症の予防が重要な課題です。ステンレスロッカーは消毒がしやすく、患者の個人物品や服装の保管に適しています。さらに、患者のプライバシーを守るために、鍵付きのステンレスロッカーが使用されることもあります。また,消防署や医療施設では紫外線殺菌灯やマイクロプラズマ装置を装着したステンレス殺菌ロッカーも増加しています。

3. 工業

工業環境では、化学薬品や油を使用することが多いです。ステンレスロッカーは耐薬品性と耐久性に優れており、工具や保護具の安全な保管場所として広く利用されます。また、防水性が高いため、屋外での使用や湿気の多い環境でも活用することが可能です。

4. スポーツ施設

屋内プールなどでステンレスロッカーが使用されることがあります。耐水性と防錆性に優れているため、プールサイドでの使用に最適です。利用者の貴重品や衣類、個人の物品の保管に使われます。

ステンレスロッカーの原理

ステンレスロッカーは主にステンレス鋼で作られています。ステンレス鋼は鉄にクロムやニッケルを添加した合金であり、錆びにくく、耐食性が高い点が特徴です。ステンレス鋼の中でも、一般的に使用されるのがSUS304及びSUS316です。

SUS304は一般的なステンレス鋼であり、水や酸素に対して良好な耐性を有します。加工しやすく、溶接や成形が比較的容易です。これにより、さまざまな形状や用途に応じて使用することができます。

SUS316はクロムとニッケルの他にモリブデンを含むため、より高い耐腐食性を有するステンレス鋼です。特に塩水や酸性環境、化学物質に対して優れた耐性を示します。したがって、高い耐食性と耐蝕性が求められる医療機器や海洋環境で広く利用されます。

ステンレスロッカーの選び方

ステンレスロッカーを選ぶ際は、以下の要素を考慮することが重要です。

1. サイズ

一般的な個人用ロッカーのサイズは、幅30cm程度、奥行き51.5cm程度、高さ180cm程度です。これは服や靴、小物類を収納するのに適しています。グループで利用する場合や、大きな荷物を収納する必要がある場合は、より大きなサイズを選ぶことがあります。一人用,多人数用,シューズ用,長靴用などの中から設置場所や人数,用途に応じて選択して下さい。

2. 材質

SUS304は一般的な使用環境での耐久性が高く、一般産業用途や屋外の環境で広く使用されています。SUS316は高い耐腐食性を有する点が特徴です。海洋環境や医療機器及び化学処理装置など、厳しい環境での使用に適しています。

3. 段数

多段のロッカーは高さを有効に使うことができるため、収納力を確保しつつ、スペース効率を高めることが可能です。各段には仕切りがあり、スペースを自在に仕切ることができます。

4. 鍵の有無

貴重品や機密性の高い物品を保管するためには、鍵の有無が重要です。鍵は機械式のものから電子的なものまで様々な種類があり、使用環境やセキュリティ要件に応じて選ぶことができます。公共的な場所や物品の安全性が問題にならない場合には、鍵なしのロッカーも選定されます。

5. その他

スポーツ用や衛生管理が重視される場合は、換気孔のあるロッカーを選ぶことで収納物の通気性を確保可能です。

ステンレスロッカー

本記事はステンレスロッカーを製造・販売する株式会社クラフトワーク様に監修を頂きました。

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ステンレス作業台

監修:株式会社クラフトワーク

ステンレス作業台とは

ステンレス作業台

ステンレス作業台とは、ステンレス鋼で製作された作業台です。

ステンレスは強固で耐久性が高い素材です。耐腐食性があり、錆びにくいため、湿気や化学物質などの様々な環境条件にも耐えることができます。これにより、長期間にわたって安定した使用が可能であり、定期的な交換や修理の必要性が少ない点が特徴です。

また、表面は非常に滑らかで、微細な隙間が少ないため、汚れや細菌が付着しにくく、簡単に清掃・消毒が可能です。衛生管理を強化することが可能なため、食品業界や理化学業界で広く利用されています。

ステンレス作業台の使用用途

ステンレス作業台は様々な用途で使用されます。以下はその一例です。

1. 食品加工業

食品の加工や包装作業のためのSUS430作業台が多く使用されています。衛生管理が厳格な環境であり、ステンレスの耐腐食性と衛生的な特性とSUS304製よりも安価なSUS430製が重宝されています。近年では耐久性と更なる清潔さを求めて,SUS304製やステンレスに銅(Cu)を添加した抗菌ステンレス作業台も使用されることが増えてきました。また、レストランや大量調理施設での調理作業において、耐久性と清潔さからステンレス作業台が使用されることも多いです。

