油圧クランプとは
油圧クランプとは、加工するワークや金型および治工具などを、油圧の力を利用してプレス・旋盤機械等の工作機械へ固定する装置のことです。
従来では、一般的にボルトなどによるねじ止めにて、対象となるワークなどを固定していました。しかし、多種少量生産に対応するため、段取り時間の大幅な短縮がユーザーから求められるようになり、昨今は自動でクランプできるシステムとして油圧クランプが広く使用されています。
圧縮空気 (エア) によってクランプ装置を駆動させるエアクランプもありますが、強固に固定するには油圧クランプの方が優位です。
油圧クランプの使用用途
油圧クランプは、工作機械での加工対象物 (ワークや金型、治工具) の固定に最も使用されています。例えば、マシニングセンタでは、治工具や加工するワークを直接クランプするために用いられています。また、プレス機械や射出成型機の金型の固定などに使用する場合も多いです。
油圧クランプは、油圧クランプ本体と油圧力を発生させる油圧ユニットを用意する必要があります。油圧ユニットは、一般的な電動機によって油圧ポンプを駆動し油圧を発生させるタイプや、エアハイドロブースターによって油圧を発生させるタイプが採用されています。
後者のタイプは、空気圧を油圧に変換し、さらに増圧させる装置です。圧縮空気をつなぐだけなので、システムがコンパクトになります。そのほか、クランプとアンクランプの切り替えを行う電磁弁とクランプ時に、圧力まで一定のレベルまで上昇したか確認を行うための圧力スイッチを使用するのが一般的です。
油圧クランプの原理
油圧クランプは、パスカルの原理により、油圧配管から発生する強い油圧力を動力源にして、強固なクランプ力 (押し込み力) を得て、油圧クランプ用機器を動作させます。T溝に取り付けて任意の位置で使用する機器が汎用的ですが、このタイプでは強固なクランプ力と高い剛性を備えながらコンパクトであることが汎用性を高める要因です。
油圧クランプは基本的に、クランプする対象物の厚さやクランプする推力、取り付けるT溝寸法によって使い分けます。対象物の厚さに種類があり、油圧クランプのストローク内では吸収できない場合、1番厚いものを基準としてスペーサを入れることで調整します。
油圧クランプの交換を要する場合は、油圧クランプにつないだ油圧ホースをワンタッチで外せる製品も多いです。圧力スイッチによるクランプ確認とあわせて、油圧クランプに近接スイッチを併設することで、クランプ対象物がクランプ位置にあるか確認する場合もあります。
油圧クランプのその他情報
1. 油圧クランプでの省エネルギー対策
昨今の環境問題への配慮から、油圧から電動化への流れは多く議論されています。しかし、大きな圧力を手軽に得るためには油圧クランプが適しています。
そこで、油圧クランプでも以下のような省エネルギーを目指す商品を扱うメーカーがあります。
- エアクランプと併用し、規定のクランプ圧力に到達にて油圧ポンプが停止し、エアと併用することで省エネルギー化。
- 皿ばね等の力でのクランプを主とし、油圧 (ポンプ) を用いるのはアンクランプ (クランプしない状態) のみとする機構採用。
エア機構とのクランプ機器のハイブリッド構成を含め、外部の油圧ポンプの駆動による高圧が必要な瞬時のみ油圧を用い、かつ極力時間を短くする工夫を取り入れて省エネルギー対策を実施しています。
2. スイッチやセンサー併設の油圧クランプ
油圧クランプは、プレス機械や旋盤などの工作機械で用いられることも多く、取り扱いに際して作業者の安全に十分配慮する必要があります。そのような背景のもと、油圧クランプに近接スイッチやセンサーを併設したタイプは、電気的にインターロックなどの安全対策をとれるため、作業者の予期せぬ危険からの回避と作業自体の安全性確保可能です。
また、位置決めの機能を有するタイプはワークの取り付けに際してより利便性が高まりますが、一般に通常の油圧クランプと比較してそのクランプ力は劣ります。油圧クランプは、あくまで対象物の固定に使用し、金型などの位置決めの再現性が必要な場合には別途対策を講じる必要があります。