ケーブルグランドとは
ケーブルグランド(英語:Cable Gland)は、ケーブル(電気、制御システムで使用する絶縁体と被覆で構成された電線)を制御盤や操作盤の筐体、機器内へ挿入し確実に固定するための器具です。
ケーブルグランドの主な機能は、下記の通りになります。
- 外的環境保護: 制御盤などの筐体の開口部から、外部環境のほこり、粉塵、湿気の侵入を防止します。
- 保持力: ケーブルを確実に固定し、外部からの機械的な引張力や振動で緩むことを防止します。
- 密閉性: 外部からケーブル外面を伝ってくる粉塵、水の侵入を防止します。
ケーブルグランドの規格として JIS F8801 舶用電線貫通金物 があります。
図1. ケーブルグランドの規格
ケーブルグランドの使用用途
ケーブルグランドの使用用途は、別名で「電線貫通金物」とも呼ばれるように、制御盤などの筐体にあけられたケーブル取込口(接続用穴)に取り付け、筐体壁面を貫通しケーブルを貫通させるために使用します。ケーブルグランドは、電気・制御機器の屋内外配線のさまざまな箇所で使用されています。
制御盤や操作盤の筐体、機器内へ粉塵や水を侵入させることなく、また振動や引っ張られることで抜けることを防止し確実にケーブルを確実に固定し引き込みことができます。
ケーブルグランドの実際の使用例として、コントロールボックス(操作箱)に設置した場合を下図に示します。
図2. ケーブルグランドの使用例
特に、JIS C60079-10 爆発性雰囲気で使用する電気機械器具 第10部:危険区域の分類で指定された、可燃性ガスまたは蒸気によって爆発や火災のリスクのある危険個所で使用場合は、下記規格に適合し検定合格した機器を使用する必要があります。
- JNIOSH-TR-46 工場電気設備防爆指針
- IEC 60079 Explosive Atmospheres IEC
ケーブルグランドの材質は、JIS F8801 舶用電線貫通金物の場合を下記に示します。
- 締付グランド: 黄銅またはアルミニウム合金鋳物(JIS H5202 AC7A-F)
- ボディ(体): 黄銅、鋳鉄、棒鋼またはアルミニウム合金鋳物(JIS H5202 AC7A-F)
- ナット: 黄銅またはアルミニウム合金鋳物(JIS H5202 AC7A-F)
- 座金: 黄銅またはアルミニウム及びアルミニウム合金の板(JIS H4000)
- ガスケット(ブッシング): 合成ゴムなど
- ガスケット: 張合せ帆布など
上記以外にも、ステンレス鋼やポリアミド樹脂(PA)などの材質を使用したケーブルグランドがあります。特に屋外で使用する場合は耐候性、油がかかる環境であれば耐油性、高温雰囲気では耐熱性など、使用環境に適した材質を選定することが重要です。
なお、制御盤などの筐体にケーブルを引き込むための器具としては、ケーブルグランド以外にもケーブルクランプがあります。ケーブル1本毎に引き込む場合はケーブルグランドを使用し、ケーブル複数本をまとめて引き込む場合はグランドクランプを使用します。
ケーブルグランドの原理
ケーブルグランドの構造は、JIS F8801 舶用電線貫通金物の場合は図1に示したような部品で構成されています。
ケーブルグランドのサイズ選定に際しては、使用するケーブルの仕上がり外径と、取り付け穴の開口寸法に適したサイズを選定します。特に、➄ ガスケット(ブッシング)は、”a”~”c”と、穴径をユーザー自身で加工して使用する”f”があり、ケーブルの仕上がり外径に適したサイズを選定します。
➁ ボディ(体)は円柱型の形状で、オスねじ側を ⑥ ガスケット を間に挟み込み制御盤などの筐体にあけられた取付穴に差し込み、➂ ナットで締め付けて固定します。
ケーブルは、① 締付グランド をねじ込み締め付けることで、➄ ガスケット(ブッシング)が押されケーブル外面をしっかり固定し密閉します。
JIS F8801 舶用電線貫通金物以外のケーブルグランドに関しても、基本的には同じような構造と原理となっています。ただし、JIS F8801 舶用電線貫通金物のねじ規格がJIS B0202 管用平行ねじに対して、JIS B0205 一般用ねじになっている場合が多いため、選定に際しては注意が必要です。