真空計とは
真空計とは、ある空間内の真空度を測定するためのセンサーです。
その目的によって、分圧真空計と全圧真空計のどちらかを選択します。また、計測手法も多数多様であり、その違いによって計測可能な真空度のレンジにも差があるのが特徴です。
真空計の用途例
真空空間には水分を含めた不純物が限りなく少なくなるため、高清浄度が必要な製造現場ではよく真空空間が活用されます。そのなかでも、真空到達度管理が必要なチャンバーや石英管などに接続された流体回路中に設置されるのが真空計です。
真空計の用途としては、半導体製造装置のプラズマエッチング空間や、冶金、有機合成などの実験設備に設置されることが多いです。また、イオンビーム装置や蒸着装置など、対象物表面への加工用途など表面清浄度が求められる場面でも使用されます。
真空計の原理
真空計の種類と測定原理は多岐にわたります。真空計はごく少量存在する気体分子の運動量をうまく測定することで、空間内の気体密度および真空度へと換算しています。真空計の中でも一般的に普及しているのが「ピラニ真空計」です。
ピラニ真空計は、電気抵抗型の真空計であり、電流を流した白金線へ気体が衝突する際に消失する熱エネルギーから電流を算出し、その値から圧力を逆算します。この微小圧力がそのまま真空度に相当するという仕組みです。
真空計の選び方
真空計には数多くの種類が存在するため、目的に合った真空計を適切に選択する必要があります。用途別のタイプ、計測方法によって特徴が異なるため、それぞれの特徴について十分な理解が重要です。
また、各種真空計にも種類が複数存在するため、計測したい目的の真空空間の真空度によって選定する必要があります。最終真空到達度を保証したい場合は、1つの真空計で十分ですが、真空ポンプによる排気速度などのふるまいを知りたい場合は、複数の真空度を設置しなければなりません。
真空計の種類
真空計には用途別や計測方法、測定範囲の観点からいくつかの種類に分類できます。
1. 用途別
分圧真空計
分圧真空計は、個別の気体のみの真空度を測定する場合に選択します。2種類以上の気体が混ざっている状態で、それぞれの気体が示す圧力が分圧です。
同じ圧力でも気体の種類によって性質が異なるため、真空の質を分析するために使用します。分圧真空計として一般的なのが、質量分析計です。
質量分析計は、イオン源、分析部、検出部の3つで構成されています。電場や磁場を使用することで、特定のイオンのみを観測することにより、各気体の圧力を知ることが可能です。
全圧真空計
全圧真空計は、空間内の真空度を単純に計測したい場合に選択します。測定方法により数多くの種類が存在するため、目的に合わせた選択が必要です。
2. 計測方法
計測方法としては主に3つに分類されます。それは、「圧力そのものを検知する方法」「気体の輸送現象を利用する方法」「気体中の電離現象を利用する方法」です。
圧力そのものを検知する方法
圧力そのものの検知を利用した真空計として、U字管真空計があります。U字真空計は、ガラス製のU字管の一方を真空に排気して封じた差圧計です。
圧力差によって生じる液柱の高さから、気体の圧力差を読み取ることができます。U字真空計は、気体の種類にされないのが特徴です。このため、圧力の絶対測定が可能となることから、他の真空計の校正基準として用いられています。
気体の輸送現象を利用する方法
気体の輸送現象を利用した真空計が熱伝導真空計です。気体の熱伝導率は圧力によって変化するという性質を利用した真空計です。
熱伝導真空計にも数多くの種類があり、「ピラニ真空計」「サーミスタ真空計」「熱電対真空計」などがあります。熱伝導真空計の注意点は、高真空になると熱伝導率よりも熱放射の影響が大きくなることです。そのため、熱伝導真空計は高真空の測定には利用できないというデメリットがあります。
気体中の電離現象を利用する方法
気体の電離現象を利用とした真空管としては、ペニング真空計 (冷陰極電離真空計) やイオンゲージ (熱陰極電離真空計) があります。ペニング真空計は、真空中での放電現象を利用して、圧力を測定できます。耐久性に優れていますが、気体の種類によって感度が大きく変わります。
ペニング真空計は、回路構成が簡単であるというのがメリットです。一方、デメリットは、ペニング放電は不安定になることがあるため、あまり精度の良い測定が難しいことです。さらに、表面の汚れが強いと 陰極からの電子放出量が少なくなり放電しなくなること、高真空の状態になると放電を開始させることが難しいことなどがあります。
3. 測定範囲
圧力は、低真空、中真空、高真空、超高真空などの真空度で分けられており、真空計の種類により測定真空度が異なります。真空度はJIS (日本工業規格) により、以下のように圧力の範囲によって5つに分類されています。ピラニ真空計は低真空から中真空を測定でき、電離真空計は、中真空から超高真空まで測定が可能です。
- 低真空 (low vacuum): 105Pa~102Pa
- 中真空 (medium vacuum): 102Pa~10-1Pa
- 高真空 (high vacuum): 10-1Pa~10-5Pa
- 超高真空 (ultra high vacuum): -5Pa~10-8Pa
- 極高真空 (extremely high vacuum): 10-8Pa以下
参考文献
https://www.irie.co.jp/products/vacuumgage-nmv/
http://www.nucleng.kyoto-u.ac.jp/people/ikuji/edu/vac/chap3/penning.html
http://jvia.gr.jp/
https://www.horiba.com/jp/horiba-stec/element-technology/what-is-a-capacitancemanometer/