2. 研究・開発

研究・開発の場では化学的に安全で耐久性があり,重量のある機器を載せて作業することのできるクリーンなステンレス作業台が使用されています。

クリーンルームでは安全性が高いR曲げ天板やエアーの流れを妨げないステンレスパンチング作業台のクリーンパンチングテーブルが使用されることが多いです。

薬品の混合や反応を行う際に、化学的に安全で耐久性のある作業台が必要です。ステンレスは化学薬品に対して耐性があり、表面が簡単に清掃・消毒できるため、実験の安全性と品質管理を向上させます。

ステンレス作業台

3. 工業

機械部品や製品の組み立て及び加工作業のための作業台として使用されます。強度と安定性が高いため、大型の機械や部品を安定して保持することが可能です。また、化学薬品を使用する場面でも腐食しにくいため、清掃も容易です。

4. 医療

ステンレス作業台は手術で使用する器具や消毒物の保管と準備に使用されます。消毒が容易なため,汚染リスクを低減することが可能であり,手術室の衛星維持に貢献します。ステンレス作業台上は手術中や点滴処置準備などに必要な機器を整理し,外科医や看護師が効率的に取り扱えるよう支援する重要な用品です。

ステンレス作業台の原理

ステンレス鋼は非常に強度があり、耐久性が高い素材です。これにより、作業台は重い物や機器を安定して支えることができます。一般的にはSUS0304またはSUS430などのステンレス鋼で製造されることが多いです。

ステンレスの主成分は鉄ですが、クロムも含有されています。このクロムによって形成される表面の酸化皮膜が、腐食や錆びを防止する仕組みです。さらに、ここにニッケルを添加することで、加工性や靭性及び高温強度を向上させていることが多いです。

ステンレスの表面は平滑で、簡単に洗浄や消毒ができます。これにより、衛生的な状態を保つのが比較的容易です。また、平滑な特性から、ステンレス台上で作業するのにも適しており、作業台として販売されることが多いです。

ステンレス作業台

ステンレス作業台の選び方

ステンレス作業台を選ぶ際は、以下の要素を考慮することが重要です。

1. サイズ

作業する内容や必要な作業スペースに応じて、適切な幅と奥行きを選びます。例えば、大型の機器や複数の作業道具を置く場合は広い作業面が必要です。加えて、作業台を設置するスペースや配置も考慮して選定します。

2. 耐荷重(天板の板厚)

耐荷重は作業台の上に乗せることができる最大の重量です。重い機械部品や道具を置く場合は高い耐荷重性が求められます。ステンレス鋼は面積当たりの耐荷重が高いため、重量物を乗せることに適している場合が多いです。天板の板厚は1.0t、1.2t、1.5tのものが多くあります。

予期しない負荷にも対応できるように安全マージンを考慮することも推奨されます。作業台の長期的な耐久性と安全性を確保するためにも、余裕をもって選定することが重要です。

3. 色

ステンレス作業台は一般的に銀色です。環境や用途によって表面研磨処理の種類を選ぶこともあります。光沢のある仕上げの#400研磨やBA仕上げやマットな仕上げのHLなど、用途や好みに応じた表面処理を選ぶこともできます。

4. 高さ

作業台の高さは作業者の身長や作業姿勢に合わせて調整する必要があります。一般的に座って作業する作業台の高さは740mmや750mm,立って作業する立ち作業台の高さは1000mmが主流です。高さが調整可能な作業台を選ぶことで、複数の作業者が快適に使用することが可能です。

本記事はステンレス作業台を製造・販売する株式会社クラフトワーク様に監修を頂きました。

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枚数カウンター

監修:株式会社ヒューテック・オリジン

枚数カウンターとは

枚数カウンターとは、板状の対象物の数量を数える装置です。

一般的には、生産した製品や加工したアイテムの数を正確にカウントするために使用されます。例えば、工場の製造ラインで製品の数を管理するために枚数カウンターが使われることがあります。

枚数カウンターは高い精度で物の数を数えることが可能です。人間の手作業では誤差が生じやすい場合でも、機械的に正確に数えることができます。また、大量の対象物を迅速に数えることができるため、作業時間の短縮にもつながります。

枚数カウンターの使用用途

枚数カウンターは様々な場面で使用されます。以下はその一例です。

1. 製造業

スマートフォンやコンピュータの製造では、基板などの板状部品について数を正確に数える必要があります。また、高度な自動化が求められるため、製造ラインに統合された枚数カウンターが使用されることが多いです。その他にも、自動車産業や食品産業においても、板状部品をカウントするために使用されます。

2. 印刷業

印刷業界では、印刷された文書やパッケージの部数を正確に数えることが必要です。大量生産の場合でも、枚数カウンターを使用することで、正確な部数を把握することが可能です。これにより、クライアントに納品する際の品質管理を徹底することができます。

3. 物流業

枚数カウンターは、倉庫内での板状商品の在庫管理に重要な役割を果たします。商品が入庫・出庫する際に、自動的に数え上げることで在庫数をリアルタイムで把握し、適切な補充や発注を行うことが可能です。また、正確な枚数の確認ができることで、誤配送を防ぐ役割も果たします。

4. 木工業

木工工場では、加工された木材の板やパネルを数えるために枚数カウンターが使用されます。特にカッティングや成形ラインにおいて、各製品の数を迅速かつ正確にカウントすることが必要です。

枚数カウンターの原理

枚数カウンターは物体の状態をセンサーなどで検知することで枚数を数える仕組みです。一般的には光センサーや画像処理によって実現します。

光センサーを使用した枚数カウンターは、物体が通過する際に光の反射や遮断を検知することで動作します。センサーから光を発射し、対象物の有無によって受光部に届く光量が変化することで検知することが可能です。物体の色や表面の状態に依存せずに使用可能であり、設置と調整が簡単なため、多くの産業で広く使用されています。

画像処理はカメラや画像センサーを使って対象物を検出し、その数をカウントする仕組みです。取得した画像から対象物を特定するための特徴量を抽出し、枚数をカウントします。複雑な処理が可能であり、場合によっては複数の物体を同時に検出し、個別に数えることも可能です。

画像処理を用いた枚数カウンターは複雑な環境や多様な物体を扱う場面で有用です。高度な自動化や精度の要求がある産業で広く利用されています。

枚数カウンターの選び方

枚数カウンターを選ぶ際は、以下を考慮することが重要です。

1. 対象板厚

対象の板厚に応じて、感知範囲や精度が適したセンサーを選ぶ必要があります。例えば、薄い板厚の場合には、差異を正確に検出できるセンサーが必要です。また、板の種類によって、近接センサーや光センサーなど、使用できるセンサーが異なります。

2. 枚数

一度に処理できる枚数を考慮する必要があります。高速な生産ラインでは、短時間で多くの物体を正確に数えることが求められます。また、棚卸時等の非生産時にも計数確認が必要な場合が有り、常に正確に数え上げられることが重要且つ、処理能力と精度のバランスを考慮します。

3. 処理時間

リアルタイムでの情報更新が求められる場合、素早く物体を数え上げられるカウンターが必要です。処理時間を考慮して製品を選定します。また、処理されたデータを迅速に管理し、必要に応じて分析する能力も重要です。

4. その他

高温や振動など、カウンターが設置される環境条件に耐えることも確認する必要があります。長期間安定して動作し、保守が容易であることが重要です。また、他の管理システムと統合できるとさらに有利です。

本記事は枚数カウンターを製造・販売する株式会社ヒューテック・オリジン様に監修を頂きました。

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自動乳鉢

監修:株式会社石川工場

自動乳鉢とは

自動乳鉢とは、乳鉢と乳棒をモーターで動かして硬質物質や分析試料などを粉砕、混合、分散、混練する機械です。

電子部品材料分野、砥石分野等の各種産業や医学・理科学分野における実験・研究の現場で活用されています。ポットミルなどに比べて、小さな粉砕エネルギーであることが特徴で、その特徴により、電子部品材料分野では、メカノケミカルやメカニカルアロイングが達成できます。また、粉砕中の試料を肉眼で容易に確認することができます。

自動乳鉢は単に手擂りの代替手法として用いられるだけではなく、従来になかった事象を発現させ、新たな材料開発に寄与するものです。さらには、量産まで見据えた工法であるため、量産立ち上げ時間も短縮できます。

自動乳鉢の使用用途

1. 概要

自動乳鉢は、食品、電子部品材料、金属化学などの産業分野や、各種分野の試験研究用途で使用されている機器です。研究では、特にメカノケミカル反応やメカニカルアロイング反応を用いた状態で使用されることもあります。具体的な活用事例には、

  • 全固体電池の試作とその評価
  • ゼオライトの粒子分布の擂潰時間依存性の評価
  • ガラス粉砕実験
  • 磁器杵を原材料とした磁器ナノ粒子の生成

などがあります。

2. 分野と被加工物

自動乳鉢は多くの分野で活用されており、分野と被加工物には下記のような例があります。

  • 理化学: 金属・ガラス・カーボン・シリカなどの各種ペースト、スラリー、カーボンナノチューブ、磁気材料
  • 電気・電子: 導電性インク、半導体材料 (導電性接着剤など)、各種センサー素材、フェライト磁石素材、ハンダ材、セラミック材料 (チタン、ジルコニア、アルミナなど) 、パッケージ封止材
  • 電池用材料: 全固体電池の電極材、リチウム電池電解質
  • 医療・医学: 歯科材料 (義歯素材など) ・人工骨、軟膏材、香料、漢方薬、健康食品
  • 塗料: 塗料用粉末、インク材料、染料、顔料、絵具・漆材、七宝釉薬、朱肉、墨汁
  • 樹脂・油脂: 触媒、接着剤添加物、グリース添加物、火薬類
  • 窯業・金属・ガラス: ファインセラミック粉、貴金属粉末及び各種金属粉末、カーボン粉末、ガラス添加物、粉末治金、酸化アルミナ、鉱物試料、陶芸釉薬
  • 砥石・研磨剤: 砥粒、研磨剤、ダイアモンド、ボロンナイトライド、シリコンカーバイド、コランダム
  • 化粧品: ファンデーション、色材、金属粉
  • 食品: 蕎麦・うどん、菓子材料、製餡、豆腐、こんにゃく、練り物 (蒲鉾・はんぺん、竹輪)、ハム、カレールウ・粉末スープ、すりごま・味噌すり、ピーナッツペースト

自動乳鉢の原理

自動乳鉢は、鉢もしくは乳棒をモーターによって回転させ、粉体の粒子を細かくすり潰ししながら、同時に均一に混ぜ合わせて分散させ、混練する機械です。材料を擂り潰しながら、同時に撹拌も行えるのが大きな特長になります。ポットミルなどに比べて、粉砕エネルギーが小さいため、時間をかけて、少しずつ繰返し行われます。

このことにより、被加工物に発熱や衝撃などの負荷を与えず、意図しない変質を防ぎながら、均一に混練することが可能です。また、メカノケミカル現象やメカニカルアロイングなども発現し、ポットミル等ではできない加工が可能となります。

機構には大きく分けて2つあります。乳棒と乳の両方が回転するタイプと、乳棒のみが自転公転をするタイプです。乳棒と乳の両方が回転するタイプの装置は、乳鉢側の装置内部に強力なモーターが設置されて乳鉢が回転し、乳棒の垂直圧力と壁面圧力によって、強い摩擦力と圧力で試料を粉砕します。

乳鉢用、乳棒用の2つのモーターが必要になります。乳棒のみが自転公転するタイプの装置は、乳鉢と乳棒の両方が回転するタイプと同様の強い摩擦力と圧力が発生します。また、ギアの設計が必要にりますが、モーターは1つでよいので部品点数は少なくなります。

乳棒が自転公転回転するタイプは、ギアの組み合わせにより、乳鉢は固定されてますが、乳棒が公転しながら自転する複雑な動きとなります。杵筒にばねが内蔵されているため、圧力をかけながら撹拌・擂潰が行われます。

自動乳鉢の種類

自動乳鉢には様々な種類の製品があります。鉢と乳棒の素材も製品によって異なり、小型機以上の大きさでは、鉢は花崗岩、磁器、砲金、ステンレスなど、乳棒 (杵) は木、テフロン、磁器などです。微量機では、メノウ、アルミナ、炭化タングステンなどが鉢・杵共に使用されます。乳棒が2軸式になっている製品では効率よく粉砕が可能です。

また、製品によっては、自動乳鉢に真空機能や加熱機能などの付帯機能があるものもあります。真空機能のある製品では、真空/減圧雰囲気、アルゴンや窒素ガスなどの不活性ガス置換雰囲気で濃縮、乾燥、脱泡、撹拌擂潰処理を行うことが可能です。

酸化を避けたい材料処理など、嫌気性素材に最適です。兼ねる機能が付加されたものは、通常温度では非常に粘度が高く、混錬が出来ないものも、加熱することにより、粘度が小さくなり、混錬が可能となります。また、微量機はグローブボックス内で使用することのできる製品もあります。

大きさ別では、微量機 (加工容積0.05 L程度) ・小型機 (加工容積0.2〜7.0L程度) は実験机の上に乗せて実験が可能なため、研究開発向けに最適です。大型機 (12〜150L) は、また、一度に多くの材料の処理が可能なため、量産用として使用されることが多くなっています。

本記事は自動乳鉢を製造・販売する株式会社石川工場様に監修を頂きました。

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